正しく投資を理解する – 投資ファンドの種類はいくつか適当?(2)

IRA、401(k)などのアカウントや、その他の投資アカウントで、どのようにファンドを選びいくつくらいのファンドに投資されていますか?なんだかよさそうなファンドがあっても、ひとつふたつに集中させるのはなんとなくキケンな感じがする、それに、いくつか持っていればひとつがダメでも他で大丈夫かもしれないし、適当によさそうなものをいくつか選んでおこう・・・というのは人間の心理。この「ひとつがダメでも他で大丈夫=全体としてなんとかまあまあ」という概念は、投資の基本であるダイバーシフィケーション(多様化)に通じるもので、リスクを分散させるという役割があります。前回の記事では、リスクを分散させるには、多様な株式銘柄を持つことが必要で、20種類も持てばかなりのリスクが軽減されることと、このリスク分散はインデックスファンドではかなり効率的になされていることをお話しました。

じゃ、インデックスファンドひとつでOK?

では、インデックスファンドひとつに投資すればそれでOKかというとそうではありません。前回取り上げたS&P500インデックスファンドの場合を取り上げれば、これはNYSEあるいはNASDAQに上場している500の大企業の株銘柄(Large Cap=Large Capitalization、大規模資本、大型株)を中心にまんべんなくカバーしているということで、このカテゴリーの中でのみダイバーシフィケーションができているということを意味しています。Mid Cap(Middle Capitalization、中規模資本、中型株)やSmall Cap(Small Capitalization、小規模資本、小型株)は、ほとんどカバーしていません。また、S&P500インデックスファンドはアメリカ以外の国の株銘柄はカバーしていません。そして、もちろん株銘柄だけのファンドですから、債券やマネーマーケットなどの株以外の投資媒体にも投資していません。つまり、S&P500インデックスファンドは、「アメリカのNYSEあるいはNASDAQ上場の大企業」というカテゴリーにおいては、ダイバーシフィケーションができておりリスク分散投資ができているということで、他の投資の選択肢を考えた場合、それらと組み合わせれば、さらなるダイバーシフィケーションができる可能性もあるということ意味します。

ふたつのダイバーシフィケーション?

実は、ダイバーシフィケーションには2通りのものがあります。ひとつめは、今までフォーカスしてきたもので、カテゴリー内でのダイバーシフィケーションです。株とか、アメリカ株とか、大規模株とかというように、範囲を限ったカテゴリーの中でさまざまな銘柄を持ちリスク分散をすることです。

もうひとつは、カテゴリーを越えたダイバーシフィケーションで、今度は、いくつかのカテゴリーを組み合わせることにより、さらなるダイバーシフィケーションを実現するとともに、それぞれのカテゴリーの割合を調整することで、全体のポートフォリオを自分の許容できるリスクベレル/希望するリターン(利回り)レベルに設定するということです。これは、アセットアロケーションという言葉でも呼ばれます。

アセットアロケーションについてはこちらの記事に詳しく書かれていますが、基本的には、許容しなければならないリスクと狙いたいリターンを実現するため、株式ファンド(高リスク高リターン)、債券ファンド(中リスク中リターン)、マネーマーケットなどの現金ファンド(低リスク低リターン)を組み合わせることで実現します。株式ファンドといっても、Vanguard Total Market Fundのようなものを一種類持てばいいかもしれませんし、あるいはLarge Cap FundとMid Cap Fundを組み合わせたり、S&P500 Index FundとInternational Fundを組み合わせたりと、いくつかの種類に投資することもあるでしょう。これは、401(k)で提供されているファンドや手数料などの状況により決めることになります。株だけでなく、債券ファンドについても同様な選択肢があるでしょう。

多すぎるとかえってマイナス効果・・・

今までの復習をしますと・・・

1)     まずはカテゴリー内でのダイバーシフィケーションが大切で、これは正しくリスク分散されたミューチュアルファンドを利用すると手っ取り早く実現できる

2)     カテゴリーを越えたダイバーシフィケーションも大切で、これはアセットアロケーションとも呼ばれ、株式ファンド、債券ファンド、現金ファンドをいくつか組み合わせて実現する

この2ステップにより、カテゴリーの中でも、またカテゴリーを越えても、うまくダイバーシフィケーションが行われ、自分の狙うリスク・リターンレベルを実現した投資ポートフォリオが構築されることになります。

ここで注意したいのは、2)のアセットアロケーションの段階で、必要以上に多くのファンドに投資を分散させると、かえって逆効果になり、リスクが集中するとともに狙っていたダイバーシフィケーションを壊してしまうことになる可能性があるということです。フルーツバスケットの例をとって説明してみましょう。

多くのお客様を迎えるパーティーを催すので、デザートにフルーツを仕入れるとします。フルーツは季節柄、旬でないものが手に入りにくかったり、取り扱う会社によっては新鮮さが足りなかったりするので、なるべくバラエティに富んだくだものを入手するのと、仕入れたくだものが質が悪いものばかりにならないため・・・つまり、リスク分散のために、敢えていくつかの会社から仕入れることにします。それぞれの会社で、適当にみつくろい万遍なくいろいろな種類のフルーツを盛り合わせたバスケットを納品してもらうことにします。会社もいくつか使うし、多様なフルーツの盛り合わせを頼むので、うまい具合にいくだろうと期待しますね。

ところがふたを開けてみたら、ちょっと違いました。たしかに、パーティーのテーブルには数十種類ものフルーツが並びました。質もいいものもあれば、あまりよくないものもあったけれど、おしなべればそこそこです。ところが、どの会社のバスケットにも、ちょうど旬で安価で万人受けする赤りんごが必ず、しかも相当数入っていました。結果的に、総合すると赤りんごはかなりの数にのぼり、パーティーでは消費しきれませんでした。

さて、リスク分散という意味では、成功でしたでしょうか?意に反して、赤りんごにリスクが集中しましたね。いろいろな会社のバスケットを組み合わせても、その中身のフルーツを吟味しないままだと、計らずも一種類のくだものを多量に持つことになりました。ミューチュアルファンドもこれと同じで、目的が似ていたり重なる部分があるファンドをいくつか持っていると、その中の銘柄や種類のセグメントにおいて重複があることがよくあります。このため、リスク分散を狙って多様なファンドに投資すると、かえってリスク集中してしまうという矛盾につながります。投資しているファンドの数が多くなればなるほど、この危険性は高まり、またオーバーラップのないように確認して維持するということが困難になります。

ファンドはいくつ持つのが適当?

この理由から、まず1)のステップで、目的にかなったミューチュアルファンドを選ぶ作業をしたら、2)のステップではその中から目的や狙いの異なるファンドを、ファンド数が多くなりすぎないよう重複なく組み合わせるということが必要になります。ファンド数は少なくて2ファンドでもOK(株式ファンドと債券ファンド)、もう少し細かく分散したいなら6ファンドというところが妥当でしょう(株式ファンド3~4、債券ファンド1~2、現金ファンド1)。場合によっては、スパイス的に持つREIT(不動産投資)ファンド、貴金属ファンドなどを加えるともう少しファンド数が多くなってもいいかもしれませんが、これらはあくまでメインのファンドに味付けをするための特殊ファインドです。また、これらのファンドは他の株式ファンドや債券ファンドと重複する部分がほとんどないので、安心して加えることができるといっていいでしょう。

ひとつでもいいファンド?

最近はターゲットデイトファンドとかライフサイクルファンドと呼ばれる、すでにダイバーシフィケーション+アッセットアロケーションが終わっているファンドが人気を集めています。ターゲットデイト(リタイヤする予定年)を選ぶことで、それにあわせたリスク・リターン設定で自動的に調合済みのファンドに投資することができます。年齢を重ねるに従い、リスクの少ない投資に自動的に調整されていくもので時の経過とともに、投資者のライフサイクルに合わせて、アセットアロケーションを自動的に調整してくれるという利点もあります。このようなファンドを利用する場合は、このひとつのファンドで上述の1)と2)のステップが実現される(はず)ですから、このファンドだけで投資完了ということになります。ただ、ターゲットデイトファンドでも、ただ盲目に投資せず、そのファンドの投資内容が本当に自分の目標にあっているかの確認はしっかりとしましょう(詳しくはこちら)。

いかがでしょうか、投資の基本ダイバーシフィケーションがお分かりいただけたでしょうか。十分分散し、重複がないこと、これが大切です。

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