職場の健康保険プランでも、あるいは州のHealthcare Marketplaceなどでも、複数のプランから自分にぴったりのものを選ばなければならないわけですが、みなさんどうやって比較検討しますか?ノウハウ記事などを読むと、「まずは自分のドクターがネットワークに入っているか確認すること」とか、HMO、PPO、POS、EPOの説明があって、「どのタイプがいいかをまず選びましょう」とか書いてあるものが多いですが、どうでしょう?それではなかなか埒が明かない気もしたりします。また、コスト比較表やカリキュレータがあって年間費用を確認できたりすることもありますが、それをどう読むか。情報はいろいろ提示されているけど、いったい何をどう比較すればいいのか迷ってしまうということ、ありませんか?
たとえばこんなプランのチョイスがあった場合、何をどう比べればいいのでしょうね。どんな病気になって、どんな治療が必要で、それがどのくらいつづくか誰にもわかりませんから、きちんと計算してベストのものを選ぶというのはほぼ不可能です。今回は、そんなふうに迷った時のポイントみたいなものを考えてみたいと思います。
Deductibleを見る
まずはDeductibleがあるかないかを見てみましょう。Deductibleの設定のないもの、つまりDeductibleがゼロのものは、年が明けてすぐ医療サービスを受けても、その最初のサービスからすでに保険のカバーが始まるものです。一方で、Deductibleの設定のあるものは、まずはその額を自分のポケットから支払ったところではじめて、保険のカバーが始まります。
ゼロDeductibleプランは、HMO(Health Maintenance Organization)のことが多いので、ネットワークにとどまることが必要だったり、スペシャリストにかかりたい場合はPCPからのリフェラルが必要だったりとしばりがあることもありますが、補償面ではとにかく低リスクで保守的なプランです。多少月々の保険料が高めでも、値段を気にしながら病院に行きたくないひとにとっては心強い選択です。
ゼロDeductibleプランのよいところは、「ちょっとおかしいな」と思ったら気軽にお医者さんにかかれることです。たとえば、ちょっとした通院で$150とか$200とかかかると思うと少し考えてしまうというということもあるんじゃないでしょうか。CTだのMRIだのとなればさらにお金がかかると思うと、「ちょっとおかしいな」くらいでは気軽にテストも受けられないなんてことにもなります。ゼロDeductibleプランなら、Co-payさえ負担すればあとは全部カバーされる安心があり、健康維持により積極的になれるかもしれません。
Deductibleがあるプランならば、そのDeductibleまでは払う心づもりとお金の準備があったほうがいいでしょう。「なるべく医療費をかけないように」、「なるべく病院に行かないように」ではなく、あらかじめDeductibleまでは自腹を切るつもりでおり、「おかしいな」と思ったらすぐ病院に行くけど、もしもあまり行く必要がなければラッキーくらいの構えのほうがよいように思います。とくに小さなお子さんがいる場合や健康問題が出始める年齢以上の方の場合は、お医者さんい行くのを躊躇するのは避けたいところです。
AとBはゼロDeductibleプランです。Office Visit(外来)は$20のCo-payを自己負担すれば、あとは保険がカバーし、Impatient(入院)は$250を自己負担すれば、あとは保険がカバーします。Surgeon(執刀医)は自己負担がなく、保険がカバーします。AとBでOut-of-pocket Maximum(1年間で自己負担しなければならない最高限度)がかなりちがいますが、カバー内容的にはどちらも非常に手厚いので、何度も入院したり、何度も通院したりということがなければ差が出ない(AのOut-of-pocket Maximumより自己負担額が多くなる確率がかなり低い)かと予想されます。AとBではおそらくネットワークの範囲や提携病院グループが違うと予想されます。好みのお医者さんや病院系列がある場合には、内容を見て決めるのがよいでしょう。
残念ながら最近では雇用主ベネフィットで、ゼロDeductibleプランが提供されていないケースが多くなりました。また、州のMarketplaceなどでもゼロDeductibleプランは少なくなったように思います。
Out-of-pocket Maximumを見る
AとB以外のプランのOut-of-pocket Maximumを比べてみましょう。まずは、最悪ケースが起こったとき、一年で負担しなければならない最大額がこれだということを確認します。ここまで出費がある可能性は少ないかもしれませんが、ないとは言えませんのでこの額はすぐに払える準備がなければなりません。そもそも保険は、不慮の出来事が起こって家計が立ち行かなくなるほどの損害があった場合に対応するためのリスク・マネージメントですから、保険を持っているのに立ち行かなるようなことがあってはなりません。Out-of-pocket Maximumが想定内であることを確認します。
Familyで考えます。Cが最も高いOut-of-pocket Maximumが設定してあり、$14,200です。このプランは、Deductibleが低いので少し自己負担すれば保険カバーが始まるという気楽さがありますが、その後のCo-insuranceが30%と高く、ちょっと入院、手術となれば費用がかさみ、Out-of-pocket Maximumまでの費用負担が起こりやすいプランであるといえます。保険料は安いかもしれませんが、危険度は高いプランです。健康ならばコスト削減も可能かもしれないけれど、いったん医療サービスが必要になると費用がかさむプランです。
DとEはOut-of-pocket Maximumは$6,400と$9,000なので、最悪ケースが起こってもCよりは負担がしやすいです。DのほうがOut-of-pocket Maximumが低いうえ、Deductibleが低いので早く保険のカバーも始まります。しかしDのCo-insuranceは、Eのそれの2倍の20%です。Deductibleが低いので早く保険カバーが始まるものの、Co-insuranceが20%のため、自己負担額はEの2倍になります。ただし、どんどん医療費がかさんだ場合は早くOut-of-pocket Maximumに達するので、$6,400以上の負担にはならないプランです。High Deductible PlanなのでHSAが使え、Employerが$1,000積み立ててくれます。
一方でEは、Deductibleが高いのでなかなか保険カバーが始まりませんが、いったんカバーが始まると、Co-insuranceが10%なので自己負担は比較的楽なプランです。もし医療費がかさんでいっても、最悪$9,000までしか負担しなくてよいプランです。High Deductible PlanなのでHSAが使え、Employerが$1,500積み立ててくれます。健康なのでほとんどお医者さんにはかからないと思うが、もしも病気やケガの場合には、なるべく負担を少なくしたい人にはよいプランかと思います。
Co-insuranceを見る
上ですでにCo-insuranceは話に登場していますが、再確認です。Co-insuranceは%で提示されており、それが自己負担になります。一方で、一番初めに出てきたCo-paymentはドル表示されているものです。なんとなく似たことばですが、Co-paymentは比較的気楽にとらえて大丈夫、Co-insuranceは注意が必要です。なぜかというと、前者は絶対額で$20とか$50とか$250とかと指定してあるものでその額さえ負担すれば、あとの自己負担はありません。トータル費用が$500だろうが、$50,000だろうがあとは保険会社がカバーする*わけです。一方、Co-insuranceのほうは%なので、トータル額が$500か$50,000か大きな違いができます。たとえばCo-insuranceが10%であった場合、自己負担は$50か$5,000かの大きな差になります。これがさらにCo-insuranceが30%だったらば、自己負担は$150とか$15,000という数字になってしまいます。%はクセモノです。 (*たまに、Co-paymentが設定されており、それを超えた部分にはCo-insuranceが設定されているような組み合わせ型もあります)
できればCo-insuranceは低くOut-of-pocket Maximumも低いのが一番ですが、①Co-insuranceは低くOut-of-pocket Maximumが高い(プランE) のと、②Co-insuranceが高くOut-of-pocket Maximumが低い(プランD)とだったら、どちらがいいかというと悩むところです。 とにもかくにも、Co-insuranceもOut-of-pocket Maximumも高いもの(プランC)は高リスクなのでできれば避けるのがよいです。
HSAがついてきてEmployerが積み立ててくれるのは魅力かもしれませんが、そこを先にみるのでなく、まずは保険プラン自体ののリスク対応レベルをきちんと見ることろから始めるのがよいように思います。
たとえば手術が必要になり入院、手術で$30,000、5回のフォローアップ通院(1回$150)などで$30,750のトータル費用がかかったとしましょう。各プランでの費用は以下の通り。これと月々の保険料、HSAの有無などを考え合わせて、自分の許容できるリスクレベルを考えていくというかたちでしょうか。
AとBなら、$250(入院)+$0(手術)+$20x5(通院)=$350の負担
Cなら、$500(Deductible)+($30,000-$500)x30%+$150x5x30%=$15,575=>Out-of-pocket Maximum$7,600の負担
Dなら、$1,400(Deductible)+($30,000-$1,400)x20%+$150x5x20%=$7,270=>Out-of-pocket Maximum$4,000の負担
Eなら、$2,200(Deductible)+($30,000-$2,200)x10%+$150x5x10%=$5,050=>Out-of-pocket Maximum$4,500の負担
月々の保険料がいくらかも重要なポイントかもしれませんが、上のチャートにはあえて保険料を書いていません。いきなり保険料から比較を始めるより、医療サービスのかかりやすさ、健康維持のしやすさ、もしもの病気やケガのときの補償をしっかり考えてから、保険料に目をとめたほうがよいように思います。また、HSAの使えるプランは通常保険料が安いうえに、Employer積み立てももらえるのでお得に思いますが、いったん病気やケガがあると大きな出費になる可能性があるので、そこをどう考えるかが決断の分かれ目です。
昔の職場はHigh deductibleプランがあり、HSAはmaxで積み立て、お金がかかる時はHSAは使わず、自腹で払っていました。HSAは、免税(非課税?)で、良い貯蓄の方法だと知って、なるべく手付かずで保持してきました。子どもは配偶者の保険でカバーしてたし、自分は幸い健康なので、良い選択肢だったと思います。今の職場はout of pocketがもう少し安いですが、Bのプランに近いです。っていうか、それしかない。。とても健康な人は保険料が最大3割安くなり、肥満や高血圧などのある人は、プログラムに参加して定期的にヘルスコーチから電話が入るという合理的(?)仕組みです。健康で良かった!
本当に健康が一番感謝なことだと思います。
大変有益で整理された情報ありがとうございます。最後にプラン毎のケーススタディがあり自分のこれまでの理解を再確認する上でとても参考になりました。これまでは医者にかかることもなく盲目的にHSAにしていましたが、最近は通院する必要も出てきており来年のプランをどうするべきか考えているところでした。HMOに関する記事も読みましたが知らないことばかり参考になりました。Open Enrollmentの時期にタイムリーな情報助かります。このサイトはとても心強くいつも感謝しております。
そうですか!ちょっとはお役に立ててよかったです!