HMOプランは悪くないですよ

HMO、PPO、POS、EPOなどいろんな名前の健康保険プランがありますが、そのうち一番古いのが1973年に生まれたHMOです。PPO以降新しいタイプの保険プランが登場するたび、決まって耳にする決まり文句が「HMOはお医者さんを選べない、フレキシビリティーが低いからよくない」です。けれど、私自身はHMOが好きです。ともすると、この「HMOはよくない」のキャッチフレーズはPPO以降の新しい健康保険プランをプロモートするための宣伝文句で、あまりにも一人歩きしているのではないかと思わされます。

私自身、ここ10年以上ずっとHMOを使っていて満足度は高いです。ひとそれぞれの考え方にもよるし、HMOの会社やプランにもよるでしょうが、今回はHMOは巷で言われるほど悪くはない・・・ことを書いてみます。ちなみに、私は単にHMOの一契約者で全体像を把握しているわけでもありませんし、またHMO全体をよしというつもりもありません。もし選択肢にHMOがある場合に、一応つぶやき程度に参考にしていただければと思います。

HMOについてネガティブに語られがちな「ほんとかな?」と思う点について触れていきます。

ほんとかな? : 医者を選べないからよくない

選べるけど、限度があります。ただ限度はあまり気にならないかもしれません。たしかに、ネットワーク内にとどまることが基本の基本です。また、専門医に会うためにはまずPCP(Primary Care Doctor)に会い、リフェラルをもらう必要があります。そういう意味で、自由に専門医を選べません。

ただ、自由に専門医を選ぶことがどれほど重要かという問題もあります。私がネットワーク内の専門医にかかる場合は、とりあえずPCPのリコメンでリフェラルをもらい、それでハッピーです。自分で選ぶのが面倒だからです。でも、リファ―されて行ってみた専門医がちょっと?だった場合には、その時点でネットワーク内の同じ専門のお医者さんを近場から調べていき、レビューなども読み、この人がいい‥という人がいたら、その人にリフェラルを出してくれるようPCPにお願いします。もしも、ネットワーク内だけでなくこの界隈のすべてのお医者さんから自由に選んでいいですよ!さあどうぞ!といわれても、あまりにも多すぎて困るかもしれないので私にはそのレベルの自由はいりません。

また、PCPのリファーがないと専門医に会えないというのは不便に聞こえますが、私自身はほとんどその不便さは感じたことがありません。かえって、PCPが「ネットワーク内の専門医を探す」という作業を請け負ってくれるうえ、医療・保険のコーディネートをしてくれてラクとさえ感じます。知らず知らずネットワーク外に出て高い医療費を請求されるということはありません。また医療情報がPCPにて一括管理されるのも利点だと思います。

ほんとうかな?:PCPに会わないと専門医にかかれない

基本的に本当です。でも会わなくてもいいときもあります。専門医に会うためには、PCPに会わなかったとしても、PCPのオフィスを通すことが基本です。例えば、眼鏡をつくりにいったとき(Vision保険)、緑内障の兆しがあるかもしれないから健康保険で緑内障の検査をしてもらってくださいと言われたときなどは、PCPにわざわざ予約をとって会いに行く必要はなく、オンラインシステムで、「緑内障のチェックが必要と言われて眼科に行きたい」とPCPオフィスにメールしたら、PCPに会うことなしにリフェラルがもらえました。最近のリフェラルは電子リフェラルなので文書をもらいに行く必要もありません。自動的に眼科に送られました。

湿疹ができたときも上のようなノリで直接皮膚科に行きたいと思い聞いてみたのですが、こちらはPCPに会わないではリフェラルが作れないと言われました。でも、Tele Medicineのビデオ会議でリフェラルがもらえました。

ほんとかな? : ネットワークに限られる

本当です。ネットワーク内に基本的に限られます。ただ、都市部のHMOならネットワークはかなり大きいです。専門医にしてもかなり十分なセレクションが確保できている場合が多いのではないかと思います。

我が家は以前はKaiser Permanent HMOだったのですが、これを途中で他社のHMOに変えています。なぜ変えたかというと、そのとき小学生だった子どもにスピーチセラピーが必要だったのですが、数あるスピーチセラピストのうちでも定評があり、そして子どもと相性がよく、かつ学校帰りに通いやすく、しかも保険の範囲内で良心的な請求をしてくれるセラピストを見つけたのですが、Kaiserのネットワーク外だったからです。もう一つのHMOではネットワーク内でした。スピーチセラピーは3年くらい通ったので、これは変えてよかったです。

こんなかんじの、「どうしてもこの先生でなくては!」という場合にその先生がネットワークに入っていないと、HMOでは対応しきれないことになります。保険が効くスピーチセラピストは、そもそも数的にも少ないしかなり特殊なケースだと思います。特殊な症状や病気で絶対かかりたい先生がいるわけではなく、「ふつうの」専門医でよいなら、かなりふんだんにネットワーク内に用意されていると感じています。

ほんとかな?:PCPの予約がいっぱいだと受診ができない

そんなことはありません。基本的にはPCPと会うことになっていますが、緊急の場合はPCPのオフィス内のほかの先生に診てもらうこともできます。また、もちろんUrgent CareやERを使うこともできます。さらにはTele Medicineなども提供されています。

ほんとうかな?:地元から離れたら一切カバーされない

うそです。ネットワーク内にとどまることが基本ですが、HMOは旅行中などの対応においては、おそらくPPOやEPOやPOSなどに比べるとずっとよいカバーを提供している場合が多いのではないかと感じています。少なくとも、我が家のHMOはUS国内でも、また海外でも、旅行中の緊急時においては最寄りの病院に行ってよいことになっています。ただし、緊急が過ぎたあとには、なるべくはやくPCPに連絡する必要があります。

ほんとうかな?:カイロや針はカバーしない

プランによります。我が家のHMOはカイロも針もカバーします。

Kaiser Permanente悪くないです

我が家が以前に使っていたKaiser Permanente。上に書いた理由でほかに変更したわけですが、でもKaiser 悪くないです。Kaiserは自社HMO(保険会社が病院も運営している)という特殊なケースです。HealthCare.govやMedicare.govの評価システムで、安定的に高いレイティングを記録してきており、他の保険会社と比較しても抜きんでてよい成績を収めています。

満足度の高い理由には、PCPも専門医もすべてかかえた一大ネットワークであり、一切Kaiserの外に出ないですべての医療ケアが受けられること、保険と病院が一体化であるため保険クレーム、リフェラル、医療サービス、請求まですべてがストリームラインされていることが挙げられます。患者は保険会社と医者との間にはさまって請求問題をネゴしたり、PCPと専門医の間にはさまってリフェラルの有無で悩む必要はまったくありません。すべてが同じ組織だからです。

Kaiserのあちこちにある病院キャンパスの中には、1か所でほとんどの専門分野がカバーされていて、すべての専門医に会えるというのも利点です。私の友人で末期ガンを戦い亡くなった方がいます。この人はがん専門医はもちろんのこと、内科、泌尿器科、神経科、ひいては精神科までかかる必要があり、そのうえ血液検査やCTなどの検査の数も多く、たくさんの病院通いをしておられました。この人と奥さんが「本当にKaiserでよかった。ひとところで全部済み、みんなコーディネートしてくれるから悩まなくていい」と言っていたのを思い出します。

この反面、Kaiserの欠点は、この病院キャンパスが近ければいいのですが、遠ければいつもそこに通うことになるので不便かもしれません。また、Kaiserは特定の州でしか健康保険プランを提供していませんから、そもそも選択肢にない方もおられると思います。

もし、お近くにKaiserがあるのなら、考慮されることをお勧めします。保険料は最も安い部類ではありませんが、リーゾナルブな値段でシームレスな医療サービスが受けられます。

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6 comments

  1. こんにちは
    私もHMO好きです。都市部に住んでいますのでネットワークで不便を感じたという経験がないのです。
    PCPにネットワーク内で専門医を紹介してもらう場合も、最近はPCPとビデオ診察を行い(それも安い)、専門医から電話がかかってくるのを待って予約するだけ。PCPから専門医に情報は回っているので予約時に説明は不要。以前はPPOだったのですが、自分でやらなければいけないことが多かった気がします。日本の保険に慣れている私としては、HMOのほうが楽に感じてしまいます。

    今年まではDeductibleのないHMOとPPOが提供されており、PPOは保険料が高いのでHMOにしていました。来年からはHDHP+HSA(PPO)も提供されます。現在のHMOよりも保険料が安くなり会社からHSAへContributionもあり、かつHSAの節税効果もわかっているのですが。。。今年大病はしていませんがそれでも数回医者に会う必要があり、今年の結果をもとにシミュレーションをすると年間$700ぐらいのセービング。でも歳をとってきて医者に会う回数や、薬もちょっとずつ増えているので、安心料と思ってDeductibleのないHMOにしておこうかなと思っています。それでも普通のPPOよりは安いので。

    1. わかります、それ。選択でちょうど迷うところを狙って保険のセレクションがオファーされますよね。
      私も保険は安心料なので賭けはしたくないと思い、保守的に選んでいます。

      1. 途中経過です。

        今年はHMO+FSAを選択しました。そして既にER含め何度も医者に掛かっています。現在はPCPでの経過観察中。

        DeductibleのないHMO+FSAにしておいてよかったなと思っています。保険料を含めて考えてもHDHP+HSAよりも支払金額が少なくて済んだということもあります。でも、もっと大きかったのは、HMO+FSAを選んだのでお金のことはあまり心配せずに早い段階で医療機関に行こうとおもったこと。HDHPだったら、もっと症状が悪化しないと行かなかったはず。

        HMOでしたが、ER→PCP→専門医→PCPの紹介、やり取りも問題なく、不便には感じませんでした。ERの翌日にはPCPから電話がかかってきて、その2日後には専門医から予約をいつにするか電話がかかってきました。専門医での診察後、専門医からPCPにxxを経過観察してくださいと連絡も入れてくれています。私からは電話を一つもしていないです。以前PPOで専門医に罹ったときよりもスムーズでした。

        ほぼ同じ保険料でKaiserも提供されていました。Kaiserを選んだ同僚は満足しています。
        一つだけKaiserがいいな~と思ったのは、コロナ対応。私の選んだネットワークはコロナ検査はCountyの検査場やCVSなどを紹介するだけでした。コロナ検査も検査キットもネットワーク外となってしまうので、保険会社とreimburseのやり取りになりました。全額もどってきましたけど。
        KaiserはKaiserで検査をしてくれますし、無料検査キットもKaiserのホームページでオーダーするだけで手続きが簡単だそうです。医療機関と保険会社が一体になっている強みですよね。

        1. 生きた経験談をありがとうございます!「MO+FSAを選んだのでお金のことはあまり心配せずに早い段階で医療機関に行こうとおもったこと」とのご感想、私も同感です。小さな不安でも、どんどん受診して、どんどん検査を受けられる解放感には、何物も変えられないかも‥と思ったりします!

  2. こんにちは
    会社を通じてカイザーのHMOの保険に入っています。
    最近手術が必要な病気をして手術を受けました。日帰りの腹腔鏡手術だったのですが、私の保険では支払った金額がCo-payの20ドルだけで済みました。
    ドクターと会う時もアポイントを取る時に日本語通訳をお願いしておくと通訳の手配をしてくれます。ですから特に医者とのコミュニケーションに不便を感じていません。何でも聞きたいことを聞き、また自分が思うことを伝えています。
    確かに医者は自分では選べません。でもカイザーに移って3年経ちましたが、今までにこれは???というドクターに当たったことはないです。
    ドクターへは電話ではなく自分のアカウントからメールで連絡や質問をしています(これは日本語ではできません)が、週末にかからなければほとんどその日のうちにドクターかナースからメールか電話で返事を頂いています。
    特別な検査は別として血液検査や薬の受け取りは1ヶ所で済むので便利です。PPOの頃はあちこちに足を運んで時間がかかりましたが、今の方が時間もかなりセーブできるし助かっています。
    今のところこの保険にとても満足しています。

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