Vanguardの創始者ジャック・ボーグルが生きていたら・・・

Wealth Logic創始者のアラン・ロスという人が、“ジャック・ボーグルが生きていたら、どうするか?”という記事を書いていました。ロス氏は、今は亡きVanguard社の創始者ボーグル氏に何度か会ってインタビューをしたことがあり、もしもインデックスファンドの父と呼ばれるボーグル氏が今生きていたら、現在のコロナウイルスによる市場の混沌についてなんというだろうかと架空のインタビュー記事を想定したものです。アプローチがなかなか面白いなと思ったのと、私自身ボーグル氏の大ファンなので彼を偲んで和訳してみました。(すべて3/18/2020付けのFinancial Planning誌より)

Q.ボーグル氏、またお会いできてうれしいです。このところ、世界各国にとっても、そしてそれぞれの投資家にとっても大変な時が続いています。US株式も海外の株式もしばらく前のピークより30%以上値下がりしました。何が起こっているのでしょうか。ファイナンシャルアドバイザー、そして投資家はどうするべきなのでしょう?

A.深呼吸しましょう。必ず市場がリバウドし、希望も戻ってきますよ。

Q.株値は底をついて、ここから回復するということですか?

A.もちろんそうではありません。しかし平静さをキープし、視点を保っていることが必要です。ここからまた15%なり20%なり値が下がることはありえます。ポートフォリオの中で十分な債券割合を保つことも必要です。

Q. アドバイザーや投資家は今どうふるまうべきでしょうか。

A. 投資家はふたつのタイプに分かれます。ひとつは投機家。彼らにとっては恐ろしい時期であり、おそらくこれからもっと恐ろしいことになりますから、今売って逃げ出た方が良いかもしれない。私は投機家にはアドバイスはしません。(注:もうひとつは、パッシブのインデックス長期投資家ですが、ここでは言及がありません。)

明らかなのは、市場には投資家心理というものが働いています。市場の状態が変化するにつれて、希望フェーズが貪欲フェーズに変わり、今は恐怖フェーズになっています。最終的にはまた希望に戻り、そして残念なことにまた貪欲と繰り返していくわけですが、近年に見ていた貪欲のフェーズを見るまでには、しばらくの時間がかかるだろうと思います。

Q. とすると投資家は今までの投資法をキープするべきですか?

A. これから市場はさらに下落するとわかっていて、仮に正しい時期に売ることができたとしても、今度は正しいタイミングでまた買わねばならない。タイミングを2度正しく見極めなくてはならないわけです。今売ったとして、その後市場が15%、20%下がったとしても、今度は再び買って投資を始める時に同様に恐れが邪魔をすることになります。ですので、私はいつもなにもせず最初の投資法を貫くことを実践しています。このようなことが起こっても私は平常心でいます。

Q. 今、株式インデックフファンドと債券インデックスファンドを全部売って、現金やCDに入れてはいけないのはどうしてですか?

A. 長期投資で増やしてきたならキャピタルゲイン税がたくさんかかることになります(注:リタイヤメントなど税優遇措置のある口座ではこれは問題にはなりません)。短期的には、現金やCDも理に適うかもしれません。でもその後どうしますか?もうすでに値下がりが起こったところで売っているわけです。実際売るなら、今よりも30%値が高い時に売ってCDに入れる方がずっとよかったわけです。

人間はいつも高値のときにはこれからも上がるだろうと思い、低値のときにはこれからも下がるだろうと思うのものです。ですから結局、高値のときに買ってしまい、低値のときに売ってしまうことになるのです。それは理にかなりますか?

私はなにもしないということをアドバイスします。市場のタイミングを見て売ったり買ったりは、よい選択肢ではありません。長期的視点に立てば、投資というものは市場の状況どうこうということでは全くないのです。投資は、投資された企業が生むリターンを享受するものです。その企業が生むリターンを享受するという目的を貫くためには、株式市場はそれを邪魔して心を乱すもの以外の何物でもありません。市場の状況は、センセーショナルにものごとを増幅させてしまうのです。投資家は怯え、アドバイザーも怯えます。それで混沌とした状態になるわけです。

Q. でも人々は、1987年のブラックマンデーやそれよりもひどいことが起こるのではないかと心配しています。そう思いますか?

A. 1987年なんてなんでもありませんでしたよ!ものすごく短期、ほぼ一日でおしまいでした。市場は25%弱下がっただけです。その年の終わりには、一年の最終的な数字は3%の上昇でした。繰り返しますが、1987年は最終的には値上がりの年だったのです。今年はおそらくそうではないでしょう。それなのに、人々は1987年のようになる・・・と言っているわけです。本当に1987年のようになるよう祈らなければならないところなのに。

Q. 最後にひとこといただけますか?

A. 私は人生を通してインデックスファンド投資家でした。私はインデックスによって“市場全体”を所有し、それでハッピーでした。市場は上がり、市場は下がる。私の著書で、シェークスピアのことばを引用しています。その日その日の市場の動きは、“愚か者の語る話のようだ。あれやこれやとやかましくうるさいが、何も実のあることはない。” 今起こっていることは、近年長期にわたり見てきた強気な市場が、やっと折り返し地点に達し値戻しをしているだけのことだと考えます。

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2 comments

  1. この荒波の中”航路を守れ”と自分に言い聞かせていましたが、これはひょっとしてポジショントークじゃないの?と恥ずかしながら思い始めているところでした。未来を信じて航路を守ります。
    励まされる記事、ありがとうございます。

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