「子どもに教えておきたいお金のこと」シリーズ、一回目はショッピング編、二回目はバジェット編を終え、三回目はクレジット編です。アメリカはクレジット大国です。好むと好まざるとに関わらず、アメリカに住んでいる限り、クレジットと無縁では生活できません。クレジットは、責任を持って賢く使えば大きな味方になるになりますが、無責任でよく考えない使い方をすると大きな敵になります。あと1年でカレッジに入学する予定の息子に、今からじっくりと教えておきたいことをまとめてみました。
クレジットはあなたの信用度
小さいころから、「約束を破らないこと、遅刻しないように行くこと」の大切さを何度も何度も教えてきました。いったん何かを約束したら、気が向かなくなったとか、今日はちょっと疲れたなどの小さな理由で簡単にそれを変更しないこと、それから約束の時間には必ず遅れないで行くことの大切さです。スマホで「もうちょっとで行くよ」、「ちょっと遅れるよ」、「どこで会う?」など、当日のインスタント打ち合わせも多いティーンのやり方には、「何時にどこどこ」とあらかじめ決めておきたい昔型の私としてはついていけないこともあるのですが、それでも約束というものへの真摯な態度の必要性は昔も今も同じと信じ、何度も言い聞かせてきました。いつも真摯な態度でいれば、「あの人の言葉は信頼できる」という信用になる。反対に、ドタキャンが多かったり遅刻ばかりする人は、「あの人は気まぐれであまり当てにならない」という不信用になる。
お金のクレジットも同じ原理で、こうこうこのようなルールでお金をお貸ししますから、これこれしかじかの方法で約束の時期にきちんと支払いしてくださいねという約束を、真摯な態度で守れるかという信用です。
クレジットとデビットの違い
クレジットカードもデビットカードもどちらも手に取ると似たように見えますが、その機能の仕方には大きな差があります。デビットカードは銀行のATMカードを兼ねている場合が多く、銀行のチェッキング口座にあるお金と直結しています。ATMで引き出すのと、デビットでものを買うのは同じことで、使ったときにお金が直接口座から引き出されます。一方、クレジットカードは、お金を使う場所(お店やレストラン、オンラインショップ)と自分の間にクレジット会社が入っており、ワンクションある使い方です。使ったときは払うときと同時ではなく、払うのはずっと後になり、それまでクレジット(掛け=信用)で買うのです。
参考: デビット・カード - クレジットでもデビットでも使えるカード
デビットカードはお財布のデジタル版、クレジットカードは付加価値のついたスマホという感覚かな。このふたつを比べてみると、お金の効率的運用、返品などに代表される消費者へのプロテクション、悪用された場合のライアビリティ、利用に対してのリワード、クレジットスコア構築の面で、クレジットカードに軍配があがります。ただ、大前提は責任ある使い方をすること。クレジットカードは責任ある使い方をすればフル装備のスマホですから力強い味方、しかしいったん使い方を間違えるとかなり暴走します。暴走が心配な場合には、デジタルお財布のデビットカードのほうがおすすめ。口座のお金がなくなった時点で、基本的に使えなくなりますので、暴走しようとすると歯止めがかかるからです。使い方はあなた次第、自分を信用できるようになったら、スマホのクレジットカードに移行するとよいでしょう。
参考: クレジット・カード vs. デビット・カード あなたはどちら派?
信用をつくる
責任あるお金の借り方と返済の仕方についての信用度を数値化したものがクレジットスコア。クレジットカードを使って購入するということは、たとえ次の支払日に全額支払いするのであっても、短期間お金を借りるということです。将来的に車を買ったり家を買ったりするときにお金を借りれば、それはもっと大きな長期的ローンになりますが、それも同じ原理。どちらにおいても、約束したとおりの金額を約束したとおりの時期に支払うことが大切です。
しかしながら信用というものは、それなりの期間をかけてだんだんと大きくなっていくものなので、まずは小さいところから始めていき、だんだんと大きな信用を作っていくことが必要になります。まずは1枚のクレジットカードの責任ある使い方です。約束どおりの支払いを責任もってするためには、その「約束」の内容を理解していなければなりません。そのためにはクレジットカードの利用ルールをよく理解することが大切。多くのカードはその月使った分を次回の支払い日までに支払えば利子はかかりませんが、全額を支払わず繰り越すと利子がかかります。この利子は、銀行の口座にお金を預けておくともらえる利子に比べるとかなり高いものであることを知りましょう。極力、クレジットカードの支払いは繰り越さない、つまりクレジットカードローンは作らないことを目標にすることが賢明です。結果として、毎月支払いきることができる範囲での利用に収めておくことが必要(これがバジェット管理)となります。
クレジットスコア
この利用パターンは、それぞれの金融機関から3社あるクレジットスコア会社に報告され、クレジットスコアを算出するためのデータとなります。SATのスコアのように、いいスコアだけ大学にレポートし、悪かったらレポートされないようにするということは、クレジットスコアの場合はできません。いい情報も悪い情報もすべてレポートされ蓄積されます。
クレジットカードといってもさまざまな会社がさまざまなカードを発行しており、クレジットスコアが悪くても比較的簡単に発行されるカードもあれば、クレジットスコアがよくないと手に入れられない特典のよい優良クレジットカードもあります。まずは1枚のクレジットカードからはじめ、責任をもった使い方をすることでだんだんとクレジットを構築していき、クレジットスコアがあがるにつれてよりよいクレジットカードに移行していくということも大切です。ちなみによくお店で、” Would you like to apply for XXX card so that you can save 10% right away?”と聞かれる、ストア・クレジットカードというのは、「よいカード」には属さないことが多いです。審査基準もゆるくすぐ発行される一方で、条件はよくないカードです。クレジットカードなら何でも同じと考えず、「よくない」カードは持たない、「よい=信頼されるに足る」カードを持つというポリシーを持つのがよいでしょう。
参考: 店頭での3秒決断 - ストア・カード つくる、つくらない?
こんな使い方をされるクレジットスコア
学生のうちから責任あるクレジットの使い方をして、将来の生活の土台とすることが大切です。クレジットスコアは、下記のような使われ方をします。
- 就職するときの信用調査
- アパートを借りるときの信用調査
- 車や家などのローンを組むときの信用調査、いくら貸してもらえるか、どのくらいの利子で貸してもらえるかの条件設定
- 自動車保険や生命保険などに加入するときにリスク調査
- バケーションレンタルなどを借りるときの信用調査
責任のある使い方をしていれば自然と構築されていくクレジットスコアではありますが、ただスコアに間違いがないかをチェックすることと、スコアがどのように推移しておくかについてある程度のモニターをしておくことが必要です。クレジットモニターは最近ではクレジットカードのサイトでできるようになったので、オンラインステイトメントをチェックするときに何気なく見ておくとよいでしょう。クレジットヒストリーの詳細情報はAnnual Credit Reportで年に1回無料でチェックできます。間違いがあれば訂正してもらう手続きをします。
あなたのクレジット レポートは大丈夫? - 定期チェックの必要性
ID詐欺
クレジットカード番号を誰かに勝手に使われたなどは(残念ながら)よく起こること。これはケースとしては軽い詐欺で、多くの場合クレジットカード会社にクレームすれだけで済みます。もっと重篤なのは、ソーシャルセキュリティ番号やその他の個人情報を盗まれ、本人になりすまして勝手にローンを組まれたり、その他の金融取引をされること。こちらは対応に多大な時間がかかることもあります。
これを防ぐには、まずは、ソーシャルセキュリティ番号を守ること。自分のソーシャルセキュリティ番号は暗記し、むやみに持ち歩いたり、書き留めたりしないこと。免許証もきちんと管理すること。住所や電話番号も信頼のおける人やビジネスにしかあげないこと。そして、定期的に、銀行口座、クレジットカード口座、クレジットスコアなどをチェックして、もし不審な動きがあれば早めにキャッチできるようにすることに気をつけましょう。
参考: ID詐欺の被害者にならないために
・・ということで、まずはクレジットカード一枚から出発。次回はその一枚をどうはじめるかについて考えて見ましょう。
渡米して7年になりますが、アメリカ人の旦那の言うことを聞き、クレジットは悪いよりないほうがマシと信じきっていました。ですが、去年アパートに引っ越すことになり、自分のクレジットが全く存在しなく、銀行からもクレジットカード発行を拒否され、最終手段として、クレジットカードの予備軍、secure cardの発行になりました。先日その縛りがやっと取れたのですが、
変な所で送信してしまいました。
続き- クレジットスコアが大事なアメリカで5年ほどの間、クレジットを放棄していたのが今でも悔やまれます。
そうですね。でも今からでも遅くないと思います。ちゃんと生活していればすぐにクレジットはできると思います。Good Luck!