生命保険にはさまざまな種類があり、またその内容が非常に複雑で難解なものも多くあります。自分が生命保険に求めるものは何か考えないで契約するのはキケン。とりあえず入っておこうもキケンです。生命保険を考えるうえで、知っておきたい10つのことをまとめてみました。
1.保険エージェントのコミッションは・・・
生命保険を買う場合、知識と経験のある保険エージェントは大きな助けです。生命保険のニーズは把握を助けてくれたり、たくさんある選択肢の中からぴったりのものを選ぶのを助けてくれます。しかしながら残念なことに、保険エージェントのみんながそうではないことも事実です。エージェントの言うことを鵜呑みにしないこと。自分の頭で考えることが大事です。
保険セールスは非常に競争の激しい業界だそうで、セールス・エージェントにとっては販売コミッションがその報酬の大部分だそうです。Whole Life Insuranceの場合は一年目の保険料の90%から105%が、Term Life Insuranceの場合は一年目の保険料の30%から70%がコミッションとなるそうです。Whole Lifeはコミッション%が高いうえに、保険料の絶対額も高いのでダブル効果でコミッションがつりあがります。
たとえば33歳女性が$250,000の生命保険をかける場合、30年Term Lifeなら年間保険料は$312とすると、$94~$218がエージェントへのコミッションとなるわけですが、これがWhole Lifeの場合、年間保険料は$1,920、コミッションは$1,728~$2,016となります。エージェントの受けるコミッション絶対額はWhole Lifeを売ったほうがずっと大きいのがわかります。
また、コミッションは二年目以降の保険料からも支払われますが、そのパーセンテージはずっと低く、Whole Lifeでは年間保険料の6%、Term Lifeでは4%が目安とのことです。新規契約のコミッションが継続コミッションの何十倍というこのシステムでは、なるべく新しい契約を売ろうというモティベーションにもつながりかねません。ある保険を契約させておいて、それがニーズに合わないとなると他の保険に乗り換えさせることで、高い新規コミッションを得続けようとするような悪質なエージェントの記事も読んだことがあります。
自分の得るコミッションより顧客のニーズを優先し、真摯になって相談に乗ってくれるエージェントは必ずいます。ただ、そうでないエージェトもいるかもしれないということを知っておくことは必要です。よいエージェントとそうでないエージェントとの見極めをする必要があるということです。
2.長所だけ聞いて決めるとダメ
「Whole Lifeなら期限付きの保障ではなくて一生ものですよ」「Universal Lifeなら収める保険料も死亡保証金もフレキシブルに変更できます」「Variable Lifeなら自由に投資商品が選べ大きなリターンも期待できます」・・・よく聞くうたい文句ですが、大切なのは長所だけを聞いて決めないこと。長所の影には短所ありです。
人の性格を例にとりましょう。スピーディーに手早く何でも片付ける人は短気かもしれないし、のろまで時間のかかる人は丁寧かもしれません。ひとつの資質は長所にも短所にもなるわけで、その資質が長所だけ、あるいは短所だけということは少ないのではないでしょうか。保険もそうです。
「Whole Lifeなら期限付きの保障ではなくて一生ものですよ」のうらには、人生の後期で死亡保障がもはや必要なくなっても、減らすことができない。解約することはできても、最終的に損な結果にもなりえるという短所があります。
「Universal Lifeなら収める保険料も死亡保証金もフレキシブルに変更できます」のうらには、キャッシュ・バリューや収める保険料の状況をきちんと把握し計画的に保険料の調整をしていないと、必要な死亡保険金がいつの間にか減っていた、ひどいと保険が無効になっていたということにもなりかねないという短所があります。
「Variable Lifeなら自由に投資商品が選べ大きなリターンも期待できます」のうらには、自分で選んだ投資の結果はよくても悪くても自己責任であるということ、投資をするためには(必ずしも明確でない)手数料を取られる可能性があるという短所があります。
長所と短所の両方を説明したうえで、最善のチョイスを導いてくれるような保険エージェントはよいエージェントです。反対に、長所しか言わないエージェントには注意が必要です。いいところについて説明を受けたら、「その裏の短所は何ですか?」と質問すること。そして、短所をしっかり理解したうえで、自分にとっては長所のほうが大きいと納得できること、それが大切です。
3.理解できないものは買わない
Vanguard社の創始者であるJohn Bogleは、「成功する投資の秘訣はシンプルさを保つこと」といいました。私は保険にもこのルールは当てはまるように思います。「死んだらお金がもらえるようにする」という目的をシンプルに保つことです。金融商品は複雑で難解なものというイメージがありますが、実はシンプルに保とうと思えばできるのだと思います。
それを敢えて複雑にしたい人たちがいます。保険会社です。Term Lifeはシンプルですが、もっと効率よく利益を上げるためにWhole Lifeをつくりました。そのうち、Whole Lifeは思ったより魅力的でないことが人々に分かってくると、今度はUniversal Lifeをつくりました。その次にはVariable Lifeをつくりました。複雑度はどんどんあがっていきます。その都度、非常に難解な商品を作り出し複雑さを加え、短所を見えないようにし、長所を大きく歌って売っていくのです。
もちろん、このような複雑な商品を使いこなし、自分のために有意義に使うことができる人もいるでしょう。しかし多くの場合、複雑になって得をするのは保険会社、損をするのは消費者です。複雑な保険商品だとセールスをしているエージェント自身でさえ、深く理解しきっていないものもあるそうです。よく理解できないなら買わないこと。よく理解できないならはじめのニーズに立ち返り、それを満足させるできるだけシンプルな方法を選ぶことです。
4.保険以外の目的にも使える生命保険
Wikipediaで「保険(insurance)」という言葉を検索してみると、このように定義されています:偶然に発生する、起こるか起こらないかわからない損失に対応するためのリスク・マネジメントの一形態。つまり、保険は、「不確定なリスク」による損失を補填するための、リスク・マネジメント・ツールだということです。生命保険の場合の「不確定なリスク」とは、時期尚早に死亡すること。家計を支える人の収入が絶たれたため、残された家族の生活を維持することができなくならないように、その損失を埋めるというのが、生命保険の本来の目的です。
しかし、生命保険はこれ以外の目的にも有意義に使うことが出来る場合もあります。生命保険は、貯蓄・投資とペアにすることができ、その貯蓄・投資はTax deferred(税遅延)で運用することができるという利点があります。また、「死亡したらお金が払われる」というしくみを利用して、次世代にお金を残すツールとしても使うことができます。これらは、本来の「不確定なリスクのマネジメント」という目的とは異なる目的で生命保険を使う場合です。たとえば:
- Tax Deferred(税遅延)で貯蓄・投資したい。
- 十分なキャッシュ・バリューをつくり、必要に応じローンを組んだり引き出したりできるようなセルフ・バンキング体制をつくりたい。
- 余剰資産があり、税制上有利に蓄え、次世代にお金を残したい。
- 相続税の課税対象となる資産(ビジネス、レンタル物件、ファームなど)があり、支払わねばならない相続税のためにお金を残したい。
知っておきたいのは、このような使い方は、一定のニーズや条件があってはじめて合理的であるということです。このような使い方をする場合は、保険エージェントやファイナンシャル・プラナーの助けを得て、きちんとしたニーズ把握とプラニングしてから使うべきです。確認が出来ない場合は、保険は保険以外の目的には使わないほうがベターでしょう。
5.保険と貯蓄・投資は混同しない
ふたつのことが似ているから「兼ねる」ということはよくあること。でも、ふたつのこと、やっぱり「兼ねない」ほうがいいこともよくあります。Ninjaというブレンダーをご存知ですか?Infomercialで宣伝を見て欲しくなり、商品レビューもよかったので購入しました。スムージーもブレンドするし、野菜もチョップするし、アイスもクラッシュするし、パン生地もこねますというフレコミで、まさに何でもできるNinjyaです。。ところが、ブレンダーやアイス・クラッシャーとしてはなかなかよいのですが、野菜のチョップはいまいちです。何回かトライしましたがどうも調子が悪いので、結局、昔Walmartでずっと安く買ったフード・プロセッサーを棚から引っ張り出してきて使っています。
保険と投資もそんな関係かもしれません。似ているかんじもしないでもないので、一緒にやってしまいたくなりますが、実は目的がまったく違うので一緒にしないほうがいい場合が多いものです。保険は万が一の場合の損失をカバーするためのもの、投資は将来使うためにお金を増やしていくためのもの。保険は保険会社からしか買えませんが、投資は他からも買えます。
保険のキャッシュ・バリューはTax-deferred(税遅延)で運用できるという利点があるのはたしかですが、401(k)、IRA、529でもそれは同じです。保険会社の提供する投資媒体はそれほど選択肢がない場合もありますし、そのうえ何といっても手数料が非常に高い場合が多いようです。ミューチュアル・ファンドの手数料も非常に複雑でよく見えない形で徴収されることが多いですが、保険会社の徴収する手数料はそれと同等かそれ以上によく見えないことが多いのです。保険は保険だけ、貯蓄・投資はべつのところで・・・という方法のほうがベターな場合が多いものです。
後編へつづく・・・
こんにちは、先日あまり保険にも詳しくない知り合いの紹介で私がSYNCISという保険からFidelity guaranty とかいうユニバーサルみたいな保険にサインしましたが 多々の知り合いから辞めた方がいいと言われています。Fidelity guranty insurance とは 結局ユニバーサル insurance のようなもので エージェントにコミションずっと払ってるようなものですか?どうかお教えください。
Fidelity Guranty&Lifeというのは会社の名前でいろいろなプロダクトがあるようですので、一概に言えません。また、保険の良し悪しは、商品自体がいいか悪いかというところも少しはありますが、多くの場合その方の必要にあったものかあったものでないかがキーとなりますので、残念ながらコメント欄で簡単にお答えできることではありません。よろしければプラニングサービスの一部として承ります。
ひとつだけ。。保険商品はクーリングオフ期間が設定されていると思いますが、それを過ぎると簡単にキャンセルできないことも多い(大きなキャンセル料がかかる)ので、今迷われているならば、とりあえず期間内にキャンセルして、よく考えて再度契約していということであればもう一度やり直すことも可能かと思います。エージェントに確認されるとよいかと思います。
ありがとうございました。
保険のエージェントからOneAmericaという保険会社のWholeLifeがDividendsもついてとても良いと紹介されています。
Dividendsもついてくるので非常に良い条件のように思えますが、ネットで調べるとWholeLifeはやめたほうが良いという意見も多く迷っています。
このようなDividends付きのWhole Lifeはどう思われますか?
ひとつひとつのPolicyは条件などを詳しく見ないとよい商品か一概には申し上げられないのが現実です。また、ある人によい商品も他の人にはあまりよくないということもあり、あくまでもその方のニーズによります。Dividendというところだけ聞くとよいように思いますが、そういう売り文句にだけとらわれず、すべての条件をよくお読みになることをお勧めします。あるいは、エージェントの方に、「この商品のよいところはよくわかりました。この商品の注意点はなんですか?」と聞いてみたらどうでしょう。どんな商品でも英語でいうところのPro(長所)とCon(短所)があるもので、長所だけの商品というのはありません。短所をきちんと説明できるエージェントから、短所を納得の上、それでも長所がうわまわるので購入するというのが良いと思います。
タイムリーなトピックで非常に参考になりました。ありがとうございます。保険屋さんが何故に日曜日でも時間を割いて保険のお話をしに来てくれるかの理由がよくわかりました!
Universal Index Life Insuranceについてもう少しお話をお話を聞かせて頂けませんでしょうか?保険会社の方で別にアカウントを用意してインデックスプロダクトを追った投資を行い、Gainの上限(約12%?)を持った商品というのはなんとなくわかりました。でもLossをどのように補てんするのか、その補てんする為のお金はどこから来ているのか(顧客のPremium?)、それと引き出す際のローンへの利子はどのように帳消しにしているのか・・・謎なところが盛りだくさんの商品です。宜しくお願いいたします。
個々の商品でいろいろ差があるかもしれないので、具体的なことはわかりませんが、Lossなどの補填は、Gainの上限やSurrender Chargeやその他のInvestment手数料などから十分カバーできるのだと思います。保険会社は統計、確率とそれに基づく「賭け」ではプロですから、損がなく利益がでるように商品は設定されているのだと考えられます。