正しく投資を理解する – 投資ファンドの種類はいくつか適当?(1)

Last Updated on 2017年2月17日 by admin

「リタイヤメントや投資アカウントで適切な投資をしているか見てください」とリクエストを受けることがよくあります。巷には数限りないミューチュアルファンドの数がありますから、どれを選べばよいか当惑して当然です。また、反対に401(k)などのプログラムでは会社の提供するミューチュアルファンドに選択が限られますが、その中から自分の目的にあった良質のファンドを選ぶとなると考慮しなければならない点もいろいろあります。よくわからないけど、とりあえず適当にいろいろなファンドを選び、分散して投資しておけば、まあ全体的にはなんとかなるのではないか・・・というのは人間の心理かもしれません。ひとつダメでも他がある・・という考えですね。この「いろいろ持つ」は投資の基本とされる「多様化=ダイバーシフィケーション」という概念とも通ずるもので、一見理にかなったことのように思えます。ところは、実はあまりにたくさんの種類のファンドを持ちすぎていると、かえってマイナスの効果が出てしまうことがあります。では、ミューチュアルファンドで投資する場合の注意点は何か、いくつくらい持てばいいのか、多すぎるとはどういうことか・・・今回はこのテーマを2回に分けてお届けします。

多様化(ダイバーシフィケーション)とは?

投資での多様化(ダイバーシフィケーション)とは、いろいろな投資媒体を持つことでリスクを分散させ全体的なリスクレベルをコントロールしようとすることです。たとえば株であれば、一つの銘柄だけに全額を投じる代わりに、さまざまな国のさまざまなインダストリ(業種)でさまざまな大きさの会社の株に分散投資することで、ひとつの会社やセグメントが急落しても、他では上がるセグメントがあるという具合に、全体的に見てあまりにひどいアップダウンを経験するのを回避するというイメージです。これは、国やインダストリやサイズが違う会社は、それぞれ異なる業績パターンがあるので、どこかの会社が業績不振でも他の会社は業績優良ということがある、つまり会社同士、国どうし、インダストリー同士などで同じ値動きをする確率が少ないという前提のもとに成り立ちます。

たとえば、

A会社の株が$5値下がったとき

B会社の株は$10値上がった

とします。A社とB社は扱うビジネスの内容も経済環境もまったく異なるので、値動きがシンクロナイズしないわけです。大体の場合において、A社とB社の値動きはこのように相反するパターンだったとすると、A社とB社はほぼ同じ値動きをする確率が少なく、一緒に持つと効果が相殺されてそこそこの利回り(この場合は相殺して$5)で安定させることができるという結果になります。リターンも下がったがリスクも下がった、中リスク・中リターン状態になりました。一つの会社より二つの会社のほうがリスクが低くでき、ダイバーシフィケーションのはじめの一歩が踏み出せたわけです。

今度は会社ではなくインダストリの例をとりますが、反対に、

Aインダストリが業績ダウンのとき

Bインダストリも業績ダウンした

とします。今度は、AインダストリとBインダストリは非常に密接な関係にあり、AもよければBもいいし、Aも悪ければBも悪いという具合です。インダストリとBインダストリは常にこのように同じような動きをするとなると、このような場合は、前述のようなリスク相殺効果がなく、ダイバーシフィケーションにはなりません。いいときにはとてもいいが、悪いときには非常に悪いということになり、ハイリスク・ハイリターンとなります。

つまり、ダーシフィケーションは、値動きのパターンが同じでない投資を選び複数持つことで実現されるわけです。しかも値動きのパターンがバラバラならバラバラ(相関がまったくない)ほど、ダイバーシフィケーションには効果的ということになります。

どの程度のダイバーシフィケーションが必要か?

複数持つ・・といってもどの程度のダイバーシフィケーションが必要なのでしょう。たとえば株式をとった場合、いくつあればいいのでしょう。ひとつの株から始まり、ふたつの株、みっつの株と数を増やしていき、ポートフォリオ全体のリスクを計るというスタディーがあります。最初は株ひとつのポートフォリオだったのが、だんだんと5種類の株で構成するポートフォリオ、10種類の株で構成するポートフォリオという具合に株の数を増やしていくわけです。もちろんここで選ぶ株はできるだけ値動きのパターンが同じでないもの、つまり前述の例でいえば前者のケースを選びます。

結果は、株ひとつのポートフォリオにもうひとつ株を加えて株ふたつのポートフォリオにするとリスクは激減しました。これは上述のA会社とB会社の例に現れています。AとBは相反する値動きをするので、ポートフォリオ全体としてはリスクが相殺され安定しました。そこにもうひとつ株を加え、株3つのポートフォリオにすると2つめの時ほどではないですが、リスクが軽減されました。さらに、株4つのポートフォリオにするとやはり3つめの時ほどではないですが、リスクが軽減されました。

こうして株の数を増やしていくと、ポートフォリオのリスクはだんだんと減っていきますが、ただそのリスク減少度は徐々に低下していきました。そして20株でリスク軽減はほぼ頭打ち状態で、それ以降は株の数を増やしても、得られるリスク軽減はほとんどない(あっても極小)という状態になりました。

portposio_risk_#stocks

つまり、ダイバーシフィケーションはリスクを軽減するという意味においては、20株もあればかなりの効果が得られるということです。ただ、このようなリサーチはこののちもいくつも行われ、ある時は30株、ある時は50株という結果もでています。ここで重要なポイントは、何株持てばリスクの軽減上十分かということではなくて、分散をするほどリスクが下がっていくが、ある程度分散すればだんだんとその下がりは減速するということです。

おまかせダイバーシフィケーション

ということで、リスクを適切にコントロールしたポートフォリオというのは、20株~多くて50株で十分というわけですが、これは20株なりし50株あれば利回り的にも最適ということではありません。私たちの目的は、持つ株の組み合わせでリスクを下げつつも、トータルのリターンはなるべく高くするということです。リターンの部分を最適化するためには50株以上の分散が必要になります。巷にあるミューチュアルファンドでは100種の株程度、もっと多いと数百銘柄に投資しています。

また、もし自分で100銘柄を選ぶとなれば、これはどの100銘柄でもよいわけでなく、前述の例で書いたとおり、「一緒に値動きをする確率の低いもの同士(相関の低いもの同士)」をうまく組み合わせつつ、しかも利回りのうえでも最適化して選ぶ必要があり、これは案外骨の折れる仕事です。この骨の折れる仕事を、ミューチュアルファンドではファンドマネージャーが代わってやってくれているわけであり、ファンドに対して払う手数料の一部はこの作業への報酬でもあります。

適切に運営されたミューチュアルファンドを選ぶなら、リスク分散を目的としてダイバーシフィケーションのタスクはすでになされたとみなしてよく、投資家である私たちが心配する必要はあまりないということになります。「適切に運営されたミューチュアルファンド」というのがミソで、中にはダイバーシフィケーションよりも、特殊なセグメントにリスク高を承知のうえ投資しているファンドもありますから、見極めが必要です。

一番手っ取り早い、見極め法はインデックスファンドを選ぶことです。インデックスファンドは、ベンチマークとする株式指数(たとえばS&P500など)に採用されている株銘柄を含むファンドで、その意味では適正な(株式市場と同じ構成状態で)ダイバーシフィケーションがなされているファンドといえます。S&P500インデックスファンドなら500銘柄をカバーしているわけで、S&P市場全体にまんべんなく投資しているというわけですから、リスク分散という意味では二重丸です。

インデックスファンドは、手数料も低く、儲かりそうな銘柄を見極めて投資している大多数のミューチュアルファンドに比べ、長期間で見た場合より優秀な成績を収めるということは過去の数多くのリサーチで明らかになっています。儲かりそうな銘柄を見極めるタイプのファンドは、短期的には大きな利回りを記録することはありますが、恒常的にそれを維持することは不可能であることと、このようなファンドの見極め作業と売り買い作業に手間がかかるため手数料が非常に高くなる場合が多く、長期的におしなべるとインデックスファンドを上回る成績を出すことは非常に困難であることが報告されています。

では、インデックスファンドひとつに投資すればそれでOKなのでしょうか?いやいや、話はそんなに簡単には終わりませんね。続きは次回で。。。

Print Friendly, PDF & Email

2 comments

  1. 読みながら、勉強させていただいていますが、難しくて、よくわかりません。
    アメリカに住んで10年、専業主婦なので、わずかな手持ちで、老後のために少しでも資金を増やしたいと思いますが、何をどうしていいかわかりません。
    主人はアメリカ人で、私たちの老後のために、投資していますが、私、個人としての相談時はあまり乗ってくれず、英語で、ベラベラ説明されてもイマイチようわかりません。
    素人が、資金を増やす第一歩として何から始めたらいいか、模索中です。

    1. いろいろな情報があふれていますから、一度に消化しようと思うと消化不良になりますよね。まずは、Vangaurdなどの低手数料会社にアカウントをつくって、Index ファンドなどの基本的なものにお金を入れて、動き始めてみるというのがいいかもしれませんよ。もう少し詳しい説明が欲しいということであれば、数時間のプラニングサービスをご考慮されるのもいいかもしれません。基本からご説明し、口座セットアップまでお手伝いします。ただ、ご主人がもう始めていらっしゃのであれば、ご夫婦で理解をあわせるところから始めるのがいいですね、きっと。

Leave a Reply

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください