医療保険改革(オバマケア)で何がどうなる?

2010年から2020年にかけて段階的に施行されるThe Affordable Care Act。正式には、The Patient Protection and Affordable Care Actという名前で、俗にはObamacareとも呼ばれます。2013年10月1日からは、各個人は各州が提供するHealth Insurance Exchangesを通し健康保険を購入することができるようになり、世帯収入によっては保険購入に対しての助成金を受けることができるようにもなりました。今日は、個人にとってそれがどのような影響をもたらすのか簡単に見ていきたいと思います。

 

この流れでより大きな影響を受けるのは、現在健康保険を持っていない人、Self-employedの人やスモールビジネスを持っている人、あるいは雇用主を通して健康保険に加入することができない人です。雇用主を通して健康保険に入っている人に対してはそれほど大きな影響はないと思われますが、概要は把握しておくとよいかもしれませんね。

 

みんなの保険

これから契約される新しい保険プログラムと2010年以降に開始された保険プログラムでは、既往症(preexisting conditions)があるため健康保険に加入できないということがなくなります。病気になったからといって、契約を中止されることもなくなります。また、一昔までよくあった1年間の補償額の限定額や、ライフタイムでの補償額の限定額を設定してはならないということになりました。健康状態や性別によって保険料に差が出るということもなくなります。26歳までの子は親の健康保険に加入することができるようになります。そして、50人以上のフルタイムあるいはフルタイム相当の雇用者を抱える企業は健康保険を提供しなければならなくなります。この制度はまた、すべてのプログラムで基本的な健康保険の補償項目10項目を提供しなければならないとしています。10項目とは:

  • Ambulatory patient services(Walk-in、Outpatientなど外来サービス)
  • Emergency services(緊急時サービス)
  • Hospitalization(入院)
  • Maternity/newborn care(マタニティ、新生児ケア)
  • Mental health and substance use disorder services (精神科、薬物乱用ケアなど)
  • Prescription drugs(処方箋)
  • Rehab and habilitative services/devices(リハビリ、Occupational/Physical Therapy, Language/Speech Therapy)
  • Lab services(ラボテスト、検査)
  • Preventive/wellness services and chronic disease management(予防、健康診断、慢性病対処)
  • Pediatric services (小児科ケア)

 

Health Insurance Exchangesとは

Health Insurance Marketplaceとも呼ばれますが、これは州単位で提供される健康保険購入サイトで、さまざまな保険プログラムを比較したり選択したりできるものです。州によって独自のシステムを運営しているところもあれば、州が連邦政府とパートナーを組むことで連邦政府のシステムを使っているところもあります。

Exchangeで提供される健康保険プログラムは、健康保険が医療費の何パーセントをカバーするかによって、4段階に分かれます。

  • Bronze : 60%をカバー
  • Silver  : 70%をカバー
  • Gold   : 80%をカバー
  • Platinum : 90%をカバー

このパーセンテージはあくまで目安です。

 

もちろん、どの段階を選ぶかによって保険料に差が出ます。また、同じようなカバーの保険であっても、住む州によって保険料に差が出ます。その上、同じ州の中であっても、住む市が違うと保険料に差が出ることがあるそうです。この保険料の差は小さくないようで、かなりのギャップが生まれることが予想されています。また、保険料の差のみならず、州によって保険が適用される症状や病状に差がでることも予想されます。たとえば、自閉症の補償が、ある州では手厚く、ある州では希薄であるというような差も生まれると予想され、これらの地域差により引越しを考える人々も生まれるであろうと予測している専門家もいます。

 

罰金って?

誰でも健康保険が買いやすくなる一方で、一部の例外を除いて健康保険を持っていないと罰金を支払うことになります。罰金はインカムタックスに便乗する形で徴収されます。また、罰金は今後毎年上がっていきます。2014年の場合ですと、1) 大人一人あたり$95(18歳以下の子どもは$47.50、一家族につき最高$285)か、2) 個人で$10,000/家族で$20,000を超える世帯収入の1%のうちどちらか大きい額のほうとなっています。世帯収入が$50,000の家族であれば、$30,000の1%で$300の罰金となります。この$95/1%というコンビネーションが、2016年には$325/2%に、2017年には$695/2.5%と上がります。それ以降は$695の限度額がインフレ率とともに調整されます。

 

いつでも加入できるわけではありません

みんな入れる保険ができたから、必要なときになったら入ろう・・・というのは失敗のモトのようです。オープンエンロールメント期間というのがあって、初年度の今回は2013年10月1日から2014年3月31日の間に加入申し込みをせねばなりません。来期以降は、毎年10月1日から12月7日がオープンエンロールメントとなるそうです。このオープンエンロールメント期間に保険を購入しないと、一年間後の次のオープンエンロールメントまで待たないと保険の購入ができません(スペシャルエンロールメントという特例を除いて)。

 

知っておきたい助成金

場合によって健康保険購入のために助成金がもらえることがあります。助成金には2種類あって、ひとつは保険料に対する助成金、もうひとつは医療費に対する助成金です。

保険料に対する助成金のほうは、連邦政府の定める貧困レベルの400%以下の所得である場合に得ることができます。貧困レベルなどと聞くととても貧しくなくては助成金をもらえないかと思いがちですが、ミソは貧困レベルの400%つまり4倍が限度となっていること。家族の人数も関与しますので、大きな家族であれば世帯収入がある程度あっても助成金を受けられる可能性があります。貧困レベルは年々修正されますが、2013年の場合であれば、貧困レベルの4倍だと、個人なら$45,960、夫婦なら$62,040、4人家族なら$94,200というレベルになります。

こちらのカリキュレータで助成金が受けられるかどうか、受けられるならどのくらいかを計算することができます。たとえば40歳で子どもが二人いる夫婦で世帯収入が$85,000だった場合(ノンスモーカー)はどうでしょう。結果は下表のとおり。

affordable care act subsidy

この家族の世帯収入は貧困レベルの361%であり、Silverレベルの保険を購入した場合、年間の保険料は$9,397になります。受けられる助成金は年間で$1,322であり、差し引いて自己負担の保険料は$8,075となります。Silverレベルでなくほかのレベルの保険を購入してもいいですが、助成金は一定です。

なお、この助成金は、Health Insurance Exchangeを通して保険を購入した場合にのみ得られます。

 

一方、医療費に対する助成金のほうは、DeductibleやCo-insurance、Annual Maximum Out-of-pocket Costsなどの自己負担額を減らすわけですが、助成金を受けるためには収入が先の貧困レベルの250%以下である必要があります。個人なら$28,725、夫婦なら$38,775 、4人家族なら$58,875 というレベルになります。医療費に対する助成金を得るためには、Silverレベルの保険である必要があります。
雇用主の保険があるなら

雇用主の提供する健康保険を利用できる場合はどうなるのでしょう?その場合もHealth Insurance Exchangeで健康保険に加入したいのなら、そうすることも可能です。ただし、雇用主の提供する健康保険の場合は、雇用主がその一部を負担してくれていますが、Exchangeで保険を購入した場合は雇用主負担は受けられません。

ではExchangeで購入した場合、助成金は受けられるのかといいますと、それは雇用主の提供する健康保険の内容によって答が変わってきます。たとえ前述のような収入上の助成金受け取り資格はクリアしていても、雇用主の提供する保険がaffordableであり、またminimum valueを提供していると認められた場合には、助成金を受けられません。雇用主の提供する保険がaffordableか、minimum valueを提供しているかは、雇用主の人事部に問い合わせれば教えてくれます。affordableか、minimum valueを提供しているかは、条件がそれほど厳しくないので相当数の保険がこれをクリアすると考えられています。

ネガティブPRも多いAffordable Care Actですが、消費者ひとりひとりの権利を守り、健康保険の購入する者としての権利や保護がたくさん盛り込まれているのも真実ですから、把握すべきところは把握し、よりよい選択ができるよう努めたいものです。

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9 comments

  1. ご無沙汰です。医療保険の記事なので関連で質問させてください。私のブログで書いた友達のことをつれあいに話していたら、アメリカだったら彼女はとっくに破産してるよというんです。以下質問です:

    アメリカで雇用主が提供する健保に入っている時にガンになって、闘病のため辞職したら、その後の医療費は自己負担になるわけですか。雇用されていた時の健保ではカバーされないのですか。
    辞職後、自分で保険を買おうにも、すでにガンの診断が出ているので、既往症となりますよね。オバマケアでは既往症でも断られることはなくなったわけでしょうが、既往症のあるなしで保険料が大幅に異なるでしょうか。
    それに、辞職の時期がオープンエンロールメントを外れていたら、それまでの医療費はは自己負担ということでしょうね。

    日本では彼女の夫は国保に変更したので、高額医療限度額の8万円弱(1ヶ月)ですんでいます。

    1. ご無沙汰です!雇用を離れてから一定期間は雇用主の提供している保険に入り続けることができます(Continuation of Health Coverage — COBRAといいます)が、ただ雇用主負担分がなくなり、全額自分負担になるのでかなり高額保険料になります。COBRAが切れたら自分で保険に入ることになります。これまでは、既往症をはじめハイ・ヘルス・リスクと思われる人専用の保険があった(当然保険料は高い)のが、オバマケアで廃止され、普通の保険に入れるようになったのに、なんと普通の保険のほうが保険料が高かった・・というような記事も読みました。実際、医療費負担による自己破産はとっても多いです(クレジットカードやモーゲージが原因の破産を抜いて医療費原因はNo.1だと思います)。恐ろしい国です。

  2. 私がその人だったら、オバマケアの中から、一番いいPPO保険を選びます。オープンエンロールメント期間でなければ、がんだから今入れろと交渉します。Individualのプランなら、保険料は月$300くらいじゃないですかね。それで年間のMax Out of Pocketが、$2000-$3000くらいだとすると、せいぜい月$500-600程度になります。
    安くはないですが、そんなに悪くないと思います。仕事がなければ、貧困扱いでもっと保険料下がるでしょうし。
    問題は家族を抱えている場合ですよね。。。高すぎ!家族用!
    だからうちは、万が一に備えて、HSAに貯めているんです。

    1. 初めまして。聞ける人がおらず、その上英語も不十分なので、質問をさせて下さい。
      私共には今収入がありません。子供達は、無収入でも入れる健康保険に入っています。
      どう手続きを取ったらいいのか全く分かりません。何もかも無知で申し訳ありません。
      主人はおらず、知り合いもいないので、相談できる人がいません。無収入者は、どう手続きを取ればよいでしょうか?どうかよろしくお願い致します。

      1. Minminさま、オバマケアでペナルティがあるから保険に入るというよりも、ご自身とお子さんのために健康保険にはなるべく早く入ったほうがいいですね。お子さんが入っていらっしゃるのはMedi-Calでしょうか?ご連絡いただいたネットワークアドレスが南カリフォルニアのもののようでしたので、勝手にカリフォルニアの方という前提で書かせていただきます。現在収入がおありにならないということでしたら、MinminさんもMedi-Calに入れるかもしれません。子どもと大人では資格設定が違うようですが、収入がなく資産も限られていれば入れる可能性があります(家や車一台などは持っていてもいいですが、預金や投資などがあるとだめです)。資格があるかどうかは、カウンティのオフィスに問い合わせます。こちらからご自分のカウンティのオフィスを調べ、連絡をとってみてください。Medi-Calの資格がないとなれば、普通の保険に入ることになりますが、その場合も収入がないのであれば、政府から助成金が出ます。カリフォルニア州のExchangeサイト(こちら)で自分の情報を入れて、どのような保険があるのか、いくらくらいで加入できるのか見てみてください。オンラインで保険を選び加入手続きもすることができます。月々収める保険料は、助成金分がすでに引かれた金額になります。2014年の収入を現時点で見積もって入力します(ゼロならゼロでOK)。ただし、その後仕事が見つかり収入ができた場合は、タックスリターンをするときに、追加保険料が発生して調整されるかもしれません。もし必要であれば、こちらのコンタクトフォームからご連絡ください。もう少し詳しくご相談にのれるかもしれません。

  3. 初めまして。オバマケアの事を知り、今更ながら焦っております。誰も聞ける人が居ないので助けて下さい。私共は、今収入がありません。無収入の人の健康保険の事が知りたいです。子供達は、無収入なのでそれでも入れる健康保険を持っています。そこへ私の名前も足す事は可能でしょうか?英語も不十分なので、どう手続きを取ったら良いのか全くわかりません。どうか助けて下さい。宜しくお願いいたします。

  4. こんにちは、早速質問です。小生カリフォルニア州で家内と二人暮らし。年金生活者です。
    アメリカでの収入は 夫婦二人2015年度約 10,600ドル.これでmedical service qualify されますか? 2年前から Irsに確定申告してます。coveredCAでのhealth plan silver or gold classみとめられますか?可能なら助成金申請したく。これら認定に必要書類提出要求されますか?宜しくお願いします。

    1. monteverdeさま、コメントいただいていたのに、お返事が遅れまして大変失礼しました。コメントをいただいた旨の通知がうまく届いておりませんでした。年収だけの情報によれば、助成金が受けられると思います。こちらのサイトがCovered CAの見積もり画面です。ここに年収などの情報を入れてサーチすると、どのくらいの助成金が受けられて、どのくらいの金額で各種プランに加入できるか出てきます。SilverやGoldなどはそれぞれ値段が違いますが、助成金は一定で、高いプランだと自己負担が多くなり、安いプランだと自己負担が少なくなるというしくみです。必要書類はありません。ただ、タックスリターンをした時点で、収入がチェックされ、申請した収入より多かったりすると、タックスリータン時に余分にもらった助成金を払い戻す形になります。

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