新規発行のI Bondの金利はついこの10月末まで9.62%でした。この高利を確保するための購入期限だった10月28日には、多くの投資家がI Bondをかけこみ購入し、$979ミリオンがI Bond市場流れ込みました。10月のトータル発行額は$7ビリオンだそうです。11月からは金利が更新され、6.89%になります。このI Bondあちこちで取り上げられているので、購入をされた人、購入を考えておられる人、ただ何か知ってみたい人、いろいろおられるでしょう。今日はこれを取り上げます。
I Bondとは?
I Bondは、US Treasury(米国財務省)発行の債券です。米国政府が発行しているものなので、元本保証、利子も必ず支払われると見込んいい安定資産です。
I Bondはちまたの金融機関では買えません。ふたつの買い方あります。また買える限度額が設定されています。
ひとつは、Treasury Direct(米国財務省のWebサイト) で買う方法で、こちらは一人1年につき$10,000まで購入できます。最低単位は$25で、それ以上なら限度額までどんな額でも購入できます(セント単位で)。もう一つの方法は、タックスリターン時にリファンドされたお金を使って購入する方法で、こちらはペーパーベースです。$50, $100, $200, $500, or $1,000 の単位になります。
I Bondは、株式、ミューチュアルファンド、ETFなどのように取引市場がありません。よって、お金が必要になったからといって市場で売って換金するわけにはいきません。換金は、常にUS Treasuryから行います。
利子は通常、連邦税の対象にはなりますが、州税/ローカル税の対象にはなりません。連邦税に関しても、一定の所得以下(シングルで$98,200、ジョイントで $154,800 以下)であれば、高等教育(大学以上)のために使うことと、その他の条件を満たせば非課税になるしくみがあります。
金利は固定と変動のコンビネーション
I Bondの利子は、2つの部分から成っています。ひとつはFixed Rateで、もうひとつはInflation Rateです。
Fixed Rateのほうは、I Bondが発行されるときに決定し、Bondの満期まで変わりません。満期は30年です。このFixed Rateは、年に二回、5/1と11/1に、以降6か月間に適用される率が発表されます。先の11/1に発表された利子は0.40%です。よって今後6か月の間に発行されるI BondのFixed Rateはすべて0.40%です。
Inflation Rateのほうは、その時のインフレーションに沿って変化する変動金利です。こちらも年に二回、5/1と11/1に以降6か月間に適用されるインフレーション率が発表されます。この11/1に発表されたインフレーション率(半年分)は3.24%でした。このインフレーション率は、新規、既存含めて現在発行されているI Bondのすべてに適用されます。
このふたつの要素、Fixed RateとInflation Rate(半年分)を使って、下の公式を使い年間金利に変換したのをComposite Rateといいます。
Composite Rate = Fixed rate + (2x inflation rate) + (fixed rate x inflation rate)
このComposite Rateが私たちが目にするI Bondの利子、9.62%だったり6.89%だったりです。
利子の出方
I Bondを購入すると、その時の有効金利がそこから6か月間継続します。2022年10月にI Bondを購入した人は、2023年4月までの6か月間は、その時有効だった9.62%を得ることができます。6か月がたつと、毎年5/1と11/1に発表されるその時のInflation Rateで金利が書き換わります。このプロセスが満期、あるいはそれより早く換金すればそのときまで続きます。
歴史的にどんなふうに金利が書き換えられてきたかを見てみましょう。以下US Treasury発表データの一部ですが、一番左側のコラムが異なる時期に発行されたI Bondです。Fixed Rateがその名のとおり、それぞれのI Bondが満期まで確約されているFixed Rateです。右側が6か月ごとに変動してきたComposite Rateです。黄色が現在です。
Fixed Rateは決して高いものではなく、過去を見れば多くの期間でゼロであるのもわかるでしょう。現在の高金利は高インフレがゆえにそうなっているだけであって、いつかインフレが収まればComposite Rateも数パーセントレベルに落ち着いていくのでしょう。
I Bondの利子は払い出されるのではなく、元本に加えられます。金利は月々発生しますが、現金で受け取ることはできません。金利は6か月ごとにまとめて元本に加えられ、複利で運用されます。換金時に、元金とそれまでの金利をまとめて受け取ります。
I Bondは発行後、1年間は換金ができません。また、5年以内に換金すると3か月分の利子が没収されます。
I Bondの利点
- 安全資産である
- その時々のインフレ分は少なくとも確実に利子確保できる
I Bondの不利点
- インフレが落ち着いてくると、金利が下がる(Fixed Rateは非常に低い)
- 1年は換金できないので、エマージェンシーファンドやすぐに使いたいお金などには向かない
- 購入限度があるので、大きな投資には向かない
現在のような高インフレ環境で、とりあえずすぐに使う予定がないお金を中期的に置いておくには考慮にたる投資法ではないでしょうか。一方で、ふだんは必要ないが何かの時にすぐ使いたいエマージェンシーファンドを置くなら、多少利子が低めでも口座間で簡単に送金できるHigh Yield Savingなどのほうが安心でしょう。また、長期投資ポートフォリオの一部として使うには、投資額が限られていることと、管理がUS Treasuryサイトでしかできないことなどから、使い勝手が悪いと思います。