医療費問題は、国家的にも、企業レベルでも、個人レベルでも大変な問題です。アメリカでは全人口の17%弱が健康保険を持っていません。また、健康保険を持っていても保険のカバレッジは、毎年悪くなることはあってもよくなることはあまりないのが現状です。企業やその他雇用者はコスト削減のために、High DeductibleプランなどのConsumer Directed Health Plan(消費者が裁量するヘルス・プラン)をプロモートし、医療サービスの消費者であるわたしたちが、好むと好まざるとにかかわらず、積極的に医療費削減にかかわらざるをえない時代になりました。残念なことですが、よくしくみをわきまえないで(わきまえていても!ですが)医療サービスを使うと、後で大変な請求が押し寄せ、医療費破産・・などということにもなりかねない時代になりました。
まず医療費の節約(コントロール)で必要なのは、賢く医療施設を選ぶということのようです。同じ医療措置であっても、それをどこで受けるかで値段が大きく変わるからです。まったく同じ注射一本でも、お医者さんのオフィスで受けるのか、病院で受けるのか、専門施設でうけるのか、アージェント・ケアで受けるのか、ERで受けるのか、ウォークイン・クリニックで受けるのか、それらは保険のネットワーク内か外かで、値段は千差万別・・・ここ賢いでは医療施設選択にあたってのベーシックを考えます。
1.ネットワーク内にとどまる
健康保険を持っているのなら、医者や病院のネットワークについて普段からある程度の理解を心がけましょう。自分のよく行くお医者さんがどの保険・病院ネットワークに属しているのかや、市内にはどういった病院ネットワークが存在するのかをあらかじめ把握しておくといいですね。そうすれば、他の専門医にリフェラルをもらうときやテストを受ける段になって、ついついネットワーク外に出てしまい高い医療費を請求されることが避けられます。他の医者や施設を紹介されたときは、それがネットワーク内なのかを確認する責任はわたしたちにあります。また、あらかじめ他の医者や施設に行くことが必要だとわかっているような場合は、自分でネットワークの中から評判のよいところをあらかじめ選んでおいて、お医者さんにそこにリファーしてもらうようお願いするというスタンスもたいせつです。
このネットワーク内にとどまる・・ということ、案外簡単そうに見えてそうでもない場合もあります。特に、大きな手術をするとなると、執刀外科医だけでなく、麻酔科医、放射線科医、病理学医など多くの専門医がかかわることになり、みながネットワーク内であることを確認することはとても大切です。この話題は、大きくなるのでまた今度にします。
2.Outpatientを選ぶ
同じ医療措置でも、inpatient(入院)とoutpatient(日帰り)とで提供されているなら、outpatientで提供されているほうが一般的に安いですね。少々、体に負担がかかるかもしれませんがそれが許容できる範囲であれば、outpatientを利用することでコストが削減できます。家に帰っても、ケアができる家族がいることなどが条件になります。
3.独立した専門施設に行く
レントゲン、CTスキャン、MRI、血液検査などは、それらのサービスをどこで受けるかで同じテストを受けるにも値段に大きな差がでます。ある調査によると、MRIを受ける場合、健康保険ネットワーク内の「病院」での平均価格は$1,145であるのに対し、ネットワーク内の「放射線専門施設」で受けると平均価格は$560であるというデータもあります。同じoutpatientの手術であっても、「病院」で受けるのでなく「outpatient手術専門センター」で受けると40%も安いというデータもあります。また、ヘルニアの手術は、「総合病院」で受けるより「ヘルニア専門クリニック」で受けるほうが、コストは1/3以下というデータもあります。テストを行うテクニシャンや執刀医は同じであっても、ただ、それを「どこで」受けるかで大きな差がでることも珍しくないようです。これはおそらくオーバーヘッド費用などの違いなのでしょう。専門施設のほうが、それに特化したサービスを効率よく提供できる体制が整っているということでしょうか。
あなたの健康保険のしくみをよく知らないお医者さんは、特定の施設でテストを受けるように勧めるかもしれませんが、必ずそこで受けなければならないというのではないことが多いものです。自分から「○○で受けてもいいですか」と聞けばよいでしょう。
できればネットワーク内の専門施設が理想ですが、場合によっては「ネットワーク外の専門施設」のほうが「ネットワーク内の病院」より安いことも大いにありえるそうです。これには見積もりを取るという作業が必要になりますが、うまくいけば数千ドル単位の節約になることもあるそうですので、バカにできませんね。
4.ウォーク・イン・クリニックに行く
RediClinicやCVSなどにあるMinute Clinic などのウォーク・イン・クリニックのほうが、お医者さんのオフィスに行くのより安くて便利かもしれません。予防接種はもとより、風邪やインフルエンザ、サイナス・インフェクションなどのシンプルなケースであれば、わざわざ予約をとってお医者さんに行くほどのことはないかもしれません。保険上、PCPに行かねばならないという規制がないこと、アレルギーや既往症がなく、過去のメディカル・レコードを参照したり、情報共有したりする必要がないことも判断基準です。お近くのウォーク・イン・クリニックはこちらでサーチしてみてください。
5.アージェント・ケアに行く
一昔前は、時間外に病院にかかろうとするとERしかチョイスがありませんでしたが、最近ではアージェント・ケアの認知度が高まってきましたね。健康保険の説明文書などにも、エマージェンシーとアージェントとの定義の違いなどが説明されるようになりました。生命の危険はないが明日お医者さんのオフィスが開くまでは待っていられないような場合や、予約なしに診てもらいたいがウォーク・イン・クリニックで間に合うほどシンプルなものではなさそうな場合、アージェント・ケアに行きましょう。待ち時間もERより短いでしょうし、健康保険が効くならco-pay/co-insuranceが、効かないなら表示価格自体がERよりも大幅に安いのが一般的です。急なとき、あわてて無駄な医療費を費やさなくていいように、近くのアージェント・ケア(健康保険があるなら、保険でカバーされるアージェント・ケア)を調べておくといいですね。
6.お目当てのお医者さんが他の病院でも働いていないか聞く
「このお医者さんに診てもらいたい・手術してもらいたい」など、すでにお医者さんが決まっている場合、そのお医者さんが他にどこかの病院やクリニックで同じ医療サービスを提供していないか聞いてみるのも手だそうです。手術などの場合、医療コストの中に占める割合は、お医者さんへの報酬(Physician Services)よりも病院・施設費用(Hospital Services)のほうがずっと大きいのが常です。つまり、どのお医者さんに治療してもらうかより、どこで治療してもらうかのほうが問題ということです。病院費用には、注射針やガーゼの費用から、施設使用料、食事費用などさまざまなものが含まれ、どこの病院・クリニック・医療施設でサービスを受けるかで、多大な差があるようです。同じお医者さんを選ぶのでも、病院費用が小さいローケーションで受けるほうが得策ということでしょう。
かかとの手術をするので、病院のお医者さんにどこか他の施設でも手術をしていないか聞いてみたら、病院以外にoutpatient centerでも手術をやっているとのことで、そのcenterで手術を受けたところ、大きく費用を節約したというケースもあります。お医者さんへの報酬(Physician Services)と麻酔サービス代(Anesthesiology Services)では差があまりなかったものの、病院・施設費用で大きな節約ができたそうです。
ということで、ベーシック・ルールはこんな感じ:
ネットワーク外よりネットワーク内
InpatientよりOutpatient
病院より独立系専門施設(テスティング施設・手術センターなど)
お医者さんのオフィスよりウォーク・イン・クリニック
ERよりアージェント・ケア
ただし、個別ケースではいろいろ違いもでてきましょうから、そのあたりご配慮のほどを。。