家を売った時の税金

一般的に、株式やファンドや骨とう品やアートなどの資産を売った時、もしも値上がり益があったときにはキャピタルゲイン税を支払うことになります(IRAなどの税優遇措置のある口座内での取引など、この限りでない場合もあります)。不動産も資産ですので、特に投資目的で買ったわけでなくとも、長く住んだ家を売って値上がり益を手にしたら本来ならばキャピタルゲイン課税の対象になるわけなのですが、おそらく家を売ってキャピタルゲイン税を払った人はそれほど多くはないはずです。なぜなら、持ち家に関してはキャピタルゲイン税がかからないようになる大きな優遇措置があるからです。

 

$250,000/$500,000の控除

家を売ったことがある方ならご存じでしょうが、持ち家の場合は、売却前の5年間のうちで通算2年間、自宅(Primary Residence)として住んでいれば税優遇措置が受けられます。値上がり益(キャピタルゲイン)のうち、タックスリターンでSingle Filingの場合は$250,000まで、Married Filing Jointlyの場合は二人で$500,000までが控除できるという措置です。

たとえば、ご夫婦で10年前に$500,000で購入し、現在価値$850,000の家から引っ越したとします。そのあとはとりあえずレントに出していましたが、3年以内に売却すれば、過去5年のうちの2年の居住条件をクリアしますので、キャピタルゲイン税は一切支払う必要がないということになります。この控除は2年ごとに利用できます。

夫婦の場合、所有が連名でなくともどちらかひとりの名義でも大丈夫です。どちらかひとりが過去5年のうち2年間所有し、夫婦ふたりで5年のうち2年住んでいれば、二人分の$500,000まで控除になります。また、この所有の2年と居住の2年は同一の2年である必要はありません。

 

部分的控除もありえる

もしも通算2年間の居住条件を満たさない場合でも、どうしても引越さねばならないやむを得ない状況があった場合には特例があります。家を買ったらすぐに転勤になってしまい売らざるを得なかった、病気になってしまい病院や家族の近くに転居することになったなど、家を買う時点では予測することができなかった理由で売却の運びとなった場合には、2年の条件を満たさなくとも、居住した期間だけの部分控除が効く場合があります。

シングルの方が$300,000で家を買ったのに、1年で転勤になって売ることになった。ところが、過去1年はすごい不動産ブームで売る時には$400,000になっていた…というような場合は、$250,000のキャピタルゲインx 実際住んだ1年÷本来の条件の2年の$125,000が控除できますので、このケースでは納める税金はゼロになります。

また、ナーシングホーム(長期介護施設)に入ることになり家を売却するときは、さらに手厚い措置があり、5年のうち2年の居住条件が1年に下がります。長い間住み慣れた家に一人暮らしをしていた方が、介護が必要な状態になったのでナーシングホームに引っ越しましたが、いつか自宅に帰る可能性も残しておきたいと売らずに持ったままでいました。結局自宅に戻る可能性は低くなり家を売ることにしました。このようなケースでは、引っ越して4年以内に売却すれば、5年のうち1年の居住条件をクリアすることになり、$250,000フルに控除を受けられることになります。

 

キャピタルゲインを正確に知る

$300,000で買った家が$600,000になりました。キャピタルゲインは?と聞かれたら、$300,000と答えそうになりますが、実はそうでない場合がほとんどです。実際のキャピタルゲインは、

キャピタルゲイン=家の売価 - 家の税金上のベースコスト(Tax Basis) - 諸経費

で計算されます。

家の税金上のベースコスト(Tax Basis)には、家の購入価格だけでなく、家を買うための諸経費、不動産ブローカー費用、法的費用なども含めることができます。また購入してから施したリノベーションなど、物件価格を上げる改善(Improvements)も含みます。購入価格$300,000と購入経費$20,000で購入し、その後$50,000かけてキッチンを新しく改装したという場合は、ベースコストは$370,000に上がります。増築、プール、屋根の張替え、バスタブの取り換えなどもこの改善タイプに含まれます。ベースコストを上げる改善については、レシートなどの情報を管理しておくのが賢明です

一方で、修理(Repair)はベースコストには加えられません。ペンキの塗り替え、壁の穴の修理、壊れたアプライアンスの修理などがそれです。

また、キャピタルゲインの計算で、ベースコストとともに差し引く諸経費には、売却時のクロージングコストや不動産ブローカー手数料、タイトル保険費、各種宣伝費、法的経費なども含まれます。

ひとり$250,000、ふたりで$500,000のキャピタルゲイン控除があるので、リノベーションや諸経費をベースコストにく加えなくとも、キャピタルゲイン税が発生しない場合が多いかとは思いますが、いつ家を売るか、不動産市場がどうなるかはわかりませんから、念のため記録はとっておくのがよいでしょう。

 

ホームオフィスで控除した減価償却費

持ち家の中の一部をホームオフィスとして使い、その分の減価償却費をビジネス経費として計上し税控除をしているケースも多いかと思います。年々控除できる減価償却費は、年々の所得税を減らしうれしいものですが、家を売る時にはその減らされた減価償却分は、ベースコストから差し引かれると同時に、その分には税金が別途かかります(Recap(取り戻し)と呼ばれる。

通常、減価償却は、物件価格から土地部分を引いた建物部分を27.5年かけて減価償却していく形がとられます。建物価格÷27.5xホームオフィスとして使っている面積割合で計算される分が毎年経費として控除できるわけですが(このほかスタンダード額を使う簡単控除もあります)、売る時には、この経費として控除された減価償却費の年々の総合計に25%のRecap税がかかります。

キャピタルゲイン税は所得レベルによりますが最高でも20%ですので、それより高い25%がかかるのは痛いところです。ただ、そもそもこの税金がかかる分は、これまで年々所得税控除となっていたわけなので、早くおいしい思いをして、あとで支払い責任を果たすというしくみです。所得が多い人でも低い人でもRecapの税率は25%なので、所得の高い人ほど、毎年多く所得税を節税しRecapを25%で払えばよい・・という具合に特典が大きくなります。所得税がそれほど高くないの(25%以下)であれば、ホームオフィスとして家を使っていたとしても、あえて減価償却せずに置き、売った時にキャピタルゲインをゼロにして値上がり益をすべて手にするというのも考慮にたる選択かとも思います。ただ物件価格は必ず上がるとも限らず、もしも下がった場合には、値下がり損に対する優遇措置はありません。このような場合には、減価償却できるものはどんどんしておくという方法がよいことになります。

10 comments

  1. こんにちは。カリフォルニア州で10年程前に家を購入しましたが、2年前に離婚しました。その家は共同名義のまま私が住んでおり、相手は2年前に引っ越しました。家を売った際に出た利益は折半しますが、税金の控除、申請は各自別々に行い各自25万ドルまで控除でしょうか?相手が引っ越しして売却時に2年間家に住んでいないのは、相手だけ、もしくは双方の税金の控除が無くなるでしょうか?

    1. タックスリターンは、離婚後はJointでは不可能ですので、それぞれ申請します。まだ住まわれている方は25万ドルまでの控除は問題ないと思いますが、引っ越された方の場合は、離婚調整の法的文書に関連の明記があるかがポイントとなるようなことが下記のページにあります。弁護士さんのご確認いただく内容化と思います。
      For a spouse who continues to own the house but doesn’t live in it, there’s a risk that the $250,000 exclusion might not apply when the house is sold. To avoid losing the exclusion, it’s important to have written documentation of the agreement that called for one spouse to stay in the house and the other to leave but remain a co-owner. If it’s clear that the arrangement was pursuant to a divorce settlement or court order, then the nonresident spouse can still take the exclusion on the basis of the resident
      https://www.divorcenet.com/resources/divorce/capital-gains-tax-sell-house-divorce.htm

  2. GreenCardレジデントでしたが、8年程前に帰国しました。当時から、持ち家をレンタルプロパティとして貸していましたが、その物件は一昨年ハリケーンで半壊し、昨年末、売却しましたが、as isで元値の約1/10になってしまいました。妻は、私が帰国後も子供達と5年程アメリカに居住し帰国しましたが、私が帰国後は、セパレートでTax filingしております。この度の不動産売却に際し、この物件は共同所有でしたので、1099が私と妻に半分づつ発生し、ジョイントで申請するか、これまで通りセパレートで申請するか迷っています。また、売却額が1/10になってしまった事から、キャピタルロスとなるのでしょうか?その場合、どの様に申請すればよいのでしょうか?

    1. ハリケーンとは大変でしたね。価格が1/10になってしまったとは、お心お察しいたします。
      残念ながら、このような内容は私には責任を持ってお受けすることができませんので、会計士さんにご相談ください。

  3. こんにちは。現在、家を二軒所有しております。一軒は自宅として夫婦で住んでおり、もう一軒は賃貸にだしています。賃貸期間は11年になります。この度、賃貸にしている家の売却を考えています。夫婦で$500,000の控除を受けるために、二年間は賃貸にせず、自宅(Primary Residence)として使用し、現在住んでいる家も維持しようと考えております。この場合、家の売却時に $500,000の控除を受けることに問題はないでしょうか?もし、問題があれば、その対処法などをお教え願います。

    1. はい、ルールに従って2年primary residenceとされればキャピタルゲインはご夫婦で500kまで免れます。depreciation recaptureなど他にも考慮すべきことがあると思いますので、会計士に確認されるのがいいと思います。

  4. 初めまして
    1985年に購入した家に3年間、駐在で家族で住んでその後帰国となり現在まで賃貸していました。
    今回売ってくれという強い要望がご近所からありas is で売ることにしました。
    この場合部分的控除の対象になるのでしょうか。よろしくお願いいたします。。

    1. 部分的控除というのは、キャピタルゲイン控除のことでしょうか?
      そうでしたら、ならないと思います。売却前5年中通算2年自宅として住んでいるという条件が満たされないと思います。

  5. 初めまして。
    キャピタルゲインを学習出来ましたが、例えば今年に家を売却し、直ぐに日本に帰国をする場合は、500000ドルの控除が使えず、翌年なら可、だということを仄聞しましたが、事実なのでしょうか。
    お時間のある際に、教えて下されば幸甚です。

    1. ご質問ありがとうございます。残念ながら、詳しい情報を確認せずにすぐお答えする知恵が私にはありませんので、税理士さんにご相談ください。

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