私がVanguardが好きなわけ・・・

私はVanguard社のファンです。また、Vanguard社を設立したJohn Bogleという人のファンでもあります。低コストのシンプルなインデックスファンドは、一般投資家の心強い味方だと思っています。Smart & Responsibleでは、401(k)などで枠組みがすでに決まっている場合は、その枠組みのなかで提供されているより良質の投資ファンドを選んでお勧めしていますが、もし枠組みがない場合はVanguard社のインデックスファンドをお勧めすることも多いです。最近、Vanguardやインデックスファンド投資のよさが見直されることが多く、うれしく思っています。投資をする方ならぜひ知っておいていただきたい・・今日はそんな話をご紹介します。

 

John Bogleは1951年にプリンストン大学を卒業後、Wellington Fundという会社を経て、1974年にVanguard社を設立しました。Bogleのリーダーシップのもと、Vanguardは成長し1999年にはFortune Magazineから“20世紀の4大投資会社のうちのひとつ”と冠されました。1975年には、一般大衆が投資することができるはじめてのインデックス・ミューチュアルファンドをつくりました。その後、1999年にはVangaurd社を離れましたが、その後もアメリカでの投資業界では尊敬されるべき存在でありつづけています。

 

インデックスファンドの誕生

その時その時で安い株を買って後で高く売ることで、株式市場のおいしいところ取りをし、市場全体の成績よりよい利回りを得ることをbeating the market とかbeating the indexと呼びますが、John Bogleはこれを目指す代わりに、株式市場の市場平均(ベンチマーク)をフォローする投資の仕方で長期的に投資することで、投資のマネジメントにかかる労力とコストを抑え長期的な視野でより高い利回りを実現することを提唱しました。

彼が始めたインデックスミューチュアルファンド(以下インデックスファンドと呼ぶ)は、株式市場全体を代表するインデックスに追随して投資するファンドです。インデックスにはいろいろな種類がありますが、S&P500などが有名です。たとえばS&P500は、米国投資情報会社「スタンダード・アンド・プアーズ社(S&P)」が、 ニューヨーク証券取引所、アメリカン証券取引所、NASDAQに上場している銘柄から代表的な500銘柄の株価を基に算出した、時価総額加重平均型株価指数です。これをコピーする形で投資するために、ファンドに該当する株を同じ時価総額比率で集めたものがS&P500インデックスファンドということになります。

1976年にBogleがはじめたVanguard 500 Index Fund(S&P500 Index)は40周年を迎えました。彼は、頻繁に売り買いを繰り返して利ざやを稼ぐような投資の仕方は、恒常的によい利回りを得続けることが難しいうえ、売り買いによるマネジメントコストやセールス手数料、税金や取引にかかる費用などを考え合わせると、インデックスファンドに投資をしてそれをただただ持ち続ける形のインデックス投資よりも、長期的に優れた成績を出し続けることは困難であろうと考えました。よって、低手数料で売り買いも最小化したたくさんの株にまんべんなく投資するインデックス投資を提唱したわけです。

 

投資と投機

Bogleのアイデアは、投資(Investment)と投機(Speculation)をはっきりと区別するものでした。インデックスファンドへの投資は前者の「投資」にあたります。投資はリスクをコントロールしながら長期的に利回りを確保していく方法であり、一方で、投機は売り買いによって短期的な利ざやを稼ぐことを目的にしています。以下の要素が端的にBogleの提唱する、長期投資のスタンスを説明しています。

  • 低コストのインデックスファンドを選ぶ。
  • 投資媒体やファンドを選ぶための「投資アドバイス」はその価値をよく吟味する。長期的な投資利回りが劇的に向上するような「投資アドバイス」はなかなか存在しえない。
  • 過去のパフォーマンスにファンドの質を見るうえでのある程度の重きを置きながらも、それを重要視しすぎない。昨年非常に成績のよいファンドが今年も同じように成績がよいとは限らない。
  • すばらしい成績を記録したファンドマネージャーが、将来的にも恒常的によい成績を出すとは限らない。
  • ファンドの投資資産規模に気を付ける(急速に大きくなったファンドは注意)
  • あまりにたくさんのファンドに投資しない。必要なリスクレベルを実現する、かつなるべくシンプルな投資がベスト。
  • 投資したら、それを持ち続ける。

 

Active InvestingとPassive Investing

Bogleが始めたVanguard 500 Index Fundは、当初は投資家から$11.3ミリオンの投資額を集めたにすぎず、それはS&P500 Indexのすべての株を買うのに十分ではありませんでした。Vanguardの競合企業からは、インデックス投資が、よい銘柄を研究して選び、よい成績を得ようとする(Active Investingと呼ばれる)ではなく、単にすでにあるインデックスに追随して投資するという、消極的な投資(Passive Investingと呼ばれる)であることを小ばかにしました。専門家からもさまざまな批判を受けました。

40年たった今、Active Investingは恒常的に期待できる高い利回りを実現するものではなく、つまるところPassive Investingのほうが理に適うことを多くの人が認めています。とくに2008年以降の不安定な市場を背景に、Active Investingに課されるファンドの手数料に対して厳しい目が注がれるようになり、それに伴い低コストのインデックス投資に注目がされるようになりました。それまでは、不動産バブルもあいまって、高い手数料や高いアドバイス料を払って行っている、“ファンシーな”投資がそれに見合う成績を残しているのだろうとふんわりとした期待があり、なんとなく見逃されていたものが、実際払っている手数料はそれに見合う価値があるのかを問う姿勢がでてきたのです。401(k)ファンドの手数料などの公示もされるようになり、インデックス投資の価値が見直されました。2015年(1月から11月までのデータ)には、Active Investingの国内株と債券ファンドから合計$140ビリオンが引き出され、それを超える$362ビリオンが国内株と債券のインデックスファンドに投資されたと発表しています。

 

長年を経た勝敗は?

具体的な数字を見てみましょう。2015 Standard & Poor’s Indices Versus Active Fund (SPIVA) Scorecardによると 、2015年12月31日で終わる5年間を見た場合、Active Investingの国内株ファンドのうち、84%の大型株ファンド、77%の中型株ファンド、90%の小型株ファンドが、それぞれ相当サイズのインデックスファンドに比べた場合、手数料後の成績で劣ったという結果でした。5年間でなく10年間で見た場合は、Active Investingのファンドのうち、82%の大型株ファンド、88%の中型株ファンド、88%の小型株ファンドが、それぞれ相当サイズのインデックスファンドに比べて、手数料後の成績で劣ったという結果でした。

Morningstar社の調べでは、2015年10月31日で終わる10年間を見た場合、4,993のActive Investingのファンドのうち、それぞれ相当するVanguardのインデックスファンドより成績がよかったのは205ファンド、全体の4.1%に過ぎなかったとしています。同社のレポートでは、Active Investingのファンドは概してPassive Investingの競合ファンドに劣る成績であり、とくにそれは長期投資においては顕著であるとしています。Active Investingのファンドは閉鎖されたり他のファンドと合併されたりなど、当初の形で存続しない確率も高く、また成績はファンド手数料と相関があり、手数料が高ければ高いほど、成績不振、あるいは閉鎖や合併の傾向が高いという結果を報告しています。

 

無印良品の投資

インデックスファンドは誰でもいつでも買うことができます。個人それぞれの適切なリスクレベルを実現するためには、いくつかのインデックスファンドを組み合わせてちょうどよいアロケーションを作り出す必要がありますが、これは特別なアドバイスがいるほど難しいことではありません。その人の人生のフェーズが今どこにあり、長期的な目的や投資スパンを確認すれば、割と簡単に答えが出せる問題です。

インデックスファンドを使ったPassive Investingの投資は、品質重視だけど低コストの無印良品を買うようなものであり、一方でActive Investingの特別なファンドを買うのは、品質がそれほどよくないが雑誌で取り沙汰される人気ブランドを買うようなものともいえるでしょう。

しかしながら、なぜいまだに、“これこれのファンドが今ホット!”だとか、“今投資するならこのファンドだとか”というような議論が存在するのでしょう?“専門家“がもっともらし気に“推薦”する特別なファンドを買いたいと思う人がいるのでしょうか?

多くの場合、Passive InvestingとActive Investingの差を知らず、またインデックスファンドがどんなもので、どのような目的のためにつくられたのかも知らないから、ついマーケティングにのせられているところも大いにあると思います。“このファンドが買い時!”のようなニュースは、実際それを買って得をした人がいればなおさらなおこと、魅力的なものに見えるからでしょう。実際は、その人の得が同じようにまた繰り返される可能性は低いにも関わらずです。

高いアドバイジング料をチャージして最もらしげにアドバイスをする“専門家”は、John Bogleの主張がうすうす正しいとは思いながらも、それを持ち出して説明してくれることはないでしょう。その時たまたま成績がよいファンドを売り込んで顧客を集め、次に今度は他のファインドの成績が良くなったらそれを売り込むことを繰り返していれば、自分たちのコミッションや利益は継続的に入ってくるからです。

Bogleは何十年も前に、“ふつうの多くの一般投資家は、市場の一般的な利回り(Market Returnと呼ばれるもので、インデックスファンドが目指すものに近い)が実現さえできれば十分であるはずだ”としています。つまり、市場全体よりも良い利回りを出す必要はなく、市場全体の平均的な利回りを長期的に実現していれば、それで十分リタイヤメント準備ができていくはずであるということです。これは、市場全体よりも良い利回りを常に出し続けることは困難であるということを見抜いていたからこそ主張できることでもありました。

この理由から、Smart & Responsibleでは、短期的な投機ではない、長期的な投資にフォーカスを当て、現状とゴールを見据えたうえで、低コストのインデックスファンドを利用して必要なアロケーションを実現する、Passiveでシンプルな投資法をお勧めしています。

Print Friendly, PDF & Email

11 comments

  1. 大変為になるサイトで、驚きです。
    私の401KにはVanguard Institutional Index Iというのがあるのですが、これも上記でお勧めのファンドの一種ととらえて大丈夫ですか?色々なサイトで株の配当金で資金を増やすタイプが人気のようで、その方向で考えていたのですが、インデックスファンドも良さそうですね。分散するほどの資金もあまり無いのですが、どちらがより良いでしょうか?20年後にリタイヤ予定です。

    1. Institutional Index Fundというのは、一般大衆向けに売られているIndex Fundとまるで内容的には同じですが、単に大型顧客(つまり、401kを提供している会社など)に対して、手数料を低く提供しているものです。ですので、Institutionalが利用できるなら、よろこぶべきことです。私はIndex Fundの大ファンですが、配当金で資金を増やすタイプもケースバイケースでよい場合もあるでしょう。ただ、ここでは個別ケースのご相談は差し控えさせていただきます。

      1. 早速ご回答頂き嬉しいです。
        これからも、色々参考にさせて頂きます。ありがとうございます。

  2. こちらのサイトで勉強させて頂き銀行に置いておくよりもインデックスファンドに投資しようとVanguard に口座を開き徐々に買い増しを始めました。
    銀行にはどれくらい置いたら良いのか迷っています。
    一カ月の生活費X6,7倍ぐらい、というのをこちらのサイトで見たような気がしましたが管理人さんは如何お考えですか。どうしても必要になったらインデックスファンドを売れば現金は作れますね。
    ほどんどをインデックスファンドに投資しても良いのかも悩みます。今二つの種類のインデックスファンドと普通の一社の株を買っています。普通の株は買った時の手数料が高くで驚きました。
    宜しくお願いします。

    1. 現金で持つのは4か月から6か月が目安ですが、現金が必要になる可能性が高ければ高いほど(Job Lossや病気など)、多く持つほうがいいと思います。インデックスファンドは当面現金化する予定のないお金をいれるのが基本です。マーケットのアップダウンがありますので。単品の株をお持ちになるのは、もちろん個人のお考え次第ですが、投資の多様化=リスク分散という意味からはあまりお勧めしません。こちらをご覧ください

  3. 単品は値段の上下が気になってストレスになりそうですね。
    これからも勉強させて頂きます。
    ありがとうございました。

  4. いつもこのサイトを楽しみに読ませて頂いております。アメリカでの投資について、日本語でわかりやすく解説していただけるのは本当に助かります。投資については、まったくの素人で今まで会社の401Kしかしてこなかったのですが、銀行にほっといたキャッシュが少したまったので、投資を考えています。会社の401Kを運営しているFidelityに相談したら、post TaxのFlexibleアニュイティーを勧められましたが、知人からFlexibleはリスクがあるのでやめたらと言われ悩んでいるところです。このサイトで推奨されているVanguardのIndex Fundをはじめてみようかと思うのですが、いったいどこへ行って申し込めばいいのですか?初歩的な質問ですみません。

    1. Fidelityは店舗があるのですが、Vanguardは店舗がありません。下記でオンラインで口座を開くような形になります。
      https://investor.vanguard.com/investing/investment-products
      FidelityでもVanguardのファンドが買えますが、Fidelityが別途手数料を課すことがあります。
      なお、インデックスファンドもリスクはありますので、完全に安全という誤解はなさらないでくださいね。

  5. 定年退職して5年経ちますが、会社の401KをVOYAという会社にロールオーバー致しました。
    担当者がいますが、会社の401Kでやっていたようにリスクテストで投資先が決定されています。
    おおざっぱに、300Kのファンドで過去年間4500㌦から6000㌦の手数料です。
    その手数料が普通なのかどうかわかりませんが、もしVanguardに替えたらどうなるのか、
    退職前、退職後でもメリットがあるように見受けられ興味がわいてきました。
    また、最近Vanguardがロポット投資?を始めたとか、IRAをVanguardに替えることを検討中です。
    ご意見を頂ければありがたいです。
    尚、現在のVOYAでは低リスクの投資に設定しています。

    1. コメントありがとうございます。詳しいことをお伺いしないでコメントをさせていただくのは控えさせていただきますが、年間$4,500なら1.5%程度でしょうか?高めとはいえますが、すでに退職しておられ引き出し方など相談にのってくださるのなら、価値があるかもしれません。Vanguardのロボアドバイザーは記事を書いております。「ロボアドバイザー」でサイト内検索いただければ出てくると思います。ご参考になさってください。

  6. 返事が遅れてしまいました。
    さっそくVanguardロボアドバイザー拝見させていただきます。
    何時もためになる情報ありがとうございます!

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください