RMDを知る(2)

Last Updated on 2023年8月3日 by admin

401(k)やTraditional IRAには、70歳半になると(訂正:SECURE ACTにて開始時が生年によって72歳から75歳までの間に変更)Required Minimum Distribution(RMD)という引き出し必要額が定められています。RMDは引き出す必要がなかったとしても、引き出すことが義務付けられており、もしも義務付けられたRMDを引き出さないと手痛いペナルティがあります。複数の口座がある場合は、管理や計算も複雑になります。70歳半(2019年末SECURE ACTにて72歳に変更)になる前にRMDについて把握しておき、RMDの自動引き出しなど必要な手続きをしておくことが賢明です。2回に分けてお送りします。

RMD額の推移

RMDの額はある程度、毎年同じようなレベルの額を保つことができるように工夫されています。RMDを計算するためのDevisor=残存平均寿命は、前回の記事にあるテーブルをご覧いただくとお分かりになるように、だんだん小さくなっていきます。同時に、引き出す額と運用利回りにもよりますが、多くのケースではリタイヤメント資金の残高自体もだんだんと小さくなっていくことから、小さくなった資金残高を小さくなった残存平均寿命で割るということになり、典型的な例では毎年のRMDは大きく上下することはありません。下は、リタイヤメント時、$750,000の残高で、リタイヤメント以降の運用利回りが3%で推移した場合の、毎年のRMD額をグラフ化しています。$30,000程度から$40,000程度の間で収まっているのがわかります。

RMDと聞くと、「引き出したくないのに、引き出さなくてはならず、課税されてしまう頭の痛いもの」というようなイメージがありますが、趣旨としては、「非課税で貯めてきたリタイヤメント資金を、平均寿命の期間にわたって、なるべくおしなべて毎年同じような額を引き出し続けさせる」ということを目的にしており、ある意味で理想的な引き出し方でもあります。実際、RMDをベースにリタイヤメント資金を引き出すと、枯渇を防ぎつつも毎年の引き出しをしっかり確保する効率的な引き出しが可能であるというようなリサーチ結果も出ています(リヤイヤメント資金を引き出す - RMDで考える)。反対に言えば、RMDより大きく超えて引き出しをすると枯渇の可能性も大きくなるともいえます。

複数のRMD対象の口座がある場合

RMDが必要となる口座が複数ある場合は、それぞれの口座でRMDを計算する必要があります。ただし、口座の種類によっては、別々に計算したRMDをまとめて一つの口座から引き出すことも可能です。

  • 複数のTraditional IRAがある場合は、各IRAについてRMDを計算し、そのRMD総額をひとつのIRA口座から引き出してもよい
  • 複数の403(B)口座がある場合は、各403(b)についてRMDを計算し、そのRMD総額をひとつの403(b)口座から引き出してもよい
  • これ以外の口座については、各口座のRMDを計算し、そのRMDをその口座から引き出す

複数の口座が存在する場合は多いと思います。老後に入る前に、まとめられる口座はまとめて、管理を簡単にしておくことは賢明だと思います。また、言うまでもありませんが、夫婦の口座は一緒にすることができず、それぞれで計算・管理が必要です。

参考    投資口座の整理 - まとめて管理をラクにする!

RMDのペナルティと課税

引き出しがDueとなっている期日までに、正しいRMDを引き出さなかった場合は、引き出すべきであったのに引き出されなかった額の50%がペナルティとして没収されます。数ある税ペナルティのうちでも、非常に高額のペナルティです。RMDは必ず守るよう気構えが必要です。

RMDは、Roth 401(k)を除いて、課税前での積み立てですので、引出時には引き出し額が所得としてカウントされ、連邦税・州税の所得税課税対象となります。引き出し時に、所得税を見積もり、源泉徴収で納めておくことが賢明です。下で紹介しますが、自動的に行うよう設定することが可能です。

引き出したRMDをどうするか

もっともオーソドックスなケースでは、引き出したRMDは生活費として使うことになるでしょう。その場合は、銀行口座にRMDを送金して、そこから適宜お金をおろして使うことになります。RMDというと、「引き出しを強要される」というイメージが強いですが、多くのケースでは、実際の生活資金をカバーするために、RMDより大きな額の引き出しがそもそも必要となるので、RMDはおのずとクリアしてしまうことになります。

幸運にも、他に生活に充てられるリタイヤメント資金があり、RMDは当面必要ないという場合は、引き出した額をまた投資に振り戻すことができます。もちろん、必要な所得税は支払うことになりますが、その所得税は、本当なら積み立て時に支払うべきだった所得税を控除を受け、その後も運用益非課税で大きく増やしてきたという特典を十分受けての所得税の支払いですから、ある意味で喜んで払うべきものともいえます。積み立て時は勤労のピーク時であることが多く、所得税もそれなりに高率であり、その高率の税金を免除され非課税で運用しつづけ、リタイヤメント後の比較的税率の低い時に所得税を納めることは、決して損なことではありません。必要な税金はさっさと払い、生活資金に余裕があるなら、また投資に戻しましょう。

投資といっても今すぐには必要はないが、そのうち必要となる資金なら、リスクは低く保ち、High Yield Savingや、債券ファンドなどでの低リスク運用が基本となります。反対に、長期的に運用できる余裕があるなら、株式ファンドも混ぜたリスク運用も可能です。もしも、まだ労働収入がある場合は、IRAに積み立てることが可能です。新たにRoth IRAに積み立てるというのも、よい選択かもしれません。

また、自分たちの老後ではどうも必要にならなさそうだという場合は相続対策として、お孫さんの529に投資したり、お子さんのIRAに積み立てたり、あるいは相続を念頭に生命保険を購入することも考慮に入ってきます。

RMDの引き出し方

計算は面倒ですし、ちゃんと引き出さないと高額のペナルティがるRMDですが、ありがたいことに、ほとんどの金融機関でRMDの計算と引き出しは自動化できます。金融機関にもよると思いますが、以下のような機能が自動で設定できます。

  • 自動でその年のRMDを計算する。
  • RMDを月ごと、3か月ごと、一年に一回などの決められたインターバルで自動引出する。
  • 投資しているファンドからどう引き出すかを指定する(すべてのファンドから同比率か、特定のファンドから特定%を引き出すなど)。
  • 引き出した額を、銀行口座などどこに入金するか、チェックでの受け取りを希望するかを指定する。投資に回す場合は、直接投資口座に入金できる場合もあり。
  • 引き出し額に対して、連邦税・州税の源泉徴収率を指定する。

必要なRMDは遅れなくしっかり引き出し、必要な税金はきちんと源泉徴収するしくみを、きちんと作っておくのが賢明です。

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2 comments

  1. RMDについて詳しい説明ありがとうございます。
    さてアメリカ在住中にも御社のサイトを愛読しておりました。2017年に日本に帰国しリタイアししております。ところで質問ですが403Bがアメリカに残ってます。日本移
    居住者でもRMD は引き出す必要があるのでしょうか。
    税金は移住国にて所得として払うこととなるとおもいます。

    1. 私は税務の専門家ではないのですが、ルールとしては居住地にかかわらず、RMDは引き出す必要があると理解しています。引き出さなかったときのペナルティはタックスリターンで支払うので、タックスリターンの必要の無い日本居住者の方に対して、IRSがペナルティをどう実行するのか、そのすべがあるのかも知りませんが、ルールとしては非居住になったからといってRMDを出さなくてもよいということはないと理解しています。

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