投資ファンド選びでステマにはまらない!(2)

ステマ記事の2回目です。ステマとは、中立的な立場を装って書かれた記事を通して、また宣伝とはわからないような装丁で情報提供することで、ユーザーの商品に対する印象をよくするマーケティングのこと。ステルスマーケティングの略です。ステルスという名のレーダーに映らない戦闘機がありますが、まさにそれのごとく、名前を明かさず忍び寄ってくる宣伝とでもいいましょうか。

このステマが投資ファンドにもあります・・という記事を前回書きました。前回は、利回りで並べたランキングは、何をどう分類し何をどう測るかでランキング入りするファンドを操作できることと、またそこで発表されている利回りに魅力を感じてそのファンドを買っても、その後はその通りにならない可能性が大であることをまとめてみました。

今回はその第二弾で、こんなランキングについてご紹介します。20位から始まり1位までカウントダウンで掲載されています。2019年8月に出た記事で、中立的な発表のように見えます。

 

Biggest funds with the best 10-year returns

20 Vanguard Total Bond Market II Idx Inv (VTBIX)

19 Vanguard Total Bond Market Index Adm (VBTLX)

18 Vanguard Total Intl Stock Index Inv (VGTSX)

17 Vanguard FTSE Developed Markets ETF (VEA)

16 American Funds Europacific Growth R6 (RERGX)

15 American Funds Capital Income Bldr A (CAIBX)

14 American Funds Capital World Gr&Inc A (CWGIX)

13 American Funds Income Fund of Amer A (AMECX)

12 Vanguard Wellington Admiral (VWENX)  10.26%

11 American Funds American Balanced A (ABALX) 10.50%

10 American Funds Invmt Co of Amer A (AIVSX) 11.85%

9 American Funds Fundamental Invs A (ANCFX) 12.76%

8 American Funds Washington Mutual A (AWSHX) 13.30%

7 American Funds Growth Fund of Amer A (AGTHX) 13.39%

6 SPDR S&P 500 ETF (SPY)  13.91%

5 iShares Core S&P 500 ETF (IVV) 13.96%

4 Vanguard 500 Index Admiral (VFIAX)  14.00%

3 Vanguard Total Stock Mkt Idx Adm (VTSAX) 14.01%

2 Vanguard Mid Cap Index Admiral (VIMAX)  14.37%

1 Fidelity Contrafund (FCNTX)  14.85%

 

前回の記事でご紹介したランキングでは、1年と3年利回りの比較でしたから、短期的に成績がよいものに飛びついてはならないという教訓で終わりましたが、今度は10年です。10年といえばそこそこの長期ですから、ここでよい利回りを出しているということは、ある程度安定的によいファンドである可能性が高いと言えます。

低コストのインデックス投資で名高いVanguardの名前が見られるのは納得(注:このリストにはパッシブのインデックス投資だけでなく、アクティブ型も入っています)。FidelityのContrafundはこれから成長する会社で安く売られている株を選んで買うアクティブ投資型ですが、よくやりましたね! という感じ。SPDRやiShareも低コストETFですからNO Wonder。不思議なのはAmerican Fundがここに名前を連ねていることです。American Fundはふつう高いSales Loadを課すので、私の頭のなかではベストファンドランキングにこんなにたくさん入るイメージがなかったので、ぱっと見た瞬間、妙な感じがしたわけです。

この記事の中には、利回りの数字がどのように測られているのか定義がありませんでしたが、通常は利回りの成績は、配当金や値上がり益などの利回りからファンドを運営するための手数料(Expense Ratioと呼ばれる)を差し引いたものを使うことが多いので、おそらくここではそれに倣っているかと思います。ただし、Sales Loadと呼ばれる販売時に課される手数料(場合によっては売却時に課されるものもある)は反映されいないのが常です。Sales Loadは年々課されるものではなく、買った時、あるいは売った時だけに課されるので、年々の利回りには反映しにくいからです。

ちなみにここにあげられているAmerican Fund以外のファンドはどれもSales Loadはかかりません。American Fundはどれも販売時のSales Loadが5.75%かかります。$10,000を投資したら$575が手数料として徴収され、$9,425だけが投資に回ります。このSales Loadの影響はファンドを持っている期間が短ければ短いほど痛手となり、反対に持っている期間が長ければ長いほど費用が長期間に分散されるので、一年あたりの負担は低くなります。7位に入っているAmerican Funds Growth Fund of Amer A (AGTHX)は、発表利回りが13.39%ですが、Sales Loadを考慮して利回りを計算しなおすと、もし3年持っていたとしたら年間利回り11.18%、2年で10.09%、1年だと6.88%となります。

前回の記事でも書きましたが、このようなランキングや利回りの出し方は、何をどうのように分類し何をどのように測るかで、かなり意図的な操作がききます。これは私の勝手な考えですが、この記事を用意した人はAmerican Fundをリストに入れたいというモティベーションがあったのではないかと推測します。Sales Loadがかかるファンドとかからないファンドを同等に並べてランク付けするというのは大変に誤解を生むものですから、本当に中立的な立場から書いたのかかなり疑わしいと感じます。American Fundは決して悪いファンドというわけではありませんが、この“中立的な”ランキングを見せられ“納得して”買っても、実際のところは少し期待と違ったというようなことも起こりかねません。

このようなランク付けはステマの可能性が大ですのでお気を付けを。

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2 comments

  1. なるほど、大変参考になります!これからこういうランキングに気を付けてみたいと思います。
    記事のFidelityのContrafundは、会社の401kのリストにあったのでとても気になっていました!
    ちょっと教えていただきたいのですが、自分の401kはすべてTarget-Date FundでExpense Ratioが高いようです。手数料が高い割に普通のindex fundのほうが運用成績がいいことがわかりました。
    そこで、Contrafundやその他のindex funds等のExpense Ratioが安いものに変更したいのですが、いつスイッチングするのがよいのでしょうか?今までやったことがないので分かりません。現在株価が好調のようですが、こういう時にスイッチングしてもよいのでしょうか?
    自分のTarget-Date Fundも希望するindex fundsも投資先は似たり寄ったりな気がします。手数料のことだけを考えて、すぐにスイッチングしてもよいものなのでしょうか?

    1. 401内での売り買いならば税金は発生しませんし、投資先が似たり寄ったりのファンド間での売り買いならば、市場が高い時なら高く売って高く買う、市場が低い時なら安く売って安く買うという相殺効果があり、いつ行っても同じ結果だと思います。

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