M1 Finance の使い道

最近ご連絡をいただくお客様のなかにM1 Financeをお使いの方が増えているように感じています。市場にはさまざまなロボアドバイザーがあり、私はとても全部を把握しておりませんが、今回はこのM1 Financeの使い道を吟味してみたいと思います。M1 Financeの投資サービスは無料であることと、低コストETFを使ったターゲットデイトファンド的な機能を提供していることから、Smart & Responsibleでお勧めしている長期パッシブ・低手数料インデックス投資と目指すところが同じように感じています。それぞれの方のニーズにもよりますが、課税口座やIRAで利用価値があるのではないかと思います。

まずは基本情報から

最低投資額は$100から(リタイヤメント口座については$500から)。サービス手数料はゼロ。M1 Financeは自社サービスを「ロボアドバイザー」とは位置付けておらず、「自動ポートフォリオビルダー」と位置付けています。「アドバイジング」の機能は最小で、他のロボアドバイザーが提供しているような「ゴール設定」、「投資期間の認識」、「リスク許容度吟味」などのフェーズはなく、メールとパスワードをつくると、次に聞かれるのが「どのような投資に興味があるか?」です。これはあとで変更ができるので深く考えず適当に答えてOKです。この次のステージで、Expert Portfolioとして目的別にすでに組まれたポートフォリオが選択できます。

目的にもよりますが、Smart &Responsibleの考え方をベースにとくにお薦めするのは最初の二つ、General InvestingとPlan for Retirementです。

ポートフォリオ

General Investingのほうは、リスク許容度(株式:債券比率)により、下記の7つのポートフォリオが組まれています。ポートフォリオはそれぞれ、Vanguardの低手数料ETFを中心に組まれ、リスクレベルを選ぶだけですぐ投資ができます。この比率は固定ですので、リバランス(時間経過とともにそれぞれのファンドの投資成績が違うので、比率がずれたものを当初の比率に直す作業)はありますが、それ以外のリスク調整は行われません。固定リスクでの運用です。

もうひとつの、Plan for Retirementのほうは、名前の通りリタイヤメントのための投資であり、ターゲットデイトポートフォリオが組まれています。2020年から2060年までのターゲット年に対応しており、5年毎にポートフォリオが設定されています。さらには同じ年のターゲットでも、リスク許容度に応じAggressiveとModerateとConservativeの3種類が提供されています。下記は2030ポートフォリオの3つの異なるレベルです。

これらはターゲットデイトファンドと同じような機能を提供します。ファンドではないのでターゲットデイトファンドとは呼びませんが、ターゲットデイトファンドと同じように、ターゲット年までの間、含まれるETFに対し自動でリバランスとリスク調整(ターゲット年が近づくにつれてだんだんと株式比率を下げていく作業)を行います。また、Vanguardの低手数料ETFを中心に組んでいるのでファンド費用としては大変低手数料です。

たとえば、2035年Moderateポートフォリオの中身を見てみましょう。

このように19の ETFで組まれた世界分散ポートフォリオです。こんなにファンドが多いといったい何に投資しているのか全体像が見にくいですが、たとえば業界ですでに定評の高いターゲットデイトファンドであるVanguard Target Retirement 2035と比較してみるとしましょうか。

Portfolio A(左)がM1 の2035 Moderate、 

Portfolio B(右)がVanguard Target Retirement 2035のInvestor Share(個人投資シェア)です。

投資比率は大まかに似ています。株式比率はM1が48.65%、Vanguardが44.51%とM1の方が少しリスク高。さらにM1の方がCashとOtherが若干多いです。一般的にロボアドバイザーは、ロボアドバイザー料金に加え、顧客の現金を運用しての利子などで利益を上げます。ロバアドバイザーによっては自動提案のポートフォリオにかなり高い現金比率を入れ込み、この部分での利益を上げることを狙っているものも多いです。M1は無料なので、やはりこの現金は利益ソースだとは思いますが、2%以下しか含まないのは良心的と言えるかと思います。Otherに関しては、M1はコモディティ投資を入れています。コモディティはある意味「分散効果」を上げますが、長期パッシブ投資には必須の要素ではありません。Vanguardはこの部分は含んでいません。

これら小さな違いはあるものの、内容的にはほぼ同じ構成です。下図でセグメントごとの構成要素が比較できます。M1のほうはUS株式の比率が少し高く(株式全体の70%がUS株式)、Vanguardのほうは低めです(株式全体の60%がUS株式)。実際の全世界株式市場に占めるUS株式市場の比率は55%程度ですので、Vanguardのほうがより本来の市場占有比率には近いと思います。

M1のほうは19のETFを組み合わせており、Vanguardのほうは4つのファンドのみでの組合せですが、中身を見てみるとM1ポートフォリオに含まれる株式は10,015銘柄、Vanguardは10,486です。債券については、M1は13,649銘柄、Vanguardは16,661銘柄。こちらの記事にも書きましたが、Vanguardの4つの基本ファンドがいかに包括的に世界の銘柄をカバーするかがわかります。

それから大事な手数料ですが、M1の2035 Moderateは0.075%、Vanguard Target Retirement 2035は0.14%です。

M1の0.075%はETFのファンド手数料の合計のみです。M1はポートフォリオのリバランス・リスク調整は無料でやってくれるというのは称賛に値します。Vanguardのほうは構成要素としてのファンド手数料の合計だけだと0.05~0.06%程度かもしれませんが、これにリバランス・リスク調整の運営手数料として上乗せがあり合計0.14%となります。ただし、これはInvestor Share(個人投資シェア)なので、401(k)などの団体契約プランでは、Institutional Shareとしてのトータル0.09%程度になります。

どう使うか

401(k)でVanguardやあるいは他の会社の低手数料ターゲットデイトファンドが提供されている場合は、それを使うのが一番簡単で手間いらずの長期投資になります。401(k)は雇用主が提供しているものに利用が限られますので、M1で運用というわけにはいきません。

401(k)を限度まで積み立て、それでも投資したい額がある場合は次にIRAを考えますが、1) VanguardにIRA口座を開きVanguard Target Retirementで0.14%払って運用するか、2) M1でIRA口座を開きM1ターゲットデイトポートフォリオに0.075%払って運用するかの選択(もちろん他の金融機関というチョイスもありますが、ここでは2社の比較のみとしました)になります。すでにVanguardに口座を持っていたり、投資絶対額がそれほど大きくなければ、多少手数料が高くてもVanguardにまとめてしまうのもよし、あるいは思い切ってM1を始めるのもよしでしょう。

401(k)やIRAなどの税優遇措置がないふつうの口座(課税口座)の場合は、VanguardならDigital Advisorに0.20%払ってターゲットデイトポートフォリオで運用するか、M1で0.075%払ってターゲットポートフォリオで運用するかということになります。この場合は、そこそこ手数料の差が大きいので、M1のほうを選ぶのが理に適うかもしれません。また、細かいリスク調整にそれほど気を使わないのなら、Vanguardで自分でETFを組み合わせて投資していくというオプションもあるでしょう。もちろんこれが一番低手数料です。

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