「将来はどうするの?」、「ずっとこっちにいるの?」なんて会話をよく耳にする歳になりました。アメリカにずっといるつもりなのか、それとも将来は日本に帰るのかという問題です。若いうちは自由の国アメリカで夢を追い、子どもができると今後は言語の問題で簡単には日本に帰れない、でも老後はいったいどうするのか・・・歳をとると、あとから習得した第二言語はだんだん失っていくなんてことも聞きますし、老後はやっぱりこたつにみかんの生活がしたい・・・(ちょっと、ばばくさい?)それに、現実的なことをいうと老後のアメリカの医療費がいったいどんなだか不安もあるし、そもそも老後資金に$1ミリオンあっても足りないなんて話も聞くと、いったいどうすればいいの?と頭を抱えたくもなりますね。
こう考えると、リタイヤメントしたらどこに住むかとお金の問題って密接に関係しているのがわかります。どこに住むかというのは単に日本とかアメリカとかの「場所」のことだけを指すのではなく、住まいの器としての「家」も含みます。そもそも、「家」を持っている場合、それは多くの家庭において一番大きい、あるいは一番とはいわなくても一、二を競う資産であることが多いでしょう。資産というのは、「将来、お金をもらたしてくれるもの、あるいはその可能性のあるもの」のことをいいます。「将来、お金が出ていくもの」である負債の反対の言葉です。
日本人は、家を一生ものと考える傾向が強く、家は買ったらだた住むだけのものと捉えることが多いですが、アメリカの場合はよくみなさん引っ越しますよね。モビリティ(人の流動性)が高いのです。家は売ればもちろんお金が入ってくる(お金のインフローができる)し、また売らなくても家を担保にお金を借りることができる、つまり住みながらにしてお金のインフローを作り出すこともできるのです。
リタイヤメントの資金のことと、どこに住むか、家はどうするかという問題は切り離しては考えられないのがわかりますね。もちろん、IRAや401(k)などの資産が十分あるので、家を当てにしたお金のインフローはまるで考えないで老後を過ごせます・・というのが理想かもしれません。でも、そうでない場合は、家も考慮に入れてリタイヤメントを考えざるを得ない場合もあるでしょう。
リバースモーゲージ
リバースモーゲージとは、自宅のエクイティ(市場価格からモーゲージローンの負債を引いた額)を元に、月々お金を借りるしくみです。つまり、自宅を担保にお金を借りるローンです。これは62歳以上の方を対象にしたプログラムですが、通常借りたお金は死亡したときまで返す必要がないので、存命中は支払いを気にしないで借り続けられるというものです。住みながらにして、家を担保にお金のインフローを生み出すことができるしくみです。これは、基本的に引っ越さないでそのまま住み続ける派の資金策ですが、リバースモーゲージのPurchase Programを使えば引っ越しと資金策が一度にできます。
利点
- 受け取り金は収入ではないので非課税です。
- 自宅のタイトル(権利)はあくまで、自分たちのものです。
- モーゲージ残高が残っている家の場合は、モーゲージの支払いがなくなります。
- 一時金や月々の定額受け取り、都度の引き出しなどフレキシブルな受け取り方が選べます。
- 家の価値を超えて、返済が必要になることがありません。
- 反対に、家を売った後、ローンを返済して余剰金が残れば、それは相続人(あるいは本人が生存しているなら本人)のものになります。
欠点
- オリジネーション手数料やクロージング・コスト、月々のサービス手数料、モーゲージ保険料などでコストが嵩みます。
- 配偶者のどちらも死亡した時点、家を売った時点、あるいはもう家に住まなくなった時点で、ローン残高が一括返済されなくてはなりません。
- 必要なとき頼りにできるエクイティが、なくなってしまう可能性があります。
- 受取額は、Medicaid資格に影響を与える可能性があります
- 家の権利は持ち続けるので、プロパティ・タックス、家の保険、維持費などは払い続けねばなりません。
- 家族に家を残せません。
- 固定金利はLump sum(一時金)プログラムだけの適用となります。
- 通常のモーゲージの金利は税控除の対象となりますが(Itemized Deductionを選んだ場合)、リバースモーゲージの金利は発生している間(ローン返済をするまで)は税控除することができません。
リバースモーゲージは比較的大きな額を長期間借りることができる仕組みですが、これに対し、比較的小さな額を一時的に借りたい場合は、コストが高いリバースモーゲージは向きません。月々の生活は問題なくやっていけるが、家の修理や改装など、一時的にまとまったお金が必要という場合には、リファイナンスやエクイティー・ローンなどが使われます。これは、リバースモーゲージと同様、家のエクイティを元にお金を工面する方法ですが、リバースモーゲージが「死亡するまで借り続けること」を前提にしているのに対し、下の方法は「返済すること」を前提にした方法です。
リファイナンス
まだ、家のモーゲージローンが残っている場合で、現在の利率がローンの利率に比べて低いのであれば、リファイナンスするという方法があります。リファイナンスすることで少し借り入れを多めにし、必要なお金をキャッシュ・アウトして手元に残します。
利点
- クロージングの手数料はリバースモーゲージに比べると低く、金利も低いでしょう。
- モーゲージ保険料は必要ありません。
- 月々返済した利子は、多くの場合税控除の対象となります。とくに高収入世帯には、活用度が高いでしょう。
欠点
- リファイナンスの申請には、収入やクレジット・ヒストリーのチェックが必要です。高齢者の場合は、ローンが下りないこともあり得ます。
- 返済が必要です。月々の返済額、返済期間をきちんとプランする必要があります。きちんと計画すれば、無理のない返済を続け、ちょっと余裕があるときには余分に返済し、できるだけ早くローンを終わらせるということも可能でしょう。
ホームエクイティ・ローンとHELOC
モーゲージローンは完済して家は100%自分のものという場合なら、ホームエクイティ・ローンかHELOC(Home Equity Line of Credit)を利用できるかもしれません。ホームエクイティ・ローンは金額を決めて、その金額を借りるものであるのに対し、HELOCは一定のクレジット限度額(Line of Credit)を与えられ、その範囲内で必要に応じてお金を引き出して使うという借り方です。
利点
- 申請自体は比較的シンプルで、金利もリバースモーゲージに比べると低いでしょう。
- クロージングの手数料も非常に小さいか場合によってはゼロなので、短期間のローンには最適です。
- モーゲージ保険料は必要ありません。
- リバースモーゲージのように「62歳以上」という条件がないので、夫婦の片方が62歳未満の場合にも使えます。また、リバースモーゲージを利用できる時期までの短期的解決策としても使えます。
- 月々返済した利子は、多くの場合税控除の対象となります。とくに高収入世帯には、活用度が高いでしょう。
欠点
- 家のエクイティが十分にあること、安定した収入やクレジット・ヒストリーが必要です。高齢者の場合は、ローンが下りないこともあり得ます。
- 月々の返済が必要です。月々の返済額、返済期間をきちんとプランする必要があります。きちんと計画すれば、無理のない返済を続け、ちょっと余裕があるときには余分に返済し、できるだけ早くローンを終わらせるということも可能でしょう。
- HELOCの場合は、家の値段が下がった、収入やクレジット・スコアが下がったなどの理由で、銀行がクレジット限度額の未使用分をキャンセルすることがあります。結果的に、リバースモーゲージのLine of Creditのように長期的に安定して頼りにすることができない可能性があります。
老後の生活資金が不足しているのであれば、ライフ・スタイルを見直し生活費自体を削減するか、あるいは他に資金源を確保する必要があります。今まで住んでいた家に住み続ける必要がないのであれば、思い切って家を売ることで現金を手にするという選択があります。リファイナンス、ホームエクイティ・ローン、HELOC、リバースモーゲージのどれもが、住んでいる家のエクイティを元にお金を借りる方法であるのに対し、下のオプションは、住む場所は他に見つけ、現在の家を売ることでエクイティを現金化する方法です。
リロケーション
住居費、生活費が高い地域に住んでいる場合は、住んでいた家を売り、その資金でもっとコストが安い土地に家を買い、残った資金を老後の生活費にあてることができます。
ダウンサイズ
住んでいる家が大きすぎる、不要なスペースがある場合は、その家を売り小さい家を買い、残った資金を老後の生活費にあてることができます。リロケーションとダウンサイズは同時に行うことも可能です。
賃貸
家を売った資金をうまく運用しつつ、賃貸に切り替えるということもできます。また、シニアをターゲットにしたコミュニティやアパートに住むということもできます。
利点
- 将来的に生活面でのサポートが必要になったときに備えて、娘や息子の近くに住むなどが可能になります。
- 家を売った資金内で、新しい家の無理のない購入をするなら、ローン組む必要がありません。
- 家や庭などのメンテナンスが軽減する、あるいはそれらから開放されます。
- 夫婦のどちらかの健康が悪化している、自分たちだけで生活していくことが難しくなる可能性があるなどの場合には、賃貸に切り替えることで、将来の移動・変更に対するフレキシビリティが残せます。
欠点
- 売るための準備、費用、引越し費用がかかります。
- 長年住んでいた家への思い入れを断ち切らねばなりません。
家族内での売買とリース・バック
住んでいる家を子どもに売り、子どもから賃貸を受ける(リース・バック)という形をとるという選択肢もあります。家は子どものものになりますが、それをリースするので、継続してその家に住み続けることが可能になります。家を売った資金は賃貸料と生活費にあてられます。子どもから老後の資金をもらい、その代わりに家を残すというやりとりをきちんとシステム化したものです。
利点
- 親は、住み慣れた家に住み続けながら、まとまった資金を得ることができます。リバースモーゲージの高いコストなしに、エクイティを現金化できます。
- 家の権利が家族の手の中に残せます。
- 子どもは賃貸収入を得るとともに、モーゲージのローン利子、メンテナンス費用、家の保険、減価償却費などに対し税控除を受けられます。
欠点
- 子ども側に、購入するための資金力が必要です。
- 売買価格と賃貸価格は、第三者間での取引に匹敵する市場価格にする必要があります。
- 取引を成立させるため、会計士、弁護士などの専門家のヘルプが必要となるでしょう。
家族間でのローン
リバースモーゲージのしくみを家族間で作り出すという方法です。子どもは家を抵当に親にお金を貸し、親が亡くなった時点で家を売りローンの返済を受けるか、あるいは家を取得するというものです。上の場合と比べて、家のオーナーはあくまで親のままです。
利点
- リバースモーゲージに比べて、親は低い金利でローンを受けられます(金利自体も低く、またモーゲージ保険も必要なし)。
- オリジネーション手数料やモーゲージ保険などが不要です。
- 結果的に、家族内に残るエクイティが最大化されます。
欠点
- 子ども側に、ローン提供のための資金力が必要です。
- 取引を成立させるため、会計士、弁護士などの専門家のヘルプが必要となるでしょう。
老後のことはよく頭のなかをよぎります。若いうちは健康でエネルギーがあふれているから「アメリカで頑張る!」と、いえるのかもしれないですが、歳をかさねるとその健康が失われやすいし(いくら健康診断をうけていてもいつかは病気にはなると思います)、若い人ののようなエネルギーはないような気がするのです。そういう状況とアメリカの医療制度や医療機関の対応を考えた場合、老後アメリカにいることは考えたくないな・・・・という気持ちのほうが今は強いです。夫がアメリカ人なので今はアメリカにいますが、もし仮に夫がいなくなってしまったら、「1人でアメリカで生きていこう」と思えないような気がします。アメリカにしてみれば私は外国人であり、それなりの差別的な扱いもあるでしょう。夫がいるからある意味守られている部分もあるんだと思います。日常生活においても、アメリカと日本では日本の方が生活しやすいようにも思えます。食事についても同様です。私達にはこどもはいませんが、たとえ子供がいても、子供はいつかは巣立っていくし、子供を頼りにする生き方もなんか気が進まないし・・・。以前、ニューヨークの救急外来で待っている間になくなってしまった患者がいました。you tubeに流れていました。かなり長く待たされ、その間に待合室で倒れてそのまま死亡。それでも、自分たちはプロトコールに沿って対応しており・・・と自分たちの正当性を主張している会見をみて、「こんなの日本じゃありえないだろうな~」と思ったものでした。こたつにみかん、いいですね。
tutleさん、そうですね。アメリカは、義理人情の世界じゃないですからね。。私も心が揺れます。でも、もう日本を離れて長くなると、日本の生活にすぐ戻れるのかも心配です。そもそも私は日本では少々はみだし気味でもありました。なんか、アメリカ人でもない、日本人でもない、フシギな人間になってしまったような気もします。死ぬ前に食べる食事は、オートミールとオレンジジュースじゃなくて、やっぱおかゆと緑茶であって欲しいけど。。。
私は老後は日本でと考えています。アメリカは健康保険等を含めて生活費が高過ぎるので、今はどうにか支払っているけれど、老後は体力と共に支払いも能力も衰えてくると思うのでもう少し生活費の安い日本に戻る事を考えるようになりました。食事や言葉もそうですが、ゆっくり肩まで温泉に浸かってやっぱり自分は日本人だったと実感したいです。
多いですね、老後は日本でという方。。そう、生活費はずいぶんと違いますね。やっぱ医療費や介護費の差でしょうか。日本なら、済むところさえあれば200万とか300万の年金収入でも、十分やっている人もいるように思いますが、アメリカではなかなか難しいでしょう。
日本に住んでいる者からいえば、セミリタイアのウチの現状でアメリカに住むのは経済的に無理です。一番の理由はやはり医療保険費。私の目の病気と50代後半という年齢では高すぎて払えません(似た状況のアメリカ人の友達は年間1万8000ドルほど払ってる)。
でも日本も今後どうなるかは楽観できません。2040年には1.25人の就労者が1人の老人を支えることになるそうです。年金も老人ケアも今の80歳前後の世代が最も得してる世代じゃないかと友達とよく話します。ここ数年来グループホームやケア施設が数多く新設されてるけれど、私たちが必要になる頃には老朽化し、修理や新設する税収もないでしょう(^^)
80歳前後の世代とは私の両親の世代ですが、経済的には安定し、年金もありがたいといってもらっています。以前お隣に住んでいたアメリカ人の夫婦(今、70くらい)を思い出しました。彼らも経済的には安定し、ご主人はソーシャルセキュリティオフィスに勤め続け60歳で退職し、安定した年金に安定した保険があり、きらびやかではないけど家とセカンドハウスを持っています。問題はその子どもの世代。このご夫婦は孫の車を買ってやったり、孫の学費をだしたりとなにかとヘルプしているようですが、甘やかしというよりはそうしないとなかなか家計が成り立っていかないようです。
とてもいいarticle ありがとうございます。
タイトルが変なのになってますよ (^_^)
Happinessさん、ほんとだ!こんなに大きな字で出ているのに、どうして気がつかないんでしょう。これじゃ、老眼もexcuseになりません。。。ありがとうございました。
アメリカ人の彼(55)と再婚をして、昨年末渡米したのですが、お金の事で驚く事ばかりあり、こちらにたどり着きました。
アパート暮らしですが、一軒家を探しています。
私は50でセミリタイアを目指していたので、息子達を大学まで行かせ、現金で家を買おうと決めて生活していたので、個人年金の払込みも終わっています。
なのに…貯金なし。借金ありの状態が信じられませんでした。
どうやら普通みたいですね。
私には専業主婦でいても構わないと言ってくれている彼に、家を買う資金を出すべきか迷っています(彼は私の貯金額を知りません)
まずはご結婚おめでとうございます。
同じ日本人同士でもお金の感覚は違うこともありますが、日本文化とアメリカ文化では180度違う部分も多いので、びっくりされることも多いでしょうね。夫婦間の問題の中で、お金についての意見の食い違いは案外深刻でもあります。家を買うという大きな決断をされる前に、一度自分たちのお金のついての考え方、将来への展望や希望などを時間をとって話し合われるといいかもしれませんね。
初めて投稿させて頂きます。いつもこのサイトの情報には関心と参考にさせて頂き、心強いアドバイザーになっています。ありがとうございます。
早速で申し訳ありませんが、相談させて下さい。
現在下記の状況の私は家を買おうか悩んでいます。現在家の価値が高いので、もう少し待ては下がり始めるかもしれないとアドバイスは頂いたのですが、家を買えるほどの頭金になるお金がありません。
* 自身35歳、夫44歳
* 賃貸
* 資産(401k, CD, Cash, Stock) $80,000
* Rent $1800
* 子供なし
* 少なくても引退まではアメリカにいる予定。
今焦らず、もう少しお金を貯めてから安いコンドでも買おうと考えています。
ただ、子供もいないので、正直家を買うメリットがまだ明確に見えていません。
将来インフレで家賃も上がるだろうし、引退した時までRentを払うのはどうなのか?など私なりに色々考えていますが、いつも答えがでないままです。
支払った利子がtaxableになる魅力も理解していますし、Rentのように毎月の支払いが大きく変動することもないので将来の計画も立てやすいと思っています。
また車の購入とリースのように、購入すればいつかは自分の物になるので私たちの資産になるのも分かります。
家を買えば家の修理やその他もろもろのコストが自費になってきますが、アパートであれば何か壊れてもアパートが直してくれます。
長くなりましたが、このようにメリットとデメリットを冷静に見ながら考えていますが、まだ十分な資金がないせいで購入の決断ができていません。
また老後が心配で必死で貯金していますので、今ある貯金を崩すの抵抗があります。
夫の年齢が年上であり、正直私たちの年齢で貯金・資産はとても少ないと思っています。また家を買いたいという気持ちはあります。
家の購入に対してどう思われていて、何かこの少ない情報の中でアドバイスを頂けないでしょうか?
宜しくお願い致します。
悩むところですね。下の記事に、決断に関わる主要要素が説明されています。またこの記事にでてくるbuy vs rent calculatorで実際にシュミレーションしてみて、決断の参考にしていただけると思います。
家、購入かレントか(2) – NYTimes Buy vs. Rent Calculator