長期介護保険を買うなら・・・(2)

長期介護の必要に備えるための長期介護保険。各保険会社で補償内容が微妙に違ったりするうえ、同じような内容の保険であっても、会社によって値段に非常に大きな差があることがよくあります。長期介護保険を買う場合、どのような項目に気を配ったらいいのかを2回に分けてみていきます。

 

長期介護保険、どこで買う?

個人で購入する保険

保険エージェントから紹介のある保険ポリシーや、電話やメールなどで宣伝の届く保険ポリシー。メディカルテストにより、保険会社の定める健康上の基準を満たす必要があります。保険会社によって売る保険ポリシーの内容はさまざまで、また同じ保険会社のなかでもいくつかの異なるポリシーがあるので、最初に見たもので決めないこと。かならず、複数社、複数のポリシーを集め比較することが必要です。

雇用主提供の保険

雇用主がベネフィットの一環として長期介護保険を提供することがあります。グループ保険として提供される場合や、個人保険ではあるがグループディスカウントが効く場合などがあります。グループ保険として加入できる場合は、個人保険のようなメディカルテストが不要な場合、必要であっても基準が緩いもあります。また、雇用者の配偶者や両親などにも、保険を利用できる枠が拡張されることもあります。

離職の場合は、(雇用主がグループ保険をキャンセルしない限り)同じ保険をキープし続けることができる場合がほとんどです。雇用主提供プランでは、個人保険では得られないような特典がある場合もあるので、内容をよく理解するとともに、個人保険の保険料の見積もりも集め、比較してみることが賢明でしょう。場合によっては(とくに健康な人)、多少面倒でもメディカルテストを受けて個人保険に入る方が安いこともあります。

連邦・州政府の保険

Federal and U.S. Postal Service employeesは、 Federal Long Term Care Insurance

Programを利用できます。ただし、保険料の補助はなく、また保険料は、個人保険の保険料と比べて必ずしも安いということもないようです。

プロフェッショナル団体などの保険

職業関係のアソシエーションやプロフェッショナル団体がそのメンバーを対象に、長期介護保険を提供することもあります。購入にはメンバーシップが必要です。メディカルテストは必要な場合が多いようです。メンバーでなくなった場合にも、そのまま保険はキープできるか、あるいは個人保険にコンバートできるのがふつうです。

 

見積もりをたくさん集める

また、各保険会社にはもっとも顧客として獲得したいターゲット層というものが存在するわけで、それがある会社では50代の独身者であったり、他の会社では60代の夫婦であったりします。保険会社は、自社の得意なターゲット層に「はまる」顧客には、それだけ他社よりも有利な保険料と補償内容を提供できるわけです。これらの理由から、とにかくなるべくたくさんの保険料見積もりを集めてみることが非常に大切です。

スペシャリストやブローカーを使って見積もりをもらう場合は、彼らがいくつの会社を対象にしているのか聞くとよいでしょう。ひとつ、ふたつでは少々心もとありません。少なくとも3つは見積もりを集めたいところです。

なお、雇用者によっては福利厚生の一部としてオプショナルの長期介護保険を提供しているところもあるので、ぜひ検討されるとよいでしょう。また、プロフェッショナル団体が会員に対して提供尾している保険もあります。ただし、雇用者や団体を通しての保険がベストであるとは決めつけず、やはり見積もりをいくつか集めることをお勧めします。

雇用主が機会提供するグループ保険は、メディカルテストなしで加入ができる場合もあります。自分の健康に少し自信がなく、基準の厳しい個人保険のメディカルテストを通過することが難しいと判断する場合は、多少保険料が高くともこれを選ぶのも一考です。

反対に健康に自信がある人は、かえって基準の厳しい保険を探し、メディカルテストにパスして加入する方がよいでしょう。基準の厳しい保険は、それだけ将来の補償額などきちんとコントロールしている保険ともいえるからです。また、補償額のコントロールがきいていれば、それだけ保険料も安くなる可能性も高いでしょう。

見積もりを集める際に、いろいろな会社の保険を比較できるようなWorksheetがあります。下の画面をクリックするとダウンロードすることができます。ご利用ください。

夫婦で加入する

ひとりで加入するより夫婦のほうが割安です。また結婚している必要はなく、Domestic PartnerでもOK(一定期間の同居が条件だったりする)です。さらには、兄弟姉妹などRelated AdultsであればOKな場合もあります。一人暮らしの方は親戚兄弟とともに加入するというのも一考です。ただし、暮らしの上で密接にかかわっており、介護などでも協力関係にある相手が適切だと思います。

ふたり一緒に見積もりをとりましょう。多くの場合、トータルの補償リミットが設定されており、たとえばそれがトータルで$200,000だった場合、夫が$80,000分補償を受けたら、妻は$120,000分まで利用可能というようなしくみです。あるいは、年数ベースで、一人ずつ3年までの補償、ただし合計6年をプールできてどちらの配偶者が使ってもよいというようなポリシーもあります。ひとりが5年使った場合は、残りの一人は1年のみの補償になります。このような場合、保険料を低く保ちつつ二人分のカバーを得ることができるものの、場合によっては一人が全額分使い果たしてしまい、二人目には補償が残されていなかったという危険性はあります。契約にあたっては、よく納得してからしましょう。

 

保険料の安さだけにはとらわれない

また、保険料の高低は大切なポイントではありますが、いったん契約した長期介護保険の保険料は常に上昇傾向にさらされます。あるポイントで最低保険料だった会社が、数年後に最低保険料である確約はありません。将来のことはわからないものの、現時点でのその保険会社の財務健全性や、過去の保険料値上げのパターンなどを吟味することも必要です。

財務健全性については、保険会社名と“rating”というキーワードでgoogle検索すると、各保険会社が自社のWebページで財務健全性レイティングを載せているのがみつかると思います。逆にそれを載せていない保険会社があれば要注意と考えてよいでしょう。

以下は主要保険会社のRating(2019年4月現在)です。

過去の保険料値上げパターンについては、こちらのサイトで一部確認できます。保険料の値上げは、保険会社がそれぞれの州政府に申請し、承認を受けて初めて実行されるものですが、上記サイトはカリフォルニア州の保険管轄部門がまとめているもので、全50州での値上げをリストしています(ただしカリフォルニアで保険を売っていない会社は載っていません)。このリストでたとえば、70%保険料アップの申請を出し、35%アップで承認されているような会社などは、ちょっと考え物かもしれません。

また、保険会社がいざというときに信頼の置ける対応をしてくれるかというのも、たいへん大きなポイントです。これに関しては、お住まいの州の保険管轄部門のWebサイトで確認することができます。各州でWebの作り方が違いますが、だいたいInsurance Company ProfileとかCompany Complaint とかの見出しで苦情クレームのデータが見られるかと思います。

 

50代、遅くても65歳までには買っておく

長期介護保険が自分には必要であることを確認し、保険に加入することは、できれば50代、遅くとも65歳までにはしておくことをお勧めします。60代後半になってくると保険料が急上昇するうえ、受けられる補償も限られてくる可能性があります。また健康状態もそれなりに劣化してくるので、そもそも加入が拒否されることもあります。大きな病気をしたわけでなく、単なる高血圧というだけで加入ができないケースもあります。また、病歴や症状があるのに、加入拒否を避けるため、それを隠したりするのは絶対いけません。後で判明したときに、契約自体を取り消される可能性もあります。

反対に、比較的若いうちであれば、健康状態がまだよく、標準以上の健康状態ということでディスカウントを受けられることもあります。50歳以下ではこのようなディスカウントの資格を受けるひとは3人に2人の割合ですが、50代で2人に1人に減り、60代で5人に2人、70台では5人に1人に減っていきます。もし買うつもりがあるなら、早めに自分の財務状況や将来への準備度を把握し、決断することが必要です。

 

契約は一生ものと覚悟しておく

自動車保険や医療保険などは、不満があったり、あるいはもっといい保険が見つかったりすれば、気軽に乗り換えることができます。生命保険の定期保険などもこの類です。しかしながら、生命保険の終身保険や長期介護保険などは、途中でキャンセルしたり乗り換えたりすることは可能ではありますが、すると損をする保険です。払い込んだ保険料は、(自動車保険や医療保険などのように、その年の一年分だけの補償費用ではなく)、将来にわたる補償への料金であり、いわば保険料の先払いです。5年払ってやめれば、将来のために払ってきた保険料が無駄になることを意味します。終身保険の場合はキャッシュバリューだけは戻り、将来の保険補償部分は無駄になるという具合ですが、長期介護保険の場合はキャッシュバリューはないので、払い込んだ分全額無駄になります(だたしNon forfeiture Option(下記参照)があれば多少ましです)。しかも乗換えで、新しい会社で契約をした場合、年齢が上がっての契約になり、保険料も割高からの再スタートになります。多くの場合、乗り換えをせず、補償を下げるなどの何らかの措置を施して、継続をするほうが理に適います。

保険料が払えなくなった場合は、キャンセルしたくなった場合には、“Nonforfeiture option”(保険料喪失回避オプション)というオプションがついている場合は、すでに払い込んだ保険料をもとに減額された補償を受けることができます。このオプションがつくと、保険料は少なくて10%、多いと100%上がります。ただし、このオプションがついている場合でも、できる限り中途で止めるという選択は回避するのが賢いといえます。

また、”level premium”のような表記があり、保険料が上がらないという意味にとれることもありますが、現在、すべての長期介護保険において保険料が上がらないと保証しているものはありません。保険会社が将来の保険料の上昇はないと保証していることはあり得ません。州によってはこのような紛らわしい表記を禁じているところもありますが、そうでない州もあり、消費者としては誤解しないように注意したいところです。

長期介護保険に加入するときには、長期介護保険はずっと持ち続けること、その会社で間違いないことを確かめて、覚悟の上でそうすることが必要です。長期介護保険は終身保険などと同じで、「とりあえず入っておく」という姿勢は絶対避けるべき保険です。

2015年のCenter for Retirement Research調べによると、65歳で長期介護保険を購入する人の25%以上は、保険をLapseさせる(保険料を払い続けなくなり、自然キャンセルとなること)というデータがでています。金銭的な問題か、あるいは認知上の問題により、支払いをしなくなるため、保険が解約され、本当に必要になった時には、長期介護の補償は受けられないということになります。金銭的に支払い続けられることと、認知の問題が出て支払いをスキップしてしまうことにないように、あらかじめ家族や親せきに情報の引継ぎをすることも大変重要です。エステイトプラニングの一部として、Power of Attorneyなども準備しておくことも肝要です。

 

保険料の払い方

多くの場合は、月々、3か月に一度、年々など定期的に保険料を支払う形ですが、保険会社によっては、Limited payment optionといって、一括払い、数回払い、あるいは65歳まで払って払込済とするなどのバージョンあります。

 

保険料の税控除について

長期介護保険で一定の基準を満たしたものは“Tax-Qualified”と銘打たれているものがあります。これらの保険の保険料は、タックスリターンで税控除を受けられる可能性があります。”Tax-Qualified”の保険へ支払った保険料は、医療費としてカウントされ、Itemized Deductionを選んだ場合、医療費として税控除できます。ただし、医療費の控除は、AGIの7.5%(2018)/10%(2019)を超えた部分のみが税控除の対象となるため、所得の割に医療費が高額な人に利用は限られるでしょう。また、トランプ税制改革では、Standard Deductionの額が大きく増えたため、そもそもItemize Deductionを選ぶ人が少ないため、利用はかなり限定的になるでしょう。

 

サインの前にはよ~く契約書を読む

最後に、契約書にサインする前に、保険契約の内容をよくよく読んで最終確認することです。分からないことがあったら、担当者にしつこく確認しましょう。また、ファイナンシャルアドバイザーや弁護士のヘルプを得て、一緒に契約書を読んでもらうのもよいでしょう。同じことの繰り返しになりますが、自動車保険や健康保険とは違って、長期介護保険は「とりあえず契約しておいて、いやなら後から変更すればいい」という類のものではありません。サインは慎重に行います。また、サインしてしまってからでも30日以内ならフルリファンドでキャンセルできる権利がほとんどの州で規定されています。気が変わる可能性があるなら30日以内です。それ以降のキャンセルは、高くつくミステイクになりがちです。

 

エステイトプランもお忘れなく

長期介護保険とは直接関係しませんが、同時に考えたいのがエステイトプランです。エステイトプランとは、遺書、トラストなど相続にあたってのさまざまな考慮されるべきことを含みますが、その中にはPower of Attorney(権限委譲)やAdvance health directive(医療サービスの事前指定書)もあります。長期介護が必要になったとき、手持ちの資産からそのコストを支払う必要があったとき、本人以外の親類がその処理をできるようにする権限委譲や、無駄な延命治療を回避するような指定書を用意しておくことも、非常に重要な要素です。

One comment

  1. 2回に渡り長期介護保険の説明有難うございました。
    今一度、必要性を考えさせられました。
    一度加入したら一生支払う保険ですので、保険商品を比べて予算に合った保険を選ぶ事ですね。
    支払うお金が無くったら台無しというリスク、しかも商品は高額、リミットを高くすると長期の支払い能力が不透明になり、保険料を低くするとリミットが低くなるというどちらにしてもリスクが発生します。
    最後は自分の健康の自己管理に尽きるかもしれません。
    有難うございました。

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