リタイヤメント後の医療費はいくらかかるのか?(2)

リタイヤ後の医療費は、健康にかかわる大切な費用であるうえ、とくにアメリカでは生活費の中の重要な割合を占めるものであるので、なるべく正確に見積もりたいものです。医療費は、月々の健康保険料と、受ける医療サービスに対する自己負担費用に大きく分かれます。前回は、リタイヤ後の健康保険のタイプ別にかかる費用の目安を調べてみました。今回は、実際に医療を受けた場合のCopayやCoinsurance、Deductibleなどを含む自己負担費用について把握してみたいと思います。

健康状態による医療費の違い

まず、当然のことといえば当然ですが、健康状態によってかかる医療費は変わります。

下は65歳女性がMedicare Part AとPart BとPart Dの基本的Medicareに加入した場合で、Health Risk History(これまでの症状・病歴など)のレベルにより、トータル医療費(保険料と自己負担医療費の合計年額。Dental、Eye Care含む)がどのくらい変わってくるかを表したものです。保険料は基本的Medicareで同一(月$150、年$1,800)ですが、基本Medicareでカバーされない自己負担部分が変わってきますので、トータル額が異なっています。

Health Risk Historyは、高血圧、高コレステロール、リュウマチ、心疾患、糖尿、慢性腎臓疾患、うつ、アルツハイマー、認知症、慢性閉塞性肺疾患、がん、ぜんそく、骨粗しょう症などの症状が、本人あるいは両親に見られるかどうかについて、中高低のリスクレベルに分けています。

それぞれのリスクレベルについて、一年の自己負担費用として10パーセンタイル(かなり低くすんだ)、25パーセンタイル(まあまあ低くすんだ)、中央値(ちょうど中間の場合)、75パーセンタイル(まあまあ高かった)、90パーセンタイル(かなり高かった)のケースにより、保険料+自己負担費のトータルが年間でいくらになるかを表にしています。

低リスク、中リスクでは、中央値ちかくまで$3,000代(保険料$1,800と$2,000ちょっとまでの自己負担という図)で済む場合が多いですが、健康リスクが大きくなるにつれて、医療サービスの必要度が増すことで費用も急速にかさんでくるのがわかります。高リスクでは$10,000を超える出費になる可能性が増えます。

ここからわかるようにリタイヤ後の医療費見積もりには、ご自分の健康面でのリスクレベルを考慮する必要があります。リスクレベルを把握したうで、それなりに必要な医療がしっかりカバーされる保険(Medicare SupplementやAdvantageなど)を購入し、あまりに予想される医療費が高額にならないようにリスク管理することが肝要です。

Medicare Supplementでのリスク管理

基本的Medicare (Part A+B+D)だけを利用した場合と、充実カバーのMedicare Supplement Plan Fを購入した場合、Plan Fに比べるとDeductibleとCopayなどある程度の自己負担が必要となるPlan Nを利用した場合について比較したのが下表です。

濃い青部分は、健康保険料(年額)です。薄い青部分は、医療の自己負担費用です。

それぞれ3本あるグラフの左はHealth Risk Historyが中リスクの場合、真ん中は高リスクの場合、右は医療費がかなり高かった(90パーセンタイル=Worst Case)となっています。

Medicare Supplementプランを追加で購入するのは、基本Medicareの年間$1,800に加えてもちろん追加費用がかかり、Plan FとPlan Nの追加でそれぞれ年間保険料トータルは$3,600と$2,900とに上がります(濃い青)。中リスクレベルの方(それぞれの一番左)では、かえってPlan FとPlan Nを購入した方がトータル医療費(保険料と自己負担費)が高くついてしまいますが、高リスク以上ではトータル医療費が削減できます。ことに90パーセンタイルのWorst Caseでは、基本的Medicareだけでは$20,000というコストがかかるのに比して、Plan FとPlan N購入の場合は半分強にコストを抑えることができます。

ご自分の健康レベルに応じて必要な保険プランを選ぶことが必要ですが、リタイヤメント後は若い時と違っていつ健康を崩すかはわかりません。リタイヤした当初は健康でもあとで病気になるということはよくあることです。Medicare Supplementは当初のエンロールメント期間をのがすと加入ができなかったりペナルティがあることもあります。よって、リタイヤ後の健康保険はある程度先を見越した、健康を害してもある程度のカバーが確保できるものを選んでおく必要が高いかと思います。

あらかじめいくら見積もればよいか

すでにリタイヤ後選択する保険がある程度定まっている場合は、具体的な数字の見積もりが可能かもしれませんが、そうでない場合の目安はどう考えればよいでしょうか。目安としてSupplement Plan Fレベル(2020年後はPlan Fの購入はできませんが、目安として使います)の保険料+中レベルのHealth Riskをベースに、年間$6,000、月$500は医療費として見積もっておくのが安心かと思います。これはお一人の費用ですので、夫婦二人なら$1,000を見込むと安心でしょう。

年齢が上がるにつれての相殺

リタイヤ後は加齢とともに健康状態が劣化していくのが常です。よって、当初見積もった医療費が一定ということはなく、健康状態の劣化とともに医療費も上がっていくことが予想されます。

ただ、加齢とともに、旅行やエンターテイメントなどの活動費は減っていくこともわかっています。

下は、年齢ごとの、医療費(保険費と自己負担医療費のトータル=濃い青)とそれ以外の費用(薄い青)をグラプにしたものですが、年齢が上がるにつれ医療費は増え、しかしそれを上回る率でそれ以外の費用が下がり、全体としては総費用が下がっていくことを示しています。

よって、リタイヤメントプラニングでリタイヤ後の生活費を計画するときなどは、当初見積もった医療費はそのまま一律、その他の費用もそのまま一律とすることで相殺できると考えます。

なお、今回の分析には、長期介護が必要になった時の費用については考慮にれていません。長期介護費用については、医療費というくくりとは別に考える必要があります。

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