ID詐欺の恐怖 - クレジットモニタリングは意味があるか?

年間1,000万人の人が被害にあうというID詐欺。アメリカでの被害額は$18ビリオンに上るそうです。目に見えないところで被害が広がっていくので、私たちにはとても怖いものです。バッグが盗まれたらすぐにわかりますが、個人情報が盗まれてもそこから発生する被害どころか、盗まれたことさえもわからないことが多いもの。その恐怖に訴えるように、あちこちで見かけるクレジットモニタリング・サービス。1ヶ月に$10~$20くらいの料金で、クレジットレポートへの変更やクレジットスコアをモニターしてくれるサービスです。買ったほうがいいか、買わなくていいか・・・どうでしょう。

 

実は多くのマネー関連サイトで、「クレジットモニタリングはお金を払う価値がない」と結論づけています。その理由は・・・

 

クレジットモニタリングはID詐欺を防ぐことはできない

ID theft protection(ID詐欺からのプロテクション)などといううたい文句を掲げているところもありますが、プロテクションというのは語弊があります。クレジットモニタリングは、クレジットレポートの内容をモニターして、その変更について通知をしてくれるものです。今から起こりそうなID詐欺を検知することはできず、すでに起こってしまったID詐欺について事後報告してくれるだけです。

 

クレジットモニタリングでは検知できないID詐欺もある

ID詐欺は大きく分けて3タイプあります。ひとつめは、既存の口座に入り込まれ、お金を盗まれたり、クレジットカードで買い物をされたりするタイプです。ふたつめは、個人情報を使って本人になりすまして医療サービスを受けたり、公的文書や身分証明書を得たりというタイプです。三つめは、個人情報を勝手に使い、新しいクレジットカード口座やローン口座をつくられるタイプです。クレジットモニタリングは基本的に、クレジットレポートへのクレジットカードやローンの新規口座開設の情報を検知して通知するもので、ひとつめとふたつめのタイプは検知することができません。

 

クレジットモニタリングは自分でもできる

クレジットレポートをモニターすることや、実際にID詐欺が発生したときクレジットビュローに詐欺が発生したことを通知したり、Fraud Alert(詐欺注意)やCredit Freeze(クレジットレポートの凍結)をリクエストすることは自分でもできます。実際それらは、すべて連邦法で消費者に認められている権利であって、消費者自身が簡単にできるようにシステムが提供されているものです。お金を払って人にやってもらうか、多少面倒でも人任せにしないで自分で把握しておくか、どちらが自分にはいいか考える必要があります。

 

クレジットモニタリングについてくるID詐欺保険は・・・

クレジットモニタリングには、ID詐欺の場合の損害補償をする保険がついてくることがあります。このID詐欺保険は「保険ではない」という批判もあり、それはもっともな批判です。自動車保険や住宅保険のように標準化された補償内容が定まっておらず、その会社それぞれが気の向くまま決めているという状態です。消費者にとってはそれは非常にやりにくいことで、かなり細かい部分までよく読まないと、実際どういった補償が得られるのか、補償を得るための条件は何かが非常にわかりづらいということです。車をぶつけたら、保険会社がどこであっても、しかるべきレポートをし必要な査定を受けるなど決まった諸手続きを踏めば、コリジョンの補償額(ディダクタブルを超えた)が出ると期待できますが、ID詐欺にあった場合は、必要な手続きや満たさなければならない条件などがそれぞれの会社でさまざまということです。しかも、保険として安定して頼れるものではない場合もあります。たとえば、freecreditsscore.comで提供しているID詐欺の$50,000補償の説明の最後には、このように書いてあります: We expressly reserve the right to change the terms of, terminate and discontinue offering the $50,000 freecreditscore.com Product Guarantee at any time in our sole and complete discretion. (わが社はわが社だけの都合により、この補償サービスを変更、撤廃、停止する全面的権限を保持します)。いつ勝手になくなるかわからない補償は保険とは呼べませんね。このようなサービスを購入するときは、内容をよくよく理解し、その価値があることを確かめるべきです。内容を確かめないで購入するサービスは、単なる気やすめでありお金をドブに捨てるのと同じです。

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もしクレジットモニタリングを使うのなら・・・

だからといってすべてのクレジットモニタリングを使うべきでないかというとそうでもないかもしれません。クレジットモニタリングのサービスはその内容にかなり差異があり、サービス内容が弱いものもあれば、サービス内容が充実したものもあります。

 

まず、あんまりよくない方から紹介します。Experianの関連会社が提供しているFreeCreditScore.comです。

FreeCreditScore.com ($14.95)

 

  • Expeianのクレジットリポートをモニター
  • Experianのクレジットスコアを月に二回アップデート
  • ID詐欺の被害にあった場合は、問題解決をアシストするスペシャリストをアサインしてくれるサービスあり
  • 財布を盗まれた場合などのために、クレジットカード、デビットカードなどの情報を蓄積しておくサービスあり
  • ID詐欺にあった場合、最高$50,000まで被害・処理コスト補償(前述のもの)

 

クレジットビュローが三社あるので、クレジットレポートも三つ存在するわけですが、上のサービスはExperianだけのレポートをモニターするもので、ID詐欺防止としての効力は非常に限られたものです。$50,000までの補償というのも、条件がかなり限定的です。この$50,000という数字はID詐欺補償としてはかなり大きな数字ですが、補償を受けるための条件が限定的であることを考えると、このレベルの補償を受けベネフィットを得る可能性は低いと思われます。このサービス内容に、月に$14.95支払う価値はないように思います。

 

反対に比較的優秀とされているサービスを見てみましょう。いくつかのクレジットモニタリング・サービス比較サイトでトップ1をマークしているIdentity Guardです。

 Identity Guard ($17.99)

 

  • Equifax、Experian、TransUnionの3つのクレジットレポートを毎日チェック
  • 3社のクレジットスコアを毎日チェック
  • パブリック・レコード(公的記録)への変化を3ヶ月に一度チェック
  • ソーシャル・セキュリティ関係の詐欺をモニター
  • クレジットカード番号や個人情報がブラックマーケットで取引されていないかをモニター
  • PCでタイプする文字の傍聴を阻止するソフトウエア提供
  • 財布を盗まれた場合やクレジットカードの不正利用があった場合に、クレジットカード口座をキャンセルし、新カードを手配くれるサービスあり
  • ID詐欺の場合、最高$1,000までの被害・処理コスト補償
  • Zone Alarm Internet Security Suite (ウイルス対策、ファイヤウォール、フィシング詐欺対策、スパム対策ソフト)を提供

 

このサイトの強みは、クレジットレポートやスコアを毎日チェックするということです。モニタリングと称しても、月に一回しかチェックを行わないサービスもあります(チェックの頻度をあえて明記しないサイトも多い)ので、これは大きなプラスです。さすがに毎日のチェックは、自分ではできませんね。またクレジットモニタリングだけでなく、パブリック・レコードもチェックしてくれるとあり、公的文書や身分証明書などのID詐欺もキャッチできる可能性があります。その他、ID詐欺を阻止するソフトウエアもついてきます。お値段は$17.99なり。

上記ふたつのサービスの値段は$14.95と$17.99で、差があまりありませんが、後者のほうがサービス内容はずっと充実しています。こういうわけで、もしクレジットモニタリングを利用するのであれば、その内容をしっかりと見極めることが必要です。

 

でも、実態は・・・

後者のIdentity Guardはよさそうですが、でもちょっとオンラインサーチをすれば、サービスに不満足な顧客は多いようです。たとえば・・・

 

2年間サービスを使っていたが、更新されるのはインクワイアリだけ。他は何も変化がない。車を買うのでローンを申請したが、そのときローン会社が取り寄せたFICOスコアは、Identity Guardでもらっていたスコアと随分開きがあった。不要なサービスだ。

 

更新されるのはインクワイアリだけというのは喜ぶべきことですが、ということはであるならクレジットレポートを日々モニターする必要もないということかもしれません。つまるところ、財布を盗まれた、大きなローンを組む予定がある、とくにID詐欺にあう確率が高いと予想されるなど、具体的な理由がない限り、このようなサービスは不要であることが多いでしょう。3~4ヶ月に一回のwww.annualcreditreport.comで無料で自分でクレジットレポートをリクエストし、モニターするというので十分でしょう。また、Identy Guardのスコアは厳密にはFICOスコアではありません。ローン会社が見るFICOスコアは厳密にはどのモニタリングでも知ることができません。どうせ厳密なFICOスコアでないのなら、CreditSesamiやCredit Karmaなどの無料スコア・システムを利用し、スコアを観察するのでも十分かもしれません。上はそもそものモニタリングサービスの存在意義を揺るがすコメントです。

 

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