Morningstar社が、Best Target Date Funds Rankingというのを出しています。最新版は去年2021年のものになりますが、トップ10はこんな感じになります。
これを見たとき少々驚きました。BlackRockあたりが一位というのはよいにしても、PimcoやJPMorganについては「へえ~!」という感じで、Expense Ratio(ファンド手数料)が0.51とか0.52とかのT.Rowe Priceに関しては「本当に~!」という感が免れませんでした。しかも私が大好きなVanguard は8位。これはちょっと考えを直さなくてはならないかも・・・と思い、少し調べてみた結果を報告します。
インデックスベースのターゲットデイトファンドなら
ターゲットデイトファンドは、その中にUS株式ファンド、外国株式ファンド、US債権ファンド、外国債券ファンド、金融機関によってはREITなども多少含んだ総合パッケージファンドです。多くの場合、それぞれのファンドはそれぞれの市場インデックスに追随するインデックスファンドです。市場インデックスに追随するということは、同じ市場インデックスを追っているかぎり、どのインデックスファンドでもほぼパフォーマンスに差がないということでもあります。個々のインデクスファンドで差がほとんどなければ、それをパッケージにしているターゲットデイトファンドでも理論上はパフォーマンスに差がないことになります。
とはいえ、実際は、ある程度の差はあります。差の原因は、
1)追随するインデックスが違う、あるいは同じインデックスを追随していても、追随の度合いに差があること。同じ市場インデックスをベースにしていてもある程度小さな銘柄などは排除していることもあったり、また追随の速さ、正確さに差があるということです。
2)同じインデックスを追随するファンドを使っていたとしても、年号ごとのアロケーション比率が異なること。たとえば、A社の2060とB社の2060では、中身を見たとき、US株式ファンド、外国株式ファンド、US債権ファンド、外国債券ファンドのそれぞれの比率が違うということです。アロケーションが違えば、通常は株式比率が大きいほうがパフォーマンスがよくてあたりまえです(高リスク高リターン)。
3)Expense Ratio(手数料)に差があること。手数料が高ければ、利回りを喰いますから、パフォーマンスは悪くて当然です。
わたし的には、3)が最も顕著にパフォーマンスに影響するように考えていたので、特にT. Rowe Priceついては疑問でした。そして、同じ手数料0.09%でもVanguardよりBlackRockのほうが大きくランキングがよいのはなぜか・・・。
まあ、これはMorningstar社のこのレポートを詳しく読んでみればわかることなのかもしれないのですが、私はこの有料レポートは読んでおりません。そのかわり、ちょっと比べてみました。
BlackRock vs Vanguard
以下が、Vanguard Target Retirement 2060 Institutional(Portfolio A赤)とBlackRock Lifepath Index 2060K(Portfolio B黒)の過去のパフォーマンスのグラフです。Institutionalというのは、企業や団体の401(k)などのリタイヤメントプラン用ということで、個人では購入できないものです。BlackRockのほうの最後のKというのも同じことで、企業・団体のリタイヤメント用であることを示しています。
上のグラフからまず、二つのターゲットデイトファンドはほぼ似たような動きをするのがわかります。これは上で上げた1)、2)、3)においてふたつのファンドがかなり近いからです。ただ、常にBlackRock(Portfolio B黒)が若干よい成績であるのもわかります。これが、BlackRockが一位になった理由なのかと思いますが、Morningstarの評価ではPeople(ファンドマネージャーの能力・適正)の高い評価に表れているということなのかもしれません。
まあ、でもポートフォリオの内容を見てみると
左(Vanguard)のターゲットデイトファンドには11,233銘柄、債券10,116銘柄が含まれているのに対し、右(BlackRock)のものにはそれぞれ7,202銘柄、3,126銘柄しか含まれていないのがわかります。これは上で上げた差の原因1)にあたり、追随しているインデックスに差があり、Vanguardのほうが市場全体を包括的にカバーしており、BlackRockはある程度分散が限られていることを意味しています。
市場の具合で分散が限られているほうがパフォーマンスがよいときもあれば、高分散のほうがよいときもあり、それはどちらがいいとははっきり言いきれない部分かとも思いますが、でも少なくとも上のグラフで見る限りはBlackRockのほうに軍配があがっているということでしょう。もしかしたらそのあたりがファンドマネージャーの判断力と評価されたのかもしれません。
個人投資家にはあまり意味がない?
ただ、このあたりの比較は個人投資家にとっては意味がないものともいえます。Institutional ShareとかKとかと銘打ったファンドは、勤めている会社や団体のリタイヤメントプランでこれらが提供されていて初めて投資することができるものであり、また通常、会社や団体のリタイヤメントプランでは、VanguardならVanguard、BlackRockならBlackRockというように一社のターゲットデイトファンドしか提供されていないのがふつうです。これらを比較してどちらに投資しよう・・という判断はふつうはありえません。
リタイヤメントプランの外でのIRAや課税口座での個人的な投資においては、InstitutionalやKではない、Investorシェアというのを買うことになります。Vanguardの場合にはVanguard Target Retirement 2060、BlackRockの場合にはBlackRock Lifepath Index 2060 Inv Aになります。今度はこのふたつのファンドのパフォーマンスを比較してみましょう。Vanguard Target Retirement 2060(Portfolio A赤)とBlackRock Lifepath Index 2060 Inv A(Portfolio B黒)です。
Vanguard(Portfolio A赤)が恒常的に上になります。これは上の差のところで上げた3)の手数料の差です。Institutional(リタイヤメントプラン)では、2社とも手数料は0.09%だったのが、個人で買うことになるとVanguardは0.15%、BlackRockは0.39%になります。パフォーマンスのトレンドとしては2ファンドとも非常に似ているものの、この0.24%の手数料の差が年を追うごとに累積され、伸びの差が大きくなっていきます。
まとめると、このMorningstar社のランキングからいえることは;
もしご自分の会社のリタイヤメントプランがこの上位ランキングにはいっているファンドであるなら喜びましょう。もしそうでなければ、このランキングをHuman ResourcesのBenefit担当に見せて、「もっといいのに変えましょうよ~」と提言してみるのもいいかもしれません。
もしIRAや課税口座などご自分で投資する場合には、このランキングはうのみにしないほうがよいでしょう。できるだけ手数料の安いものにstickするのが無難と言えると思います。
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