アンブレラ保険という名前をお聞きになったことがあるでしょうか?車に乗るなら自動車保険を買わねば乗れません。家を買ってモーゲージ・ローンを組むなら、ホーム・オーナーズ保険に入らないとお金を貸してもらえないでしょう。しかし、アンブレラ保険はふつうに生活している分には、「買わねばならない」という状況にはならないので、「盲点」となりえる保険です。アンブレラ保険のことをそもそも知らない、あるいは知っていても入っていない人が案外多いものです。このアンブレラ保険、どんな場合に必要なのか、一緒に考えて見ましょう。
アンブレラ保険ってなに?
アンブレラ保険とは、その名のとおり傘のように他の保険のうえに存在する保険です。万が一、訴訟されライアビリティ(賠償責任)を負い、その額が、自動車保険やホーム・オーナーズ保険、レンターズ保険、コンドミニアム保険などで補償できる額を上回っていた場合、アンブレラ保険が補償をするというものです。
自動車保険やホーム・オーナーズ保険の補償リミットである、$300,000や$500,000などの数字は一見十分なもののように見えますが、事故の内容によってはとうてい必要補償に満たないことも多いでしょう。事故の相手が外科医で手に怪我を負って仕事ができなくなった、ティーン・エイジャーの息子が大きな事故を引き起こし友達に大怪我をさせてしまった、自宅のプールで遊びにきていたこどもがおぼれてしまったなどとなれば、桁違いの賠償責任をかかえることになります。
このような事故以外にも、アンブレラ保険に頼らねばならない状況も考えられます。“Anyone can sue anyone else for anything”とよく言われます。訴訟には、本来ならば「訴訟を起こすべき根拠」がなければならないはずですが、その「根拠」は首をかしげるようなものも多い今日この頃。最近では、「根拠」より、「訴訟を起こしたときお金がとれそうか」という要素のほうが、訴訟を起こすかどうかの判断基準になってきています。Personal injuryの弁護士は、訴訟相手の資産をいちはやく調べるわけです。
つまり、わたしたちは、「訴訟されるようなことを引き起こしそうか」という側面からだけでなく、「訴訟されて、とっていかれそうなものを持っているか」という側面にも焦点をあてねばならないということですね。根拠のない訴訟を起こされた場合でも、自分を弁護せねばならず、その費用は嵩みます。アンブレラ保険は、ライアビリティ(賠償責任)だけでなく、弁護費用や名誉毀損などについてもカバーします。
このようにアンブレラ保険は、自動車やホーム・オーナーズなどの基本となる保険の補償で足りない場合のエキストラ・プロテクションを提供するものです。
アンブレラ保険は誰が必要?
まずは、「訴訟されるようなことを引き起こしそうか」という側面に焦点をあてると、こんな方々・・・
- 犬を飼っている
- 家にプールがある
- ティーンエイジのドライバーがいる
- 家でよくパーティーや集まりを持つ
- ボート、水上スキー、スノースキー、オフロード車を持っている
- 貸家や別荘を持っている
- ボランティア・ワークをしている
最後の、ボランティア・ワークをしている・・・で首をかしげる人もいらっしゃるでしょう。悲しいことにこれも現実らしいです。以前、こどものプレスクールのボード・メンバーとしてボランティアをしたことがありました。小さな和気あいあいとしたモンテソーリ・スクールの、これまた小さな和気あいあいとしたスクール・ボードでしたが、そのうちのひとりがご主人が大きなビジネスを持っていてたくさんの資産のある方でした。その人は、ボード・メンバーとしての決断や活動に対して訴訟を起こされたときのために、学校がライアビリティに対しての保険を買わないのなら、自分はボランティアは続けられませんときっばり言い切りました。う~ん、複雑な気分ですが、現実です。。
それから、上のケースとも関連しますが、「訴訟されたとき、とっていかれそうなものを持っているか」という側面で考えますと、こんな方々・・・
- 家、貯金、リタイヤメントや学資などの積み立て、投資、家などの資産がある
- 安定した収入がある
- 経済的にサポートしていくべきこどもがいる
資産総額から負債総額を差し引いた純資産を計算してみましょう。その額が、自動車保険やホーム・オーナズ保険の補償リミットより多ければ、アンブレラ保険に加入することをおすすめします。またそうでない場合でも、安定した収入があれば、将来にわたって収入を差し押さえられる可能性がありますので、加入することを考慮したほうがいいでしょう。
アンブレラ保険ってどうやって入るの?
まずは朗報から・・・アンブレラ保険は高くありません。自動車保険は都市部なら車2台で1年数千ドルに及ぶこともしばしばですが、アンブレラ保険は$1ミリオンの補償額で1年で$150から$300です。
アンブレラ保険は、自動車やホーム・オーナーズなどの基本となる保険からの補償が尽きた後に、その補償が有効になるという性格をもっていますから、これらの基本保険の補償がある一定以上でなければ加入できないというような条件があります。たとえば、これらの基本保険の補償が最低で$250,000あるいは$300,000でないとアンブレラ保険には加入できないという具合です。
自動車保険やホーム・オーナーズ保険などの基本保険をひとつの会社にまとめて、複数ポリシー・ディスカウントを得ると同時に、同じ会社からアンブレラ保険を購入するというのが理想的な方法でしょう。現在契約している保険会社から、アンブレラ保険の見積もりをとってみるとよいでしょう。ただし、現在の保険会社に選択肢をリミットせず、他の数社からも見積もりをとるとよいようですよ。保険会社を変えたほうが、全体的コストが下がるということはよくあることです。
最初の$1ミリオン補償の保険料が最も高いもので、その後補償額を追加していくと、$1ミリオンあたりの保険料は下がっていくのがふつうだそうです。ただし、これは保険会社によって随分異なるらしく、富裕層をたくさん顧客として抱えている保険会社は、最初の$1ミリオンは1年につき$150から$300、追加補償$1ミリオンあたり$100から$125、さらには$50から$75あたりまで下がることもあるのに対し、中間から低所得者層をメインの顧客にしている保険会社では、$1ミリオン以上になると急に保険料が上がるというケースもあるそうです。これは、$1ミリオン以上の補償を契約する顧客があまりいないため、十分な顧客プールが確保できず、保険会社としてリスクが上がるためだそうです。ですので、ご自分の必要に応じ、ぴったりの保険会社を探すため、少なくともいくつかの見積もりをとったほうがよいでしょう。
こんなやり方はいかがでしょう?
バンバーを傷つけて$500補償金をもらう、修理の間レンタカー代の補償をしてもらう、トーイングをタダでやってもらうという「安心」をとりますか?それとも、万が一にも訴訟を起こされてそれまで一生懸命働いてやっと完済した家をとられたり、家族を養うための収入を将来にわたって差し押さえらることはないという「安心」をとりますか?後者ですよね。。それが同じくらいのコストでできるならなおさらでしょう。保険は、小さなお金をちょこちょこもらってよろこぶものではなく、万が一の大被害のときにこそ頼れる保護を確保するものと割り切るといいかもしれません。Deductibleを引き上げたり、あまり必要のないカバレッジをドロップすることで、浮いたお金をアンブレラ保険の保険料に回すというのは、賢い選択かと思います。
こうすることで、自費でまかなえる程度の小さな損害はカバーされなくなりますが、万が一のとんでもない状態からは家族を守ることができます。
ちなみに、我が家の場合は、家を買って今のレンターズ保険からホーム・オーナーズ保険にスイッチする時点で、アンブレラ保険にも加入しようと思っていたのですが、家はいつ買えるかわからない状態なので、とりあえず$1ミリオンのアンブレラに入っておこうと思い、保険会社に連絡してみました。$1ミリオンが$248、次のミリオンは$174(合計$422)という見積もりでした。アンブレラ保険を追加すると、複数ポリシー・ディスカウントが(今もレンターズと自動車でついていますが)さらに年間$110つくそうです。つまり差し引き、$248- $110=$138で$1ミリオンまで補償ということ。加入しておきました。