将来かかるお子さんの大学費用のためにいくら準備したらよいか、月々にいくら積み立てたらよいかという問題は、多くの家庭で大切な課題です。そもそも学費は家や車にも匹敵するほどの大きな額の費用であることと、これからも年々確実に値上がりしていくであろうと予想される費用であること、そしてそれは(大学に行くのならですが)お子さんの大学入学時期がきたら確実にかかり始める費用であることから、しっかりとした計画のもと、なるべく早く準備を始めることが肝要です。
早いほうがよい
学費準備は、多くの家庭ではリタイヤメント準備同様、長期投資が基本になります。大きな額の準備になるので、お金を貯めるだけではなく、運用して増やすことが必要です。長期運用では時間が味方になります。同じ積立額、同じ運用利回りであっても、長期であれば長期であるほど、複利のパワーを享受でき大きく増やすことができるからです。
学費準備には529プランが良く使われますが、多くの529プランではAge-Basedアプローチが使われています。Age-Basedというのは、お子さんの誕生年を入力することで、デフォルト大学入学年の18歳まであと何年投資期間があるかを計算し、その投資期間によって適切なリスクレベルを割り出して、株式と債券のインデックスファドを適切に組み合わせ自動投資する方法です。お子さんの年齢があがり、入学年が近くなるにつれて、残存投資期間が短くなる=現金化の時期が近くなるので、だんだんとリスクレベルを下げて急な市場悪化などの影響を受ける度合いを低くするよう自動調整してくれます。
下はCaliforniaの529プランのデータですが、0歳で始めれば一番上のポートフォリオで運用が開始され、年齢が上がるにつれて、だんだん下のポートフォリオにシフトしていきます。それぞれのポートフォリオは同じ株式と債券インデックスファンドとを要素として使っていますが、株式;債券の比率が異なり、下に行くほど株式比率が下がり債券比率が上がるしくみになっています。上の方のポートフォリオのほうが株式比率が高いので、リスクも高いですが得るリターンも高くなっているのがわかります。
お子さんが0歳のときに投資を始めれば18年間の投資期間があり、株式比率の高いリスクレベルから投資が始められ高い利回りを期待できます。反対に15歳で始めればあと3年しか投資期間がないので、リスクはとれないことになり利回りはあまり期待できません。おいしい初期の高利回りを享受するためには、なるべくお子さんの小さいうちに少額でもいいので恒常的に積み立てるという作戦がパワフルです。
どこの大学にいくか
お子さんが0歳のときにどの大学に行くかの目星をつけることはほぼ不可能でしょう。月々いくら積み立てるかの試算には、将来の学費がいくらかの目途が必要なので、どこかの大学をめどとして選択することが必要です。ですので、“両親と同じ大学に必ず行かせたい!”など具体的な選択肢がはっきりしているのでない限りは、その時お住まいの州立大学と、いずれかの私立大学を目安として選ぶのが良いかと思います。あんまり深く考えていると何も始められないことと、いったんはじめてからも適宜軌道修正は可能であることから、最初はとにかく始めるということにポイントがあります。
お子さんが大きくなり行く大学の目途がだんだんたってきたら、その大学の学費やスカラシップなどの情報を考慮して積立額なども調整することになります。ただ、高校のシニアになっても、実際どの大学に合格し、いくらくらいスカラシップがもらえるかはわからないことも常なので、学費準備は最後まである程度の手探り状態が続きます。
どの大学に目星をつけるかも大変ですが、ではその大学に入学すると目算して、その学費の何パーセントを用意しておいたらいいのかという問題もなかなか難しいところです。一つの考えは、足りないよりは余るくらいがいいから100%を目指すというものですが、529を使う場合は学費以外に使うとペナルティがあるので、残高を譲れる弟妹がいる場合の出ない限り慎重に考える必要があります。実際は、スカラシップがもらえたり、あるいはその時の給料からもラニングである程度の費用は拠出できる可能性もありますから、全額を貯めておく必要がない場合も大いにありえます。その当たりも、ある程度手探りで決めるしかありません、とにかく始めて必要なら後で軌道修正・・のやり方がいいでしょう。
大きな問題・・インフレ率
リタイヤメントにせよ、カレッジプラニングにせよ、インフレ率をどう見積もるかは大変重要な課題です。物価はときとともに上がるのが常であり、その物価上昇を資金準備にきちんと織り込むことは不可欠です。
リタイヤメントの場合は、リタイヤしてから発生する食費・生活用品費や旅行代金などがどのくらいインフレによって上がっているかを考慮することになり、ふつう消費者物価(CPI)の上昇率が目安になります。3.0%を中心に2.5%~4%程度のレンジで考えるケースが多いかと思います。
一方、学費のインフレ率は少し考慮が必要です。2000年から2018年の18年間を見てみると、消費者物価をベースにしたインフレ率は年平均2.12%であったのに対し、学費上昇のインフレ率は5.29%と倍以上です。物価上昇を大きく上回る勢いでカレッジ費用が上がってきたのがよくわかります。
年々の学費インフレ率を図にしたのが上です。2000年から2004年のバブル期にものすごい勢いで上昇し、その後は上昇は恒常的にあるものの、バブル崩壊後は2008年の6%程度から毎年下がってきているのがわかります。2016年以降は学費インフレ率は2%台、2017年には2.00%となりました。
将来の年々のインフレ率を正確に予測することはほぼ不可能ですし、年々変わるインフレ率の将来18年間の年平均を正確に割り出すことも同様に不可能です。よって、ある程度目途をつけるしかありません。インフレ率の設定は、目標達成のために月々積み立てねばならない必要額に大きく影響してきます。
これからも未来永劫5%で学費上昇するとは想定しがたいと考えます。給料はそのペースでは伸びないでしょうから、そうなると大学に行けない家庭が続出することになります。ただ絶対ないとも言い切れないので、3%程度を目安に、ワーストケースでは5%も想定に一応入れて計算するというような考え方になるかと思います。
実際に計算してみると・・・
たとえば、下は0歳の子どものために月々いくら積み立てていけばよいかの試算をしたものです。18年間、年平均で6.0%の利回りを生むことを想定しています。大学は、州立のUC Berkeley(2018年費用は$30,344)と私立のHarvard(2018年費用は$67,580)とを選び、それぞれインフレ率が3%と5%の場合と、全費用のうち50%/75%/100%を積み立てるケースを考え、月々の積立額を割り出しました。
ご覧のとおり、積立額には大きな差があります。Berkeleyの場合で、インフレは3%で想定し、学費だけをしっかり貯めておいて、寮費や生活費はその時の給料から捻出すると想定すれば、月々$230で大丈夫となります。インフレ5%のワーストケースでは$330です。Harvardの場合で、やはりインフレは3%とし、スカラシップをある程度確保し、費用の半分は自費とすれば、月々$500です。Harvardはファイナンシャルニーズがあればスカラシップが出ます。家庭収入がそれほど高くなければ、スカラシップが大きく期待できるため、100%を貯めておく必要は低いとともに、100%貯めることは実際無理な場合も多いでしょう。反対に、家庭収入が大きい場合は、その時の収入から費用捻出できる力も大きいので、これまた100%は貯めておく必要もないでしょう。これが、Harvardのようにトップレベルでない私立になるとファイナンシャルニーズがあってもすべてカバーされる可能性が低くなる場合も多々あり、安心レベルのお金をためておきたいと思えば、月々$700以上が好ましくなります。
いずれにせよ、カレッジプラニングはあまりに不確定なことが多いので、それはそれで割り切って、リタイヤメント準備を優先させたうえで、できる限りを月々貯めるということで始めるのが良いでしょう。少しずつ先が見えてきたところで、それまでの運用成績も鑑みながら、必要な修正を適宜施すというのが良いと思います。
もうすぐ6歳と1歳の子供が二人います。これから529をはじめるのですが、二人の子に潤沢にためてあげる余裕がありません。上の子用に下の子のアカウントから譲ることはできないのですよね。上の子のアカウントに重きを置いてためて、上の子が使わなかった場合は下の子に譲るというストラテジーが良いのでしょうか。
口座の名義変更は簡単にできますので、上のお子さんが使わなかった分を下のお子さんに譲るのは簡単です。反対に、下のお子さんの名義で貯めておいて、上のお子さんに名義変更することも可能ですが、そうする意味があるケースはあまりないかと思います。名義でない人の教育費にお金をおろすことはできません(できますが、ペナルティがあります)。できれば潤沢でなくともお二人それぞれに少しずつ貯めて(二つの口座で)と年齢にあったリスクで別々に運用するというのがよいように思います。
ご丁寧な回答ありがとうございました。どの529にするか調べて二人それぞれに口座を開きます。潤沢で無いことばかり考えずにまずは行動ですね。
はい、これから529プランの記事が続きますので参考になさってくださいね。
親の名義で講座を運用して親の資産に計算された方が良いとも読みましたが如何でしょうか
はい、できるかぎりお子さん名義の口座での運用は避けた方がいいです。529やIRAなどが良いと思います。
はじめまして。
日本に住んでいるので、アメリカ在住の方とは事情が違うこともたくさんありますが、「カレッジと学費」のカテゴリーの記事に大変助けられました。
日本から学部留学をされる方は経済的に余裕がある方やエージェントにお任せだったという方が多くて、なかなか情報が得られなかったので、こちらにたどり着けてほんとうによかったです。
本命校の結果は3月ですが、Early Actionで出願した2つの大学から思いがけない額のScholarshipのオファーをもらうことができました。
ありがとうございました!!
おめでとうございます!本命校もうまくいくとよいですね!
一年前の記事にコメントすみません。
UC Berkeleyの2018年費用は$30,344、Harvardの2018年費用は$67,580とありますが、これは4年間の費用ですか?
少し調べるとUC BerkeleyはIn-Stateで年間約$14K、Harvardは年間約$47Kと出てくるのですが、4年間必要だとするとブログに記載されている金額よりかなり高くなると思います。
しかもこれはあくまでTuitionのみで、Room & Board加えるとほぼ倍の費用になると思いますので、月の積み立て必要額が全然違った額になってくるかと思います。
「費用」としてあるのは、Tuition, Room and Board, Fees, transportation などを含む一年分のコストで、各大学が発表しているものです。”Average annual cost”などという名称で呼ばれています。
ごめんなさい私が勘違いしてました。表に載ってる年間費用はベース費用で、そこからインフレ率によって上昇していくという意味ですね。
4年間合計費用がかと勘違いしてました。
そうです、そうです。年間費用がインフレ率によって上昇し、それと同時に4年間全体の額の何パーセントをためておきたいかにより、必要月額が決まっているというイメージです。
随分前の記事ですが、質問です。
529プランをしていますが久しぶりに見たら目減りしていました。
529を積立しているとグラントがもらえないと聞いたのですが、
大学の4年間の学費(州立大学でも800万くらい?)はすべてカバーできないと考えて、奨学金を貰えるには
どのくらいまで貯蓄額を押さえておいたほうが
良いのかさっぱり検討がつきません。大雑把で構いませんので目安がわかると助かります。
529が減っているとのこと、年齢がまだ小さくて株式投資の多い投資などになっていると、現状ではそういうこともあると思います。奨学金がもらえる額は、大学それぞれで、年収と貯金などが全部総合的にかかわるので、ひとことで表せる目安はありません。一番いいのは、各大学のNet Price Calculator(大学名とNet Price CalculatorというキーワードでGoogle検索して出てくる)で、ご自分の情報を入力して計算するのが一番確実です。
返信有り難うございました。
あと7年ほどなのですが、目減りするのは仕方のないことなのですね。
また、529プランをしているとグラントがもらえないとある保険会社の方から
聞いたのですが本当でしょうか?その方は529はメリットとしては
良くないので保険に入るよう勧めてきました。
アメリカで学費を貯蓄するのはなんだか日本と比べると難しいと感じます。
私は主婦なのでアメリカではRothIRAを個人で積立を始めていますが
分散投資はしないといけないなと思っています。
以下の記事がご参考になるかと思います。529は額の5.64%がカウントされます。
カレッジ資金のために保険を買う??
うちの年収だと大学のネットプライスはいくら?