本当に必要? その歯科治療??

最近、歯医者でCreative Diagnosis(クリイティブな診断)が往々にして見られるというレポートを読みました。突き詰めると本当に必要かどうかわからない処置を促すために、ありもしない症状を捏造したり、まだ時期尚早であったり不必要な措置を強く勧めたりというようなトレンドを指すようです。American Dental Associationもこのトレンドを認めており、“disturbing(不穏)”であるとしています。歯医者に行って、高額な処置を勧められたとき、本当はしなくてもいい処置を受けなくて済むようにはどうしたらいいのでしょう。

ちまたには、このCreative Diagnosisをうまく使って歯科ビジネスの収益を上げるにはどうしたらいいかというようなトレーニングコースもあるそうです。違法ではないが、モラル的にはどうかと思われるようなすれすれの線で、なるべく売り上げを上げていくというアイデアが教えてもらえるそうです。

信頼できる歯医者もいれば、モラルが疑わしい歯医者もいますね。ひとつの症状で受診しても、勧められる処置の種類や範囲も異なれば、その値段も大きく違ってくるという現状があるようです。あるReader’s Digestの記者が、あちこちの歯医者を50カ所回って見積もりをとるという試みをしました。全体的には彼の歯はよい状態であり、詰めものかかぶせもので対応するべき奥歯一本以外にはとくに問題はないというのが、彼の信頼するかかりつけの歯医者の診断でした。ところが、50カ所を回ってみると“絶対必要な処置”から“コスメティック面で勧める処置”までを含んだトータル費用の見積もりには、$1,197から$29,850までのバリエーションがあったそうです。

実際、”どこまでが必要な措置であるか“という点についても、ある部分では主観的な面があり、モラル的に悪意がない場合でさえある程度の意見の違いは歯科医の中に存在してしかるべきであるうえ、ここに”収益の底上げ“という意図が加わると、勧められる処置には大きな差がでてくるというのが現実のようです。

信頼できる歯医者であれば、レントゲン写真や鏡を使いながら問題をきちんと説明してくれたり、また必要な処置についてもいくつかオプションを示してくれ、それぞれの長所と短所を上げてコスト比較もしてくれるものだと思います。もしそのような説明がなければ、こちらから説明をお願いするべきでしょう。上のように、”必要“と思われる処置にもある程度の主観の違いが存在するうえ、対処法も必ずしもひとつではなく処置の方法や使う材料にもいくつかの選択肢があるものです。また、高額の処置ならばセカンドオピニオンもとったほうがいいでしょう。

巷によくあるケースを列挙してみました。

詰めものを新しく取り換える

古い詰めものを新しくとりかえることを提案されたら、その理由を確認しましょう。たしかにいったん詰めたものが永久に問題がないというわけではないようで、摩耗したり、穴があいたりすることもあるようです。取り換えるべき理由があれば迷わずするべきです。一方で、日本人がよく使ってきた金属アマルガムの詰めものには水銀が使われているため健康上問題があるので、新しい詰めものに変更したほうがいいというのはよく使われるセールストークですが、これについては、American Dental Associationがガイドラインを発行しており、「現在の科学的データに基づけば、アレルギーなどの問題がない患者の場合、有害物質を取り除いたほうがよいという歯医者の判断だけで、アマルガムを除去すべきだとすることは、不正であり倫理に反する」としています。

初期段階の症状の措置

Microcavitiesと呼ばれる、歯の表面の白いスポットなどの小さな斑点は、将来虫歯になる可能性もあるものの、そうでない場合もあるそうです。それを「早期治療」のために削るのは、必ずしも歯の健康維持のために良いものではなく、「観察」したほうがいい場合も多いとのこと。

必要以上のレントゲン撮影

American Dental Associationは、フルセットのレントゲン撮影は2年に一度が望ましいというガイドラインをつくっています。それ以上に頻繁なレントゲン撮影は(特別な理由がない限り)不要であるうえ、不要な放射能により健康上の問題をつくることにもなります。また最近では“cone-beam X-ray”と呼ばれる3Dレントゲンを提案する歯科医もいるそうですが、この最新技術は通常のレントゲンの18倍もの放射線を発するとのことで、特に必要な理由がないかぎりは通常のレントゲンで事足りることが多いそうです。

四半期に一度のクリーニング

大多数の歯科保険は一年に2回(半年に1回)のクリーニングをカバーしているのに対し、それでは不十分なので四半期に一度クリーニングを受けたほうがよいとする歯科医もいます。フロスや歯磨きをどのような頻度で行っているか、その他口内衛生上の問題がないかなどを鑑みる必要がありますが、とくに問題がなければ通常は4半期に一度のクリーニングは不要です。

ディープクリーニング

ディープクリーニングは、歯科衛生士による歯茎や口内の病気を治療するための措置です。ところが、通常のクリーニングをしばらくしていなかった、あるいは歯をよりきれいに保つために、簡単にディープクリーニングが提案される場合もあるようで、コストは数千ドルに及ぶこともあります。きれいにするのだから利益はあっても問題がないだろうと、コストが許せば受ける人も多いようですが、不必要なディープクリーニングはかえって歯茎を傷めることにもなりかねないという指摘もあります。American Academy of Periodontologyは、レントゲンで骨にダメージが発見されたり、あるいはチェックアップで歯茎のポケット(歯茎と歯の間の隙間)が4ミリ以上の深さがあると判断された場合にのみ、ディープクリーニングを推奨するというガイドラインをつくっています。また、その場合は口内全部をディープクリーンするのではなく、影響のある部分だけを処置することを勧めています。ディープクリーンを勧められたら、その理由を確かめるとともに、必要な部分を特定して受けることがよいようです。

その他の留意点

よく広告されているような、フリークリーニングとかホワイトニングのスペシャル価格などは、それにひかれて行ってみると、あれやこれや問題を指摘されて他の措置を勧められることも多いようです。利用の際にはそれなりの心構えが必要でしょう。また、会社組織になっているような歯科チェーン(Aspen Dentalなどのような)は、売り上げ向上のためのセールス志向があり、そこで働く歯科医にも売り上げ目標のようなものを設定されていることもあるそうです。治療者というよりはセールスマンのような歯科医もいるそうですので、お気を付けを。

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6 comments

  1. まさしくこのような歯医者に暫くかかっていました。初めは親切だなと思っていましたが、ディープクリーニングの他も色々治療を促され、事前の費用の連絡もなかったので、診察毎に$300請求されました。おまけに、どうもおかしいなと思ったので、EOBと請求書を自分で計算すると、$180の差額(クレジット)が判明。清算をしてもらったあとはその歯医者をやめました。
    逆に今通う歯医者は商売っけを全く感じず、ここ2年ほどは年に2度のチェックアップだけです(保険100%カバー)。

  2. 昨年初めて、クリーニングのために歯医者に行きました。30分ほど居心地の良いシートに座らされ、レントゲンを念入りに撮影され、その後クリーニングをしてもらい、結果報告の際やっぱりディープクリーニングを勧められたり、詰めものをしてあるところが虫歯になり掛けてるとか、如何も今ちゃんとしておかないと後で大変なことになるような言い方をされ、見積書を渡されましたが、保険を使ってもこんなアホみたいな値段払えるかと思ったのでまた電話しますと言って帰ってきて、その後全く電話もせずその歯医者にも行ってません。飛行機代を使って日本で歯医者に行く方がまだ安いって思いました。

    1. 本当に必要なのかどうなのか、どうも微妙で信じられないこと、多いですよね。日本で歯医者に行く人は多いですよね~。。

  3. こんにちは。

    今までかかっていた歯医者がリタイアしたので、彼のビジネスを引き継いだ歯医者に初めて行ってクリーニングをしたらレントゲンを撮られ、ほとんど影とも撮影ムラともつかない映像を見せられて詰め物を勧められ、支払い計画まで話がすっ飛びました。銀塩フィルムとディジタル画像の違いはあるものの、十年近く通った以前の歯医者からはそのようなことを言われたことがなかったので「I don’t think it needs immediate attention.」と言って「様子を見てから」と今回は辞退しました。

    十数年前に、やはりリタイアした歯医者から引き継いだ若手の歯医者にクリーニングに行ったらやたら高額治療を勧めてきて、こちらは「どうせ保険枠が余ってるんだからやろう」と分かり易かったのですぐ別の歯医者にスイッチしました。

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