スモールビジネスのリタイヤメントプラン

たとえ一人だけでやっているスモールビジネスでも、リタイヤメントプランを持つことができるのをご存じでしょうか。一人ビジネスからある程度の大きさのスモールビジネスまでで使えるいくつかのプランがあります。今回はそれら選択肢のうち、Self-Employed 401(k)、SEP IRA、SIMPLEIRAの3つについてご紹介します。

Self-Employed 401(k)

Self-Employed 401(k)は、Solo 401(k), Individual 401(k)とも呼ばれます。その名の通り、スモールビジネスオーナーのためだけの401(k)です。ビジネスオーナー本人と、もし配偶者もビジネスに関わっていれば配偶者も参加可能です。参加が許されるのは本人と配偶者のみで、他に従業員がいる場合には利用できません。

積み立ては、本人(と、ビジネスに関わっている配偶者がいれば配偶者も)がするわけですが、2つの要素があります。ひとつは本人がEmployee(従業員)として積み立てる部分で、もうひとつは本人がEmployer(雇用主)として積み立てる部分です。Employee(従業員)として積み立てる分は、本人の所得税控除になります。Employer(雇用主)として積み立てる分は、ビジネス費用となりビジネス利益にかかる所得税が削減できます。

Employee(従業員)として積み立てられるのは、$19,500(2021年)までです。 Compensationがそれより低い場合はそれが限度となります。

Employer(雇用主)として積み立て可能なのは、Compensation(Employeeとしてもらっている給料)か、あるいはNet self-employed income(1/2のSelf-Employment Tax、EmployerとしてのSolo 401(k)積み立てなど、すべてのビジネス費用を差引後)の25%までです。積立可能額を計算するのに、積立額額自体が計算で使われるという「循環」があり、計算が複雑ですが、目安としてNet self-employed incomeの20%と覚えておくとよいかと思います。ビジネス形態などにもよりますので、会計士さんとご確認ください。

Employee(従業員)としての積み立てとEmployer(雇用主)としての積み立てのトータルに対して総合限度額が設定されており、$58,000(2021年)です。さらに、50歳以上であれば、Employee(従業員)として積み立てられる額がさらにキャッチアップ分として$6,500追加になります。前述のとおり、配偶者もビジネスに関わっていれば、配偶者分を別途積み立てられます。よって、本人と配偶者のCompensationなどの設定の仕方にもよりますが、最大限では$58,000x2人分(50歳以上ならひとり$6,500追加)という大きな額が所得税控除で積み立てられる可能性があります。決まったパーセンテージを積み立てなくてはならないというルールはなく、その年その年の利益を見て、いくら積み立てたいかを決められるというフレキシビリティがあります。運営や年次報告などの負担も小です。

Solo 401(k)は個人的なIRAを開くのと同じような手軽さで開設できます。ただし設定には、EIN(Employee Identification Number)が必要(オンラインで申請可能)です。口座開設はその年の12月末日までに行います。Employee(従業員)としての積立て額は、12月末日までに決定する必要がありますが、実際の積み立ては翌年の4月タックスリターンの期日(通常、翌年の4/15。年により多少前後)までに行えばよいようです。Employer(雇用主)としての積み立てもタックスリターンの期日までに行えばよいようです。個々のビジネスの状況によりますので、詳細は会計士さんに相談ください。

SEP IRA

SEP IRA のSEPはSimplified Employee Pensionの略です。ビジネスオーナーがつくるリタイヤメントプランです。SEP IRAへの積立は雇用主(オーナー)のみが行います。積み立ては、その年分のタックスリターンの期日(通常、翌年の4/15。年により多少前後)まで可能です。決まったパーセンテージを積み立てなくてはならないというルールはなく、その年その年の利益を見て、いくら積み立てたいかを決められるというフレキシビリティがあります。運営や年次報告などの負担も小です。

SEP IRAは雇用者としての積み立てはできず、雇用主のみの積立です。雇用主は、雇用者の給料の25%まで(Self-employedなら、前述「循環」計算のためNet self-employed income 20%)を積み立てることができ、最大限度は$58,000(2021年)です。スモールビジネスオーナーで大きな収入のある方は、その25%までを税控除で積み立てができる(雇用主として)のは大きな特典です。また、年々の収入にアップダウンがある場合にも、年々いくら積み立てるかをフレキシブルに変更できるというのも特典です。

配偶者も同じビジネスに関わっており給料を得ているなら、その25%までを雇用主積み立てすることができ、夫婦での積み立て額が大きく増えることになります。

しかしながら、一定の年齢で一定の条件以上で働いている従業員(21歳以上、3年勤務、$650以上の報酬を得る者)がいる場合は、彼らに対してもこのSEP IRAを同様に提供する必要があります。従業員の福利に力を入れたい場合にはよいですが、できる限り福利厚生コストを削減したい方には不向きかもしれません。

SIMPLE IRA

SIMPLE IRAのSIMPLEはSavings Incentive Match Plan for Employeesの略で、従業員(雇用者)にそれぞれのIRA口座をセットアップし、従業員が積み立て、雇用主がマッチアップを提供するというものです。100人以下のスモールビジネスのみが使うことができます。401(k)などのように運営・報告義務の負担が高くないので、低コストでリタイヤメントプランを提供したいスモールビジネスに適しています。

積立は、従業員と雇用主とどちらもすることができます。従業員は$13,500(2021年。50歳以上でキャッチアップとして追加で$3,000)までを、給料天引き、所得税控除で積み立てることができます。401(k)は$19,500(キャッチアップ$6,500)が積立限度ですので、それに比べると積立限度が低いです。

SIMPLE IRAは、雇用主が従業員のために積み立てをすることが必須となっています。2つの方法のうち、どちらかを選ぶことになっています。ひとつは、それぞれの従業員の給料の一律2%を積み立てる方法(これは従業員自身が積み立てをするかどうかにかかわらず一律2%)、もうひとつは、従業員が積み立てをしたら、それにマッチする形で給料の3%までを積み立てる方法です。雇用主積み立ての対象給与に最大限度が設定してあり、$290,000(2021年)です。これを超えた給与部分については、2%なり3%なりの雇用主積み立ての対象となりません。また、従業員自身の積み立ても、雇用主の積み立ても、即時にvest(従業員のものになる)します。

従業員としてみなされるのは、$5,000/年以上の報酬を得ると予想される者全員です。

SIMPLE IRAと同じようなルールで提供されるものに、SIMPLE 401(k)というのもあります。ほとんどルールは似ていますが、SIMPLE IRAは、プランに参加できる条件が違い、参加資格があるのは21歳以上、1年以上勤務の条件をクリアした者とします。

SIMPLE IRAやSIMPLE401(k)は運営・維持が比較的シンプルなのが利点ですが、積み立て限度が低いので、大きな自営利益がある人で多くを積み立てたいときには不向きかもしれません。

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2 comments

  1. 有益な情報ありがとうございます。
    質問がありコメント欄にて失礼いたします。

    【現在の状況】
    ・私自身は、会社に雇用されており、W-2収入がある。
    ・Nannyを雇用するにあたり、EINを取得し、個人事業主となった。
    ・雇用主(私)と従業員(Nanny1名)がいる。

    【質問事項】
    ・上記の場合、スモールビジネス向けリタイアメントプランとして、利用できるのはSEP IRAのみという理解でよいか?
    ・SEP IRA開設にかかる諸費用にはどのようなものがあり、ざっくりとどれくらいかかるのか?
    ・例えば、Nannyへの給与が24,000$/年とした場合、私の名前で最大24,000×25%=6,000$の積立ができるという事か?
    ・SEP IRAを開設した場合、従業員も加入できるという理解でよいか?
    ・その場合、雇用主として負担すべき費用はなにか?

    【背景】
    ・私の勤務先の会社に401Kがなく、その他リタイアメントプランへの拠出がしたかった。
    ・雇用主となったことで、自身に有用なリタイアメントプランはないか?と検索していたところ、こちらのサイトにたどり着く。

    わかる範囲で構いませんので、ご教示いただければ幸いでございます。
    以上、よろしくお願い申し上げます。

    1. コメントありがとうございます。これは個人的ケースなので、詳しい情報を把握しないでお応えできる範囲は超えていると思います。
      以下、Charles SchwabのSEP-IRAサイトですが、ここで直接担当者に質問をされるのはいかがでしょうか?
      電話、窓口などで詳しく教えてくれると思います。

      https://www.schwab.com/small-business-retirement-plans/sep-ira

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