リタイヤメントの投資や学資の準備などで、ミューチュアル・ファンドに投資をする場合、ブローカーに対してはSales Loadや12b-1 Feeを、またファンド・マネージャーに対してはManagement Feeを、手数料として支払っていることをみてきました。インベストメントでよく使われるミューチュアル・ファンドの手数料について全4回でお届けしています。今回、3回目はファンドに対して支払うFeeについて見てみます。
これらはPurchase Fee、Redemption Fee、Exchange FeeそしてAccount Feeです。
Purchase Fee
シェアを購入するときにかかる手数料で、ファンドに支払われます。購入のときにかかる費用ということで、Front End Sales Loadと混同されることがありますが、この手数料はブローカーへの販売報酬としてではなく、シェアの売り買いをするときに発生するコストをカバーするためファンドに支払われます。
Redemption Fee
シェアを売るときにかかる手数料で、ファンドに支払われます。通常、買ってから2ヶ月とか6ヶ月以内に売ったときにかかるなどというように、期間が決まっていることが多いようです。シェアを売るときにかかる費用ということで、Back End Sales Loadと混同されることがありますが、この手数料はブローカーへの販売報酬としてではなく、シェアの売り買いをするときに発生するコストをカバーするためファンドに支払われます。
Exchange Fee
同じファンド・グループ内で、あるひとつのファンドから他のファンドに資金を移すときにかかる手数料で、ファンドに支払われます。ふつうこのFeeはあまりかかりませんし、かかる場合でも定額のようです。
Account Fee
口座の維持のための手数料で、ファンドに支払われます。銀行のチェッキング口座のように、投資額がある一定水準以下であるとかかるような場合もあります。ふつう定額です。
ファンド投資家のために使われる手数料
これらの手数料はファンドに支払われ、ファンドの投資家のために使われます。ミューチュアル・ファンドは、ファンド・マネージャーが最適な投資媒体を選び適切なアロケーションをつくり、それを複数の投資家が共同で投資しするもので、長期的な投資を念頭においてつくられたものです。ところが、売ったり買ったりというトレードが発生すると、そのトレードに付随した費用(たとえば、売り買いのコミッションや、売値と買値の差、そのトレードによる市場価格へのインパクトなど)が発生します。また、売り買いによってポートフォリオのアロケーションがあるべきアロケーションからずれてしまうこともありますが、その場合はまた元に戻してやる作業も必要になります。
つまり、手数料をとらなければ、実際に売り買いした人ではなくて、そのミューチュアル・ファンドに投資している他の(売り買いしなかった)人たちが、その費用を間接的に負担することになります。この不公平を防ぐために、売り買いをした人自身から当該費用を徴収しようというのが、これらのPurchase、Exchange、およびRedemption Feeです。売り買いにより発生する費用は、(売り買いコミッションが高い)特殊な投資媒体に投資しているファンドや(ひとりの投資家の売り買いの、全体への影響が相対的に大きくなる)規模の小さいファンドのほうが高くつきます。Vanguardのような低コスト趣向の「良心的な」投資会社などだと、特殊ファンドや小さいファンドにはこれらの手数料が設定してありますが、大きなよりオーソドックスなファンドにはこれらの手数料の設定がないようです。
短期的投資を抑制し,長期的投資を促す
これらの手数料は、短期的投資を抑制し長期的投資を促す目的も兼ね備えています。マーケット・タイミング(安いときに買って高いときに売ることで利ザヤを稼ぐ投資法)ではなくて、あくまで最適なポートフォリオを長期間持ち続ける(BUY&HOLD)という基本に忠実であるために、このような手数料は短期的な売り買いに対してペナルティ課すという役割も担っているのです。人はそれぞれ自分にぴったりの投資法を持っていると思いますが、わたし個人的にはBUY&HOLD信奉派ですので、短期的な投資家が少ない長期的に安定したファンドに参加したいと思います。
上のようなふたつのポイントから、これらのPurchase、Exchange、Redemption Feeは、他のSales Loadや12b-1 Feeなどのような手数料にくらべると、私個人的には「消化しやすい」手数料です。もちろん妥当な費用であることを確認するとともに、できるだけこのような手数料が発生しない投資の仕方を探ることも大切ですが、長期的スパンの投資ならもともと売り買いも少ないでしょうから、自ずとこのような手数料は避けられることが多いかと思います。
また、もし頻繁に売り買いがしたいというのであれは、通常のミューチュアル・ファンドではなく、ETF(Exchange-traded Funds)を使うほうがよいでしょう。ETFは、長期的なBUY&HOLDではなく、短期的な売り買いにも対応するためつくられていますので、売り買いの手数料はかかるものの、おそらく通常のミューチュアル・ファンドよりは安いと予想されます。
あくまで投資する目的をよく見極め、通常のミューチュアル・ファンドに投資したほうがよいのか、ETFのほうがいいのか、目的にあった投資方法を選んでいくことをおすすめします。