アニュイティ…買うべき、買わないべき?

Last Updated on 2020年1月16日 by admin

最近、アニュイティに関するプラニングをお手伝いさせていただいた方が何人かいらっしゃいます。アニュイティは保険会社が力を入れてマーケティングすることの多い商品ですが、多くのファイナンス関連商品がそうであるように、同じ商品であってもその方の置かれている状況や将来の計画に照らし合わせると、買ったほうがよい場合もあれば買わないほうがよい場合もあります。どういう場合にアニュイティを購入することが理にかない、どういう場合には避けたほうがいいのかについて、ケーススタディ形式で見てみたいと思います。

まず、アニュイティの長所と短所と簡単にまとめます。

アニュイティの長所

利回りへの税遅延: 運用利回りへの課税が、引き出しまで先延ばしにされます。ただし、これは前述のとおりIRAや401(k)でも得られるベネフィットです。
プラニングが簡単に: アニュイティによる月々の定額確定給付は、自分で投資ポートフォリオを組み運用を続けて、月々いくらずつ引き出していけばいいかという計算を不要にします。月々の固定費をソーシャルセキュリティやその他の年金でまかなえきれない場合、アニュイティからの収入が確保されていると安心です。
長生きしてももらえる: 上の事項と関連して、確定給付が生涯続く(このオプションを選んだ場合)というのは心強いものです。リタイヤメント・ポートフォリオから月々引き出しすぎて、老後の資金が枯渇してしまったという問題を回避することができます。

アニュイティの短所

アニュイティの短所はなんといっても高い手数料です。ミューチュアルファンドの手数料などもよく問題にされますが、アニュイティの手数料はそれに上回って悪名が高いものです。
では、どんな手数料があるのか見てみましょう。
販売手数料: 保険ブローカーやセールス担当者が売るアニュイティは、10%に上るコミッションが組み込まれているといわれています。ミューチュアルファンドの販売手数料に関しては法律で上限が決められていますが、恐ろしいことにアニュイティが課すことができる販売手数料の上限は法律で設定されていません。結果として、アニュイティは、数ある投資・保険商品のなかでも、とびぬけてコミッションの高い商品となっています。
サレンダー・チャージ(キャンセル料): 契約によりまちまちですが、たとえば「最初の7年間に解約する場合は、口座残高の7%がキャンセル料としてかかり、1年を減るごとに1%ずつ減少、8年目からは解約してもキャンセル料なし」というような具合です。この7%はまだ良心的なほうで、15%、20%、ひどいと25%という契約も存在するようです。気が変わった・・ということは許されないのがアニュイティです。
保険料: アニュイティは保険商品ですから、死亡の場合、あるいは生存中継続されるべき保険としての「価値」を提供します。多くのアニュイティでは、もし受け取り開始前に本人が死亡した場合は、投資した元本か現在の投資残高か、どちらか大きいほうを支払うというような死亡保障がついています。その保険としての「価値」に対して保険料が発生するのは当然ですが、これは口座残高の1.25%程度とされています。
投資マネージメント手数料: Variable Annuityの場合、401(k)のように自分でファンドなどの投資媒体を選択して運用していくわけですが、このファンドの手数料(俗に言うExpense Ratio)がばかになりません。2~3%の手数料はよくあるレンジですが、高いと5%というような高手数料のものもあります。

これを踏まえて、アニュイティ購入をお勧めしたケースとしなかったケースを見てみましょう。まずはお勧めしなかったほうから。。

アニュイティをお勧めしなかったケース

リタイヤメントを間近に控えた60台後半のAさんご夫婦。保険会社からVariable Annuityを勧められました。現在インベストメント口座に入っているお金でVariable Annuityを購入し投資を続けながら、年々の年金を受けるというものでした。

Guaranteed Lifetime Withdrawal Benefit(GLWB)というベネフィットがついたこの商品、ご夫婦が生きている限り確約4%で毎年年金が受けられるというものです。年金給付のベースとなる額(Total Withdrawal Base=TWB)は当初の投資額を下回ることはなく、もし市場価格が下がっても当初の投資額は確保されます。毎年、投資成績が測られ、投資額が成長した場合は、それに応じてTWBも増えていきます。リタイヤメントのために一生懸命貯めてきたお金なのでこのようなギャランティーがついているのは心強いと思い、この商品のご購入をお考えでした。

しかしながら、Aさんご夫婦のパーソナルファイナンスの情報とこのVariable Annuityの内容を詳しく見させていただいた結果、Aさんご夫婦にはこのアニュイティの購入をお勧めしませんでした。

まずその理由は、アメリカで長年働いてこられリタイヤを70歳まで待つ予定のAさんご夫婦は、$4,000超のソーシャルセキュリティ年金が受けらます。また、Aさんは401(k)やTraditional IRAも十分な残高をお持ちで、これらは70歳半(2019年末SECURE ACTにて72歳に変更)になった時点で、Required Minimum Distribution(RMD)といって最低限度額の引き出しが義務付けられます。これはたとえ必要でなくとも、引き出さねばならないもので、決められた額だけ引き出さないと高額のペナルティが課せられるものです。Aさんの場合、401(k)とTraditional IRAの残高からRMDを計算すると月々$2,000ほどになることがわかりました。

すでに家は完済済み、他に負債のないAさんご夫婦は、ソーシャルセキュリティとRMDの合わせて$6,000の収入は、月々の生活費のうちの固定費をおそらく十分カバーするものになります。これに加えてアニュイティによって固定収入を確保する必要はないであろうと思われました。

旅行やエンターテイメントなど、老後を楽しみたいAさんご夫婦ですが、それらは月々固定収入でカバーする必要はなく、必要に応じて都度インベストメント口座から引き出して利用することがベストです。また、Aさんご夫婦は十分な資産をお持ちなので、寿命を全うする間にリタイヤメント資金が枯渇してしまう可能性も少なく、生涯給付のアニュイティをわざわざ買う必要もありませんでした。

このGLWB付のVariable Annuityは、Aさんご夫妻にとってベネフィットが少ない割には手数料が高く、説明資料を詳しく読んでみると年間4~5%もの手数料が引かれることがわかりました。手数料の低いインデックスファンドを中心に自分でインベストメント口座を運営するほうが理にかなうという判断のもと、Aさんご夫婦はこのアニュイティの購入を見送りました。

アニュイティ購入をお勧めしたケース

40代のBさんご夫妻は、ご主人の給与を大切に使い401(k)への積み立ても年間最大限度まで行っています。奥様は働いておられません。Bさんは本年、大きなプロジェクトをまかされ、それが大成功し大きなボーナスを得ることになりました。このボーナスを将来のためにできる限りうまく運用しようと思っています。

できれば、401(k)やIRAのように税優遇措置があるツールを使って運用ができればと思っていますが、401(k)はすでに年間限度額まで積み立てていますし、ご主人は高収入のため、収入制限によりTraditional IRAの積み立て控除はなく、Roth IRAへの積み立てもできません。公的機関などにお勤めであれば、403(b)と457など複数のリタイヤメントプログラムに同時に積み立てができますが、それもありません。自分でスモールビジネスをお持ちなら、SEP IRAなどを使って高額の積み立てもできますが、そのオプションもありません。

ふつうのインベストメント口座で資金運用した場合、そもそも高収入のBさんご夫婦は、投資利回りに対し非常に高い税金を納めることになります。まだリタイヤメントまで20~30年あるので、年々の税金を支払うか支払わないかは投資残高の伸びを大きく左右します。そこで、Deferred Variable Annuityをお勧めしました。

ふだんは簡単にはお勧めしない商品ですが、このようなケースでは税遅延の魅力が最大限に使えるとの判断からです。ただ、具体的には手数料が低いVanguard社の商品をお勧めしました。

Vanguard社のアニュイティの手数料は平均0.57%、GLWBの手数料は1.20%で合わせても2%以下であり、他のアニュイティ商品を比べても低手数料でした。しかしながら、考慮の末GLWBを現時点であえてつける必要もないだろうという判断から、GLWBなしで契約をしました。投資運用は、インデックスファンド中心のBさんご夫婦に適したリスクレベルで行います。元本割れのリスクはあるものの、GLWBに手数料を払う代わりに計算されたリスクをとり、長期的に運用することを選びました。

このように金融商品の選択は、商品自体が良いか悪いかということではなく、あくまでその方のパーソナルファイナンスの状況や目指すものによって判断すべきものです。必要がありましたら、Smart & Responsibleにご相談ください。

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