Last Updated on 2012年3月30日 by admin
自動車保険、なくてはならないものですが、でも必要以上には買いたくないもの。では、いくらなら適切かというのは、簡単には決められないことですね。事故をしたとき、必要なカバレッジがなければ、自分の財産から補償金を払うことになりかねますから、リタイヤメントや学費など家計のプラニングに大きな影響を与えかねません。かといって、必要以上のカバレッジに入っていれば、保険料を払いすぎていることになり、本来ならば他の目的のために貯められるお金が無駄になっているということです。
では、アメリカの自動車保険には、どのような項目があって、それぞれどのような考え方で購入額を決めていけばいいか見て行きましょう。このテーマ2回に分けてお送りします。1回目はライアビリティー(賠償責任)と人身傷害補償について、2回目はUI/UIM(無保険・不十分保険ドライバー対応補償)とコリジョン(衝突車両損害補償)、コンプリヘンシブ(包括車両損害補償)についてです。
まずは自動車保険の目玉項目、ライアビリティー・カバレッジ(Liability Coverage)です。これはあなたが加害者であるときの、賠償金や必要経費をカバーします。あくまで相手に対しての責任をカバーするのであって、あなた自身、あなたの車に乗っていた人、あなたの車への被害はカバーしません。ライアビリティーはふたつに分かれます。
対人ライアビリティー(Bodily Injury Liability)
自分が被害をあたえた相手の医療費、失われた収入、痛みや苦しみの代償(Pain and suffering) をカバーします。よく、20/50とか100/300のように表示がありますが、これは補償限度額で、最初の数字が被害者ひとりあたりの限度額、あとの数字が事故一件あたり(被害者全員に対して)の限度額です。100/300であれば、被害者ひとりにつき$100,000までの補償、事故一件につき$300,000までの補償を指します。
対物ライアビリティー(Property Damage Liability)
自分が被害をあたえた物へのダメージをカバーします。対人ライアビリティーのふたつの数字のあとに続く、3番目の数字がそれです。25/50/15であれば、対物の補償最高額は$15,000です。
どの州も最低限購入しなければならない補償額を決めており、15/30/10、25/50/25、30/60/25というようなレベルです(各州の必要限度額はこちらを参照)。法的にはこの最低ラインのカバレッジがあれば、問題なく運転できることになりますが、しかしこれは実際に事故となれば、これをはるかに超える補償額が必要になる可能性は大です。あなたが加害者になってしまったとき、被害者の医療費が補償額でカバーされきらなければ、おそらく被害者はあなた自身の持ち家、車、預貯金などの資産からその補償を要求するでしょう。事故一件で家庭のファイナンシャル・プランが崩壊してしまう危険があります。
まさに保険はこのようなリスクに対処するツールですから、必要十分な補償をきちんと確かめて購入することがたいせつです。一般的によく提案される対人ライアビリティの額は、100/300のようですが、これが万人に当てはまるわけではありません。このカバレッジの額を決めるときには、「実際事故をしたらどのくらいの補償金が必要か」という面からではなく、「自分は守るべき資産がどのくらいあるか」という面から考えを進めるべきです。同じ事故をして同じ被害額を出しても、資産が少なければ失うものも少ない(守るべきものが少ない)のに対し、資産が多ければ失うものが多い(守るべきものが多い)わけです。事実、被害者の弁護士は加害者であるあなたの資産をいち早く調べます。
あなたが、年収$30,000でアパート住まい(持ち家なし)、預金もそんなにないというのなら、50/100/50でも十分かもしれません。年収が$75,000超、持ち家の市場価格は$200,000でほとんど返済済み、$50,000の投資資産ありというのであれば、100/300/100は必要でしょう。
年収$150,000で持ち家は$400,000、投資資産は$200,000というのであれば、250/500/250が必要かもしれません。それ以上の資産を保護したければ、自動車保険に加えてUmbrella Insuranceを追加で購入することも考慮が必要かもしれません
また、最後に付け加えますが、これにはモラル面での判断も必要です。たとえば、若い方で収入も資産もあまりないから、最低限の15/30/15を購入していたとしましょう。もし、注意不足で事故を起こし人を傷つけ障害を負わせてしまったとしましょう。$15,000のカバレッジではとうてい必要な補償には程遠いでしょう。被害者は差額を補償してもらうためにあなたに対して訴訟を起こしますが、あなたにはそれをカバーできる十分な収入も資産もありません。自己破産を選んでも不思議はないでしょう。その場合、被害者は十分な補償がないまま大変な重荷を負って生きていくことになります。「自分には資産がないから最低限でいいや」と安易に考えるのではなく、もしもの場合に備えて精一杯のカバレッジに入っておくという姿勢もたいせつです。
人身傷害補償(Personal Injury Protection)
あなた自身とあなたの車の搭乗者の傷害治療費、失われた収入をカバーします。フロリダ、ハワイ、マサッーチュセッツ、ミシガン、ニューヨーク、ニュージャージー、ワシントンDCなど全部で12州と1ディストリクトが、最低限購入しなければならない補償額を定めていますが、それ以外での州ではオプショナルです。
このカバレッジは、自動車保険以外の保険のそれと重なることがままあります。障害の治療費については医療保険と、失われた収入についてはディスアビリティー保険(所得保障保険)とオーバーラップします。十分な医療保険を別に持っていて、けがをしても自己負担分は少なく保険がだいたいカバーしてくれるうえ、けがで働くなくなってもディスアビリティー保険が収入をカバーするというのであれば、この人身傷害補償は不要でしょう。もし最低必要額がある州にお住まいの場合は、最低レベルを購入するだけでいいでしょう。
反対に、医療保険に入っていない、あるいは入っていてもdeductibleが高く設定してある、あるいはco-insuranceが大きいというような場合は、このカバレッジを購入することが必要かもしれません。
いずれにせよ、このカバレッジは車に乗っていての傷害しかカバーしません。このカバレッジを買うべきか、それとも医療保険をアップグレードする/ディスアビリティー保険に加入するべきかについて、コストとベネフィットをよく吟味し、比較検討するべきでしょう。
次回は、UI/UIM(無保険・不十分保険ドライバー対応補償)とコリジョン(衝突車両損害補償)、コンプリヘンシブ(包括車両損害補償)についてお送りします。
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