オバマケアってまだあるんですか?-どうなる2019年の健康保険

トランプ大統領がオバマケアは廃止すると言い始めてもうすぐ2年。トランプ政権の新案に反対するデモなどもよくニュースになっていましたが、その後あまりにいろんなことが起こるトランプ政権、オバマケアが今後どなるかの報道もあまり見なくなくなりました。今年度はまだ継続されていたオバマケアですが、2019年度の保険制度はどうなるのでしょう。今年も11月に来年度分のオープンエンロールメントがはじまりますが、オバマケアはまだ買えるのかという疑問、反対にオバマケアを買わないとペナルティはまだあるのかという疑問、オバマケア以外に安い保険は提供されるのかという疑問、いろいろな疑問が残っています。今日はそのあたりを見てみましょう。

2010年から2020年にかけて段階的に施行されることになっていたオバマケア。正式には、The Patient Protection and Affordable Care Actという名前です。2013年10月からは、各州が提供するHealth Insurance Exchangesを通し健康保険を購入することができるようになり、世帯収入によっては保険購入に対しての助成金を受けることができるようにもなりました。2014年からは、健康保険に加入していない人にはペナルティが課せられるようになりました。国民皆保険によりアメリカに住む人すべてが、既往症や年齢に関係なく、良質の健康保険に入れるようにしようしたこの制度、狙うところはよかったのですが、保険料は年々上がり、補助金をもらえたとしても自己負担部分の保険料だけで家計がたいへんという声も聞かれました。

トランプ政権は、このオバマケアを廃止し、全く新しいシステムに変えたい思いがありますが、いろいろ他の案件が山積みの状態でそこまで組織的な手が回っておらず、The Patient Protection and Affordable Care Act自体は今も生きています。ただし、このオバマケア体制の一部を改正し、2019年からは変更になる部分があります。

 

ペナルティがなくなる

個人に関わる大きな変更のひとつは、保険に加入していない場合のペナルティが廃止されることです。2014年から本格導入されたこのペナルティ、このせいでタックスリターンのシステムに変更が加えられたのに、2019年からはこれがまた廃止されます。やったり、やめたり、これだけでも大きな無駄だと思いますが、これがアメリカなんでしょうね。ペナルティがなくなるので、オバマケア加入の強制がなくなります。そのため若くて元気な層は加入しないという選択をとる人も多くなると予想されます。これでオバマケアに、残りの「年齢の高い病気になりやすい層」が集中することになり、保険料を上げることになると憂慮の声もあります。

ただし、各州がある程度のコントロールを持っていますので、州によっては保険加入を強制し続けるところも残ると予想されます。各州にご確認ください。

 

2019年度分の保険の選択肢

現在まではペナルティを回避するためには、オバマケア保険に入る必要がありました。2019年からはペナルティがなくなり、オバマケア保険に入ってもよいし、オバマケアでない保険(非オバマケア保険と呼びます。後で説明。)に入ってもよい・・という選択ができるようになります。

まずオバマケア保険とは何かという復習からしましょう。

オバマ保険は、基本的な健康保険の補償項目として、以下の10項目は必ずカバーしています。既往症や大病のせいで、契約中止になったりするはなく、またライフタイムでの補償額の限定額や年間での補償上限もありません。

  • Ambulatory patient services(Walk-in、Outpatientなど外来サービス)
  • Emergency services(緊急時サービス)
  • Hospitalization(入院)
  • Maternity/newborn care(マタニティ、新生児ケア)
  • Mental health and substance use disorder services (精神科、薬物乱用ケアなど)
  • Prescription drugs(処方箋)
  • Rehab and habilitative services/devices(リハビリ、Occupational/Physical Therapy, Language/Speech Therapy)
  • Lab services(ラボテスト、検査)
  • Preventive/wellness services and chronic disease management(予防、健康診断、慢性病対処)
  • Pediatric services (小児科ケア)

非オバマケア保険は、上の条件を満たさないものすべてで、英語ではAlternative coverageとかAlternative planなどと呼ばれます。これまで市場に出ていた短期健康保険(安い健康保険ー短期健康保険で節約?)なども含まれます。非オバマケア保険は、その名の通りオバマケアでの保険標準を満たさないので、その内容はこれまで以上によくよく確認して加入する必要があります。今まで加入していた保険ではカバーされていたから大丈夫と思っていたが、新しいプランではカバーされなかったということが、(これまでももちろん可能性としてはありましたが)オバマケア保険から非オバマケア保険に移るときには、特に可能性が大きくなります。

12か月以下の期間をカバーする短期保険も増えると同時に、36カ月まで自動更新の保険も登場するようです。保険会社は更新を保証する必要はなく、どれだけの期間の契約が保証されるのかはきちんと確認する必要があります。州によっては、これらの新種の保険の導入が、州のコントロールにより少し遅れることもあるとのことです。

現時点では、非オバマケア保険を管理する法律が手薄なので、“It’s a buyer beware situation. (購入する人はよくよく気を付けるように・・という状態)”という専門家もたくさんいます。”Some of them are truly junk insurance.(真にごみのような保険にあたることもあります)”ということですので、注意してください。非オバマケア保険は、オバマケアに準じない保険である旨と、何がカバーされるのかの詳細を消費者に開示せねばならない法律になっているので、開示されている情報はめんどうでもきちんと確認しましょう。

 

オバマケア保険はまだ買えるの?

これまで通り、オープンエンロールメント期間に買えます。今までのオープンエンロールメントのシステムはそのまま継続されます。2019年の保険を、2018年の11月1日から12月15日の間に購入します。州によっては、12月15日の締め切りを延長する州もありますので、それぞれ確認してください。

州の運営するHealth Insurance Marketplace/Exchangeは、そのまま継続されます。また、Health Insurance Marketplace/Exchangeを使うことで得られる助成金もそのまま継続されます(オバマケア健康保険の加入のしかた)。これまで通り、保険会社や保険ブローカーからも購入することができます(ただし、この買い方の場合は、助成金を受けることはできません。助成金を受けるにはHealth Insurance Marketplace/Exchangeで購入する必要があります)。

ペナルティの廃止とよりローコストの非オマバケア保険ができることで、より健康で若い層がオマバケア保険がら抜けだし、その結果オバマケア保険のコストは上がるのではないかという憂慮の声がある中、2019年のオバマケア保険料上昇は2018年の保険料上昇に比較するとずっと低い水準に落ち着くというレポートがあります。

その裏には、2018年第一四半期の保険会社の財務成果が、オバマケア導入以後最高の結果となった事実があります。2017年から2018年にかけては多くの州で前年比30%増という保険料上昇でしたが、Associated Press and Avalere Health の報告によると、2019年の保険料は2018年に対し平均3.6%増にとどまるとのことです。たとえば、州平均の増加はカリフォルニアは8.7%増、ニュージャージーは5.8%増、テキサス1.5%増となっています。十数パーセント保険料を下げる保険会社もあり、州平均で保険料が下がるのがノースカロライナは4.1%減、アリゾナ5.3%減、テネシー5.7%減。

40歳のノンスモーカーがシルバープランに加入しようとした場合の平均保険料月額(助成金なし)は、州により$300から$900の間(Consumer Reports調べ)で、同サイトで各州ごとの値段が見られます。

下記で、青の色が濃いほど、保険料が高い州です。

 

また、Health Insurance Marketplace/Exchangeに参加する保険会社の数は安定しているようで、逆に過去数年いったん参入を見合わせていた保険会社が、Health Insurance Marketplace/Exchangeに戻ってくるケースもあるようです。Robert Wood Johnson Foundationは、1/3以上の地域で、オバマケア保険を提供する保険会社の数の増加を見るだろうとしています。また、保険内容の削減も少ないだろうとしています...

Health Insurance Marketplace/Exchangeが開始して5年。保険内容と収益性の吟味が進み、どうビジネスを進めるかの経験が保険会社の中にたまり、経営が安定してきたことを意味するかと思われます。しかしながら、ここに来ての改革で、ペナルティ廃止と非オバマケア保険の登場となりますので、それがどう影響するかは将来(2020年分以降)の課題となります。

 

で、どうすればいい?

まずは、各州のHealth Insurance Marketplace/Exchangeで、値段を確認してみることをお勧めします。保険会社の参入が増えて選択できるプランが増えたり、保険料が削減されているケースもありますから、まずは希望をもって値段を確認するのがよいでしょう。助成金が受けられる可能性があるなら、なおのことです。もしも、ある程度のコストでオバマケア保険に加入できるのであれば、内容的にはそのほうが安心といえます。

オバマケア保険が高すぎる場合には、非オバマケア保険を考慮することになります。その場合は、今のうちに受けられる健康診断は受け、自分の健康状態を把握し、それに最適な保険を選ぶことになりますが、この場合は上に述べたような状況から、保険の内容をきちんと細かく確認して、カバーされないリスクをきちんと覚悟しておくのが肝要です。大病になったら日本に帰るというのも残る選択肢になるかもしれません。ただし急な事故などでERに運ばれたというようなケースでは、大きい医療費を抱える可能性も残ります。ケースを想定してそれなりの金銭的準備も必要になります。

ペナルティが廃止されるので、保険に全く加入しないというのも選択肢に入ってくるかと思いますが、その場合は大きな賭けの状態になります。海外旅行保険に加入するという手もありかと思いますが、この場合も内容を確認し、カバーされない部分を理解しておくことが必要です。

保険内容の確認は面倒だしよく分からないし、本当に頭の痛い問題ですが、ただ、この国でどういう健康保険を持っているかは死活問題にもなりえません。自分の保険がどういうものなのかは人任せにせず、内容はよくよく確認のうえ加入を決められることをお勧めします。

4 comments

  1. いつも拝見させて頂いてます。
    早速の保険の情報の更新有難う御座います。
    さて、早速調べた所今年よりも大分保険料が上がっており、月に2000ドル弱になりました。
    流石にこの金額は毎月支払うことは不可能なので、ショートタームの保険または、海外保険も視野に入れて調べたいと思っております。

    オバマケアになってから、保険のカバーが悪くなっていると保険のエージェントの人たちが言っておりました。確かに妊娠など以前はカバーしていなかったものが常にカバーされる代わりに以前カバーされていた色々なカバーが外されているそうです。そして、ショートタームに入る人が殆どだと。。
     確かにショートタームの勧誘の電話が毎日1回はかかってきます。
     また、病院の人たちによると以前より無保険の人たちが増えているとのこと。つまり、オバマケアになってから保険料が上がって以前は入れていた人たちが入れなくなっているそうです。(地域や年収によっても違うと思います。)特にミドルクラスの人たちだそうです。低所得者層は一層手当が良くなっている
    とのこと。オバマケア以前から低所得者層にはガバメントの保険があったのになぜ?と思います。
    確かオバマケアはミドルクラスで保険に入れない人達を支援することだったとおもいましたが。

    私の周りは病院関係の人が多く、全米でも有名な整形外科が大きな病院が近くにありますが、その経営者によると病院経営は大口の寄付に寄って成り立っているそうです。国に支援や保険では病院経営は出来ないそうです。
    このままオバマケアが続けば潰れる病院も出てくると言っておりました。
    それ程、無保険者が増えているとのことです。
     会社も従業員に保険を提供するよりペナルティを支払う方が安いとも聞きました。特に小さな会社は提供出来ないと。

     国会も此方の問題に早く取り組んでもらわないと、家が買えないですし、ちゃんとした保険に加入
    出来ません。

    1. 月に$2,000弱とは、まったく現実離れした額ですね。
      本当にアメリカ医療はこれからどうなってしまうのでしょうね。よい短期保険が見つかりますように。

  2. オバマケアの保険料が月に2000ドルもする訳ないだろ!
    デマを振りまくのは止めろ共和党支持者!

    1. 地域と所得、人数、そして、保険ランクと年齢によりますが、一番高いのでは都市部で$3,000というのも見たことがあります。私はAffordable Care(Obamacare)の存続を応援しています。

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