アニュイティを自信をもって契約するために

4回にわたってお届けしてきましたアニュイティについてのシリーズ、今回が最後です。ここまで、私たちの持つニーズのなかで、アニュイティで必ずしも満たさなくてもいい、あるいは、アニュイティでは満たせないものについてひとつずつ見てきました。今回は、アニュイティでなくてはならないニーズを見ていきましょう。ここまでアニュイティの欠点、注意点ばかり羅列しましたが、アニュイティはニーズに合った使い方をすればとても力強い味方です。以下ではアニュイティ本来の存在意義がカバーする、アニュイティが満たすべきニーズを見ていきます。

 

アニュイティの契約が理に適うための条件

 

次の要素がすべてある場合、アニュイティへのニーズがあると判断できるかと思います。

  • ソーシャルセキュリティとその他企業年金など固定で月々期待できる収入が十分ではなく、老後の固定諸経費をカバーできない。違う言い方をすると、リタイヤメント後に目指す全経費(固定+ある程度の流動)のうち、ソーシャルセキュリティと企業年金などでカバーできる部分が50%に満たない(このパーセンテージは人の主観的ニーズで、ある程度流動的)。
  • ある程度のまとまった資金がある。あるいはこのまま現在の資金運用をしていけば、リタイヤ時にはある程度のまとまった資金になる。そのうち、一部は必要に応じて自由に引き出せる資金として確保し、一部はアニュイティの購入に回せる。
  • いったん契約したら解約せず持ち続けることができ、基本的にWithdrawal(引き出す)ことは念頭に置かず、あくまで固定年金を確保することを狙う。

 

この条件をすべて満たす場合は、アニュイティ購入を正当化するニーズがあると判断してよいでしょう。

 

 

まずはここから始めよう

 

では、アニュイティへのニーズがある場合、アニュイティ選びはどこから始めたらよいでしょうか?

低手数料インデックスファンドで信頼の高いVanguard 社は、保険会社と提携してVanguardマークのアニュイティを薦めています。Vanguard社自体は保険会社ではないので、直接アニュイティを売れませんが、提携保険会社がVanguard社の低手数料ファンドをベースに運用をするアニュイティをつくり提供しています。それらのアニュイティが必ずしもいつもベストと言い切ることはできませんが、手数料の低さと比較のしやすさという意味では称賛に足ります。

よって、Smart & Responsibleのお勧めは、Vanguard提携のアニュイティの見積もりや手数料を調べ、それをベースにし他のアニュイティと比較していく方法です。Vanguardでは、Fixed Annuity(Income AnnuityとDeferred Fixed Annuityの種類があり)とVariable Annuityが紹介されています。以下、ひとつずつ見ていきましょう。

 

Fixed Annuity

 

Vanguardは、2017年5月現在、AIG、Integrity Companies、Lincoln Financial、Mutual Omaha、Symetraの5社と提携しており、VanguardのサイトからリンクしたIncome SolutionsというサイトでFixed Annuityの見積もりを取ることができます(残念ながら利用にはVanguardで口座を持っている必要があります)。

たとえば、夫67歳、妻65歳、$200,000を一括で入れて、すぐに年金化し、ひとりが亡くなった時、もうひとりへの受取額は当初の75%の年金額になるものの見積もり(Income Annuity)をとるとこんなかんじ。

左側は当初の年金額(どちらかが亡くなるまで提示の固定額が支給、ひとりが亡くなった後は当初の年金額の75%がもう一人が亡くなるまで一生涯支給。インフレ対応なし)、右側は同じ条件で、インフレ対応ありで年々2%ずつ上昇していくものです。条件は変更できます。

なお、VanguardマークのFixed Annuityは契約時に契約額の一律2%のアニュイティ手数料がかかりますが、上の見積もりの年金額はすでに2%を差し引いて計算されています。Fixed Annuityは、固定金利や固定支払額についての契約ですので、年金開始までの間引き出しをしないのが原則ですが、年に残高の10%までは引き出しが許されています。これを超える引き出しをするとサレンダチャージージ(引き出し年により変わる、各社ごとにチェック要)があります。

各社の財務健全性も一緒にチェックできるようになっています。このようなシンプルな比較ができるのは消費者にとって大きなプラスです。これ以外の他社から見積もりをもらった場合は、セールスエージェントにこの条件に合わせて見積もりをしてもらい、比較するとよいと思います。

以前に書きましたように、もし投資運用期間を経てから将来的に年金をもらいたいという場合は、多くの場合でアニュイティを使わず、まずは低手数料インデックスファンドで自分で投資をして増やしておいて、時期が来たらこのようなFixed Annuityを買って年金化するのがよいと思います。ただ、どうしても投資運用をアニュイティで行いたい場合は、Variable Annuityを契約することになります。

 

Variable Annuity

 

VanguardマークのVariable AnnuityはTransamerica Premierという保険会社が提供しています。

Variable Annuityは多くの場合手数料が明確に記載してなかったりで、いったいいくらとられるのかよくわからないことが多い(セールスエージェントもよく知らない場合もあります)ですが、Vanguardの場合、選ぶ投資ファンドごとにアニュイティ手数料がいくらなのかをすっきりと明記しています。

Total Expense Ratioは、1)それぞれのファンドに投資のファンド手数料、2)Mortality & Expense Change手数料、3)Administrative Expenseの合計手数料です。

  • はアニュイティでなくても単にファンドに投資する際にかかるファンド手数料です。投資するファンドによって違います。
  • は寿命に関わる部分の費用(早くなくなった時の生命保険、長く生きたときの年金保証)やリスク調整費用などで一律19%。
  • は口座管理費用で一律10%です。

これをトータルしたTotal Expenseが最低で0.44%、最高で0.73%、平均で0.54%という格安レベルです。アニュイティ業界の手数料平均は2.24%(Morningstar社 2015調べ)ですから、Vanguardの手数料の良心的さがお分かりになるかと思います。多くの会社は高額のサレンダーチャージが設定してあることが多いですが、Vanguard提携のVariable Annuityはサレンダーチャージはありません。

 

他社のアニュイティではさまざまなライダー(特約)が提供されており、ただでさえ複雑なアニュイティがますます複雑難解になっている場合が多いですが、VanguardのVariable AnnuityでつけられるライダーはIncome Security Rider:Guaranteed Lifetime Withdrawal Benefit(GLWB)の一つだけです。

VanguardのVariable Annuityは、お金を受け取る段階になったときふたつのオプションがあります。ひとつはアニュイティ化といって、その時点で貯まっているお金をもとに、一生涯続く年金を受け取る方法です。これはその時点で貯まっている金額を保険会社に一括で受け渡し、その代わり保険会社が責任をもって、約束する金額を一生涯払い続けてくれます。一定額が一生涯続きますが、ただその額を変更したりすることはできません。

もう一つの方法はアニュイティ化はせず、その代わりに引き出す(Withdraw)ことで収入を確保していく方法です。アニュイティ化するときのように、貯まっている残高を保険会社に一括で受け渡すわけではく、自分のお金として口座に残っています(投資し続けることもできます)ので、いくらでも好きに引き出して構いません。ただ、早く引きだせば早くお金が尽きるということになります。それを防ぐために、引き出してよい額に上限を決め、その上限以内で引き出している限りは一生涯引き出せるよう保証してもらえる補償が、Income Security Riderです。引き出し額は、その都度のベース金額(増えることはあっても減らない)に、引き出し開始年齢によって決まる一定パーセンテージをかけあわせたものです。

このライダーの費用は1.20%/年です。このライダーは90歳までの間ならいつでも契約することができます。安くはないライダーなので、契約すべきかすべきでないか、するならどのタイミングですべきかは慎重に検討すべきだと思います。

これ以外のライダーは提供されておらず、ある意味、これ以外のライダーは多くのケースで不必要だということを意味しているのだと思います。

Variable Annuityは、何度も書いている通り、それ自体の選択をまず慎重に考えた方がよいケースが多いです。前述のとおりVanguard Variable Annuityの手数料は平均で0.54%と低くはありますが、Vanguardのインデックスファンドに(アニュイティを通してではなく)直接投資すれば、Mortality ExpenseやAdministrative Expenseなどは必要でなく、かかる手数料0.04~0.20%程度まで下がります。本当に必要でない手数料なら払わないことです。

どうしてもVariable Annuityが必要であるという場合は、ここにあるVanguard Annuityを考慮し、他社のVariable Annuityも考慮する場合は、Vanguardの手数料と付き合わせる形で比較することをお勧めします。セールスエージェントに、ファンド手数料、Mortality Expense、Administration Expense、ライダー費用、保険会社の財務健全性などを具体的に確認するのがよいでしょう。

よく答えが見つからない場合は「手数料がゼロ」ということではなくて、「わからないように埋められている」と理解した方が無難です。Vanguardの商品は手数料が非常に明確に公開されています。それは、それらの手数料がしかるべき手数料であり、また正当な額だからです。Vanguardにある手数料が、他社でかかっていないということはほぼ100%ないと言っても過言ではないでしょう。その反対は大いにありえると理解したほうが無難です。

どうぞ納得のいくアニュイティ選択をなさってください。

6 comments

  1. はじめまして。リタイヤメントについて検索していて、こちらのサイトにたどり着きました。ありとあらゆるファイナンスの情報が満載、しかも日本語で読めるなんて嬉しすぎます。。さっそくいろいろなページを読み漁っております。
    渡米(ハワイ在住です)14年にしてやっと家庭のファイナンスに目覚めました。かなり遅くなってしまい少し後悔していますが、落ち込んでいても何もならないので、Better Late Than Never 、今からは前進のみと頑張ります!これからこちらのサイトでも勉強させていただきます。よろしくお願いいたします!

    1. 応援しております!何ごとも気が付いた時がやり時!遅すぎないと思います。こちらこそよろしくお願いいたします。

  2. 大変わかりやすい説明に誠に感謝しております。
    年の離れた夫婦(夫66歳、妻51歳 子どもはなし GC保持者)で在米18年になります。ハッピーリタイヤメントを夢見て、はじめはパート従業員だった私も4年ほど前から企業に務めフルタイムで働き出しました。15年前にFinancial Advisorを雇い、それ以来言われるままに投資をして、また勤め先の403B (夫)401K(妻)にも加入しています。そろそろ夫のリタイヤ時期(70歳を想定)も現実味を帯びてきた頃ですが、夫がリタイヤ後は日本に帰りたい、と言い出しました。日本には家も貯金も残してはおらず、日本で生活することなど全く考えていなかったので、困惑しています。「アメリカ暮らしのプランニング」が変更になり、日本に帰国する場合は、403Bや投資分を受取るであろうアメリカの口座から日本に送金することは可能なのだろうか、そもそも本人がアメリカにいない場合はアメリカの口座を保持できるのだろうか、とか、本人がアメリカにいない場合はどのように日本に送金できるのだろうか、など。。何かご存知のことがあれば、ご教示くださいますと有難く存じます。

    1. そうなのですね、日本へお帰りになると。帰国するつもりもなかったが、実際リタイヤが目前に迫る、あるいはリタイヤメントに入ってから、やっぱり日本へという話は案外聞きます。でも、アメリカでしっかり貯めていれば、日本での老後の生活は比較的金銭的には楽になるはずではないでしょうか。疑問に思われている点については、私もある程度の情報はあるものの、やはり専門の「アメリカ暮らしのファイナンシャルプラニング」から外れるものですから、きちんと責任をもって出せるほど勉強が足らず、今後の課題とさせていただきます。

  3. アニュイティの購入・販売に関してお話ししたいのですが、貴女はAnnuityを販売する州のライセンスをお持ちですか?

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください