FAFSA?EFC? アメリカ大学に進学を考えるお子さんがいらっしゃる家庭でしたら、知っておかねばならない言葉です。とりあえず、大学に合格するまでは受験のことだけを、合格したらファイナンシャル・エイドのことを心配すればいいと思っていませんか?実は、EFCを知ることは、受験がはじまるずっと以前から計画的に学費をためたり、ファイナンシャル・エイドを最大限に活用するために収入・税金・資産を計画的に整理したり、事前に受験する大学を賢く選んだり、合格した大学からできるだけたくさんエイドを得られるよう調整したり、ひいては税金の面でもエイドをキープする面でも有利なように学費の支払い方を工面したりと、多くの面で非常に重要な役割を果たすのです。あなたはご自分のEFCをご存知でしょうか?また、EFCの意味するところをご存知でしょうか?
EFCはExpected Family Contributionの略で、カレッジの費用のうち学生の家庭が負担することを求められる予想額です。カレッジの費用とは、学費、寮や食事代、その他教科書代や交通費などの雑費を含めたカレッジに通うために必要な費用のことで、英語ではCOA(Cost of Attendance)といいます。EFCはCOAのうちの家庭負担分であり、COA-EFC=ファイナンシャル・ニーズということになります。たとえば、COAが$30,000の大学に通う場合、もしその家庭のEFCが$16,000であれば、家庭で負担すべきと判断される額は$16,000、ファイナンシャル・ニーズは$14,000であると認められるということです。COAが$50,000の大学であれば、ファイナンシャル・ニーズは$34,000ということになります。
しかしながら、それは現実的にはどういうことを意味するのでしょう。$16,000さえ払えば、あとの$14,000なり$34,000なりはどこかからお金をもらえて心配不要ということなのでしょうか。実はそんなに簡単には話が進まないのです。その理由は…
EFCはひとつでない
ふつうEFCというとFAFSAのことを思い浮かべる人が多いでしょう。FAFSAはフェデラル政府からのファイナンシャル・エイドのための申請システムです。学生と両親の財務情報を入力することで、EFCを算出します。FAFSAのEFC算出方法をFederal Methodology (FM) と呼びます。
ファイナンシャル・エイドの申請システムにはもうひとつCSS/Financial Aid PROFILEというのが存在し、こちらはInstitutional Methodology (IM)という方法でEFCを算出し、主に私立大学で使われます。FAFSAとCSS/Financial Aid PROFILEについてくわしくはこちらをお読みください。
ご自分のEFCをまだ知らないというのであれば、ここであなたのEFCを計算してみませんか?こちらで試算することができます。Need Analysis Methodologyという項目が選択可能になっているのにお気づきでしょうか。Federal Methodologyを選択すればFAFSAのEFCが、Institutional Methodologyを選択すればCSS/Financial Aid PROFILEのEFCが試算されます。たとえば、年収(AGI)が$100,000(父$50,000、母$50,000)、流動資産$30,000、家のエクイティー(家の市場価格からモーゲージ残高を差し引いたもの)が$200,000の家庭の場合、FAFSAのEFCは$15,316、CSS/Financial Aid PROFILEのEFCは$26,525となります。ずいぶんと差がありますが、これは主に家のエクイティーがFederal Methodologyでは計算に含まれないのに対し、Institutional Methodologyでは計算に含まれることに起因します。
このようにEFCの計算方法は大きく分けてふたつ存在するわけですが、それに加え、計算にあたってそれぞれの大学で考慮される要素や条件も微妙に異なるので、結果的にEFCは大学によってばらつきが出てきます。たとえば同じInstitutional Methodologyを使うふたつの私立大学を比べた場合、大学AはEFCを$26,000と判断し、大学BはEFCを$24,000と判断することがありえるということです。
ファイナンシャル・ニーズは100%満たされるとは限らない
上で説明しましたとおり、COA-EFC=ファイナンシャル・ニーズ となるわけですが、このファイナンシャル・ニーズは必ずしも100%満たされるとは限りません。「合格した学生のファイナンシャル・ニーズは100%満たす」とコミットしている大学もあれば、70%しか満たさないという大学もあります。
College Boardのサイトに行くと、各大学がファイナンシャル・ニーズの何パーセントを満たしているかというデータを見ることができます。こちらのページで、調べたい大学の名前を入れて検索し、「Cost & Financial Aid」というタブをクリックしてください。Financial Aid Statisticsという見出しの下の、 Average percent of need metがそのデータです。
かなりランダムなリストですが、たとえば、こんな感じです。。。
Rice University 100%
Boston University 90%
University of California, Santa Barbara 83%
University of Texas, Austin 81%
University of California, Berkley 76%
もちろん、この数字はAverageであり、あなた自身のファイナンシャル・ニーズの何パーセントが満たされるかという数字ではありませんが、それぞれの大学が平均的にどのくらいニーズを満たしてくれそうかの見当をつけるのに役立ちます。
大学によって満たされないファイナンシャル・ニーズはいったいどうなるのでしょう。残念ながらそれは、各家庭が何とかするしかありません。Boston Universityの例を使ってみましょう。同大学のCOAは$41,420で、あなたのEFCが $16,000であった場合、Average percent of need met=90%というデータを使って試算しました。
となり、ファイナンシャル・ニーズのうち$2,542は満たされないままということになります。この大学に進学することにすればEFCの$16,000に加えて、さらに$2,542も家庭で負担を余儀なくされるということです。
ファイナンシャル・エイドの内容は?
上のBoston Universityのケースを見ますと、EFCが$16,000のこの家庭の例では、$25,420のファイナンシャル・ニーズの90%が満たされると概算でき、おそらく$22,878近くのファイナンシャル・エイドが受けられるであろうと試算されましたね。ここでさらに注目すべきは、ファイナンシャル・エイドの内容です。
以前のブログ記事「アメリカの大学 – ファイナンシャル・エイド研究」で、ファイナンシャル・エイドの種類についてご紹介しましたが、エイドはその性質によってギフト・エイド(返済不要)とセルフ・ヘルプ・エイド(返済要、あるいは労働要)に分けることができることをご説明しました。グラント、学費ディスカウント、スカラシップなどは前者のギフト・エイドで返済不要、つまりもらえてしまうお金であるのに対し、ローンやワーク・スタディー(ジョッブ)は後者のセルフ・ヘルプ・エイドで、返済が必要なお金、あるいは学生が労働して稼がなくてはならないお金です。
先のBoston Universityの例に戻ります。先述College Boardのサイトの各大学のページで「Cost & Financial Aid」タブの中に、Financial Aid Distributionというデータがあります。
このデータが意味することは、満たされたファイナンシャル・ニーズのうち、68%はギフトエイドの形で、残りの32%はローンやワーク・スタディー(ジョッブ)などのセルフ・ヘルプ・エイドの形で提供されるということです。計算をすすめてみましょう。
この家庭の場合、満たされたニーズ、つまり提供されるであろうファイナンシャル・エイドの内訳は、ギフト・エイドのスカラシップ、グラントとして$15,557、セルフ・ヘルプ・エイドのローンあるいはワーク・スタディーとして$7,321という試算になります。
まとめますと、EFCは$16,000であったとしても、(1)ファナンシャル・ニーズは100%満たされるとは限らず、結果的に自己負担せねばならない部分もでてくること、(2)満たされたニーズ、つまり提供されるファイナンシャル・エイドの中には、ローンやワーク・スタディー(ジョッブ)の形でオファーされるものもあり、結果的に自己負担とほぼ同義になってくること、のふたつの理由から、最終的な自己負担額は$25,863と当初のEFCよりずっと大きな額になります。
また、このことに加えて冒頭でご説明したとおり、同じ家庭であってもEFCは大学ごとに異なってくることもあり、本当に自己負担せねばならないのはいったいいくらなのかを知るのは一筋縄ではいきません。
ネット・プライス・カリキュレータの登場
この問題に対処するため、オバマ政権は、フェデラル・ファイナンシャル・エイドを受けているすべての大学に、「ネットプライス・カリキュレータ」の提供 を義務づけました。各大学のWebサイトで、Net Price CalculatorあるいはFinancial Aid Estimatorなどの名称で提供されています。くわしくはアメリカ大学の学費 – いったいいくらかかるのか?をご覧ください。理論的には、このEFCが$16,000であった家庭が、Boston UniversityのWebサイトにあるネット・プライス・カリキュレータを使ってネット・プライスを計算すると、上記で計算された最終的な自己負担額の$25,863に近い額になるはずということです。
ちょっと頭が疲れますね。おつかれさまです。
Knowledge is Power
EFCもネット・プライスも試算による予想値です。実際のファイナンシャル・エイドの内容は、ファイナンシャル・エイド・パッケージを説明したアワード・レターが大学から届くまでは正確に知ることは不可能です。
しかしながら、自分のEFCを知ることと、大学ごとのネット・プライスを知ることは、ファイナンシャル・エイドを最大限に活用するための第一歩です。EFCがどのように計算され、大学がそれをどのように使うのか、EFCとネット・プライスはどうして異なるのかについて、ある程度の知識を携えておくことによって、受験する大学選びから具体的なファイナンシャル・エイド・パッケージの吟味にいたるまで非常に役立つことでしょう。その具体的な役立て方は、またそのうち。。。