保険の正しい選び方と使い方

パーソナル・ファイナンスを支える保険にはいろいろなものがありますが、どんな保険であれ、保険を選ぶ場合、また使う場合の基本的考え方のようなものが存在します。この記事では、その考え方をまとめてみます。

リスクをしっかりカバーする

どんな保険をどのくらい買ったらいいかは人それぞれです。隣の人や会社の同僚と同じ保険を買って安心ということはありません。先に家計が必要とするいろいろな保険をご紹介しましたが、そのすべての保険を買わなければならないということではありませんし、またそれ以外の保険を購入する必要もある場合もあります。

まずはご自分の家計にある「リスク」を洗い出します。どんな「万が一」があり、それがどのくらい家計を揺るがすかのリスクにめどをつけ、そのリスクにあった保険を必要な補償額分だけ購入します。

リスクがある分だけ買う

リスクがあるから保険が必要なのであって、リスクがないのなら保険を買うことは無駄遣いです。「なんだか安心だから、子どもにも生命保険を買っておこう」というのは無駄遣いのことがほとんどです。子どもが亡くなればものすごく悲しく辛いですが、その子が家計を支えるYoutuberでもない限り、金銭的に困ることはあまりないでしょう。

また、「安心だから多めに買っておこう」も、保険料の無駄遣いです。そのリスクが現実のものになった場合、どのくらいのお金がないと困ることになるかに検討をつけて、ちょうどそのくらいのお金が補償として手に入るくらいの保険をなるべく安く購入するのが基本です。

貯めるためには使わない

保険というとなんだか「安心」というイメージがあり、とくに日本人は保険好きな傾向があります。学資保険という日本特有な商品もあり、保険で「安心を得ながら固く貯める」という考え方が浸透しているからかと思います。

本来は保険はあくまでリスクをコントロールするために買うものです。貯蓄や投資のために購入するのではありません。学資準備であれば、アメリカでは529プランという投資プランを使います。アメリカに学資保険はありません。

一方でアメリカにも終身保険(Whole Life Insurance)というのはあって、これは生命保険と投資や貯蓄がセットになったものです。Smart & Responsibleの考え方では、早期死亡のリスクは定期保険(Term Life Insurance、掛け捨て保険)で必要なだけしっかりカバーし、貯蓄や投資はまた別に行うことをお勧めしています。保険と貯蓄・投資をセットにして都合がよいことがあればいいのですが、どちらかというと使い勝手的にもコスト的にもセットにすることが理に適うことが少ないからです。

万が一のことがあったときに困らないように買うのが保険であり、将来の何らかの目的のためにためるのが貯蓄や投資です。この二つは混ぜないほうが、プラニング上健全です。

掛け捨てが基本を理解する

上述のように保険は、「万が一のこと」があったときに備えて買うものです。「万が一のこと」とは、あんまりないことだけど、もしも起こった時には家計を圧迫することになる可能性があることです。そういう意味で保険は、基本的には使うことにならないほうがよいものです。保険を使わなければ、「損した」ではなくて「そういうことがなくてよかった」と考えるべきものです。

「掛け捨て」ではもったいないと考えるのはズレています。万が一のことがあったときの補償のために保険料を払うわけで、Netflixの月額料金を払うのと同じです。Netflixの月額料金が掛け捨てでもったいないという人はあまりいないでしょう。

その意味で、保険は必要な補償をできるだけ少ない保険料でゲットしつつ、その保険を使わないで済むのがベストシナリオです。

重複カバーを除く

多くの家庭では、通常複数の保険を持っています。健康保険、ホームオーナー保険、自動車保険、生命保険、所得保障保険、長期介護保険などなど。。保険はそれぞれカバーする専門分野があるものですが、部分的に複数の保険が同じものをカバーしているということもあるものです。たとえば、健康保険と自動車保険のMedical CoverageやPersonal Injury Protectionなどです。

ひとつのリスクをカバーするのに二種類の保険は不要です。健康保険のカバーがしっかりしており、車で事故をしても自分の怪我の治療費はしっかり補償されるというのであれば、自動車保険の医療関連補償は不要です。

保険だけでなく、持っているメンバーシップの付帯ベネフィットをよく把握しておくことも大切ですね。AAAのメンバーシップでトーイングがカバーされているなら、自動車保険では同様なカバレッジを買う必要はありません。

見積もりを集めるまでわからない

保険会社は統計に頼ります。統計はなるべく母数が大きいほうが正確になりますので、大きな保険会社はメリットがあります。保険会社は、全体の母数を分類し、同じ属性を持った人をグループ化していきます。若い人より年齢の高い人、未婚の人より既婚のひとのほうが事故の確率が低いとか、プロフェッショナルの学会や組合などに参加している人は違反が少ないなどというように細分化していきます。そして、そのグループ特有のリスクを計り、それに見合う保険料を設定していきます。そのグループ化とリスク査定が得意な保険会社ほど、保険料も適切でリーゾナブルになります。

あなたのリスクが高ければ保険料は高くなりますし、低ければ安くなります。ただしこのグループ化の仕方はそれぞれの保険会社で違いますから、あなたの持ち合わせる属性のリスクを高く評価する会社もあれば、低く評価する会社もあります。

保険の種類によっても、違いがあります。定期生命保険(Term Life Insurance)などは、ほぼコモディティ化(広く一般に標準化)されていて、どこの会社も値段に大きな差がないことが多いです。一方で自動車保険は、保険会社によって非常に大きな差があります。

自動車保険は、知り合いが「○○保険会社は保険料がなかなかリーゾナブルでいいよ」と教えてくれても、それがあなた自身のリスク要素に当てはまるかは全くの別問題ということです。ある人にとって最安の保険会社があなたにとって最安とは限りません。自分で見積もりを集めるまではわかりません。

ひとつの会社にまとめる

多くの場合、ひとつの保険会社にポリシーをまとめると、Multiple Line Discount(複数ポリシー・ディスカウント)を得ることができます。ひとつにまとめられる保険は、一緒にして見積もりをとるのがいいでしょう。

保険会社の財務健全性を知る

大きなカバレッジを非常に低コストで契約できたからといって、もし万が一のときに保険会社がつぶれてしまっていたのでは元も子もありません。保険会社が財務的に安心できる会社であるかをチェックすることは重要です。保険会社のホームページでは財務の健全性(Credit Rating)を発表しているとことも多いです。発表していないところは、危険信号ともいえます。また、ご自分でも調べることもできます。保険会社名とCredit Ratingのキーワードで検索するとよいでしょう。

財務的健全性は、長期的に保たれるべきものです。3年後、5年後事故にあったときにも、きちんと補償を行える力がなくてはなりません。どこまでを良しとするかは個人的判断になりますが、最低でもAレイティングが望みたいラインかと思います。

カスタマーサービスの質を知る

もうひとつ、保険会社について調べたいのはクレーム処理がスムーズに行われているか、顧客からの苦情が多くないかです。実際に多い苦情は、クレームが拒否された、クレーム処理に時間がかかりすぎる、補償金がクレームした額に満たない、修理工場を自由に選べない、修理の品質が低い、アクシデントのあと保険料が上がった、クレーム処理でパーソナルな配慮が足りない、などなどです。

実際に事故にあったときは精神的にも苦しいもの。そんなときに、素早く公正にクレームを処理してくれる会社は力強い味方です。保険会社の名前とInsurance Claim Ratingというキーワードで検索してみてください。

得られるディスカウントをリサーチする

保険会社はいろいろな保険料ディスカウントを用意していますが、あちらから親切に「こんなディスカウントがあります」とは教えてくれないこともよくあります。特に自動車保険などはさまざまなディスカウントがあります。Good  Student Discountにはじまり、Teacher’s DiscountとかEngineer and Scientist  Discountなどもあります(会社によります)。

中には「こんなディスカウントがあるようですが、私は受けられますか?」と聞かないと話が始まらないものもあります。スタンダードな契約のスタンダードな料金に満足するのではなく、ちょっとした「調査」が必要かもしれません。

ディダクティブルをあげて、小さなクレームはしない

ディダクティブルが上がれば保険料は下がります。一番オーソドックスな保険料削減法です。小さな損失は保険にたよるのではなく、無理なく自力でカバーできる準備金(エマージェンシーファンド)を蓄えておくことで対処します。保険は、万が一の大きな損失のためのものという考えに沿ったやりかたです。

 ディダクティブルを引き上げることで、自動的に小さなクレームをすることが削減でき、小さなクレームによる保険料の値上がりという問題もなくなります。

何年かに一回は見直す

保険は入りっぱなしはよくありません。リスクも必要な補償も、時とともに変化するものです。子どもが大きくなりDependentが減ったなら大きな生命保険は不要かもしれないし、家を買ったならホームオーナーズ保険だけでなく、自動車保険の補償額も追加契約したほうがいいかもしれません(守る資産が増えるという意味で)。本当に必要なものだけ無駄なく、抜けている部分なく、カバーすることが必要です。

カバー内容を確認した後は、何年かに一度は見積もりを取り直して、今の保険料が払いすぎでないか吟味することも重要です。保険の種類によりますが、とくに自動車保険などは年ベースで何百ドル、稀には何千ドルの節約が可能な場合もあります。

ブローカーとエージェントをうまく使い分ける

保険ブローカーは、保険会社ではなく、顧客に代わって仕事をする独立した仲介業者です。ブローカーの主な仕事は、顧客のニーズや好みに応じて、最適な保険を見つける手助けをすることです。ブローカーは複数の保険会社と提携し、幅広い保険商品を取り扱っています。よって例えば、自動車保険、ホームオーナーズ保険、アンブレラ保険の必要カバレッジ内容(あるいは、現在すでに契約している保険があるのなら、その内容そのまま)を送って、「これで、一番安くなる会社はどこですか?」と聞いてみるような使い方には最適です。幅広い選択肢から一番安く条件のよい会社を見つけるには、ブローカーを使うのが良いです。お住まいの市の名前とInsurance Broker(場合によっては、AutoとかHomeownersなど保険のタイプも)というキーワードで検索するとよいでしょう。さらには保険によっては、オンライン・ブローカー(オンライン見積もりサイト)などを使うのも効率的です。

一方で、保険エージェントは、特定の保険会社を代表する販売相談員です。彼らは、その会社が提供する保険商品やサービスを販売し、顧客ではなく保険会社の代理として働きます。その会社のしくみについては、よく理解し知っています。すでに保険を買う会社が特定できているのなら、その会社のエージェントにコンタクトするのがよいです。保険のクレームをしたり、何か質問があるときには、個人的にケアをしてくれることも多いです。

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