ここのところ大荒れの株式市場ですが、それに比べると「銀行に預けてあるお金は安全だ」と思っていませんか?そんなことないんですよ。あなたの チェッキング・アカウントにあるお金は実はどんどん目減りしているのです。そうです、銀行の貯金にもリスクがあるのです。貯金はわたしたちのパーソナ ル・ファイナンスにおいて必要不可欠な要素ですが、チェッキングやセービングにお金を入れておけば安泰だと妄信せず、リスクをちゃんと把握した上で適切な 利用をしたいものです。
日本人の貯金好きは多くの人が指摘するところです。2010年末のデータ(第一生命経済研究所調べ)では、個人金融資産における貯金の比率は、アメリカで14.3%、イギリスで27.8%、ドイツで37.9%、フランスで29.1%に比べ、日本ではなんと55.2%です。個人の金融資産の半分以上が銀行に預けられているとは驚くべき数字です。一方、日本人は有価証券や株式などは好みません。同調査によると、個人金融資産における有価証券・株式の比率は、アメリカでは50%以上なのに対し日本では12.5%です。リスク・テイカー&チャレンジャーのアメリカ人に対し、堅実&安全性の日本人というところでしょうか。
では、その貯金、利用するにはどのような心がけが必要なのでしょう。貯金にまつわるリクスとは何でしょうか。その最たるものはインフレ・リスクです。
イ ンフレとは、物価の上昇率、つまりモノの値段の値上がりのことです。スポーツクラブの会員費にしろスーパーのりんごにしろ、年々少しずつ値段が上がってい くものですね。いえいえ経済の状態によっては下がることもあるのですが、少なくとも適度に上がっていくことが健康な経済のしるしだとされています。 2011年8月現在のアメリカのインフレ率は3.8%です。これは、「8月現在、アメリカでは平均的にモノの値段は年に3.8%ずつ上がっていく状況にある」ということを意味しています。
では、インフレ・リスクとは何かというと、イ ンフレによる貨幣価値の下落で損失をこうむることです。具体例を使って見てみましょう。下の表をご覧ください。あなたが今日$10.00持っているとしま す。それからあなたはマンゴが大好物だとします。今日のマンゴの値段は$1.00です。今日、持っている$10.00でマンゴを買うとすると10個買える ことになりますね。 計算のためインフレは3%だとします。 結果的に、1年後のマンゴの値段は$1.03となりますね。
ケース1 ケース2 ケース3
銀行の利子 5%だとすると... 3%だとすると... 0.1%だとすると...
今あるお金 $10.00 $10.00 $10.00
今あるお金でマンゴ
(ひとつ$1.00)を買うと、
いくつ買える?$10.00÷$1.00
=10個$10.00÷$1.00
=10個$10.00÷$1.00
=10個
1年後のお金 $10.00x1.05
=$10.50$10.00x1.03
=$10.30$10.00x1.001
=$10.01
1年後のお金でマンゴ
(ひとつ$1.03)を買うと、
いくつ買える?$10.50÷$1.03
=10.19個$10.30÷$1.03
=10個$10.01÷$1.03
=9.72個
3 つのケースを考えて見ましょう。ケース1は今日持っている$10.00を5%の利子で預けた場合、ケース2は3%の利子、ケース3は0.1%の利子で預け た場合です。元金$10.00は1年後にはケース1、2、3でそれぞれ$10.50、$10.30、$10.01に増えますね。元金は減りません、必ず増えます。でも、そのお金で買えるマンゴの数はどうでしょうか。思 い出してください、もはやマンゴは1個 $1.03ですよ。そうすると、1年後にあるお金で買えるマンゴの数は、ケース1、2、3でそれぞれ10.19 個、10個、9.72個となります。ケース1でははじめは10個買えたのに対し、1年後には10.19個買えますからうれしいですね。ケース2ではどうで しょう。はじめの10個に対し、1年後も10個です。ま、損得なしというとこでしょうか。ではケース3はどうですか?はじめは10個買えたのに、1年後にはなんと9.72個しか買えません。預 けた$10.00というお金は、額面でいうと$10.01となり決して減らなかったように見えましたが、マンゴの購買パワーという面では目減りしてしまっ たのです。つまり、インフレの3%に比べて利子が0.1%と小さかったため、1年前に持っていた$10は、1年後の今、もはや$10の価値はないのです。 別の言い方をすると、利子に比べて貨幣価値の下落が大きかったため、あなたは損をしたのです。
ところで、あなたの貯金の利子はいかほどでしょう?私の場合は、チェッキングが0.08%、セービングが0.30%です。つまりまさにケース3に近い状態です。これは貯金はしないほうがいいということではないことですよ。ただ、貯金にはこのようなリクスが存在することをよく理解したうえで、お金の利用予定や運用目的に応じて、適切に使うべきだということですね。「適切に」とはどういうことかについては、また今度。