不思議の国のハウジング・マーケット

3月1日に政府の歳出を強制的に削減する制度が発効しました。Sequestrationとかいう、在米18年にしてはじめて聞く単語です。政府予算は2021年度までに計1兆2千億ドル(約110兆円)削減されるそうで、政府職員の削減などにより、空港や税関などの公共サービスに影響が出るほか、米軍の海外活動の縮小が懸念されている・・・とのこと。今まで溜めに溜めた財政赤字がどうにもならないところまで来てしまったわけですね。

いきなりレベルを下げて国家から個人に話をうつしますと、2013年1月の個人所得は前月比3.6%減少したそうで、これは2012年末までのPayroll taxの一時的削減が期限切れとなったことも大きく影響しているようですが、この3.6%という個人所得の減少は過去20年間にみる最高の減少率だったそうです。

そんなこんなで、国も個人もあんまりいい話はないようなアメリカですが、なぜか不動産市場だけは元気ですね~。それがカラ元気なのか、カフェイン取りすぎのハイなのか、私には分かりませんけども、でもこのあたり(ロサンゼルス・サウスベイ地区)も例のもれずとにかくえらくバブリーです。ちょっと前に気合を入れてオファーを出したのに、まったく相手にされたかったことを書きましたが、あれからも雰囲気は完全売り手市場。一時期収束状態だったフリップ(安く買って、手を入れて、高く売る短期的な投資)も全開です。たとえば、こんな。。。

アメリカ 不動産 家

 

2012年10月に$689,000で売りに出され、1ヵ月後に$680,000で売れました。中はリモデルされ、、2ヵ月後$899,900でマーケットに戻ってきました。

詳しくは、下のRedfinの履歴を見てください。3週間もしないうちにオファーが入り、$883,000で売れました。中の改装に$70,000かかり、不動産手数料モロモロで$35,000かかったとしても、$883,000-$680,000-$70,000-$35,000=$98,000のリターン。数ヶ月で$100,000弱の利益です。

bubbly flip2

 

 

 

 

 

でもこんなんでびっくりしていてはいけません。こちらの家なんかもっとすごい!

アメリカ 家

この物件、実はわたしも見に行ったことあったのですが、見晴らしのよい丘にあるものの中がかなりボロボロで、庭の状態もかなり手を入れないといけないようで、なかなか売り手がつかなかったものです。

履歴はこんなかんじ。2012年2月に$699,000で市場にでて3月にはオファーが入ったもののクローズせず、4月に市場に戻ってきたときにはなぜかいきなり$810,000に値上げ。そのあと何度かの値下がりを経て最終的には7月に$640,000で売れました。半年で家の内外をかなりアップグレード。キッチンが改装されバスルームもぴかぴかに。壁も塗り替えられ、庭のランドスケープもばっちし。

bubbly flip1

2013年1月に$999,999でマーケットに戻ってきました。うわ~、いきなり$360,000上乗せ~、売れるかなこの値段で・・と思っていたけれど、3週間もしないうちにマルチプル・オファーが集まり、最終的には$1,050,000で売れました。軽く$50,000のビッド・アップです。

改装に$150,000、不動産取引手数料モロモロで$45,000かかったとしても、$1,050,000-$640,000-$150,000-$45,000=$215,000のリターン。半年でこのリターン!

 

ね?完全バブリーでしょ?キャッシュオファーは相変わらず根強く、また完全キャッシュオファーでなくても50%、60%レベルのダウンペイメントもよく聞く話。売り手はとっても強気ですよ。

下記はRedfin調べのSale-to-List%(売り手のオファー価格に対して、最終販売価格が何%だったか)の図。2012年当初にはかなりの売り手市場になりかかり、この数字が95%あたりまで下がったのに、いまやほぼ100%です。しかももともとオファー価格も、売り手が強気のためつりあがっていますからね。先ほどのようにビッドアップもありますから、1ヵ月後のデータではこの数字が100%以上になっているかもしれません。

sales-to-list

 

ついでにこちらの図もどうぞ。赤はSOLD(過去90日に売れた件数)、青はFOR SALE(現在売りに出ている件数)。過去90日に売れたのは54件、1ヶ月18件換算。売りに出ているのは16件です。出るなり1ヶ月で売れていくペースです。

sold_listing

国の予算や個人の収入の現状とはかけ離れてバブリーなここLAサウスベイですが、しかしながらやっぱりフツウじゃありません。売りに出ている16件以外に、いわゆるDistressed Propertyが同じエリアにこんなにあります(RealtyTracデータ)

  • フォークロージャーに入る前の支払いが滞っている物件15件
  • オークションに最近掛けられた・近々掛けられる物件33件
  • フォークローズされて銀行所有となっているもの18件

売りに出ている家の何倍ものDistressed Properyが存在するのです。

また普通に売りに出ている家も、どこかフツウではありません。マルチプル・オファーのビッド戦争は激しく、売りに出してすぐにオファーが入る物件が多いのは事実ですが、その一方でオファーがアクセプトされペンディング状態になったものの、その後待てども暮らせどもクローズされずマーケットに戻ってくる物件が多いのです。キャッシュオファーの場合はものの見事に1週間から10日くらいでクローズされるので、すぐわかります。2週間、3週間、クローズされないものはローンオファーで、これがなかなかクローズしないものが多く、最終的にローンが降りずマーケットに戻ってくることになるのです。こういった物件を待って、2度、3度とオファーを繰り返し、見事手に入れた方の話も伺いました。

 

景気がいいのか悪いのか、なんだかどう判断してよいのかわからないような今日この頃・・不思議な不思議なアメリカ不動産市場です。

12 comments

  1. 本当に変な不動産市場ですね。キャッシュバイヤーだけがこの不動産市場を楽しんでいるようにさえ思えますね。多くの人はローンを組んで家を購入しますが、今のマーケットは、キャッシュバイヤーのためのマーケットのようにさえ見えます。でも、このまま不動産の価格があがりつづけるかのかな???と少し疑問も残ります。今の市場は、本当にみんな焦って何とか家を買おう!と価格競争みたいのが起きていますが、はたして不動産価格とアメリカの経済がつりあっているのか・・・・と考えてしまうことがありますよ。100年に1度の~とかいいますが、もしかしたら、もっとひどい状況になるのかもしれないですよね。毎年、歴史上初めて・・・みたいなことがいわれたり。よく、大統領選挙のあった次の年は、景気は悪くなるとか言われますが、だとすれば今年はわるくなのかしら???と考えたりもします。まあ、簡単に景気がよくなるわけないとは思いますが。

    1. まったく同感!!!今の不動産市場は、ありえない超スーパー低金利+お金持ちキャッシュバイヤー+家に住まない投資家 で成り立っていると思います。家に住む人がふつうに家を買う市場じゃないですよね。実際の経済とは乖離したバーチャル世界だと思いませんか~。。。

      1. 本当に現実離れしたゲームの世界のような感じですね。まあ、投資家にしてみたら、キャッシュで不動産を買って、リモデルして転売して大きな利益を得ることは、今の市場ではゲーム感覚に近いのではないでしょうか?まして、ローンの審査がものすごく厳しく、簡単にローンがおりない現状もキャッシュバイヤーにしてみたら好都合なお話ですね。キャッシュバイヤーは10日くらいでクロージングできる仕組みを持ち合わせていますから。アメリカの超スーパー低金利も、アメリカ国内では歴史上低い数字ですが、世界的にみたらアメリカの金利はこれまで高すぎだったのではないかな??と思います。ただ、金利を低くしても、今のままでは普通に家に住みたいと考える人たちが買えるチャンスは低いままですし、本当に不公平ですね。不動産価格がこれから上がるとはいわれていても(だから今の変なマーケットが生まれてしまっているわけで・・・)、アメリカ政府がそうであってほしいと願っても、現実問題、アメリカの経済力がどれだけあるのか、で大きく変わりますよね。そう考えると、今のアメリカにどれだけ力があるのか・・・私は大きな?マークが頭をよぎります。

        1. ほんと、これってbig messですよね。しかも衣食住の三大要素のひとつで、こんなことになってしまい。住む家が買えない・・・これで豊かな国といえるでしょうか。

  2. 素人の感想ですが、不動産市場が株式投資と同じになってきてるんじゃないでしょうか。小さな不動産業者がグループを組んで機関投資家になったり、株式市場のローラーコースターに嫌気がさした大口投資家たちが不動産市場に流れてきているとか。

    そのせいで個人のホームバイヤーは、ミューチュアルファンドの個人投資家のように、機関投資家があやつる波に飲まれるまま。金持ちはさらに金持ちになるという構図(^^)

    1. cachacaさん、その通りと思います!ハウジング・マーケットは投資市場ですよ。少なくともこのあたりは完全に。売ってるほうも買ってるほうも投資家だったりするんじゃないですか。それこそ家が株の一銘柄になっているので、上がり下がりも激しいし、人が住む家なのに住む人の給料や家計とはまったく乖離した値段で取引されるのだと思います。

  3. すごいことになっていますね。。。うちはその半分以下の価格レベルなのでどうにかなりましたが、それでも、汚く高い(しかも小さい)家を買って直してってのは、勇気いりましたし、あまり満足していません。
    もうLAの場合は、買わないでいいんじゃないですかね?

    1. やっぱ、そう思います?ま、買いたくても、本当に買えないんですけども。。。でもレントも高いしな~。どっちに転んでも、苦しいです。

      1. LAは買わなほうがいいかも・・・ですよ。本当はそんなに高くないはずなのに、この異常を超えた超異常なマーケットにのまれて、超異常な値段で買うのは控えたほうが得策かも・・・ですよ。

        1. 本当に、異常を超えたマーケットですよねぇ。レントも異常なので、八方ふさがりです。でもレントなら長期コミットなしだから、やっぱ家を買っちゃうよりはましですね。あ~、異常じゃないところに引っ越したい!

  4. 普通に買いたくても買えない、普通でないマーケット状況なら無理して買わないかな。。。と客観的には思うのですが、買いたいと言う気持ちと何時になったら買えるのか?と言う焦りにも似た気持ちは理解出来ます。
    でも、そのあたり普通じゃないですね〜。。。

    1. そうなんです、人間、「買えない」と思うと、「なんとしてでも買わなきゃ」と思うわけですよ。でも、感情が先走る買い物は一番こわいですからね。しかもバッグひとつならいいけど、家一軒じゃあねぇ。だらか熱くなっている人を横目で流してクールに決めたいです。(といいつつ、明日、家を2件見に行く主人と私。クール気取りで実はしっかり飲み込まれているわけです~)

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