プロパティ・タックスの格差 - どうしてこうなるの?

最近よく見かけるのが「inequality」という言葉。直訳すれば、「不均衡」とか「不平等」とかになるのだけど、日本的にいえば「格差」というところでしょうか。スーパーリッチはどんどんリッチになり、ミドルクラスの生活は苦しくなるばかり。。。今日取り上げる「格差」は住宅にかかるプロパティー・タックス(固定資産税)の「格差」です。大きくて豪華な家に住んでいるほうが、小さくてフツウの家に住んでいるよりタックスが高いはずだって?いえいえ、そうは問屋が卸さないのがここアメリカ合衆国のカリフォルニア州。。。

下のふたつは近くで売りに出ている家です。左の家は$1.25M近くで売りに出ている大きな高い家。eppraisal.comによれば予想市場価格$1.17M。右の家はそれよりずっと質素な家。売値が$0.5M、予想市場価格は$0.6M。いずれにせよ、価値だけ比べれば左の家は右の家の2倍かそれ以上。ところが、プロパティー・タックスを比べると、なんと左の大きい家のほうは、右の小さな家の40%にも満たない額。こんなこと許せる?

プロパティ・タックスは、土地と家の評価額(assessed value)にプロパティ・タックス率を掛け合わせて割り出します。プロパティ・タックス率は州によって異なり、大体1%あたりから高いと2%超までの間です。一方評価額のほうは、郡の評価担当(tax assessor)が年々(州によっては数年に1回)割り出します。その決め方は州ごとの法にのっとるところですが、市場価格とまったく同じということはないにしろ、通常、市場価格を何らかの目安として使うことは多いと思われます。つまり市場価格と評価額は異なったとしても、市場価格が上がれば評価額も上がるというように通常は連動して動くことが予想されるわけです。

ところが、カリフォルニアには、Proposition 13という法律があって、リセールされない限り、プロパティ・タックスの増加は(市場価格の動きに関係なく)年に2%までと上限が定められています。ただし、リセールされてオーナーが変わったときは、その売値(つまり市場価格)によって評価額がリセットされ、その1%が新しいプロパティー・タックスになります。それ以降またリセールされるまでの間は年に2%以上増加することはありません。このため、市場価格と評価額の大きな乖離が生じ、長期間存在し続けるということです。

たとえば、1980年に$150,000で買った家のプロパティー・タックスがその1%の$1,500だったとして、この家を2012年まで持ち続けたとすると、年に最高の2%ずつタックスが上昇し続けたとしても、2012年のタックスは$2,827なり。ちなみに、この額は市場価格とはかけ離れた、夢のように低い評価額に基づくタックスです。1980年から2012年までの不動産価格の上昇・年率はわかりませんが、おおよそ5%くらいだったと想定しましょうか。そうすると1980年に$150,000だった不動産は2012年には$714,741となります。2012年にこの家がこの値段でリセールされると、評価額がこの売値近くでリセットされ、新しいオーナーはその1%、約$7,147のプロパティ・タックスを収めることになります。まるで同じ家でもオーナーが変わっただけでいきなりプロパティ・タックスは、$2,827が$7,147、なんと2.5倍に月額にして、$360の差。これって大きくない?

 

長い間リセールされたなかった例が、この左側の家のケースでしょう。オンライン情報にはいつこの家が最後にリセールされたか記録が出てきませんから(ここ20年くらいのリセールなら出てくることが多い)、相当何年も前に買った(あるいは建てた)のでしょう。何十年もこの家を持ち続けたオーナーは、家の価値が随分と上がったにもかかわらず、プロパティ・タックスは$2,596。きっとかなり高いはずの土地も、評価額はたったの$62,177ですし。なんという現実離れした数字!

反対に右側の家は、2006年に$680,000でリセールされており、このときに評価額とプロパティ・タックスがポ~ンと跳ね上がったため、現在のプロパティ・タックスは$6,991なわけです。土地の評価額は、$436,800ですもんね。この土地、市場価格という意味では、左の家の土地よりずっと安いはずなんですよ。でも評価額は左の土地の7倍!

う~ん・・・とうなってしまうのは私だけでしょうか。地域の学校や図書館やポリスやその他公共サービスの財源となる、このプロパティ・タックス。みんなが公平に負担すべきと思うけど、このような不均衡があっては、大きな負担を抱え込むのは不動産が上昇してから家を買う人たち。15年以上前に買った人 対 高くなってから買った人 のプロパティ・タックス格差は厳しいものがあります。

 

ところがどっこい、ここで話が終わらない。この「リセールがされない限り、プロパティ・タックスは劇的に上がらない」という法律をくぐりぬけて一番得している人たちは、なんと商用不動産オーナー、つまりビジネスです。そもそも商用不動産は住宅よりリセールされる頻度が低く、市場価格に近い評価額にリセットされることが少ないのです。現市場価格は何ビリオンもするようなビルでも、夢のように低いプロパティ・タックスを収めているというのです。そのうえ、商用の場合「リセール」という定義もビジネスに適用するには抜け穴があり、評価額が高くリセットされることを阻止する方法がいろいろとあるのだそうです。

たくさんプロパティ・タックスを払える強力ビジネスにはぜひたくさん払ってもらいたいのに、結果的にはそのようなビジネスはすずめの涙しか負担していないという現状。たとえば、シリコン・バレーのあるサンタクララ郡では、1978年には郡のプロパティ・タックスの財源内訳が、住宅不動産オーナーから50%と商用不動産オーナーから50%という負担割合だったのに、現在では前者65%、後者35%と負担は住宅オーナーに重くなっています。シリコン・バレーといえば、どう見てもビジネスは大きく成長したところ。それなのにどうして?

ロサンゼルス郡でも、1975年にはこの内訳が住宅不動産オーナーが50%強、残りは商用不動産オーナーによる負担だったのが、現在では70%が住宅不動産オーナーによる負担となっています。またコントラコスタ郡では1970年に、住宅不動産オーナー負担が48%、商用不動産オーナー負担が52%だったのが、現在では前者73%、後者27%だそうです。

 

「予算難、予算難」といって、先生削ったり、学校のプログラム削ったりしているっくせに、なんでお金のあるビジネスからもっとプロパティ・タックスとらないの?…と怒るのは私だけじゃないでしょう?ここでも、「スーパーリッチはますますスーパーリッチに!」の法則が適用されているのでしょうか。

ビジネス・オーナーより住宅オーナーが重荷を背負わされ、さらにその住宅オーナーの中でもここ最近住宅を購入する人がより重い重荷を背負わされるという構図。。。「これが格差でなくてなんだ~」と叫びつつ、家を買うべきか、高いレントを払い続けるべきか悩める我が家でございます。。。トホホ

4 comments

  1. 初めまして。為になる情報ありがとうございます。
    この記事に辿り着きまして質問なのですが、我が家は10年以上前に前のオーナーから家をローンで購入しました。年に一度プロパティータックスの請求がくるのですが、基本その年の家の価値を元に請求されています。ですので、購入後は家の価値が上がり、多い時で30%も前月比より高く支払っていました。プロポジション13によると、購入してから(ローンですが)CAでは最高2%以上はあげる事が出来ない。私の理解が正しければですが、請求自体が間違っていたということになるのでしょうか。

  2. 度々失礼します。もう一つ言い忘れていました。購入してから数年後にリファイナンスしました。ですので、その場合ですと、リファイナンスした時点でリセットされ、そこからプロポジション13の対象になるという理解であっていますでしょうか。もしくは、同じオーナーなので、購入したオリジナルの時点から対象になりますか。

    1. その点私は専門家ではありませんが、リファイナンスは関係ないと思います。リセールのみがリセットすると思います。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください