店頭で訊かれる“Debit or credit?”。。あなたがクレジット・カードを使うなら、もちろん「クレジット」と答えるでしょう。反対に、あなたがデビット・カードを使うなら、「デビット」とも「クレジット」とも答えられるのをご存知でしょうか。デビット・カードをクレジットで使うとは?デビットで使うのとどう違うの?・・・について見てみましょう。
デビット・カードは、銀行のチェッキング口座にアクセスするためのカードで、最近ではATMカードがデビット・カードである場合が多いようです。ATMでお金も引き出せるし、デビット・カードとして店頭でも使えるといった具合。
デビット・カードを使って銀行のお金にアクセスする(使う・おろす)方法には2種類あって、ひとつは「デビット」オプション、もうひとつは「クレジット」オプションです。最初に「クレジット」オプションのほうからご紹介しましょう。
デビット・カードの「クレジット」オプション
“Debit or credit?”と訊かれて「クレジット」と答えると、PINを入力する代わりにサインを要求されます。その支払いは、Signatureネットワークを介して処理されます。Signatureネットワークというのは、VISAやMasterなどのクレジット・カード会社ネットワークのことです。つまりデビット・カードを使うのだけれど、クレジット・カードのしくみを使って銀行口座からお金が引き落とされるということです。この場合は、即時にお金が引き落とされるのではなく、通常2日ほどの遅延があります。「クレジット」処理ではありますが、本来のクレジット・カードの処理とは違います。クレジット・カードに許されているグレース・ピリオド(25日後に一括請求などのような支払猶予)はなく、クレジット・カードに提供される法的プロテクションもなく、またクレジット・ヒストリもできません。
「クレジット」オプションの場合、手数料はお店側が負担します。銀行側はデビット・カードを「クレジット」オプションで使ってもらったほうが、お店側からたくさん手数料をとれるので、なるべく消費者がこちらのオプションを選ぶよう、ポイントがたまるリワード・システムなどインセンティブを出しているようです。消費者としてうれしいシステムですが、このようなインセンティブを利用するためには年会費を払わねばならない場合もあるようです。個人的には、年会費を払ってデビット・カードを使うくらいなら、年会費無料のクレジット・カードをつくってリワードを貯めたほうがずっといいと思います。
デビット・カードの「デビット」オプション
“Debit or credit?”と訊かれて「デビット」と答えると、その支払いは、PINネットワークを介して処理されます。PINネットワークというのは銀行などの提携金融ネットワークで、CirrusとかPLUSとかPulseなどの名称で知られるATMネットワークのことです。支払い処理が遂行されるためにはPINが必要です。もし、“Debit or credit”と訊かれることなく、自動的にPINを入力されるようプロンプトされれば、それは「デビット」オプションであるということです。「デビット」処理された支払いは、ほぼ即時で銀行の口座から引き落とされます。
「デビット」オプションの便利な使い方は、キャッシュ・バックでしょう。店頭で物を購入すると同時に、現金ももらうことができるキャッシュ・バックは、別途ATMに足を運ぶ必要がなく、また他銀行ネットワークのATMを使うとATM手数料を回避することができます。(このキャッシュ・バックは、「銀行口座から自分の現金を受け取る」という意味で、クレジット・カードのリワードとしてついてくるキャッシュ・バックとは180度意味が違いますのでご注意を!クレジット・カードのキャッシュ・バックは、利用額に応じてその何パーセントかを、「ご褒美」としてカード会社からタダでもらえるということで、そのほうがず~っつと魅力的です。)
消費者として気をつけよう!
悪用のときのプロテクションという意味では、「デビット」オプションに比べ、「クレジット」のほうが優れているといえます。VisaやMasterが、悪用されたときはzero liability(消費者の負担なし)などのプロテクションを提供しているからです。悪用の場合のプロテテクションという意味では・・・
- 「一番いい」のが、クレジット・カード(連邦法により守られています)
- 「大丈夫かな」が、デビット・カードの「クレジット」オプション (Signature会社が独自にルール設定)
- 「どうかな」が、デビットカードの「デビット」オプション(銀行などが独自にルール設定)
という状況かと思われます。ただし、これは悪用自体が、どちらの形態で起こったかで決まります。自分はほとんど「クレジット」オプションで使っていたけど、たった一度のATM処理でPINを盗まれ、それを使って悪用が行われれば「デビット」オプションでのプロテクションしか得られません。つまり、デビット・カードの利用は、とにかく注意を払ってするということです。最近ではスキマーといわれる詐欺目的のカード情報読み取り装置が、ATMやお店のカード・リーダに隠されていることがあり、知らず知らずのうちにカード情報が盗まれていることがあります。カード・リーダがちょっと不自然な形だと思ったら、使わないこと。クレジット・カードの場合はもちろんですが、デビット・カードならなおのことです。
2011年の法改正で、デビット・カードの「クレジット」オプションの場合に、銀行がお店から徴収できる手数料の上限が設定されました。銀行は失われた利益を補填するため、消費者側から手数料をとろうともくろみました。ChaseやBank of Americaといった大手銀行が、デビット・カードを使った場合のマンスリー手数料($5くらい)を徴収しだそう試みたところ、一斉に非難をあびたため取り消しました。銀行によってはまだこのような手数料を課しているところもあるかもしれません。いずれにせよ、銀行側は手を変え品を変えどうにかして手数料を取ろうと手をこまねいている状況であり、デビット・カード(および付随したチェッキング口座)は影響を受けやすいエリアであると思われるので、今後も消費者側の注意が必要です。
デビット・カードの賢い使い方
賢いマネー・マネジメントと消費者として受けられるプロテクションという意味では、総合的に判断するとクレジット・カードに軍配が上がります(ただし、責任ある使い方をして、月々の残高は払いきることが前提)。しかし、もし敢えてデビット・カードを使いたいという場合は、手数料に気をつける、安易にPINを入力をして盗用されないなどを心がけたいところです。リワード・ポイントをためたいなら「クレジット」で、キャッシュ・バックしたいなら「デビット」でというように目的に応じて、オプションの選択を変えて使うとよいでしょう。