高すぎるアメリカ! - 大学はカナダへ、手術はインドで

「アメリカで死にそうなほど、高くて困るものは何でしょう」と聞かれたらなんと答えます?やぱりカレッジ費用と医療費じゃないでしょうか。インフレをはるかに超える成長率でガンガン増え続ける大学の学費。私立大学では、1年で$60,000などという数字を見るようになりました。4年なら$240,000ですよ、都市部でなければ家が一軒買えますね!負けず劣らず医療費は、膝関節手術で3日入院して$40,000、「ケタがひとつ間違ってませんか?」と聞きたくなる方もいらっしゃるでしょう!

子どもが3年生のソーシャル・スタディで勉強しました:自分の国の中でモノをつくるより、そのモノを安くよりよくつくれる国があったらば、その国がつくったモノを買います。これをimportingと言います。

そう、アメリカより安い国があれば輸入すればいいわけですが、でも、大学や医療サービスとなると、輸入するわけにいかないじゃないの!仕方がない、輸入がだめなら、自分から出て行きましょう・・ってなわけで、「比較的安価な授業料」と「比較的安価な医療費」を求めてアメリカから出稼ぎに行く(いや、稼ぐわけじゃないから、何ていうんでしょう??「出学び」と「出入院」・・ですか)人が増えています。

出学び - カナダ留学

留学というと、日本人にとっては、「言葉の違う海外の国に行って、異文化の中で学ぶ」というなんか夢あふれる感じもありますが、この場合のカナダ留学は、「同じ北アメリカの英語圏で、なるべくカルチャーショックは最小限にしつつも、コスト削減する」というかなり現実的なイメージでございます。

たまたま(?)半分同じ言語を話すお隣の国が、教育の質は国際レベル、カレッジ費用は自国よりもずいぶん低めときたら、白羽の矢がたっても不思議ではありません。現在10,000人ほどのアメリカ人がカナダの大学で学んでいるとのことですが、アメリカ人留学生の人数は過去10年間で50%の伸びだったとのことです。アメリカの学費急騰とともに、隣国への関心は高まり、たとえば、University of British Colombiaでは、アメリカからの入学願書が2008年から33%増加しています。カナダの大学の中には、アメリカの高校からカウンセラーを招聘して、入学・留学のワークショップをしているところもあるそうです。

アメリカ人(日本人でも)がカナダの大学で学ぶ場合、インターナショナル学生扱いになり、カナダ人の学生よりはカレッジ費用がかかることになります。インターナショナル学生の費用はだいたい$14,000~$26,000(2011年)だそうで、アメリカ国内の私立に通ったり、州立大学にout-of-stateの学生として通うよりは安い場合が多いという事実があります。

10年前には、カナダドルがアメリカドルに対して弱かったので、アメリカに住むものにとってはカナダ留学がより安価なものでした。今は、カナダドルとアメリカドルはほぼ等価ですので、カナダ留学が「高く」なったわけですが、それでもこの高等教育の価格差は以前として存在します。

たとえばMcGill Universityの場合

たとえば、US News & World Reportで世界のベスト大学400校で18位にランクする(ちなみに東京大学は30位)McGill Universityの場合、アメリカ人の学部生は全体の6%だそうでして、インターナショナル学生であってもファイナンシャル・エイドがもらえることもあるらしく、アメリカのGeorge Washington Universityの1年分の費用でMcGillの4年分の費用をカバーしたなんてケースもあるようです。実際に払っている額は、$17,000とか$20,000という数字で、これはアメリカの私立大学のカレッジ費用の半分以下。

McGillは国際的にも認められており、アメリカ国内に戻って大学院に行きたいとなった場合も、アメリカ大学から正当に評価されます。学費が高い割には、ちょっと専門性の高い職業につこうとするとすぐに修士号が必要となるアメリカ。高い学費を払って学士号をとっても、まだ継続して勉強が必要となったとき、すでに資金を使い果たしていたり、巨額の学生ローンを抱えていては、大学院進学もままなりません。カナダで安く(?)学士号をとり、余剰資金(あればですが!)をアメリカ大学院に使うなんていう図もありかもしれません。

アメリカ大学を卒業する学生の抱える平均学生ローン負債は$26,000。2年以内にデフォルト(返済不能)に陥るのは9%という現状と照らし合わせると、カナダのアメリカ人学生の数は今後もスピードを増して増えていくと予想されています。えっつ?529ファンドはどうなるかって?カナダの100を超える大学でちゃんと使えます。

出入院 - メディカル・ツーリスト

国外に出向いて医療措置を受ける人々のことをメディカル・ツーリストと呼ぶらしいですが、これは今に始まったことではありません。もう何年も前から、外国に出かけていき、そこでフェイス・リフトなどの整形手術を受け、治癒期間についでにバケーションも楽しんでしまうというようなツアーは行われていました。しかしながら、最近では、そのような審美系の「やる必要はないけどやりたい手術」のためではなく、ヒップ・リプレイスメント(股関節全置換)や心臓や脳神経系の手術など、もっと「シリアスな医療措置」をアメリカ国外で受ける人が増えています。

Medical Tourism Association (こういうアソシエーションが存在するところが驚き)によると、人気の渡航先はインド、タイ、シンガポールで、追ってアジア諸国、ラテンアメリカ、ヨーロッパと続きます。なぜわざわざ国外に出るかといえば、そう、もちろんコストです。ニー・リプレイスメント(膝関節置換手術)の場合、アメリカだと$40,000だそうですが、コスタリカだと$11,000、インドだと$8,000で済むそうです。胃バイバス手術だと、アメリカでは$35,000だそうですが、メキシコだと$11,500。冠動脈バイパス手術だと、アメリカでは$88,000のところ、インドだと$9,500で済むそうです(これって、文字通りケタが違いますね!)。

必要に応じて外の国に出向いて医療サービスを受けるのに抵抗がないことを“Medically mobile”というのだそうです。多くの国で人口の約1/3が “Medically mobile”だという調査があるのですが、例外は日本とのことで、私たちにはどうも「手術を受けにインドに行きます・・」というのは抵抗があるようです。言葉の問題もあるでしょうね。だけど、アメリカに住んでいる日本人にとっては、アメリカでもインドでも英語を使わねばならないのなら言葉の問題はないに等しいかもしれないし(インド訛りがちゃんと理解できれば!)、医療費が60%OFFなら考えませんか、ちょっとばかし。。

アメリカ医療保険の非力さ

これらのメディカル・トラベラーの中には医療保険を持っていない人ももちろんいるでしょうが、医療保険を持っている人もたくさんいます。High Deductibleプランを持っており、自分のお財布から医療費負担をせねばならないような人です。また、年々、医療保険のカバーする措置やサービスが削られていく傾向があり、医療保険を持っていたとしてもできるだけ安い医療措置を求める人が増加しています。

Health Savings Accountでお金を貯めている場合どうなるのでしょう?このような国外での医療措置のために使えるのでしょうか?答えはYESです。医療措置を目的としているなら、その旅行費用も税控除の対象となります。

Patients Beyond Bordersという団体によりますと、2012年のメディカル・トラベラーは600,000人あまり。これからベビーブーマーが高齢化していくに従い、この数字は年間15~20%くらいのスピードで増えていくと予想されているそうです。

高すぎるから、大学はカナダへ、手術はインドへ。。。アメリカはこれでも豊かな国でしょうかねえ。。あと高いもの・・・家!だけど、こればっかりは国外脱出の方法がないですねえ。しかしながら、最近のブログで日米の老後の生活費の比較をしてみましたが、日本では月に20万円でも暮らしていけるというコメントもいただきました。アメリカでは、医療費と固定資産税の高さがゆえにその2倍、3倍の資金は必要となるという結果でした。大学はカナダへ、手術はインドへ、老後は日本へ。。それじゃあ、なんでそもそも今アメリカにいるのか。。不思議だぁ~。

2 comments

  1. 初めまして。いつも興味深く読ませていただいています。

    アメリカの教育、医療費は本当に高いのですねぇ。よく聞く話ですが、実は都市伝説的なものでは、と思っていました。それにしても、学費が年数万ドルなのに、平均学生ローン額が26,000ドルというのはどういうからくりなのでしょう?親がいくらか払っているのか、皆さん奨学金を貰うことができ思ったほど負担額が多くないのか???

    私はフランスに住んでいますが、大学の学費は年2万円くらいです。2万円にもかかわらず多くの学生は奨学金を貰うので実質無料です。その上家賃補助が月250ユーロ前後毎月もらえます。留学生も学費はほぼ無料、家賃補助も貰えます。もしかしたら大学に入る為の語学学校の学費+大学の学費+仕送りをしてもアメリカの大学に行くより安くなるかも知れませんね。交換留学も盛んで例えばアメリカの大学に行っても、学費はフランスの大学のままです。

    その上聞いた話だと、フランス国籍を持っているとカナダのケベック州の大学の学費はケベック住民と同じなだけではなく、保険もフランスの社会保険が使えます。
    なので、ケベック州の大学が盛んにフランスで説明会を開いています。愛国心が強いと言われるフランス人ですが、ケベック州の大学説明会は毎回大盛況です。フランスは今大変な不景気で若者の失業率が非常に高いですからねぇ。

    こんなでフランスの大学に留学、というのもアメリカ人や、やはり学費が高い日本人の選択肢の一つに入れても良いかも知れませんね。

    それにしてもフランス国籍、羨ましいです。カナダ以外にもEU内の大学の学費も自国民と同額ですからね。

    長文失礼しました。

    1. フランスから読んでくださっているとは・・ありがとうございます。そう、信じがたいですよね、この学費の高さ。住んでいてもたまに信じられないと思うので、他国にお住まいならなおのことでしょう。ま、学費は高いのですが、家庭収入が低いとそれなりに連邦政府や州から奨学金がでます。反対にお金持ちの親なら、年間60,000ドルの学費も全額払います(わたしの友達は実際、年に$60,000払っています)。問題はその中間層。全額奨学金はでない、全額自力で払えない。。とローンになります。そしてこの中間層が案外多いのです。フランス、うらやましい。ドイツとかもタダに近いと聞きましたが。。ヨーロッパは、猫も杓子も(言葉が悪いけど)大学に行かないんですよね?大学に入る、大学でサバイブするのが、アメリカよりずっと難しいのではないですか?それが本来あるべき姿ですけども。つまり、ヨーロッパの大学は学術組織、アメリカはビジネス組織ってかんじ?

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