アニュイティ契約の前に:自分のニーズは何なのか

このところアニュイティの契約を考えているという方からご連絡をいただくことが多くなっています。「手数料は高いのは知っているが、一生涯資金が続くというのはとても魅力」、「エージェントに聞いてみたら手数料はかからないと言われた」、「増えはしても減らないと聞いたので安心」という声をお聞きします。アニュイティは、投資商品ではなく保険商品です。アニュイティは、終身保険と同じく長期的に契約するもので、よく考え通さないで契約し途中で解約することは、好ましくなく大きな損失を招くことがあります。今回は、アニュイティの契約を考えているとき、長期的に健全な契約をするためにどのような注意をはらったらよいのかを、5回連続で考えてみます。

 

自分のニーズを把握する

 

アニュイティに限らず、金融商品を考慮するときには、まず自分にはどのようなファイナンシャルニーズがあるのかを考えることが大切です。自分のニーズが漠然としている中、商品の説明を聞き始めると、あああんなニーズもある、こんなニーズもあるとたくさんのニーズが思いつくかもしれません。そんな場合は、何がもっとも重要なニーズかを考えたり、ニーズを大切な順番にプライオリティ付けすることが大切です。

たとえば、「1.将来のリタイヤメントの生活が大丈夫なように資金準備をしたい」というニーズがあるとき、知り合いに紹介されたエージェントからアニュイティの商品について紹介を受けたとしましょう。いろいろ説明を聞いていると、

  1. アニュイティの中で投資をすることができ、大きく利回りがあった場合はプラスに、値下がりしても下がらないプロテクションがあり、堅実に増やせる
  2. 税遅延で積み立てられてお得
  3. 子どものファイナンシャルエイドで資産としてカウントされないのでうれしい
  4. 生命保険までついてくるので、もしものときも安心

などなど、聞いているとどれもが自分のニーズになってきます。ここで一番大切なことは、それらのニーズを全部まぜこぜにして考えないこと。どれが一番大切なニーズかをはっきりさせることが大切です。

たとえば、3の税金の削減が実は一番大切なニーズであったとしましょう。であれば、アニュイティでそれを実現しなくても、もっと節税に適した商品があるかもしれません。401(K)やIRAを使うことができないか、Health Saving Accountなども考慮に足るかもしれません。あるいは税金がなるべくかからないようなインデックスファンドに投資することも選択肢かもしれません。また、漠然と節税といわず、具体的にどのくらい節税できるのかも調べた方がいいかもしれません。

一方、もし、1のリタイヤメント資金の準備が一番大切なニーズだというなら、アニュイティでなくとも資金積立に適した商品があるかもしれません。先の401(k)やIRA、インデックスファンド投資でニーズが満足できるかもしれません。

また、5の生命保険が一番大切なニーズだというのなら、アニュイティの前に定期生命保険で必要な期間必要な額だけしっかりとカバーしたほうがいいかもしれません。

このように最も大切なニーズを決め、まずはそれにフォーカスして、そのニーズを実現するための代替商品を研究することから始めましょう。そうでないと、一番大切なニーズの実現が中途半端だけど、まあおまけがたくさんついてきそうだからいいかという妥協案になり、よく考えてみたら、妥協案はおまけばかりでどうも筋が通っていなかったということにもなりかねません。

 

金融商品の存在意義を把握する

 

自分の第一ニーズを把握したうえで、今考えている金融商品の存在意義を理解します。存在意義という難しく聞こえますが、その金融商品はなぜ開発されたか、そもそも顧客のどんなニーズを満たすためにできたのかを理解します。今とりあえず考えているのはアニュイティですから、アニュイティの存在意義を考えてみましょう。

アニュイティというのは年金のことです。そもそもの意義は、まとまったお金を金融機関(保険会社)に差出し、その代わりに自分が死ぬまで続く年金をもらい続ける権利を手にするというものです。ちなみに、このような資金の年金化(Annuitize、アニュイティ化といいます)は、自分でもできます。たとえば、$210,000の資金を年間4%で運用しつつ、月に$1,000ずつ引き出すとすると30年間継続する(この時点で残高ゼロ)ことができる計算です。ただ、この4%利回りは確約ではなく、もしかしたらもっとうまくいくかもしれない反面、もしかして市場の大暴落が何度もあれば30年どころか20年ももたないかもしれません。また、健康に恵まれ30年以上長生きすることもあるかもしれません。その場合資金がなくなってしまったというのでは困ります。そのリスクを保険会社に肩代わりしてもらうのがアニュイティ契約です。$210,000を保険会社に渡して、一生涯月々一定額を受け取れるようにしてもらうというシステムです。

それを考えたうえで、先のニーズを見てみましょう。1から5のニーズのどこにも、一生涯年金を受け取れるようにするというニーズはありませんね。つまり、先の5つのニーズを考える限り、ニーズと商品の第一の存在意義がマッチしていないことになります。

アニュイティの本来の存在意義である「生涯年金の確保」という要素は、実はあまり前面に出ないまま、その他の「おまけ」の部分でアニュイティが契約されることがよくあるようです。前にも書いた通り、アニュイティは長期契約です。一度契約したら途中で変更は基本的にしないのが原則です。ですから、契約時には、「これが私のニーズに完全にぴったりと合っている」という確信が必要です。

 

アニュイティへのほんとうニーズは?

 

生涯年金の確保という、アニュイティで満たすべきニーズがあるのかどうかということは、ある程度の分析をしてみてはじめてわかることです。まずリタイヤメント後の生活でいくら月々必要かと情報と、ソーシャルセキュリティなどでの公的あるいは企業の年金がいくら入るかということをしっかり把握し、比較することが必要になります。式は以下のとおり:

アニュイティで確保すべき月額 = 月々の生活費で固定的なもの ― ソーシャルセキュリティや企業年金の固定収入

生活費の中でも一生涯変わらない固定費というのはそうそう多くありません。本当に基本的な衣食住、医療などの固定的に月々かかる費用がいくらなのかをなるべく正確に予想します。習い事、趣味、旅行などは固定費ではないのでここには入れません。そこからソーシャルセキュリティがいくらくらいもらえそうかを調べ差し引きます(ソーシャルセキュリティ口座で受給額をチェックする)。

その差額がアニュイティでカバーすべき額ということになります。このステップを通らないでアニュイティの購入を考えることは好ましくありません。また、この目的のためには、Variable Annuityのように投資の結果次第でいくら年金がもらえるかわからないというタイプのアニュイティは、実は非常にプラニングを難しくするので、特定の場合を除いて好ましくないとも言えます。

まとめますと、ニーズがはっきりしないまま、他の二次的ニーズが満たされそうだからと言ってアニュイティを購入しないことです。アニュイティ本来のニーズに、自分の第一ニーズがあっている場合に、アニュイティを考慮するのが賢明です。

 

4 comments

  1. 今まさにVariable Annuity購入を考え中です。 FPに分からないことを質問しても、いいことしか返ってこず、逆に心配になっています。 前の記事を含めて残り4回、勉強させて頂きます!

  2. 私も、Annuity 購入を検討中で、こちらのサイトで勉強中です。
    保険会社の方に勧められると、半信半疑なので、自分での目的、商品の理解をするように頑張ります。

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