株式市場の不安定でうろたえないために

Last Updated on 2020年5月6日 by admin

マーケット・ボラティリティという言葉をお聞きになったことはあるでしょうか。株式市場が好調になったり不調になったり、値が上がったり下がったりのことを指します。市場は常に動いています。最近では、ヨーロッパ経済圏の低迷、エボラ勃発、中近東不安、Federal ReserveによるQE(Quantitate Easing)刺激策の終止、自然災害などなど、さまざまな要素が市場の不安定要因になり得ます。スマホのAppでどこにいても瞬時にニュースがゲットでき、自分のファンドの残高もチェックできる時代。株式市場のトレーダーでなくても、売るべきか・買うべきか・持ち続けるべきか・手放すべきか・・悩ましい選択を迫られることもあるでしょう。将来への不確定要素は不安を生み、人間は不安になると不安要素を取り除こうとします。投資ポートフォリオから株を売ってリスク要因をなくする、あるいはその割合を小さくするというような行動がもっとも理にかなったもののように思えたりします。でも、ちょっと待って。不安に駆り立てられてとった行動は、それこそ長期的に見ると最も理にかなわないものになりかねません。

低迷期こそチャンス

安く買って高く売る・・は、投資のベーシック。株式の低迷期は、株が安くなっているときです。そんなときに、不安に駆られて売るのは、高く売るのの反対である、安く売ることになりかねません。実際、「株式の低迷期こそ、買うのに最適なとき」というリサーチ結果があります。たとえば、1932年5月、アメリカ市場の大恐慌の真っ只中にS&Pファンドに投資したとすると、そこから5年で367%の値上がりを享受できたというデータがあります。同様に、1982年7月のリセッションの最中に投資したとすると、その後5年で267%の値上がり。一番最近のリーマンショック後2009年3月に投資したら、5年で178%の利回りでした。

もちろん過去のデータは将来も繰り返すという保証はありませんが、過去のパターンを見る限り、市場がもっともひどい状態にあるときこそ、まさに買いの好機ともいえるわけです。反対にこのようなときに売ることは、一番安いときに売り、その後の値上がりを逸するという最もひどいパターンに陥りがちということでもあります。

あらかじめ心構えしておく・・・

では、このような最悪パターンに陥らず、また同時に不安でいてもたってもいられないという状態にならないためにはどうすればよいでしょう。一番必要なのは、投資をはじめるときに、自分の許容リスクと投資の目的をはっきりさせ、それにあったアセットアロケーションを実現するということです。許容リスクをはっきりさせたということは、市場が30%暴落しようが40%暴落しようが、それも計算のうち・・ということを自分で納得するということです。許容リスクが低い人(たとえばもうリタイヤしている方)は、ほとんど株式市場に投資していないかもしれません。その場合株式市場が暴落しても、全体的ポートフォリオへの影響はほとんどないでしょう。それがその人の許容レベルです。反対に許容リスクが高い人(たとえば30代の方)は、株式投資の比率が高く、市場暴落により全体的ポートフォリオがガクンと値下がりするかもしれません。でもその値下がりもあらかじめ許容リスクとして「許容」しているわけですから、想定内の話です。暴落したからといってうろたえてはいけません。うろたえるべきは、許容リスクと投資目的があやふやに設定されており、納得いくポートフォリオが組まれていないときだけです。

投資をはじめたら、市場が不安定になったり、価格がガクンと落ちることが必ずあることを心構えしておくこと。そして、そのような状態も想定内であり、長期的にはおそらく目指す投資目標までたどり着くはずだということを納得しておくことが必要です。

見ないほうがいいなら見ないこと

とはいっても、ニュースを見たり、ファンドのパフォーマンスをチェックしてしまうと、不安になることもあるでしょう。人間ですから、やっぱりネガティブな結果はいやなものです。ならば、いっそのこと「見ないこと」をお勧めします。いちいちBreaking Newsに振り回されない、市場動向には疎くする、残高チェックは多くても月に一回にする・・というのがいいでしょう。リタイヤメントなどの長期投資の場合には、いつも見張っていたり、逐次行動を起こしたりすることは、百害あって一利なしです。気を配ったほうがいい事項があるとすれば、毎年の法律改定くらいなものでしょうか。積み立て限度額の法律改定や、利用条件の変更などには気を配ったほうがいいかもしれませんが、投資市場状況には気を配る必要はありません。「見ないこと」が一番です。

ただしぜんぜん見ないのもいけませんから、一年に一度から数年に一度の頻度で、自分の投資目標に向かって投資成績があがっているかだけチェックします。あがっていなければ、振り出しに戻って、許容リスクと投資目的の見直しをし、それにあったポートフォリオにするため調整をします。

マーケットタイミングは危険

市場がもっとも不調なときこそ、買いの好機であるならば、その逆手をとって不調なときには投資額をさらに増やそうか・・という方もいるでしょう。市場低迷期に買って、高揚期に売れば、さらに投機的な利ざやが稼げます。これはうまくいけば非常に儲かる投資法ですが、ミソはいつも常にうまくいかないことです。このようなやりかたはマーケットタイミングと呼ばれますが、過去のリサーチでもマーケットタイミングは、狙った「安く売り高く売る」という効果を達成できないばかりか、結果的に反対の「買ってから値下がりを経験したり、売ってから値上がりを見たり」という状況に陥りやすいということがわかっています。これは、市場がいつどこまで落ちて底値になるか、市場がいつどこまで上がってピークになるかという正確なタイミングを測ることはほぼ不可能であるということが原因です。

Fidelity社の調べにこんなものがあります。1980年1月1日に$10,000をS&Pファンドに投資し、それを2013年12月31日までの34年間持ち続けるとポートフォリオは$440,000にまで増えるのに対し、マーケットタイミングに失敗し、ピークを予測しそこない、ピークまで上がる直前に売ってしまったことで、この34年間のうちピークのたった5日間(もっとも株が値上がりしたベスト5日間)をミスしたことで、34年後のポートフォリオは$284,000に激減するという結果でした。たった、5日間を逸しただけで35%減です。

たったの5日ですが、この5日は大きいです。株式市場は一日のうちに30%も値下がることがある反面、30%も値上がることもあります。銀行口座の一日をミスしたのとはレベルが違う話です。

5日間を逸しないにはどうすればよいでしょう。答えは簡単です。持ち続けること。タイミングが正確に測れない以上、タイミングを測って売ったり買ったりしようとしないのが一番で

ただただコンスタントに積み立てること

マーケットタイミングをしないことの応用編は、コンスタントに積み立てることです。タイミングをみて売り買いしたりしないのと同じように、タイミニグをみて積立額を増やしたり減らしたりしないこと。もちろん積立額の上下はありえますが、これは市場動向を見て行うべきことではなく、自分のファイナンシャル状態をみて、今は少し余裕があるからもっと積み立てる、今年は他にフォーカス(たとえばお子さんのカレッジ資金など)すべきなので積立額を減らすというように調整すべきものです。Dollar Cost Averagingという言葉をお聞きになった方もいらっしゃると思いますが、毎月一定額、たとえば$300をコンスタントに積み立てるという設定にしていると、市場低迷期には$300÷低い株価=より多い株数となり、安いときこそたくさん投資するという効果が自然と得られます。反対に、市場高揚期には、$300÷高い株価=より少ない株数となり、高いときには少しだけ投資するという効果が自然に得られます。自分で市場の状況をみてあれこれ判断する必要がなく、またタイミングを逸することもなく、なるべく安く買うことが自然と行われます。

ただし、529などは気をつけましょう・・・

以上の議論は、これから少なくとも10~15年以上の期間がある長期投資についてあてはまります。反対に、あと3年でお子さんがカレッジに入学される場合の529カレッジプランなどにはそのままあてはまらないケースもあります。通常529プランなどですと、Aged Basedのポートフォリオが人気で、お子さんのカレッジ入学が近づくにつれてだんたんと株式比率が下がっていき、株式市場の影響を受けにくくなっていきます。それがどのようなタイミングで、またどのような比率で調整されるかは、投資会社によって開きがあります。ご自分のプランの調整についてよく理解しておくとともに、今後数年間の株式市場が期待できそうにないと判断される場合には、あえて株比率をさらに下げておくという調整も必要かもしれません。よって、ある程度ニュースや動向を踏まえての調整も必要になります。

529プランにせよ、リタイヤメント口座にせよ、お金を引き出すまでに10年以上ある場合は、いったんきちんとプランしたら、毎月/毎年コンスタントの積み立て、市場の動向には鈍感であるのが一番ですが、反対にお金を引き出すまでの期間が短くなればなるほど、より頻繁な再調整が必要になります。

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