投資にも流行りすたれがあります。このファクター投資、英語ではFactor-based Investingといいますが、ちょっと前からの投資の流行語です。各社がファクター投資のファンドやETFを宣伝しているので、目にした方もいらっしゃるかもしれません。何か新しい投資法のようで期待を集めるかもしれません。このブログでは、インデックスファンドをベースにしたパッシブ投資を一貫してお勧めしておりますが、もしかしてファクター投資に乗り換えた方がいいのではないかという考えが浮かぶかもしれませんが、今、なぜそれが注目されつつあるのか、自分に必要かどうかをどう見極めるか・・について2回にわたり考えてみます。
たとえば、こんな宣伝です。何か魅力的な新投資法のようなイメージを受けます。
実は、このファクター投資というのはずっと以前から長らく存在した投資法です。まずは基本からおさらいします。
パッシブ投資とアクティブ投資
投資に対しての姿勢は、大きく分け二つに分けることができます。それらは。。
パッシブ投資: パッシブファンドを利用する。パッシブファンドとは、ファンド内で持つ株などを、ファンドマネージャーが市場での機会を見つつ売ったり買ったりすることを繰り返さず、また儲かりそうな特定の株を選んだりもせず、市場にある株式全体を幅広く持ち続けるファンド。具体的には、各市場に追随したインデックスファンドに投資するやりかた。いったん投資したら、なにもせず長く持ち続ける(Buy&Hold)のが基本。
アクティブ投資:アクティブファンドを利用する。アクティブファンドとは、ファンドマネージャーが儲かりそうな特定の株などを選んで投資したり、あるいは市場での機会を見つつ安く買って高く売ることで投機的利益を得るために売り買いを繰り返すファンド。アクティブファンドは長く持ち続ける方法もあれば、ファンドの成績も見ながら、投資家がファンド自体を売ったり買ったりしながら短期的利益を目指すこともある。
パッシブ投資とアクティブ投資を比べた場合、長期的に見ると軍配はパッシブ投資に上がることが過去の多くリサーチで証明されています。2008年の金融恐恐あたりまでは、401(k)などのラインアップにもアクティブ投資ファンドが多く含まれマーケティングも積極的に行われていましたが、恐慌で市場が打撃を受け経済が停滞する中、高手数料のアクティブ投資の有用性が疑問視され、それ以降はアクティブ投資からパッシブ投資への資金転出が進みました。インデックス投資のリーダーVanguardには巨額の資金が流入し、401(k)のラインアップもインデックスファンド・ベースのものが激増しました。このあたりのバックグラウンドは以下の記事をご覧ください。
インデックス投資を理解する(3):儲かりそうなものを見つけようとしない!
インデックス投資を理解する(4):どんな方法より強力で最もシンプルに利回りを上げる方法
一生懸命株を選び、売り買いを繰り返すアクティブファンドと、市場全体の株に投資するパッシブ(インデックス)ファンドの勝敗については、Vanguard社のリサーチがこう締めくくっています:
「ある程度の時間をかけておしなべてみたとき、アクティブファンドのマネージャーは全体として市場平均よりよい成績を出し続けることはできない。個別ケースで見たとき、一貫してよい成績を出し続けるファンドが存在しないとはいえないが、そのようなケースは非常に稀である」
ファクター投資は、カテゴリー分けすればこのアクティブ投資に属します。
ファクター投資は自動化/低手数料アクティブ投資
何で今更、負け組のアクティブ投資に属するファクター投資が流行っているのか・・・
それは、テクノロジーの進歩とともに少しばかり新しい要素が出現したからです。新しい要素とは今までに比べて、アクティブ投資がコンピューティング・パワーで自動化され高速化し、また低コスト化したことです。
振り返るに、アクティブ投資がパッシブ投資に勝てない要因は大きく二つ:
- 選んで投資する株なり債券なりの投資媒体が、常に恒常的に市場平均よりよい利回りを出し続けることは非常に困難
- 一生懸命儲かりそうなものを選んで、売り買いするのでどうしても労力が高まり、コストが上がり、ひいてはファンド手数料が上がる(利回りを食われる)
この二つの要因を背後に、昨今では世界がインターネットでつながれ、情報入手がしやすくなり、入手データを高速で分析処理できるコンピューティング・パワーが強化された結果、1については選択の精度が上がり、2についてはコスト減が測られ、ファクター投資はもはや昔のアクティブ投資ではない・・というのがポイントです。
以前なら高手数料のアクティブファンドは1%を超える手数料を課すのが普通でした。場合によっては2%を超えるものまでありました。これが、ファクターファンドならば0.20%以下の手数料で入手できるものも増えています。ファクター投資ファンドは、多くのファンドがミューチュアルファンドではなく、ルールベースで自動化するのに向いているETF(Electronic Traded Fund)として提供されています。
ファクター投資の手数料
ファクターファンドETFは、013%程度から手数料が始まります。
以下VanguardのファクターETF:
以下BlackrockのファクターETF:
IRAなど投資ファンドが広く設定されているプログラムではファクターファンドを選ぶことも簡単でしょうが(上のような)、401(k)など雇用主提供のプログラムでは、提供ファンドが限定されており、現時点ではファクターファンドはほとんど提供されていないと思います。
次回は、もう少しファクター投資について調べ、私たちはそれをどうとらえればいいのかを見ていきます。