インベストメントの手数料にお気をつけを!(4)-Trading Costs

インベストメントでよく使われるミューチュアル・ファンドにまつわる手数料について全4回でお届けしてきました、今回は最終回です。ミューチュアル・ファンドの各種ある手数料の中でも、最も認知度が高いのはExpense Ratio(12b-1 FeeやManagement Fee)でしょう。Sales LoadやPurchase Feeなどのファンド費用も調べる気になれば、Prospectus(投資の説明書)やAnnual Report(決算書)などで確認することができます。その一方で、なかなか目で確認することができない「隠れた」ファンド費用が存在することを指摘する専門家が増えています。

 

「隠れた」ファンド費用

よく目に見えない「隠れた」ファンド費用とは、Trading Costs(Transaction Costsとも呼ばれる)です。Trading Costsとは、ファンド・マネージャーがポートフォリオの中の投資媒体を売ったり買ったりすることで発生する売買費用です(個人投資家がファンドを売ったり買ったりすることで発生するPurchase/Redemption/Exchange Feeと混同されませんように)。Trading CostsはExpense Ratioの中には含まれず、またレポートすることが法律で要求されていないので、ほとんどレポートされることもありません。このTrading Costsを考慮にいると、Expense Ratioの2倍も3倍もコスト高になるファンドも存在するだろうとWall Street Journalは指摘しています。

このTrading Costsはファンド運用において大きなウエイトのある費用であるにもかかわらず、広くレポートされていないのは、その計算のしかたや割り出し方に統一された見解がなく、非常に複雑だからです。SEC(アメリカ証券取引委員会)も何年かに一回は、ルールづくりを試みるようですが、いまだレポートの仕方やレポーティングについてしっかりしたルールが出されていません。

幾人かの専門家がTrading Costsがいったいどのくらいなのかついて調査を試みました。ある調査によるとTrading Costsはファンドの年間投資資産に対して0.11%から1.99%の間で平均値は0.66%であるという結果であり、また違う調査では、0.14%から2.96%の間で平均値は1.44%という結果でした。

Trading Costsには、ファンド・マネージャーがポートフォリオの中の投資媒体を売ったり買ったりするので発生する売買コミッションや、売値と買値の差、そのトレードによる市場価格へのインパクトなどによる間接的なコストが含まれます。そして、これはファンド・マネージャーが売り買いをすればするほど嵩んでいきます。

 

Turnover Ratio

ルールがないうえ、計算上の統一した見解がないので、ファンドのTrading Costsははっきりした形で確認することが難しいですが、ひとつのよい代替策は、Turnover Ratioを見ることです。Turnoverとはファンドの中の何パーセントの投資媒体が売られて新しい媒体に置き換えられたかの指標です。Turnover Ratioが50%であれば、その一年の間に半分の投資媒体が売られて新しいものに置き換えられたということを意味します。このTurnover RatioはSECによりレポーティングが義務付けられているので、Prospectus (ファンドについての説明書)の中に載っています。

Turnover Ratioが高ければ高いほど、ファンド・マネージャーが売り買いをたくさんしているということですから、Trading Costsも比例して高くなることが予想されます。Turnover Ratioをチェックして、Turnoverがあまりに高ければ、無駄なTrading Costsがかかってる可能性が高いということです。

格付け会社Morningstarによると、200のUS株ファンドを調べたところ、最も高いTurnover Ratioは504%でCGM Focusファンド、ついで296%のAmerican Century Equity Incomeファンドだったそうです。504%のTurnoverということは、ファンドの中のすべて株が一年のうちに5回売られるということですから、ひとつの株を持っている期間は平均2 ヵ月半。つまり非常に短期投資であり、マーケット・タイミング(安いときに買って高いときに売り利ザヤを稼ぐ)に基づいた投機的なファンドであるということです。

 

Actively Managed Fund 対 Passively Managed Fund

このように売り買いの激しい投機的なファンド(高いTurnover Ratio)をActively Managed Fundとよび、反対に売り買いはポートフォリオの中のアロケーションを維持するためにだけ行うようなファンド(低いTurnover Ratio)をPassively Managed Fundと呼びます。Passively Managed Fundの代表例はIndex Fundで、たとえばS&P Market Index Fundであれば、ファンドのリターンがS&P Market Indexのリターンををフォローするように、ポートフォリオの株構成をつくり維持していくファンドです。

Actively Managed Fundは短期的にはすばらしい投資成果をあげることがあります。Trading Costsが高くても、それに見合うだけのリターンがあるのであれば、それでいいじゃないかと思いますね。ただ、問題はそのリターンが長期間、安定して維持していけるものかということです。これは専門家の中でも意見が分かれるところですが、私個人的には、マーケット・タイミングによる投機的な投資は、短期的には大もうけに繋がることもあるが、その他のときには大損に繋がることもあり、長期的に見た場合は、決してすぐれた投資方法ではないと思います。

Actively Managed FundとPassively Managed Fundとを比較して、いったいどちらのほうが優れたリターンを生むかを探るリサーチはこれまでにも数多くされてきました。そのほとんどが、Actively Managed FundがPassively Managed Fundよりも優れたリターンを生み出すことはほとんどないと結論付けています。代表的なリサーチ結果をご紹介しましょう。

Vanguard社調べ

2007年までの10年間、一般的にActively Managed FundはそのカウンターパートであるIndex Fund(Passively Managed Fund)に比べてリターンが劣っていた。具体的には、US大型株の部類では84%のAcvitively Managed Fundが、US小型株の部類では68%のActively Managed Fundが、相対するIndex Fundよりリターンが劣っていた。ボンド(債権)の部類では結果はさらにひどく、95%のActively Managed Fundが相対するIndex Fundよりリターンが劣っていた。

Barclays Global Investors社調べ

1992年12月31日から2007年12月31日までの期間を対象としたリサーチで、ある年にS&P500 Index Fund(Passively Managed Fund)よりよいリターンを生んだActively Managed Fundのうち、その翌年にも同様にS&P500 Index よりリターンがよかったのは41.6%のみであった。その3年後を調べると、S&P500 Index よりリターンがよかったのは9.7%のみであった。小型株やEmerging Market株についてもこの傾向は同じであった。

Standard & Poor’s社調べ

上図の一番左がActively Managed Fundで、その右がカウンターパートのIndex Fund(Passively Managed Fund)です。数字は、Index Fundよりリターンが悪かったActively Managed Fundのパーセンテージ。1年、2年、3年と期間を長くしていくにつれ、パーセンテージが上がっていきます。つまり、3年間でみれば、60%、70%のActively Managed FundがIndex Fundよりリターンが悪いと言う結果が見て取れます。

これらの結果はまさに、Actively Managed Fundのマーケット・タイミングに基づく投機的な投資で、長期間にわたり安定的な高リターンを得ることが難しいことと、高いTurnover によるTrading Costsをカバーして余るだけの高リターンを得ることが難しいことを物語っています。これを踏まえると、リタイヤメント準備や学資準備などの長期的な投資であれば、できるだけTurnoverが少なくTrading Costsが低いファンドを選んだほうがよいかと思われます。

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