Roth IRAとTraditional IRA どちらを選ぶ?

Last Updated on 2013年1月9日 by admin

401(k)と並んで、リタイヤメント準備のためによく使われるIRA(Individual Retirement Arrangements)。IRAにはいろんな種類がありますが、その中でももっともよく使われるのはRoth IRAとTraditional IRAですね。このふたつ、どちらがベターか・・・という質問をよく耳にしますが、それはまさにケース・バイ・ケース。どちらがベターかという前に、収入がなかったり逆に多すぎたりしてはそもそも利用できない場合もあります。では、どちらも利用できるというのであれば、どうやって選べばいいのでしょうね。まずは、比較表から・・・

Roth IRA

Traditional IRA

所得税面の優遇 積み立ては所得税の控除なし、非課税で運用、引き出すときにも無税。 積み立ては所得税控除あり、非課税で運用、引き出すときに税金がかかる。
資格(年齢) 年齢制限なし。ただし勤労所得があること。 70歳半以下で、勤労所得があること。
資格(収入) Max Contribution(上限額まで積み立て可):Single File=$110,000まで、Joint File=$173,000まで Maximum Deduction(上限額まで控除):職場のリタイヤメント・プランあり→Singl=$58,000、Joint=$92,000、職場のプランなし→Single/Joint =無制限、配偶者が職場のプランあり→$173,000
Reduced Contribution(減額で積み立て可):Single File=$110,000から$125,000まで、Joint File=$173,000から$183,000まで Reduced Deduction(控除減額):職場のリタイヤメント・プランあり→Single=$58,000から$68,00 0、Joint=$92,000から$112,000、配偶者が職場のプランあり→$173,000から183,000
Max Contribution(積み立て上限額) $5,000、ただし50歳以上なら$6,000。所得がそれより少なければ、所得額が限度
引き出し時の所得税 元本:いつでも非課税で引き出し可能 元本:課税
利子:積み立てから5年以上たち、かつ、1) 59歳半以上、2) 死亡、3) ディスアビリティ、4) 初めての持ち家 のどれかに当てはまれば非課税 利子:課税
10%ペナルティ 1) 59歳半以上、2) 死亡、3) ディスアビリティ、4) 初めての持ち家の条件か、5) 高額医療費、6) 高等教育費などの条件のどれも満たさない場合には、課税対象部分に10%ペナルティが課せられる。
Min. Required Distributions(最低引き出し額) なし 70歳半より、最低額の引き出しが必要

*限度額などは2012年の数字

どちらを選ぶのがいいのでしょう。以下、選択のための3つの要素を考えます。

収入

収入によって、Roth IRAは積み立て可能な額が決まります。Traditional IRAは収入にかかわらず積み立ては可能ですが、所得税控除できる額が変化します。高額所得者は、Roth IRAは利用不可であるうえ、Traditional IRAに控除なしで積み立てることしかできないということになります。控除なしに積み立てるTraditional IRAはNon-deductible IRAと呼ばれます。Non-deductible IRAは積み立て時も控除なし、引き出し時も課税でいいとこなしではありますが、ただ運用利回りは引き出すときまで課税されない(税遅延)の利点がありますので、ふつうに利回りが課税されるインベストメントに比べると、運用額を早く増やせるという利点があります。また、最近では所得制限にひっかかってRoth IRAには積み立てができない場合に、いったんNon-deductible IRAに積み立てて、それをRoth IRAのコンバートするというように「経由地」として使われることもあります。

 

タックス・ブラケット

基本的に、Roth IRAは積み立ててるときに所得税を払い、引き出すときは無税(所得に数えられない)でOKであるのに対し、Traditional IRAは積み立てるときには無税(所得控除により所得税を減らす)、引き出すときには所得税を払うというものです。一生懸命はたらいて貯めたリタイヤメントの資金を、リタイヤした後に使うという典型的なケースでいけば、積み立て時は勤労所得がそれなりにあるわけで所得税率は相対的に高く、リタイヤした後は所得がそれなりに低下し、所得税率は相対的に低くなるというのがふつうでしょう。この場合、他の条件が一定であれば、Traditional IRAに積み立てる時点で節約できる税金のほうが、Roth IRAで引き出すときに節約できる税金より多くなります。つまり、Traditional IRAに積み立てたほうが有利です。

反対に、現在失業中であるとか、あるいは一時的な不景気のため所得が激減したため、タックス・ブラケットが今年は低く、将来リタイヤした後のほうがかえって税率が高くなるというようなケースもあるでしょう。その場合は、Traditional IRAに積み立てる時点で節約できる税金は比較的小さく、将来Roth IRAで引き出すときに節約できる税金のほうが多くなります。つまり、Roth IRAに積み立てたほうが有利です。

また、連邦税だけでなく州税も考慮に入れたほうがいいかもしれません。今住んでいるのが比較的、州の所得税の高い州(New York, New Jersey, California, Oregon、Hawaiiなど)で、リタイヤメント後は所得税の低い州(Florida, Texas、Nevadaなどは州の所得税ゼロですって!うらやまし~)に引っ越すというのであれば、Traditional IRAのほうが有利、その反対であればRoth IRAのほうが有利ということになりますね。

その中庸で、現在の税率と引き出し時の税率が同じというのであれば、節約できる税金のことだけにフォーカスすれば、どちらでも同じということになります。

最近ではアメリカの国家赤字ため、将来にわたって税率は上がり続けるだろうという考え方が強くなってきています。本来ならばリタイヤメント後は所得が低くなり税率が下がるはずであるところ、国家的に全体の税負担が上がらざるを得ないため、自分のリタイヤメント後の税率は、今支払っている税率より高くなるであろう(たとえ所得が下がっても!です)という危惧が存在するわけです。なんだかちょっと考えるだけで暗くなりそうですが、もしそう信じるのであればRoth IRAのほうが有利ということになりますが、これはあくまで予想ですからなんともいえません。

また、追加ですが、カレッジなどの高等教育のためにはどちらのIRAからもペナルティーなしで引き出して使うことができますが、税金は払わねばなりません(Roth IRAの場合は利子のみに対して)。この場合は、積み立て時の税率とカレッジのために引き出し時(リタイヤメント後ではなくて)の税率の比較になり、当然後者のほうが高いということもありえます。そうなると、Roth IRAのほうが有利ということになります。

つまるところ、Roth IRAとTraditional IRAどちらが有利かは、積み立て時に払う税金と引き出し時に払う税金のどちらが少ないかの問題になるということですね。。

 

エステイト・プラニング(相続対策)

引き出しに関しての大きな違いは、Minimum Required Distributions (最低引き出し額)の設定の有無です。Traditional IRAの場合、70歳半になった時点で、最低限引き出さねばならない額というのが発生します。この額は、その時点での予想寿命から割り出されるものです。リタイやメント資金がふんだんあるわけではなく、ソーシャル・セキュリティー・ベネフィトではカバーしきれない生活費をリタイヤメント資金でまかなうことが必要な場合(つまり、大多数のフツウの人たちにとって)は、このMinimum Required Distributionsは大きな問題にならないでしょう。

しかし、あなたが富裕層でIRAからは特にお金を引き出さなくても老後の生活がなりたっていくような場合は、このMinimum Required Distributionsは面倒なものです(そんな立場になりたいですけれども・・・)。しかしながら、もし、Roth IRAでお金を貯めていたとしたら、このMinimum Required Distributionsがありませんので、一生涯、非課税のままお金を貯めて置けます。

また、本人が死亡した場合は、IRAのお金はそのベネフィッシャリー(受益者、相続者)に引き渡されますが、Traditional IRAの場合は、資金を引き出したときにベネフィシャリーが自分の収入として税金を払います。一方、Roth IRAの場合は、すでに死亡した本人が税引き後で積み立てているわけですから、ベネフィシャリーが引き出す時点で税金を払う必要がありません。言い換えれば、ベネフィシャリーに代わって税金を払ってあげたうえで、ベネフィシャリーがいつ引き出しても非課税で使える資金を残してあげるということになります。このように、Roth IRAは、リタイヤメント資金の積み立てという本来の目的に加えて、相続税対策にも使われることがあるようです。

 

 

20 comments

  1. 現在66歳。10数年前米国駐在して401Kに加入していました。帰国しても手を付けませんでした。現在17万ドルになり、日本送金を考えましたが税金20%取られるのでIRAを考えています。まだ米国に銀行口座もあり、将来米国に住む(家購入等)事を考えています。

    その場合:
    1.米国に行って銀行かどこかで手続きする必要がありますか?
    2.米国のTAXを支払う必要がありますか?
    3.なにか注意する点がありますか?
    宜しくお願いします

    1. コメントありがとうございます。残念ながらご質問の件、個々人の状況を把握しないままで簡単にお答えできる範囲を超えておりますので、コメント欄でのご相談は受け賜われません。コメント欄ではあくまでブログ記事に関係する、一般的な情報についてのコミュニケーションに限らせていただいております。ご理解ください。

  2. こんにちは。こちらのサイトでいつも勉強させていただいております。収入の関係で税金控除が受けられないため、Non-deductible IRAの口座を開きたいと思っております。VanguardにはNon Deductible専用の口座があるのでしょうか。また、今年の収入ですと、Roth IRAにも数百ドルですが預けられそうなので、こちらも新たに口座を開く予定でおります。2つの口座を開いた後、Non deductible IRAからRoth IRAへコンバートできないか疑問に思っております。初歩的な質問で申し訳ありませんが、ご回答いただければ幸いです。

    1. 通常、Traditional IRAは、401(k)と違い、課税後の収入を積み立て、もし収入などの条件から積立額の全部あるいは一部がDeductibleであればタックスリターン時にその分を申請します。Non-deductibleの場合は、だたその申請をしないだけのことになります。ですので、Vanguardでも、Traditional IRA口座を開くことで対応します。コンバージョンについては、下記の記事をご覧ください。今のところ、コンバージョンが制限される法律はありません。https://smartandresponsible.com/blog/backdoorira/

  3. お世話様です。

    私62歳 妻59歳 今からRoth IRAをするメリットはありますか? 投資を考えているのですが 単体で株 ETFに投資をするのがいいのか、Roth IRAに株、ETF投資を入れて投資することが出来るのならその方がいいのか 。 Roth IRAを始めるには遅すぎた感があるのですが。

    宜しくお願いします。

    1. コメントありがとうございます。いただいた情報だけでは、Rothがいいのかどうなのか判断がちょっとつきかねます。ただ、収入がおありで、リタイヤされてからは所得が今より下がるという場合には、たとえ少々遅かろうとRothを使う意味はあるように思います。単体株かETFかについては、本ブログにインデックスファンド投資についてたくさんの記事がありますので。そちらをお読みいただくとよいかと思います。

      1. お世話になっております。 再度RothIRA につき質問です。 RothIRAは積立時に所得税を払うとありますが意味がわかりません。今ある貯金から例えば一万四千ドル積み立てるとしてそこに25%なり30%なりの税金がかかるのですか?そうじゃないですよね? traditional IRAが積立時に所得税が免除されるというのは分かります。所得から一万四千ドル控除した分に所得税がかかるので所得税が低くなります。 すみませんが何卒よろしく御説明お願い致します。

        1. そうですね、そういう表現は誤解されがちですね。”積み立て時に払う”のではなく、正確には”所得税を支払った後のお金で積み立てる”のほうがよかったです。貯金のお金はすでに所得税を支払った後のお金ですので、税後積み立てることになります。

          1. 早速のお返事深謝致します。本当に有り難うございました。 全くのど素人な者でまた質問が出てきました。 1)もし仮に千四百ドル投資したとしてその年度内に投資株が下がって含み損が出た場合(千四百ドルを割った場合、または5年分7万ドル投資して7万ドルを割った場合、追加投資できるのですか?それとも1年に一万四千ドル1回でも到達したら追加投資は出来ないのですか? Roth IRAについてです。
            2)毎年一万四千ドル投資するには夫婦で一万四千ドル以上の収入がなければいけないのですね? もし
            夫婦で五千ドルとかになれば五千ドルが投資額のリミットということですね?
            来週にでも遅まきながらETF投資デビューそして年内にはRothIRAを遅まきながら始めようと思っております。 今後共アドバイス頂けましたら誠に助かります。何卒よろしくお願い致します。

          2. 1)追加投資はできません。その時の残高は関係なく、いくら積み立てたか が問題になります。
            2)おっしゃるとおりです。収入以内での積み立てになります。

          3. 大変お世話になっております。 すみません、またRoth IRAの質問です。ネットで調べたのですが答えが見つけられなかったのでお尋ねいたします。 Rogh IRAの銘柄を決め一旦拠出するとそれ以降は売買は出来ないのですか?下がりそうな銘柄を売って新たな銘柄にswitchすることはできるのですか? 出来るとすれば何か制限はありますか? その年度内に拠出した銘柄しか売る事ができないとか、etc. それとも過去に遡って数年前に拠出した銘柄を売ることも出来るのでしょうか? その際のamountの計算はきっちり売買前の額かそれ以下ですか? 万一 拠出した銘柄の会社が倒産して貯蓄額が減っても再投資は出来ないことは前回の御返事で承知致しました(毎年一万四千ドル拠出がMaximum)。  度々申し訳ございませんが何卒よろしく御願い致します。 本当に有り難うございます。

          4. 売買できます。Smart & Responsibleではインデックスファンドベースの長期投資(売買しない)を推奨しておりまして、申し訳ありませんがご質問のような内容にはお答えできません。

          5. すみません、 Roth IRAにつき確認です。夫婦二人だと1年のcontrubution額は最高$14000ですよね?($7000ではなく)。その際夫婦の1年の勤労収入が二人合計で$14000あれば$14000投資出来るのですか?それとも一人で$14000勤労収入が必要ですか?
            何卒宜しく御願い致します。

          6. おふたりとも50歳以上で、タックスリターンをJointでファイルされており、その額以上の収入が二人合わせてあればOKです(他の所得制限などひっかからない前提で)。ただ、一人$7,000ずつを2口座つくることになります。一口座で夫婦ジョイントということはできません。

  4. 大変お世話になっております。
    再度 Roth IRAにつき質問です。 色々と調べていたらSpousal IRAというのを目にしたのですが、これは
    Roth IRAやTraditional IRAといったIRAのタイプではなく、ただ無収入あるいは少しの収入の配偶者でも他方の配偶者のContributionによってRoth IRAあるいはTraditional IRAにアカウントを作れますよという事ですよね? 何もSpousal IRAという特別な口座開設の手続きは必要ないですよね? 普通にRoth IRAの口座を夫婦で各々1個づつ作れば問題なく、二人合計で$14000以上の勤労所得があれば各々に$7000づつ(満額)Contribution出来るという事でしょうか? (TAXはジョイントで申請しております)
    全くのど素人で何回も質問して本当に御免なさい。つい最近これらについて勉強し始めたものですから。62と59ですけど今からでも始めた方がいいですよね?
    本当に有り難うございます。 心から感謝致します。

    1. お返事遅れました!おっしゃるとおりです。Spousal IRAという特別な口座があるわけではありません。おっしゃるとおりのご理解で大丈夫です。今からでも、節税しつつ貯めていかれるのが良いと思います。思い立った時が吉日です。

  5. 御返事 誠に有り難うございました。 本当に役立つ情報を心より感謝致します。
    有り難うございました!!!

  6. 現在54.5才、過去に勤務した際に貯蓄した401KとIRAを2つ保持しつつ、現在3つ目の401Kを積み立てており、まとめるべきか、現状保持かを検討中です。御記事の中で、管理面・手数料等を考慮して、とありましたが、どういった比較をするのか方向性をご教授頂けますでしょうか。商品は、①5年半勤務後退社時に401Kから個人traditional IRAへ移行し、残高約100K、ここ1年の年利回り8~10%、手数料年15ドル、②入会可となる数か月で転職した401Kで、残高8K、ここ利回り10%強、手数料が年にすると約30ドル(さらにrollover時に手数料50ドル)で、どちらも同じようなportforioです。
    以上の二つを現在の401K(IRAもrollover可能とのこと)にまとめるべきでしょうか?

    1. 個々のケースで差があるかもしれませんが、ふつうは管理費がかかるかかからないか(最近はかからないほうが多いかと思います)とファンドの質(低手数料のイデックスファンドなら◎)などと、あとは管理の煩雑さ(ほったらかしでそれほど面倒でないならそのままでもOK)などを見ます。現在の401(k)がそのどれもで優れているなら、まとめない理由はないように思います。

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