本来なら今週は、“投資したら必ず減ることあります“を納得しておく(2)“をお届けするはずでしたが、コロナウイルス関連で具体的なご質問をいくつかいただきましたので、それについてシェアさせていただきたいと思います。
コロナウイルスで株式低迷。今後世界経済は打撃を受ける・・。こんなとき株式投資をしている私たちは不安になるものです。持っている投資はこのままでよいのか、これから積み立てるはずの投資は待った方がよいのか、株でないものにお金を避難させたほうがいいのか。いろいろな質問が頭をよぎるかもしれません。長期ほったらかしのインデックスファンド投資をしている皆さんを対象に、以下のQ&Aを用意してみましたので参考になさってください。なおぜひ先週の“投資したら必ず減ることあります“を納得しておく(1)“と来週の(2)も合わせてお読みください。
Q.投資をし始めてから、株式市場の低迷を始めて経験しています。ついちょっと前にに入金したときはコロナウイルスの不安なニュースと重なって、入金するなり値下がりしていきました。タイミング的に運が悪かったとあきらめるしかないと思うのですが、それでも本当に入金してよかったのかと心配になります。それとも何かアクションをとるべきでしょうか?
とらなくていいと思います。
勇気をもって投資をし始めたのに、しばらくして市場がどんと下がったりすると誰でも戸惑うと思います。実際、ステイトメントなどを見ていると元金割れしているのが明らかに見えますから 不安になって当然です。
ただ歴史的に見て、このようなパターンは何度もあり、これまで繰り返してきたパターンを見る限りは、ある程度の期間がかかっても、その期間のあとは必ず値を戻したうえでさらに成長してきたというのが実績です。
どのくらいの期間がかかるかはケースバイケースですが、ここ100年余りの間で見るに、もっとも短かかった市場低迷期は1990年の3か月間。S&P500(米国大型株200社インデックス)が20%落ち込んだものの、3か月で低迷を抜けました。一方でもっとも長かったのは61カ月続き1942年3月で終わった低迷期です。S&P500は60%も値を下げたそうです。過去のパターンで見る限り、低迷は3か月から5年強ということですね。
今回のコロナウイルス・ショックがこれまでと同じパターンをたどるという保証はありませんが、過去の市場の動きの実績をベースにすれば、10年以上持ち続けることができる長期投資であるならば、低迷を抜け出し成長をしはじめるまで待つ余裕がありますから、ただただ待ち続けるのがよい・・ということになります。
ちょうど投資を始めたのがコロナウイルスが市場に影響を与えだした時期であるというのは悲しい現実ではあっても、ちょっと時間を早回しして10年後を想像したとき、今の低迷時点より価格が上がって右上がりになっている線が続いているはず・・・と想像をして耐えるのがテキストブック的考え方です。
Q.コロナウイルスは今後世界に広まり。しばらく世界経済が悪化すると思います。株投資をしていてもいいのでしょうか?金などを買っておいた方がいいのでしょうか?
このブログでご紹介している“世界分散のインデックスファンド投資”を実践していらっしゃれば、米国だけではなく世界の株式市場に投資をされていることになります。世界の特定の国が低迷しても、他の国が補うことができるかもしれませんし、もしもコロナウイルスが世界規模で猛威を振るったとしても、その後世界が滅亡せずまた回復し人々の生活が続いていくと信じるのなら、世界の株式市場に分散投資し続けることは理に適うと思います。
もちろん、ここで書いたようになるという保証はありません。判断は個人の責任のうえで行っていただくことになります。私個人的には、もしも市場がリカバーせず長期的に世界株式が衰退し続ける状況になるとすれば、それは世界が終わりに近い時ではないかと思いますので、今回はそんなケースではないという(希望的?)判断から、過去のパターンにならって持ち続けています。
企業が出張やイベントを取りやめ人や物の動きが小さくなり、それにともない経済悪化が予想されています。株価への悪影響は免れず、それならば実質的な価値のある金などに代表される貴金属を持った方がいいのではないか・・というような意見もお聞きになることがあるでしょう。
下記は、1990年から30年間の値段の変化です。黒はWilshire Large-Cap(US大型株750社)、赤は S&P 500(US大型株500社)、青は Dow Jones(US大型株30社)、黄色は Gold(金)、灰色は Silver(銀)を示しています。(追記:S&P500は市場インデックスを使っており投資ファンドではない指標のみ(S&P500の市場価格のみ)のプロットであるのに対し、Wiltshire Largecapは市場価格伸びに加え、年々のDividend(配当金)を再投資することも考慮しており、市場価格成長+配当金再投資でのファンドとしての投資パフォーマンス伸びをプロットしています。)
株式の黒、青、赤は、選んだ銘柄によって変化率は違うものの、どれも上がったり下がったりを繰り返しながら、右上がりトレンドが見て取れます。これが、ほったらかしの長期投資に向く特性です。
反対に、金や銀は同じように細かい上がったり下がったりはありますが、30年の期間を通して見るに、株式のケースより右肩上がりのトレンドが見つけにくいと思いませんか?これは、長期投資をしても必ず値上がりするとは言い切れず、どちらかというと機をみて安い時に買い高い時に売ることで利ザヤを稼ぐタイプの投資に向いていると言えます。
そのような投資が目的であれば貴金属は理に適いますが、長期のほったらかし投資の代替策になるものではないかと思います。
Q.すでに投資してしまっている額については、ほったらかしで貫こうと思っています。でも、今後入れる分については調整したほうがいいのでしょうか?毎月自動積立される401(k)はそのままでいいのでしょうか?また、今回タックスリターンを終えてから、余裕金をIRAに入れようと思っていましたが、それはちょっと見送った方が良いのでしょうか?
401(k)などの月々の自動積立は、ドルコスト平均法というやりかたに基づいた投資法です。ドルコスト平均法というのは、毎月一定額、たとえば200ドルをコンスタントに積み立てると決めたら、市場がどうであれ、常にいつも200ドルずつ積み立てることで、買値の平均化を試みるという方法です。
いつも200ドルずつ積み立てる設定にしていると、市場低迷期には同じ200ドルでも低い価格で買えるので、いつもより多いシェア数となります。つまり「安い時にはたくさん買う」を自然に実現してくれます。反対に、市場高揚期には、同じ200ドルでも高い価格で買うことになり、より少ないシェア数しか買えません。つまり「高い時には少しだけ買う」を実現してくれます。これは自分で機を見ることなく、またタイミングを逸することもなく、おしなべて「安い時はたくさん買って、高い時は買い控える」効果が自然に得られます。買付タイミングの分散で、長期的にみると買値の平均狙いが図られるわけです。
というわけで、市場低迷期ももちろんそのまま自動積み立てを続けるのがよいです。市場低迷期こそ、安く買っているおいしい時でもあります。
また、積み立てではなく、まとまったお金がある場合はどうでしょう?IRAなどへの積み立ては、一年の余剰金をまとめて一括投資する・・という方も多いと思います。
この場合は、貴重なリソースである時間を無駄にしないというのが考え方の基本になります。早く投資を始めれば、それだけ長く投資をできることになり、複利で増える投資効果を長く享受できることになります。比較的小さな額であれば、一度に積み立ててしまって問題ないと思いますし、大きな額であっても、なるべく早く資産が資産を生む状態をつくるため、数回に分けて、それでもなるべく早く投資に回るのが好ましいことになります。ただ、コロナウイルスが今後悪化して市場は“必ず下がる”という強い思いがある場合は、しばらく様子を見てみるというのも悪いとは思いません。
IRA積み立てであれば、2019年分は2020年4月15日までに入金するする必要があります。それまでの間に、“かなり値が下がった!”と感じるときがあれば、その時に入金するとよいかと思います。その時が下がりきった時かは誰にもわかりませんし、“もっと下がるかも・・”と思うかもしれませんが、待っているとそのうち上がりだして“あ~さっさと投資しておけばよかった”ということにもなりかねません。ある程度踏ん切りが必要です。とりあえずIRAには入金しておいて、現金ベースで留め置いて置き、踏ん切りがついたら投資するというステップをとれば、締め切り日をミスすることもないですね。
面倒でなければ、何回かにわけて(2週に一度とか)投資をするというのも、投資のタイミングにおけるリスク分散がはかれます。投資額が大きくなれば、数か月間にわたってタイミングを分散させ投資するのもよいかと思います。
この点については、バンガード社がかなり詳細なシュミレーションをしています。$1ミリオンのお金を10年間インデックスファンドに投資することを念頭において、アメリカ、英国、オーストラリアの過去データを使ったシュミレーションですが、結果は「まとまったお金がある場合は、3分の2の確率でタイミング分散せず、一括投資(もちろんタイミングを計らず)するほうが、長期的に見て成績がよい」としています。まとまった資金がある場合には一刻も早く全額を投資して、市場全体の平均利回りを確実に享受する、つまり時間を無駄にしないことが、3分の2の確率でよいという結果でした。ポイントは、タイミング分散するにしてもしないにしても、長期投資に回すと決めた額ならば、あまり心配せず(ある程度市場を見ながら投資時期を計ったとしても)、なるべく早めに投資を始めることがよいということです。
岩崎さん、先日ご連絡した瀬尾です!ブログのサブスクがあったのですね。いつも楽しみながら役立つ情報をいただきましてありがとうございます!
ホットな記事ありがとうございます。チャートを見るとWiltshireのパフォーマンスがS&P500と比べて優れているのですが、500社と750社の違いだけでこのような差が出るのでしょうか?
さすが、良い点をご質問されますね!実は私も不思議でよくよく調べてみたら、S&P500は市場インデックスを使っており投資ファンドではない指標のみ(S&P500の市場価格のみ)のプロットであるのに対し、Wiltshire Largecapは市場価格伸びに加え、年々のDividend(配当金)を再投資することも考慮しており、市場価格+配当金再投資でのファンドとしての投資パフォーマンス伸びをプロットしているようです。つまり、401(k)やIRAなどののように配当金再投資を前提にした株式ファンド投資をするなら(実際の株式媒体の差こそあれ)Wiltshireのほうに近いパフォーマンスが実績であるということです。その旨本文に追記しました!
確認ありがとうございました。納得しました。なるほど。。。配当金の再投資がパフォーマンスを更に伸ばしているのですね。このことをPower of compound interestって言うのでしょうか。チャートを見て驚きました。説明ありがとうございました。