みなさんはどんな口座でリタイヤメント資金準備をしていらっしゃいますか?何回かキャリアチェンジをしたり、途中で起業したり・・とということも普通ですから、401(k)をいくつか持っている方、いくつかの種類のIRAを持っていらっしゃる方、加えて課税口座で運用をされている方など、複数の口座をお持ちの方も多いでしょう。口座数はできれば少ないに越したことはありません。送られてくる文書も少なくなりますし、アロケーションなどの状態をチェックする労力も少なくなります。今回は複数にばらけている口座を整理する方法について見てみます。
まとめた方が管理がラク
口座数は少ないほうが管理が楽なのは確かです。これは積み立て時にもいえることですが、リタイヤして引き出すフェーズになると、よけいにそれが顕著になります。RMD(Required Minimum Distribution)をどうやって満たすか、どこから生活費を引き出すかなどのプラニングが口座がまとまっているほうが正確にできますし、労力がかかりません。
また、たとえば複数の401(k)を持っている場合など、それらが条件的に全く同一ということはほぼありえません。どちらかの方が提供されているファンドがよいとか、手数料的に優れているという差が存在します。ですので、思い切って最善の口座にまとめることで、複数の口座の整理をしてみるということは、積み立て時でも有意義なことですし、ましてやリタイヤメントを前にしているのならなおさらそうです。
まとめられる口座とそうでない口座
ただ、どんな投資口座もひとつにまとめられるかというとそうではありません。401(k)やIRAなどは税優遇措置が認められている口座で、それぞれの法律上の性質が異なりますから、それを無視してお金をまとめることはできないわけです。
まずはご自分の持っていらっしゃる投資口座のリストをつくってみましょう。
- 金融機関名
- 口座の法的種類(下のカテゴリー名の部分)
- ファンド名やその他投資媒体と金額
を書き出してみます。次にどれとどれがまとめられるのかを下の表で確認してください。
カテゴリー名の3つの種類がありますが、同じカテゴリーの中ならば口座をまとめることができます。カテゴリーの枠を超えてまとめることはできません。
カテゴリー名 | 口座種類 | RMD | 運用中の課税 | 引き出し時の課税 |
税遅延口座Tax-Deferred Account | 401(k)、403(b)、457(b)、Traditional IRA、SEP IRA、Simple IRA | あり | なし
|
全額所得税として課税 |
非課税口座Tax-Free Account | Roth IRA、Roth 401 | なし
|
なし(積み立て時に所得税として課税) | |
課税口座Taxable Account | 課税対象の投資口座 | 運用益に都度課税 | 売却益はキャピタルゲイン税で課税 |
一つ目のカテゴリーである税遅延口座が、一番バリエーションがあり持っていらっしゃる方が多いかと思います。これらは、ひとつにまとめられる可能性が非常に高いです。高いというのは、IRS(Internal Revenue Service)はひとつにまとめてもよいというルールを出していますが、まとめるためのロールオーバーを受け付けるかどうかは受け入れる側が決めることだからです。たとえば、古い401(k)のお金を、現在働いている会社の新しい401(k)にロールオーバーして一つにまとめる場合、新しい会社の401(k)プログラムがそれを許可していれば可能ですし、許可していなければいくらIRSがしてもいいですよ・・といっていても、ロールオーバーはできません。ロールオーバーを受け付けるケースは 多いかと思いますが、確認が必要です。
401(k)同士だけでなく、同じカテゴリーに属する403(b)や457、Traditional IRAなどもロールオーバーでまとめることができます。ただなんでもとにかく一つにまとめるのが良いかというと、そうでもないこともあります。辞めた会社の401(k)が非常に低手数料のよいファンドを提供している・・などの場合は、敢えてそのまま残したほうがよいかもしれません。まとめるべきか、敢えて古い口座に残すべきかについては、下記の記事を参考にしてみてください。
転職したらどうする - 401(k)などのリタイヤメントアカウント
また、新しい401(k)には入れたくないという場合は、Rollover IRAへロールオーバーすることもできます。もうすでにリタイヤをされているという場合なら、税遅延口座をすべてRollover IRAにひとまとめにするということも可能です。上の表の税遅延口座にリストされている口座はすべて、Rollover IRAに移してひとまとめにできます。
Rollover IRAを使うなら
ひとつにまとめるためのRollover IRAを使う場合の例を考えてみましょう。ロールオーバーをする際には、まず、最終的に口座をまとめたい先の金融機関を選択します。これまで使っている金融機関をお考えであれば、その機関に低手数料の投資ファンドが提供されていることを確認します。とくに特定の金融機関にこだわりがなければ、低手数料のVanguard社などがよいでしょう。そして、選択した金融機関にRollover IRA口座を開きます。
あとはひとつずつ現在持っている税遅延口座の金融機関に連絡をとり、ロールオーバーしたい旨を告げ、必要な手続きをします。必要な手続きは金融機関によって多少の差がありますので、それぞれの指示に従います。まれに、口座を引き出すとき(ロールオーバーするとき)に手数料をとったりする金融機関もありますので、よく確認します。
ロールオーバーには、金融機関から金融機関にお金が直接送られるDirect Rolloverと、いったん自分が小切手を受取り、自分で新しい金融機関にお金をデボジットする(60日以内)Indirect Rolloverがありますが、常にDirect Rolloverを選ぶほうが簡単ですし安全(60日以上かかってしまってペナルティが発生)です。
持っているファンドはどうすればいい?
現在持っている投資ファンドが、新しい金融機関を通しても購入できるものであれば、投資ファンドは現金化せず、そのまま移行できる場合もあります。反対に、現在持っている投資ファンドが、新しい金融機関で買えないものであれば、一度現金化し、現金で送金したうえで、新しい金融機関で新しい投資ファンドを購入することになります。
ひとつに口座をまとめたら、最終的には自分のリスク要件にあった最適のアロケーションを組みなおすことになりますが、今持っている投資ファンドがその要件に合致したものであるかをチェックする必要があります。今持っているファンドを、今後も新しいアロケーションの中で使い続けたいのなら、そのままファンドとして移行してもよいですが、今後はもっと低手数料のよいファンドでまとめたいという場合は、不必要な投資ファンドは現金化する(売る)必要があります。
なお、現金化しても、税遅延口座の中ですので(Direct Rolloverを選択のこと)、キャピタルゲイン税が発生したりすることはありません。また、高手数料のファンドを売り、似たようなものに投資している低手数料のファンドを買う場合(たとえばA社のS&P500インデックスファンドをB社のS&P500インデックスファンドで置き換えるような場合)、投資内容としては同等物で置き換えるわけで、その時の市場価格が高かろうが安かろうが、あまり神経を使う必要はありません。同等物なので投資内容は変わらず、高く売って高く買う、安く売って安く買うかのどちらかで、損得は相殺ゼロになるイメージだからです。ただ、心配が残る場合には専門家にお尋ねください。
まとめられるかどうかの表
なお、どのタイプの口座がどのタイプの口座のロールオーバーできるかをまとめたものが下の表です。下の表でQualified Planと書いてあるのは、俗に401(k)のことです。Designated Roth Accountsとあるのは、Roth 401(k)、Roth 403(b)、Roth 457などのことです。また、下記では401(k)などの税遅延口座からRoth IRAなどへのロールオーバーも可能と表示されていますが、注意書きがあるとおり、所得税を一括で納める必要があります。Yesに注意書きが付帯されているときには、それもよくお読みください。
ひとつの金融機関のラクさ
また、同様に、非課税口座(積み立て時に課税だが、それ以降非課税)も非課税口座同士であれば、ひとつにまとめることができます。また課税口座についても同様です。
税遅延口座、非課税口座、課税口座の3カテゴリーはカテゴリーをまたいでひとつにまとめることはできませんが、それでも同じ金融機関で維持すれば、管理は各段にしやすくなります。
まずは全体が見渡せるようになって、アロケーションがはっきりと把握できるようになります。複数の金融機関にまたがって口座を持っていると、なかなか全体的なアロケーションが見渡せませんし、アロケーション調整も一筋縄ではいきません。全体像の一括把握は力強いベネフィットです。
また、税遅延口座などはRMDがありますが、これも一つの口座で計算し、一つの口座から引き出せれば、無駄で複雑な個別計算や、どの口座からいくら出すかの工面を排除し、マネージしやすくなります。
リタイヤ後の生活費の引き出しも、税遅延・非課税・課税口座のどれからするかという選択と、具体的のどの投資ファンドを現金化するかという選択は残りますが、ひとつの金融機関で一括管理できれば、各段にマネージがしやすくなります。ファイナンシャルプラナーなどにヘルプを頼む場合も、必要時間が少なくて済みます。
いつも役立つ情報、ありがとうございます!
私もFidelity(401K)とVangurd(Roth/Rollover IRA)の両方に口座があります。
Fidelity(401K)でVangurdのTarget fundが提供されているので、401KはTarget fundにいれ、
VanguardでもTarget fundのcomponentになっているIndex Fundに入れて全部VangurdのFundで全体で最適アロケーションになるようにしています。
しかしFidelityのFSTMXなどは、VTSMXよりERも安し、いっそFidelityに個人口座を開いてIRAを移してまとめようか思案中です。
全部Vanguardにした方が、ダブりがなくていいかと思ったんですが、違うFund Familyのデメリットは大した問題ではないでしょうか?
悩ましところですね!
たとえばFSTMXとVTSMXなどは、国や大中小株の割合はほぼ等しい(ただし、前者は3,350株、後者は3,600株を含むので、分散といういう意味では後者が勝りますが、ただパフォーマンスに絶大な違いがあるかといえば、そうでもないと思います)ので、同等とみなして2社混ぜても大きな問題にはならないと思います。(ただ、Vanguardをかばうわけではないですが、VTSMXも$10,000ラインを超えてAdmiralにすれば0.04%まで下がりますが。)。
なので、りんごさんの場合は、FidelityとVanguardを混ぜても大きな問題はないし、Fidelityに一本化してしまっても大きな問題もないように思います。
そうでした、Admiralと比べるべきでした。そうなるとVTSAXが 0.04%、FSTMXが 0.015%、虫眼鏡レベルの違いでしょうか。全Fundに渡ってVangurdは低コストですが、FidelityもIndexなどはかなりコストを落としてきているものもあるみたいなので、選べばVaungurdより安く運用できるかなと思っています。
また、Fidelityは銀行機能もあるのが魅力です。いっそ銀行もFidelity一本にまとめようかなと考えてみたりしています。
そうですね。Fidelityは店舗があるので、行って話ができるというのも魅力ですね。
口座管理に関連する質問ですが、personal capitalについてどう思われますか? 以前Mintを試したことがあるのですが、家計簿的な感じで自分には合いませんでした。現時点では貯蓄、投資口座を一括して管理できていません。personal capitalのようなツールに頼るかエクセルなどでまとめるべきか、どちらがお勧めでしょうか?
私はPersonal Capitalを実際に使ったことがないので確かなことは言えませんが、結局は自分が何を望むかにかかってくると思います。私個人としては、長期インデックス投資に徹するなら継続的にアドバイザーの助言が必要なことはない(時折必要なだけ)ので、Wrap Fee(Asset Management Fee)を払い続ける価値はないかなと思います。確かに金融機関を超えて一括管理できたりすると便利ではありますが。。