投資ポートフォリオにCryptcurrency(仮想通貨)は必要か?

今や注目されるべきはビットコインだけでなく、目まぐるしい勢いで新しい仮想通貨が誕生しています。厳密にいえば、「通貨」であるためには、広く一般に「通貨」として受け入れられ使われていなければならないはずですが、基準を緩くしてとりあえず自称「Cryptcurrency(仮想通貨)」としているものを数えるなら、一週間のうちにも数十の新しい仮想通貨が生まれ、今や何百という種類が存在しているそうです。有名人の一声でいきなり値上がりし、リスクをとって「投資」した人が大きなキャピタルゲインを得て一躍大金持ちに・・というニュース記事もあちこちで見ます。さて、この仮想通貨、インデックスの長期投資ポートフォリオに入れるべきでしょうか?そこのところどう考えるかについて考えてみます。

株との違い

仮想通貨投資について書いている記事はだいたいどれも、「仮想通貨は非常にリスキーであり、失っても笑って済ませられる範囲しか投資しないこと」と書いています。株式もかなりアップダウンの激しい投資媒体ですが、仮想通貨はそれに輪をかけて激しい値動きをします。冒頭に書いたとおり、有名人のTwitterで高騰したかと思えば反対に劇落する、まさにローラーコースター状態です。

もちろん株式も企業の急な不祥事など、予期せぬことで劇落することもありますが、一つ仮想通貨と株式の違いがあるとすれば、株はその企業の財務の健全性や成長への期待など、実質的な状況を吟味することができ、その株に対してどのくらい価値を置くかという分析が可能なところ、仮想通貨の実質はほぼ測ることができない場合がほとんどです。その仮想通貨は健全か、将来性はどう見るか・・のような分析をして、では〇〇コインを買いましょう・・と判断する人もほとんどいないのではと思います。ただ、上がった・・下がった・・と一喜一憂するだけ、つまり投資というよりはギャンブルに近いものです。先は全く読めないけどラッキーなら大当たり、でももしかしたら全部失うかもしれない・・・ギャンブルに近いというよりは、ギャンブルですね。

潜在的価値ある?

仮想通貨は、「デジタル・ゴールド(金のデジタル版)」と呼ばれることもあります。多くの人が金(きん)を保有していても、金(きん)自体を実際に使うことはほとんどなく、ただ潜在的に価値がある資産としてただ保有することに意義があると考えます。仮想通貨も実際に通貨として使われるかどうかということよりも、それ自体に価値がある資産として保有することに意義があるという考え方です。ですが、本当に仮想通貨は金(きん)のような潜在価値があるのか・・これは大切な質問です。仮想通貨の多くは、{memed into existence}(ミームから生まれる)と言われています。私はおばさんなのでこのmeme(ミーム)というのがどうもピンとこず、娘に何度も聞くのですが、「笑える画像とかビデオみたいなやつで、みんながコピーしてどんどん広がるやつだよ!」と説明されますますわからない。どうやらミームとは「真似る、模倣する」という意味らしいのですが、ソーシャルメディアなどで注目を浴びた画像とかビデオとか言い回しが、人々が真似たり、コピーしたり、パロディを作ったりして、どんどん有名になっていくことや、あるいはその画像とかビデオとか言い回し自体のことを言うようですね。

もともと「ジョーク」でつくられたDodgecoinが、イーロン・マスクのTwitterで一躍有名になり価格高騰。今や、「Dodgecoinはジョークだ(もともとは本当にジョークです)」という人以上に、「いやDogecoinはホンモノだ!」と信じる人の方が多いのかもしれません。こういうのを{memed into existence}(ミームから生まれる)というのでしょうか。問題は、「自分はDodgecoinを金(きん)と同じように潜在価値があると見るか否か」です。

仮想通貨を保証するもの?

仮想通貨やそれを可能としているテクノロジーは、おそらく今後はどんどん進んで将来的には広く一般に受け入れられるようになるのでしょう。おそらくそれは流れとして間違いないのかと思います。ここで私たちは、「仮想通貨を可能としているテクノロジー」への期待と、「仮想通貨そのものの価値」とを混同してはならないというのもひとつのポイントだと思います。PaypalやVenmoによるお金のやり取りは広く受け入れられ日常生活で使われていますが、それらがどんどん広まりうまくいったなら、それはテクノロジーを可能とし運営をしている親会社のPaypalの株が上がるのであって、PaypalやVenmoで使われているドル通貨(や円でも何でも通貨)自体の価値が上がるのではありません。それらは別物です。

国の通貨として確立しているドルや円に「投資」するなら、いくらドル安、円安になっても、その通貨自体の価値がゼロになることはないですが、新興仮想通貨ならもともと「通貨」と呼ばれるほど広く受け入れられていないものがほとんどですから、価値がゼロになることは大いにあり得ます。仮想通貨の価値を保証するものは何もないのです。全世界の分散コンピュータシステムが仮想通貨のバックにあるといえばなんだか心強いのですが、その価値の安定を操作している中央銀行もなければ、FDIC(連邦預金保険会社)の預金保護もありません。

ルーレットと同じ・・

・・ということで、仮想通貨を買うことは、ラスベガスでルーレットにお金をかけるのと同じであると思います。実質的なものが将来成長することを期待してお金を出す「投資」ではなく、大きく当たるか大きく外れるかの確率の高い「投機=ギャンブル」です。「どの仮想通貨が儲かりそうか」という問題は、「ルーレットでどの数字を選ぶべきか」と同じです。

投機的なものは、長期(長い間の成長を見込んで持ち続ける)、パッシブ(売ったり買ったりせず、一度買ったら持ち続ける)、インデックス投資(一つ二つに賭けず、市場全体を持つことによってリスク分散する)スタイルには相いれないものです。よって、「仮想通貨をポートフォリオに追加すべきか」というご質問には、NOとお答えしています。クイック・ビリオネアにはなれないけれど、この長期パッシブインデックス投資、若いころから数十年401(k)で積み立て続ければ着実にミリオネアを狙えます。

ただ、それはギャンブルをしてはいけませんということではありません。ラスベガスで一攫千金を夢見てはじけるのもたまにはいいかもしれません。それはその人その人の好みと考え方です。そしてギャンブルをするなら、全くすべてすっからかんになっても笑って「あ~楽しかった!」と言える範囲のお金にとどめるべきです。もしかしたらビリオネアになれるかもしれない、でも全部なくなっても後悔なし・・のレベルで仮想通貨を楽しんでみるのは悪くないかもしれません。

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3 comments

  1. ハワイ州に17年在住の者です。こちらのサイトでアメリカで必要なファイナンシャルの知識を勉強させて頂いております。いつも有益な情報をご共有頂き、本当に感謝しております。
    今回の「仮想通貨」に関するコラムは大変興味深く、私もまったく同感であったため、初めてコメントさせて頂きました。仮想通貨への投資については、昨年からずっと情報を集めつつも、投資にいまひとつ踏み切れない心境でしたが、今回のコラムを読んで考えがすっきりし、仮想通貨の世界が安定するまでもうしばらく待ってみよう、と思った次第です。
    ハワイ州では概してファイナンシャルインテリジェンスへの関心が薄いように感じられ、こちらで述べられているような内容を対面で話し合う機会が少なく残念ですが、自分のお金をアメリカでしっかり管理し、守り、生活の基盤を着実に作るため、今後もこちらで勉強させて頂きます。
    これからも更新を楽しみにしつつ、末永く応援しております!

    1. コメントありがとうございます。少しはお役に立て良かったです。今後ともよろしくお願いします。

      1. ご多忙の折、ご丁寧にご返信を頂きありがとうございました。ポイントを押さえたシャープなご説明は大変わかりやすく、いつも本当に勉強になります。こちらこそ、今後共どうぞ宜しくお願い致します。

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