買わせる心理学(2)

Dr. Robert B. Cialdinという人が書いたInfluence: The Psychology of Persuasionという本のサマリーを読んだので、モノやサービスを売る時にどのような心理作戦が使われているか、またそれを踏まえて消費者として不本意に影響されることに対してどう自分を守ったらよいかというポイントを考えています。人が「納得して」購買や契約や投票に踏み切るとき、6つの原理が働いているそうです。先週は最初の3つを考えました。今回は後の3つです。

好感による影響

私たちは自分が好ましいと思う人、よいイメージを持っている人に同調する傾向があります。魅力的な人、親しい人、身近に感じている人が言うこと、勧めることについて、ポジティブに反応する傾向があるのです。ホームパーティなどで販売されるキッチン道具とか化粧品とか、誰か知っている人が使っていて勧められるとつい買いたくなるというのがその例だそうです。また、自分も好感を持って受け入れられたいという思いも作用するようです。

私もホームランチョンに呼ばれ、後で考えたら絶対いらないキャンドルを買って帰ってきたことがありました。友人の娘さんがキッチンナイフ・セットを売りに来て、これを買ってくれると自分の学費になるというので、ついつい大きなセットを買ってしまったこともあります。

ま、おつきあいで済むくらいのことなら良いと思いますが、線引きは大切かもしれませんね。考えてみれば、キッチンナイフなど買わず、大学合格おめでとうと言って現金を渡すほうがよかったのかもしれないとも思ったりしました。キッチンナイフ屋はうまいことビジネスするなと思ったものです。

オーソリティ(それなりの人が承認・推奨すること)による影響

「ノーベル賞受賞〇〇博士推奨」とか、「有名人の△△さんが使っている××」みたいなやりかたです。お墨付きというやつでしょうか。地位や職業、名前でお墨付きと認識されることもあれば、ただ制服とか高そうな服を着ているだけということもあるようですよ。立派そうな身なりをしている人が言うことのほうが信憑性を持って受け入れられるなどもあります。人に命令するときに同じ内容であっても、弱々しく言わず、威厳を持って強気で言う方が聞かれやすいとよく言いますが、強く偉そうに、しかも緊急性を持って言われるととついつい聞いてしまうという傾向も人間にはあるようです。

この影響力は思っている以上に大きく、その人の専門性とか職業が、その人が具体的に勧めている商品の内容と必ずしも関係なかったとしても、オーソリティの源としてとらえられることも多いそうです。最近主人がMuama Ryokouama Ryokoとかいう妙な名前のルーターの宣伝を見つけました。「世界のどこでも使えるPortable Wireless 4Gルーター」というフレコミなのですが、宣伝ビデオで仰々しい音楽とともに「東京工業大学で開発」みたいな触れ出しが大きく出てきて、白衣を着た研究者が顕微鏡をのぞいて「開発」している様子が表示されるのでした。だけど、ルーターをつくるのに白衣で顕微鏡がいるのかな~と思いつつ、これもこのオーソリティ付けなんだろうと解釈しています。

偉そうでもなんでも鵜呑みにしないで、吟味してみる、ダブルチェックしてみることが必要なのでしょうね。また、信じたくても、「これ、本当と思う?」と他の人に聞いてみるのもよいと思います。

希少性、限定性による影響

「なかなか手に入らない」、「今だけの値段」、「あと〇つだけ」、「あと×時間で終了」などのメッセージによる、「早く購入しなければ」という緊急性をつくりだすやり方です。「乗り遅れたくない」、「あとで後悔したくない」、「損をしたくない」という感情に訴えます。確かにそれが本当なこともありますが、そうでなくて在庫はふんだんにある場合もたくさんあります。

珍品で本当に希少なものなのか、ある程度量産されているものなのかなど、商品のバックグラウンドを考えてみるのも一つの策でしょう。量産されているものならば、その時一時的な「セール」はいったん終わっても、またそのうち同じような「セール」は必ずやってきます。

「今契約すれば〇〇の特典」などというものも吟味が必要です。いったん頭を冷やして考えてみる時間が大切です。もし契約してしまっても、ある一定期間内ならキャンセルできる消費者保護ルールがある場合もありますから、サインしてしまったからもう遅いと思いわず問い合わせてみるのもよいでしょう。とにかく、希少性を上げ限定的にするのは売る側の常とう手段と心にとめ、高プレッシャー環境での決断には注意をすることが必要です。

2回にわけ6つの項目がありましたが、これらが絶妙に組み合わせれてマーケティング攻勢がかけられているのでしょうね。たとえば、ホテルの部屋予約なども、最近では「あと3部屋がこの値段であり」とか、「〇人の人が今これを見ています」みたいなメッセージがでるのも、気にしないようにしようとしても目に入ってきてしまいますから、無意識に影響されているのかもしれません。常にこのような力が私たちには働いていることを心しておいた方がよいのでしょうね。

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