アニュイティ契約の前に:おまけ要素にだまされない

アニュイティのセールストークに心を動かされ、不適切なアニュイティ購入をすることを防ぐためのポイントを見てきています。すでに、老後資金の準備という目的や、市場が値下がりしても減らない投資のためにという目的で、アニュイティを購入することは不適切である場合が多いことを見てきました。今回は、その他よく引き合いに出される、アニュイティの節税効果、カレッジのファイナンシャルエイド獲得、生命保険という安心要素というアニュイティのセールスポイントについても見ていきます。

アニュイティのそもそもの存在意義は、「生涯年金の確保」です。ただこの第一目的に対し、いろいろなおまけ要素がついてきて、それらがアニュイティの利点としてよく引き合いに出されます。

節税効果がある

 

アニュイティでは、利回りが税遅延で運用できます。しかしながら、この利点はなにもアニュイティに限ったことではなくて、401(k)や403(b)などの雇用主提供のリタイヤメント口座でも、Traditional IRAやRothIRAなどの個人リタイヤメント口座でも同じことです。これらの口座が使えるのであれば、先に述べた理由からもこちらを先に利用するべきです。

ただ、それでも、人によっては401(K)もIRAも最大まで積み立てているが、まだ投資に回せる資金がある・・という方もいらっしゃるでしょう。このような資金が潤沢にある方は、高収入である場合が多く、所得税タックスブラケットも高い場合が多いです。そのような方は、アニュイティを使って節税効果を上げながら投資を進めることをお勧めする場合もあります。

節税効果についてみてみましょう(以下Vanguard社のシュミレーション)。

初期一括投資$75,000でVariable Annuityを契約し、年間6%の利回りが出たと仮定、タックスブラケットは28%を想定して、アニュイティで運用した場合と、普通の課税対象口座で運用した場合の比較をしています。一番上が30年後のアニュイティ口座の残高、真ん中がそれを引き出した時の利回り分への課税額を差し引いた手取り金額、一番下が課税口座の残高(毎年利回りには課税がされているので、この最終金額には課税されない)を示しています。最終的に手元に残るお金が、アニュイティでは$331,149、課税口座では$266,740で、$65,000ほどの差になります。

この節税効果についてグラフを鑑みつつポイトをリストアップします。

― 運用期間が長ければ長いほど節税効果は高くなる。反対にいえば10年以下ではあまり差が出ない。

― タックスブラケット(所得税の最終課税率)が高ければ高いほど、節税効果は大きい。税率の低い人ではあまり大きな節税効果が出ない。具体的には25%以下(2017年の収入(AGI)がシングルで$91,900まで、夫婦ジョイントで$153,100まで)の場合は、運用期間にもよるがアニュイティにこだわる必要はない可能性が高い。

― 投資するファンドが課税対象となる利回りを生むものであればあるほど、節税効果は高い。たとえば利子が定期的に入る社債や、REITなど不動産収入の入るものなどはアニュイティで運用すると比較的節税効果が高い。一方、アメリカ国内大型株式(Qualified Dividend扱いのもの)やキャピタルゲインなどはそもそも所得税より低い課税なので、わざわざアニュイティにいれても、それによる節税効果が低い。インデックスファンドなどは売り買いも少なく、それだけキャピタルゲインも低く、同様に節税効果は低く目といえる。

― 大きな額の初期投資がある場合のほうが、細かい積み立てを少しづつするより節税効果が高い。

というわけで、セールスエージェントが節税効果を持ち出したとしても、投資期間が10年~15年未満、タックスブラケットが25%程度まで、積立額も数万ドルまでというような場合なら、節税効果はそれほど大きな利点とはならないと理解するとよいと思います。高いアニュイティの手数料を払ってまで実現するほどの節税にはならない場合が多いでしょう。

 

ファイナンシャルエイド申請でカウントされない

 

カレッジのファイナンシャルエイドを決めるFAFSAでは、リタイヤメント関連の財産は資産としてカウントされません。401(k)やIRAなどに加え、アニュイティもこの範疇に入り、FAFSAでは資産として考慮されません(私立大学などで使われるもう一つのファイナンシャルエイド算出システムであるCSS/Profileではカウントされます)。一方で、リタイヤメント関連以外の投資口座はFAFSAで(CSS/Profileでも)資産としてカウントされ、エイドを得る可能性(あるいは額)を下げます。課税対象のミューチュアルファンドはこの範疇です。よって、収入面では十分ファイナンシャルエイドがもらえるレベルであるが、資産がちょっと高すぎるというような場合には、アニュイティに「資産を隠す」という方法が使われることがあります。

もうすぐカレッジに行くお子さんがいらっしゃり、FAFSA対策のため資産を減らしておきたいという場合にはアニュイティが理に適う場合もあるかもしれません。ただ、FAFSAでは資産よりまず収入が大きくモノをいいますので、収入が高すぎる場合には資産をどんなに減らしても歯が立たない場合もあります。

ただ、アニュイティは前述のとおり、一度契約したら解約はとても損です。またアニュイティは手数料が高いので、よほどのネベフィットがない限り、簡単に手を出すべきものではありません。よって、ファイナンシャルエイド狙いの場合は、具体的にどのくらいのファイナンシャルエイドがもらえそうなのか具体的な数字を見極め、それとアニュイティの欠点を比較し、納得してこの方法をとる必要があります。

 

生命保険がついてきてお得

 

前述のとおりアニュイティは保険商品なので、多くの場合生命保険がついてきます。早く死んで困るときのための補償を買う生命保険と、長く生き過ぎて困るときのための補償を買うアニュイティは、どちらも人の死のタイミングを扱うということで共通点も多い保険商品です。ならば、アニュイティに生命保険も合体させてしまうというのは、自然と言えば自然のなりゆきではありますが、ただこれはタダではありません。もちろん追加の補償の分、保険料がかかります。ただ、それが別途いくらいくらかかります・・とは明記していないことがほとんどです。目に留まらないから無料というわけではないことを知っておきましょう。

ということで、もしもすでに生命保険を別に持っているから、とくに生命保険は必要ないなら、このおまけの生命保険は無駄ということになりますし、もしも生命保険が必要だとしたら、必要な額だけ、必要な期間だけ、しっかりと無駄なく補償してくれる定期生命保険を安価に購入し、敢えてアニュイティでそれを実現しようという考えはやめた方が無難です。生命保険が必要な期間とアニュイティが必要な期間は全然違いますから、それぞれ別個にしておいた方が期間の調整も簡単ですし、いくらかっているかの把握も簡単です。

 

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