健康保険をどう選ぶか - 後で後悔しないために

健康保険をどうやって選んだらいいのか悩み中の我が家。雇用主が提供する健康保険については、翌年に加入するプランをオープン エンロールメントという期間(雇用主によるが、通常9月末から11月半ばくらいまで)に選ぶことになっていますね。できれば、一度加入した健康保険プランをずっと持ち続けるのが一番簡単で効率的だと思うのですが、これがなかなか難しくなってきている昨今です。なぜなら、毎年毎年、保険のプランの内容が変更されるし、保険料はもちろん上がり続けるし、それに加えて新しいプランも追加され続けるので、自分たちにとって常に一番有利なプランを維持し続けるというのが、なかなか骨の折れる作業になってしまうのです。

アメリカの医療費は高騰を続けていますが、これを背景に、雇用主側もなんとかして保険費・医療費の雇用主負担分を軽減しようとやっきになっています。このせいで、新しいプランがどんどん追加され、そのような新しいプランは雇用主にとってコスト削減になるものがほとんどなわけですが、それと同時に一見すると消費者であるわたしたちにとってもお得なものに見えるものがたくさんあります。でもそこには、High Deductible(保険が医療費をカバーし始める前に、個人が負担せねばならない金額が高く設定してあるもの)や High out-of-pocket maximum(DeductibleやCoinsuranceなどの個人の総負担額がこの額に達したら、そこからは保険が100%カバーするというその最上限が高く設定してあるもの)などのリスクがあるようで、さら~っと目を通しただけでは、到底どれが一番いいかなんてちっとも分かりません。どこかの記事に、「健康保険をあれこれ比べて吟味選択するくらいなら、歯を一本抜かれたほうがましだ!」などと書いているのがありましたけど、わたしも痛く同感いたします。

しかしながらいつまでも延ばし延ばしにしているわけにもいかないので、覚悟を決めて吟味にとりかかることにしました。以下は我が家の吟味方法。健康保険は、人それぞれ家族それぞれ求めるものも選択肢も違いますから、我が家のやり方は必ずしも皆さんにとってベストなものではないかもしれませんが、少しでも参考になればと書かせてもらいました。

1.自分たちの健康状態と医療サービスの利用状況を把握する – 己を知るのが第一番!

まずは、自分たちがどのような医療サービスを必要とするかを把握することが必要です。医療保険の利用パターンによって、どのプランがベストかも変わってくるからです。アレルギーや既往症があるのか、長期的に必要な処方箋があるのか、特定のお医者さんに見てもらいたいなど、特別なニーズがあるかなどを洗い出すことです。

我が家はおかげさまで健康な家族です。持病も今のところないし、飲み続けなければならない処方箋もありません。過去の医療サービスの利用状況は、Preventive Care(定期健診、予防接種やテスト)と年に2,3回風邪をこじらせた程度で検診するくらいです。あと、去年は校庭でヘンな虫にさされた娘が、一度お医者さんに行きました。加えて、突発的には、5年前にわたしが子宮筋腫で大きな手術をしました($25,000の入院)。

2.選択肢を把握する

次に、自分たちが選択できる健康保険プランの種類と保険料を把握します。我が家の場合、今年の健康保険の選択肢は8プランでした。PPO、POS、HMO、PPO+HRAなどのタイプがあり、我が家が負担する月々の保険料は最低$0から最高$610まででした。

3.月々の保険料が予算を超えるプランや、そもそも避けたいプランを除外する

与えられた選択肢のなかから、まずは月々の保険料が高すぎて払えそうにないものを除外します。たとえ、カバーがよくても、そもそも保険料が払えないのならはじまりません。また、この保険会社は使いたくないとか、このプランはどうしてもいやだというものがあればそれも除外します。

我が家の場合は、どんなに頑張っても月々$500が限度だと設定しました。そうすると8種類あったプランのうち4プランに選択肢が減りました。また、そのうちのひとつは、以前使ったことがある保険プランですが、使い勝手がよくなかったので現行のものに変えたという経緯があります。。なので、このひとつも消去。すると残ったのは3プランです。簡単に各プランを紹介しますと…

Core : もっともベーシックなプランで、個人負担の保険料は$0。いわゆるHigh Deductible PPOプラン。家族ひとりにつき、$3,000の医療費を個人負担するまでは、保険は何も払ってくれません。ただしそれ以上の医療費が発生すると、ほどんどのサービスは20%のcoinsuranceで受けられます。家族ひとりにつき$7,600がOut-of-pocket Maximumで、この額を超えるサービスは100%保険が支払います。

Anthem PPO+HRA($2000) : 月々の保険料は$317と比較的低め。いわゆるHigh Deductible PPOとHRA(Health Reimbursement Arrangement)の抱き合わせプラン。今年追加されたニュープランです。HRAによって、雇用主が1年に$2000までの医療費を払い戻してくれます。Deductibleは家族につき$3400(ただし$2000はHRAから払い戻されるため、実質的には$1400)、Out-of-pocket Maximumは家族につき$10,000。雇用主のレポートによると、「我々の行ったシュミレーションによると、ほとんどの家族にとって大きなコスト削減となる」一押し商品だそう。

Health Net HMO : 月々の保険料は$400のHMOプラン。今加入しているプランです。Deductibleはなし。Out-of-pocket Maximumは$3000。毎回のcopayは入院でも$250と安心路線。

4.残ったプランについて、実際の年間総コスト(年間保険料とout-of-pocket医療費の合計)を計算する

これは、とっても面倒なのでできればやりたくないのですが、でもこのステップを踏まないと、自分にとって一番最適な健康保険プランがなかなか明確になってきません。保険プランと医療サービスの利用状況との組み合わせで、総コストはかなり開いてきます。わたしがやってみた計算では、3つのケースを考えました。1) 健康な一年の場合:定期健診+受診2回+処方箋利用2回だけの利用、2) 基本的に健康だけどちょっとハプニングありの場合:定期健診+受診2回+処方箋利用2回+ER利用1回、3) 大きな手術をしてしまいましたの場合:定期健診+手術入院($30,000)。1)は低利用、2)は中利用、3)は高利用といったところです。

表中の語彙の説明

Preventive Care:定期健診、予防接種、予防テストなど、Office Visits:病状がある場合の検診、Prescription:処方箋、Hospital Stay:入院、Out-of-pocket maximum :1年の個人の総負担額の上限

さて、結果は…

健康な一年の場合 

定期健診+受診2回+処方箋利用2回だけ
 CoreAnthem PPO
+HRA(雇用主から$2000)
Health Net HMO
年間保険料
$0$3,816
$4,800
Preventive visits
$0$0$0
Office Visits $250x2回
$250x2=$500
$0 
(HRAから$500)
$15copay
x2=$30
Prescription $100x2回
$100x2=$200
$0 
(HRAから$700)
$20copay
x2=$40
Out-of-pocket
$700$0$70
年間総コスト(保険料+out-of-pocket)$700$3,816
$4,870

基本的に健康だけどちょっとハプニングありの場合

定期健診+受診2回+処方箋利用2回+ER利用1回
 CoreAnthem PPO
+HRA(雇用主から$2000)
Health Net HMO
年間保険料$0$3,816$4,800
Preventive visits $0$0$0
Office Visits $250x2回$250x2=$500$0 
(HRAから$500)
$15copayx2=$30
Prescription $100x2回$100x2=$200$0 
(HRAから$700)
$20copayx2=$40
ER $1500$1,500$1500-$800(HRAから)
=$700
$50
Out-of-pocket$2,200$700$120
年間総コスト(保険料+out-of-pocket)$2,200$4,516$4,920

大きな手術をしてしまいましたの場合

定期健診+手術入院($30,000)
 CoreAnthem PPO
+HRA(雇用主から$2000)
Health Net HMO
年間保険料$0$3,816$4,800
Preventive visits $0$0$0
Hospital Stay $30,000 Deductible$3,000$3400
-$2000(HRAから)
=$1400
$0
Hospital Stay $30,000 Coinsurance($30,000-$3000)
x20%=$5400
($30000-$3400)
x20%=$5320

$250
Hospital Stay 総コスト$8,400$6,720$250
Out-of-pocket Max$7,600$10,000$3,000
Out-of-pocket $7,600$6,720$250
年間総コスト(保険料+out-of-pocket)$7,600$10,536$5,050

5.よ~く考えて選ぶ

3つのケースで、それぞれのプランの総コストを比較してみてください。ケースで随分と結果が違ってくるのがおわかりでしょうか。いわゆるHigh Deductibleプラン(はじめのふたつ)は、月々の保険料も安く、比較的健康に過ごせる1年の場合はかなりお得なプランです。しかし、ちょっと大きな病気や怪我をして手術や入院となると、総コストは重くなります。これらのHigh Deductibleプランでは、医療費が膨れ上がったときには、ある程度の補償はされるものの、Out-of-pocket maximumが高く設定されているがために、自己負担分がかなり重くなるわけです。これに対し、Health Net HMOは保険料として一番高額ですが、Out-of-pocket maximumが低く万が一のとき医療費が膨れ上がっても補償がきちんとされています。。

Coreプランについて一言付け加えます。これらの表ではこのプラン、自己負担保険料も$0だし、手術をしても$7600で済むならなかなかお得のように見えますね。でも、ひとつ注意しなくてはならないのは、このプランのDeductibleはひとりにつき$3000だということです。同様にOut-of-pocket maximumもひとりにつき$7600です。となると、家族4人がみんな大きめの病気をしたり、高額の処方箋が必要になったりした場合、Deductibleだけでも最高で$3000×4=$12,000までは自己負担ということです。ま、こんなことはなかなか起こりえないでしょうが、アメリカは契約社会、細かい条件まできちんと目を通しておきたいですね。

ここで主人をつついて相談。表を眺めたあとで、「う~ん、確かにHigh Deductibleプランで年間数千ドル浮くかもしれませんといわれれば魅力だけど、保険というのは万が一のときのためにあるもの。普段は健康でも、どんな病気や事故にあうかはわからないし、もしものときの補償がきちんとしているもののほうがいいんじゃないの」と主人。「月々に直して$100、$200の節約ならば、保険ではなくて、電話料金やケーブル代の見直しをすべきじゃないかな」と続けた主人。ふ~ん、たまにはいいこと言うじゃんと同感のわたし。健康保険へ期待するものは人それぞれですから、わたしたちの決断が必ずしもみなさんにとってベストではないかもしれませんのであしからず。とりあえず我が家の2012年度の健康保険は、Health Net HMOで現状維持となったわけでした。(う~、こんなこと毎年繰り返したくな~い!…と思うのは私だけではないはず…)

Print Friendly, PDF & Email

5 comments

  1. 保険のことについてわかりやすく書いてくださってありがとうございます。うちの主人の会社のオープンエンロールメントですと、HMOで$502・34を二週間ごとに天引きとなり、保険料がビックリするほど高いので今になっていろいろと調べているところです。家族は夫婦と子供二人。上の子は大学でニューヨークにいるので19歳で無収入の学生だから個人で保険にはいれば$5だと聞いたのですが本当なのでしょうか?私は年に一回の健康診断以外はドクターにはかからないし子供達も健康なのでデイダクタブルなし、オフィスビジット15ドルで年間の医療費支払いマキシマムが家族で3000ドルのこの保険にはいるのは持ったいないと思うのです。家のローンがもう一つ増えるみたいな感じです。ヘルスネットの保険をコスコサイトで検索していますがゴールドプランで家族で900ちょっと。。。。。全く落ち込んでしまいます:(

    1. 確かに月に$1,000以上はちょっと負担が大きいですね。HMOだと遠隔にいらっしゃるお子さんも、なかなか使い勝手が悪いのではないでしょうか?他にHigh Deductibleプランなどのチョイスはありますか?学生で$5というのは、どういうのでしょう。大学は今まで低価格でカバーもそれなりに小さい(けれど若くて健康な大学生にはぴったりの)保険を提供していたりしましたが(それでも$5というレベルではないと思いますが)、Omabacareでそのようなカバーの小さい保険は違法になり、カバーも大きく保険料も高く・・・という傾向があり、問題になっているようです。年収を存知あげないのでなんとも申し上げられませんが、もし会社側からの保険料へのサポートが少ないというのであれば、州のInsurance Exchangeサイトで探したほうが安い・・・ということもあるかもしれないですね。

  2. こんにちは。前回こちらの大学入学のことでちょこっとコメントしましたanuheaです。おかげさまで、こちらのサイトを参考にさせていただき、年が明けてからわが家のファイナンシャル諸々を見直しております。まずは、携帯電話のキャリアをverizonからT-mobileに変更し月々数十ドルを節約できそうです。さて、今年分のオープンエンロールメントの時期は過ぎてしまったので、健康保険については、今年大きな病気、事故がないことを願うばかりですが、High Deductableのプランに変更してなんとかHSAを利用できないかと思い、調べたところ、そちらのプランにしても月々およそ$250を負担しないといけないようなのです(現在PPOのプランで約$330負担しています)。しかも昨年わたしたちがout of pocketで支払った分(保険がカバーしなかった分)が$1000弱ということで、High Deductableにした場合あまりメリットがない、と思うのですが、わたしの理解はどこかおかしいところありますか?主人はアメリカ人でFederal workerなのでfederal planです。もう少しきちっと現在のプランを確認しなくてはいけません(もしかしたら、ここでいうAnthem PPO+HRAかも。でもreimbursementの話は聞いていないし…ごめんなさい、不確かで)。

    1. こんにちは。保険の内容を確認せずには、ちょっと細かいことは申し上げられませんが、High Deductibleにすると月に80ドル節約できるということなのですね??FederalがHSAにお金を入れてくれたりもしますか?それなら金銭的には$80ドル以上のメリットがあるかと。。ただ、医療サービスの利用頻度や利用パターンを吟味して、実際にかかる金額を試算したほうが良いかと思います。カリュキュレターのようなものが雇用主ベネフィットのサイトに提供されていることも多いですが、それであれば利用してみるとよいのでは。。

      1. ありがとうございます。おっしゃる通りです。まずFederalがHSAにお金を入れてくれるかどうか、次にベネフィットのサイトをもう少ししっかり読んでみます。それから、昨年の医療サービスの利用状況からパターンを吟味してみます。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください