2018年のタックスリターン: たぶんあなたもStandard Deductionかも

あと2か月もすれば2018年ももう終わり。年が明けてしばらくすると、またタックスリターンシーズンがやってきます。2018年は、トランプ税制改革の影響を受ける年になります。いろいろな変更点はありますが、その目玉はStandard Deductionの大幅な引き上げです。この結果、今までItemized Deductionを選んでいた家庭でも、2018年からはStandard Deductionにスイッチするケースが大変多くなると予想されます。その効果は、タックスリターンが楽になり、時間が短縮されることです。

 

Standard Deductionの大幅な引き上げ

シングルリターンでは、これまで$6,500であったStandard Deductionが$12,000に、ジョイントリターンでは、$13,000だったのが$24,000に引き上げられます。Deductibleな費用の合計がStandard Deductionの額以上になる場合にのみ、Itemized Deductionを選ぶことが理に適うため、これを機にStandard Deductionに切り替える人が大きく増えると予想されます。Joint Committee on Taxationの予想では、88%のタックスリターンがStandard Deductionを選ぶことになるだろうとしています。

 

Itemized できるものは減る

Standard Deductionが大きく引き上げられる一方で、Itemized Deductionを選んだとき控除できる項目は減ります。

これまで盗難・災害・事故による損失はある程度の条件を満たすと控除できていましたが、これが2018年以降は、Federal Disasterとして大統領により指定された災害による損失に対象が限られます。よって多くの“比較的日常的な”損失は控除できないこといなります。

またEmployee(雇用者)としてかかった費用のうち、Employer(雇用主)にreimburse(費用の払戻)をしてもらえなかった費用については、一定の条件で控除ができていましたが、これもなくなります。たとえば、ツールや事務用品などの費用、ユニフォームや仕事関係の会費や購読費などです。また、タックスリターンの委託費用なども控除できなくなります。

なお控除できなくなるのは、あくまでSchedule Aで個人として控除する項目であって、ビジネスとしてかかる費用は、これまで通りSchedule Cで控除することができます。

 

結局Itemizeできるものは?

結局、Schedule AでItemizeして控除できる主な項目は以下の4つになります。

Medical Expense

医療費は控除対象にはなりますが、なかなか控除はできにくい費用だといえます。2018年リターンではAdjusted Gross Income(AGI)の7.5%を超えた部分が、2019年リターンではAGIの10%を超えた部分だけが控除できます。

AGIが$80,000なら、7.5%で$6,000、10%で$8,000ですから、控除可能な額があるためにはかなり高額な医療費がかかっている必要があります。

 

Mortgage Interest

2017年12月14日までに発行されているモーゲージローンについては、2018年以降のタックスリターンでも、引き続きこれまでどおり$1.000.000までのローンに対して利子が控除できます。

2017年12月15日以降発行されたモーゲージローンについては、$750,000までのローンに対してのみ利子が控除できます。

エクイティローンについては、ローンが家の増設・改築・改装のために使われた場合は利子が控除できます。

 

Charitable Contribution

これまで通り控除可能です。

 

State and Local Taxes(SALT)

州・ローカル所得税税/州の消費税、プロパティ税の控除は、これまでは全額が対象になりましたが、2018年以降は、合計控除額が$10,000までという限度が設定されます。カリフォルニアやニューヨークなど、州の所得税やプロパティ税が高額で、ゆうに$10,000を越してしまう州の納税者にとっては非常に限定的な控除となります。

なお、ここでの$10,000の限度額はSchedule Aでの控除が対象で、ビジネス、レンタルプロパティ、ファーミングなどの関連の州・ローカル所得税税、プロパティ税は限度額の対象にはなりません。

また、$10,000の限度額が設定されることを先どって、2018年のプロパティ税を2017年度に納め、2017年度のタックスリターンで控除をした方もいらっしゃるかと思います。その時点では、遡って後ほど$10,000の限度が適用される可能性もあるかもしれないと報道されていました。結局、2018年分のプロパティ税であっても2017年にAssess(査定)されており(額が決まって発表されており)、2017年に支払ったものに関しては、2017年のタックスリターンで控除可能であると発表されました。

 

StandardなのかItemizeなのかを見極める

まずこれまでStandard Deductionを選んでこられた家庭はよほどの経済的変化がない限り、今後もStandard Deductionを選ぶことになります。

これまでItemized Deductionを選んでこられた家庭は、自分のItemized Deductionの項目を振り返り、合計額がシングルで$12,000、ジョイントで$24,000以上になるかを目算してみましょう。

 

多くのご家庭の場合、Medical Expenseは控除ができない場合がほとんどです。

Charitable Contributionは、年間を通してどのくらいかを考えます。ここでは、例として$1,000としておきましょう。

Mortgage Interestは、たとえば$300,000のローン残高で、利子が4%だとすると、概算で$300,000x0.04=$12,000が利子になります。

SALTは、最高額でも$10,000です。

これらを合計すると、$1,000+$12,000+$10,000=$23,000となり、Standard Decurionの$24,000(ジョイントを想定)よりも少ないため、Itemizeの必要はなく、Standard Deductionを選べばよいことになります。

トランプ税制でタックスリターンのしかたが新しくなり大変になるのではないかと心配されている方もいらっしゃるかもしれませんが、かえってシンプルになるケースのほうが多いと予想されます。Standard Deductionを選ぶのであれば、タックスリターンがかなり簡単になりますから、今まで人にお願いしていたという場合でも自分できるようになるケースもあるかと思います。

 

最後にTax Foundationが、改革前と後での税金を試算してくれるサイトをつくっていますので、ご紹介します。

https://taxfoundation.org/2018-tax-reform-calculator/

すでにモデルケースがいくつか提示してありそれをクリックして内容を見ることもできますし、ご自分の数字を入力してカスタマイズした計算をすることもできます。Standard DeductionかItemized Deductionを選んで、数字がどう変わるかも見ることができます。

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2 comments

  1. いつもわかりやすい解説をありがとうございます。
    私はカンザス州在住なのですが、カンザスではFederal Income Tax Return でStandard Deduction を選ぶと、州の Income Tax Return においてもStandard Deductionを選ばなければいけません。人によってはFederal レベルでStandard Deductionを選んで所得税負担が減ったとしても、州レベルでそれ以上に税負担が増えてしまうということもあるかもしれませんね。

    2018年は多くの州で連邦税制改革に対応した税法の改正がありました。
    Deduction の選択は、自分が住む州の税制を含めて総合的に判断する必要があるのかなと思いました。

    1. なるほど、その通りですね! 連邦と州とを合わせて、どちらを選ぶとよいかを考えなくてはなりませんね。よいコメントをありがとうございます!

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