私たちは消費社会に生きています。アメリカ経済は、金融会社がお金を貸し出して、そのお金を使って消費者がどんどん消費することで成り立っています。クレジットが大衆化する以前は、ないお金はなかなか使えなかったので、消費の範囲もおのずと限度がありました。そのころは、お金がたまらなければ消費ができないだけのことでした。クレジット時代の最近では、もちろんクレジットには限度があるものの、その限度が消費者が責任をもって扱える範囲を超えて広がることも多く、お金がたまらないだけではなく本来なら理にかなわない負債を追うことにもつながっています。お金がたまるかたまらないか、理にかなわない負債をおうことにならないか、この決め手は日常の消費行動にあるようです。そしてその行動をしている自分のタイプを知ることが、マネーマネジメントの第一歩らしいということ・・・今日はそんな話。。
感情派?理性派?
Purchasing Decisionという言葉があります。購買決断とでも訳すのでしょうか?何かを購入すると決めるときのその決断のプロセスを示すようです。そしてこの購買決断にはいろいろな要素が含まれているものの、大きく二つに分けると、Rational Purchasing Decision(理性的購買決断)とEmotional Purchasing Decision(感情的購買決断)に分類できるのだそうです。
理性的購買決断とは、感情的な部分を排除し論理的に思考したうえでの購買決断です。反対に、感情的購買決断は、感情が決断のよりどころであり、論理的な部分がほとんどなしに、かなりのスピードで即座に判断がされるものです。
おそらく人がものやサービスを買うときには、この二つの要素が絡み合って決断を行うことが多いでしょう。たとえば、リビングルームに置くコーヒーテーブルを買いに行ったとしましょう。このくらいの寸法で、ソファーの色とマッチする明るい色のテーブルがよいので、その基準に合うものを選びつつお店の中を歩いていると、ちょうどよいものが見つかったが、それはバジェットからは少々オーバーしたものでした。なので、それは止めて次のお店に行ったらば、思っていたようなテーブルがふたつありました。必要な条件はほぼ全部満たしています。コストはほぼ同じくらいですが、ひとつには現品限りで30%オフとなっています。ちょうど同じテーブルを見ている人がもうひとカップルいて、そのテーブルがとても気に入ったようです。それに決めようかと話しているようです。この人たちに買われてしまうのかと残念に思っていたら、ちょうど男性のほうがあっちも見てみようと言い出し、二人して隣のセクションに行きました。その瞬間、そのテーブルを購入することに決め、店員にそう伝えました。この場合、前半の部分はかなり理性的ですが、後半は感情的です。30%オフのほうが、まだいくつか在庫があったなら、もう少し時間をかけて理性的な判断をしようとしたかもしれません。
理性的な方が良い場合と感情的でよい場合
何かを買うときには、あらかじめ計画するクセをつけるとよいでしょう。計画のないものは、パッと見てどんなに買ったほうがよいように思えてもとりあえず買わず、次回への計画につなげます。Need(必要)なので買うのか、Want (欲しい)ので買うのかを意識することも必要です。Need(必要)なものだと確認し、あらかじめ買うものの基準(コストや物理的基準など)を決め、計画の上で購入するのが理想ですが、ただすべての買い物がそうでなければならないかというと、そうでもないかもしれません。ある程度感情的でもOKな部分を残しておくことが、精神的に豊かな暮らしにもつながります。
たとえば子どもベットルームをリモデルしている場合、ベットと机とランプとラグが必要であると計画をし買いに行くことは理にかないます。寸法などを図っていき、色などもあらかじめ決め、条件にあったものを買います。お店に出向けば、ショールームがあってちょうどよい感じのクッションやベッドカバー、トラッシュカンなども置いてあるでしょう。オンラインなら、画面の下に「他に買うとよいアイテム」として写真がでてきたりするでしょう。だからといって、これらもついでに購入するというのではなく、これらは次の課題として次の計画に入れるとよいでしょう。もしかしたら、今あるベットカバーで十分かもしれませんし、ガレージには使っていないトラッシュカンがあってちょうど用を足すかもしれません。または、家の近くのディスカウントストアに行ったほうが、安くてかわいいクッションがあるかもしれません。
反対に、海辺のかわいい街に旅行に行ったとします。ぶらぶら道を歩いていたら、なかなか見ないようなコーヒーマグを見つけました。家にはいくつかマグはあるけれど、これはきっとよい思い出になるでしょう。マグを買う予定はなかったけれど、値段的には計画にいれなくとも家計は傾かないし、これくらいの出費はある意味で旅行の費用のうちであるので、その場で購入を決めました。このような購入は感情的なものですが、決して悪いものではないような気がします。
自分がどちらのタイプか知る
どんな決断であっても、すべて感情で行ってはいけないし、同時にすべて理性的に行うのも無理があります。この手のことについての研究では、人はどんなに理性的に行動しようとしても、最後の部分では感情の要素がはいってくるとしており、人は多くの部分で感情に頼ることがわかっています。ただ、感情的だけで判断をした場合は、本来ならば必要でないものに浪費をする衝動買いが多くなることが明らかです。まずは、自分はどちらの要素が強いタイプかを知ることです。何か買おうかなと思った時、それは理性的な要素が強いのか、感情的な要素が強いのかちょっと考えてみるのもいですね。自分のパターンが見えて来たら、ちょうどよいコンビネーションを保とうとちょっと意識してみるのが有効です。
自分のNeedの範囲とプライオリティを知る
NeedとWantとはいうものの、この差はかなり主観的です。ある人はスーツ2着で十分かもしれませんが、ある人はスーツは5着ないとダメと思うかもしれません。また、そのクオリティもまちまちでしょう。安物のスーツでもOKの人もいれば、イタリア製のスーツがmustという人もいるでしょう。自分がNeedだと思っているものの中にも、どうしてもなければ生活が成り立たないものから、ないと不便だがなんとなればなんとかしのげるものまであるでしょう。Needの中にも様々な度合いがあることを意識し、あらかじめプライオリティをつけておくことがよいでしょう。この意識があると、何か「よさそうなもの」を見つけたとき、それがNeedなのかWantなのか、NeedならばどのレベルでのNeedなのかをかなり短い時間で判断できるようになり、ひいては無駄な感情買いが少なくなります。
売り手はいろいろな手で感情に訴えてくることを知っておく
売り手はものやサービスを買ってもらうのには、消費者の感情に訴えることが効果的なことをよく知っています。感情的なWantに働きかけて、それをNeedに変換するためには、どこのツボを押せばよいかをよく研究しています。消費者行動についてのデータは日々集められ、オンラインでの私たちのブラウジング履歴や消費履歴なども知らず知らずのうちに集められ、ピンポイントで感情に訴えるPR活動が行われています。売り手はこれに大きな費用を投じて働きかけてきます。感情的なWantを、いかに理論的に正当化してNeedに変えるかを、心理学的に、行動学的によく研究しています。ゆえに、多くの人が計画をしていなかったものを衝動で購入するという結果になっています。このことをよくわきまえておくこと。「あ、いいな」と思ったら、それは売り手の働きかけに乗らされていることを意識できるように準備しておくことです。
たとえばZARAの戦略・・
収益を上げるために、非常に効果的なストラタジーを使っているお店があります。Zaraです。Zaraは、セールなどで値段が安いことをアピールして買わせるのではなく、それとはまったく反対に値段を高く保つことで収益を上げているそうです。消費者は安くても衝動買いをしたくなるし、反対に高くても衝動買いをしたくなるというわけです。でも、どうやって?それは「後悔したくないという思い」に訴えるマーケティング戦略だそうで。。
その「後悔」とは、店頭で気に入ったアイテムを見つけたが、どうしても欲しかったら後でまた来ようと購入を見送ったとき(理性的判断をしたとき)、後で戻ってきたらもうすでに売り切れになっていて、「あ~、あの時買っておけばよかった」という後悔です。どこでもいつでも買えるようなアイテムであれば、セール時まで待つこともできますが、すぐに無くなってしまうというアイテムなら、今手にできるうちに買わねばという気持ちが強く、この気持ちに訴えかける戦略は非常に効果的だというリサーチもあります。ある意味で、消費者が理性的判断をして失敗した時のペナルティを高くすることで、なるべく理性を使わせないようにするやり方です。
Zaraは在庫は少量バッチで入荷し、在庫を持ちすぎず、アイテムの入れ替わりが頻繁にされるような戦略をとっています。これにより、「買えるうちに買っておかねば」という心理が働いて、ほとんどのアイテムが正規料金で販売され、もし売れ残ったものがあったとしても大幅値引きはせず、最高でも15%オフぐらいまでにコントロールしているそうです。
もちろん、それでも納得の上でZARAのアイテムを買うのは悪いことではありません。踊らされているのではなく、それも知ったうえでそれでもZARAのアイテムには価値があると判断するなら、それは理性的判断です。そういうことを全然考えず乗らされているだけというのは、よくないかもしれないということです。
値段を先にみること
最近のリサーチの結果でこんなことが発見されました。最初にもの自体を見て、色や形を吟味し「あ~いいな~。これ欲しいなあ。」と思ってから、値段を見るというやり方では、フォーカスが自分がそのアイテムをどんなに好きかというところに置かれ、値段は後付けできた情報となり、どんなに好きかが値段を正当化するために使われる、つまり感情優先の決断になりがちだというのです。反対に、最初に値段を見てから、アイテムを見ると、値段の情報を使ってそのアイテムが見合う価値があるかを吟味する、つまり理性優先の決断になりがちだということです。これ、案外簡単なことですね。今度から、手に取ったらまずプライスタグを見ること。すぐできそうですね。
正しい決断をすれば大きな節約ができることを知っておく
Wantで買ってしまったけど、本当は必要がなかったもの・・というのは案外多いかもしれません。人によりますが。たとえば、先月買ったもののうち、あまり使っていないもの、買ってみたはいいけどもう持っているもので代替できたもの、もっと安く他で入手できたもののリストを作ってみましょう。その合計額は案外の額に上るかもしれません。まだ返品できるものであれば、返品するのもよいでしょう。また、そのリストで自分のひっかかりがちな購入パターンというのを認識するのもよいでしょう。そして今後の計画に反映させます。いずれにせよ、節約できるお金についての意識を上げるということはたいせつでしょう。