わかる長期投資:これだけ押さえてしっかり運用(2)

リタイヤメント資金準備などの長期投資をするにあたって、最低限知っておくべきポイントを抑え、できるだけ簡単に長期投資を始める、あるいは維持していくための考え方を身につけるシリーズを5回に分けてお送りします。1回目では、投資の基本であるダイバーシフィケーションとは何かとその効果について見てみました。2回目の今回は、実際にどうダイバーシフィケーションを実現するかについて見てみます。

ふたつのダイバーシフィケーション

 

ひとことでダイバーシフィケーションと言っても、投資する対象にはいろいろなものがありますから、いったいどこから始めればよいのか戸惑います。投資できるものには、アメリカITの花アップル株、日本の手堅い新日鐵住金株、インドの新興テック企業の株もあれば、カリフォルニア州債、フランスの国債もあれば、ロシアの不動産、スイスの電力会社債、金もあれば、穀物の先物まで、いろいろです。こんなにたくさんある投資の対象物を前に、うまい具合にダイバーシフィケーションを実現するというのはなかなか大変なことです。

たとえばさまざまな食品を前に、バランスの取れた食事をしましょう・・・と言われても、何をどれだけ食べればよいのか戸惑うのと一緒です。食品はカテゴリごとに分類されていますね。炭水化物類、たんぱく質類、野菜類、フルーツ類・・などというようにグループ分けされたものからそれぞれをバランスよく摂取します。それと同じで、投資媒体もグループ分けで考えると始めやすいです。

投資の場合は、大きく分けて、株式グループ、債券グループ、その他に分かれます(もっといろいろなグループがありますが、ここでは3つに簡略化します)。株式グループもさらに、グループに分かれますが、グループ化のしかたは様々な方法があります。たとえば、大型株、中型株、小型株と資本総額の大きさで株式を分ける方法や、アメリカ株、日本株などというように国で分けたり、先進国株、新興国株などというように国の経済発展度によって分けたり、分け方はいろいろです。債券についても同様です。

いきなりすべての投資対象を前に、ダイバーシフィケーションを試みるのではなく、まずは 1)カテゴリーごとに分けたそのカテゴリー内でダイバーシフィケーションを行い、今度は 2)そのカテゴリーを組み合わせてさらにダイバーシフィケーションを行うというように2段階の考えをすると、少しマネージがしやすくなるのをイメージしてください。

 

ひとつめ:カテゴリー内のダイバーシフィケーション

では、株を例にとって、株グループの中でのダイバーシフィケーションを考えてみましょう。前回、株式は増やせば増やすほどリスク分散効果は高まり、ダイバーシフィケーションの効能が得られることを書きましたが、この「増やせば増やす」を自分でやるのは非常に大変です。

たとえば、とりあえず100銘柄を目指したとしてみましょう。自分で100銘柄を買うとなれば、一株何百ドルという株もあるでしょうから、まとまった資金が要ります。そのうえ、いくらずつ買ってミックスするかも計算して割り出さねばなりません。これはなかなか骨の折れる作業です。だいたい100銘柄というのは、実際どの銘柄を選んだらよいかを決めるのもたいへんな作業です。

一番手っ取り早くこれを実現する方法は、インデックスファンドを選ぶことです。インデックスファンドは、ベンチマークとする株式指数(たとえばS&P500など)を選んで、その指標で採用されている株銘柄に投資するファンドで、その意味では適正な(株式市場と同じ構成状態で)ダイバーシフィケーションがなされているファンドといえます。S&P500インデックスファンドなら500銘柄をカバーしているわけで、S&P市場全体にまんべんなく投資しているというわけですから、リスク分散という意味では二重丸です。

S&P500はアメリカ市場のうちでも大企業の500社の値動きに連動したインデックスですが、なにもそれがアメリカ市場のすべてではありません。US Total Market Indexというインデックスがあり、これはアメリカ市場の大も小も、株式が取引されている会社の株はほぼ全部を含んでおり、合計4,000社に投資しています。このインデックスに基づいているインデックスファンドはVanguard社のTotal Stock Market Index Fundが有名ですが、このファンドは$3,000から投資でき、$3,000さえあればこのファンド一本でアメリカ市場の4,000社に分散投資できることになります。

ちなみに、自社株やその他の会社の株を集中して持つタイプの投資をする方がいらっしゃいます。これは何も間違ったことではありませんが、ただ限られた株式に集中投資することは、分散投資とはまるで反対のハイリスク・ハイリターンであることは覚悟される必要があります。

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分散投資に戻しますが、自力で4,000社の株式へ分散投資をしようとしたらかなりの資金だけでなく、かなりの手間も伴いますが、Total Stock Market Index Fundを買えば、オンラインでの手続き1クリックで済みます。これがインデックスファンドの威力です。インデックスファンドにはファンドマネージャーがいて、ファンド内の株式が目標とするインデックスの株式に合致するように維持しています。S&P500にせよ、Total Marketにせよ、時折含まれる株式が変更になる(指標の条件に新たに合致する会社ができて新しく追加されたり、反対に条件に満たなくなってはずされたりする)ことがあります。このときには、そのインデックスを追随するインデックスファンドも自分のファンドの中の株式を変更しますが、それ以外は、ファンドマネージャーは基本的に売り買いはしません。つまりインデックスファンドはファンドマネージャーにとっても、多くの労力が必要なものではなく、それゆえ手数料が低い場合がほとんどです。

インデックスをただ追随するだけというこのやり方はパッシブ投資と呼ばれますが、反対に儲かりそうな銘柄を見極めて選んで投資するやり方をアクティブ投資と呼びます。パッシブで低手数料のインデックスファンドは、アクティブでそれゆえ手数料が高くなるファンドに比べると、長期間で見た場合より優秀な成績を収めるということは過去の数多くのリサーチで明らかになっています。儲かりそうな銘柄を見極めるタイプのアクティブファンドは、短期的には大きく当たり高い利回りを記録することはありますが、恒常的にそれを維持することは不可能であることと、手数料が高いことで、長期的におしなべるとインデックスファンドを上回る成績を出すことは非常に困難であることが報告されています。

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まとめますと、カテゴリー内のダイバーシフィケーションは、インデックスファンドでするというのが王道になります。インデックスファンドは、株式バージョンも債券バージョンも存在します。そしてそれらは、国ごとのインデックス、インターナショナルインデックス(自分の国以外)、グローバルインデックス(自分の国含む全世界)などのように地域で分かれたり、先進国インデックス、新興国(エマージング国)インデックス、途上国インデックスなどのように国のタイプでくくったりします。

まずはくくったこのカテゴリーの中で、できるだけ多くの種類の対象に投資する、具体的には市場インデックスに投資して、それぞれの市場に存在するすべての株なり債券なりに投資するというのが、ひとつめのダイバーシフィケーションになります。

3 comments

  1. いつも楽しく読まさせて頂いております。
    Vanguard社のTotal stock とS&P500はRate of Returnを見ると同じような動きをしておりますが、Total StockはCategoryを見るとLarge BlendですのでLarge Capの比率がMidとSmallよりも多きいという事でしょうか?教えて頂けたらと幸いです。

    1. S&P500は大企業500社特化であるのに対し、total stockはアメリカ市場をトータルに持ちますので、大中小全部カバー(株式発行しているもの)します。ただ、投資比率を見るとき$価値で計算しますので、そうするとどうしても大企業比率が大きくなるわけです。そしてこれはアメリカ市場そのもののいわば「生き写し」であり、大中小いろいろありそれぞれの資本比率に沿って投資されたポートフォリオとなっています。ダイバーシフィケーションという意味ではtotal stockのほうが進んだポートフォリオです。

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